元祖ピアノの夜想曲は、サンクトペテルブルクの長い夜のサロンに響いた音楽でした。作者はイギリス人のジョン・フィールド。フィールドはアイルランドの生まれですが、18歳の時にアイルランド議会は解散し、グレート・ブリテン王国に吸収されていたので、イギリス人ということになります。
夜想曲は一気に書かれたものではなく、平均して年に1曲くらいのゆったりしたペースで作曲されており、ロシアで見聞きした歌(ロマンス)や馬車の音なども反映されています。第18番はなぜか「正午」というタイトルですが、これはクリスマス時期(1月)には殆ど曇天で薄暗いことから、ロンドにも関わらず夜想曲入りさせているのかもしれません。
このCDでは、若手のイギリス人ヴィルトゥオーゾ・ピアニスト、タイラー・ヘイが、作品の姿をぼかすことなくクリアーなタッチで描いています。
ジョン・フィールド
フィールドの54年の生涯のうち、アイルランド拠点期は幼少時代の10年、イギリス拠点期は修業時代の10年で、ロシア拠点期は34年に及んでおり、1837年に亡くなったのもモスクワです。要するにプロの音楽家になってからはずっとロシア拠点で働いていたことになり、有力な弟子もミハイル・グリンカら何人もいたことから、ロシアの作曲家のあいだで夜想曲が浸透し、ロシアは夜想曲の発祥の地ともなっていたのです。
そしてそのフィールドの名声は死後も続き、トルストイの小説「幼年時代」[1852]、「戦争と平和」[1869]にもフィールドの名が登場するほどでした。
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