フランソワ・クープランの父親の兄であるルイ・クープランは、35歳で亡くなってしまったため知名度はあまり上がりませんでしたが、曲は性格的なものも多く魅力的で、特に今回のベルゲッラのような凝った演奏で聴くと、拡大された細部の繊細な味わいや、立ちのぼる雰囲気、起伏の大きさにえも言われぬ趣が感じられます。
また、ルイ・クープランの作品はバラバラに遺されおり、グスタフソンの作品番号も単に曲種別だったりするので、演奏の際には組み合わせや配列を工夫する必要があります。
ベルゲッラの場合は、各曲の配置を調性での括りとすることで、一定の雰囲気の持続感を重視し、そのうえで各曲ごとの変化を示すので、まとまりの良さも見逃せないポイントとなっています。録音も非常に優秀です。
名曲「ブランロシェ氏の墓(トンボー)」
ルイ・クープランは10歳年長のフローベルガー[1616-1667]と交流があったようで、「フローベルガー氏を模した前奏曲」(CD2 トラック12)も書いています。そのフローベルガーと同じ建物で暮らしていたリュートの名手ブランロシェが、フローベルガーと食後に庭園を散歩した後、自宅で階段を踏みはずして頭を強打し、ほどなく息を引き取ってしまうという不幸な事故があったのですが、そのときフローベルガーと共にその場に居合わせたのが、ルイ・クープランと親しいテルム侯爵でした。侯爵はフローベルガーが医師を呼びに行っている間に、ブランロシェの介抱をしながら最後の言葉も聞いており、その様子がルイ・クープランにも伝わることになります。
音楽家仲間の不運な死に衝撃を受けたルイ・クープランは、「ブランロシェ氏の墓」を作曲。故人を偲ぶ葬儀参列者の悲しみと、教会の鐘を模したような音が交錯するトンボー(追悼曲)を書いてその死を悼んでいます。
驚くのはここでベルゲッラが採用したテンポです。多くの演奏が3分50秒台から5分50秒台の範囲で収まる中、8分半もかけており、ルイ・クープランの描いた心情の方に寄り添った表現とみることができます。見知らぬ人ではなく、親しい人の死として解釈した味わい深い演奏です。
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