ベートーヴェンの「大フーガ」のピアノ独奏版と、ピアノ・ソナタ第29番「ハンマークラヴィーア」、ピアノ・ソナタ第31番を収録。第29番と第31位版は演奏はすでに国際的な活動もおこなっているイタリアの若手、アンドレア・モルテーニによるものです。
対位法好きだったベートーヴェン
ベートーヴェンはさまざまな分野の作品に対位法を用いて成果を上げていましたが、特に後期作品での大規模なフーガには見事なものがありました。このアルバムでは、フーガの傑作「大フーガ」と、終楽章にフーガを置いた2つの後期ピアノ・ソナタ、第29番「ハンマークラヴィーア」と第31番を収録しています。
大フーガのピアノ編曲
弦楽四重奏のために書かれた「大フーガ」は、ピアノ4手版に編曲されたヴァージョンが知られていますが、ここではルイス・ヴィンクラー[1820-1886]が、1856年にピアノ独奏用に編曲したヴァージョンを選択。ヴィンクラーはベートーヴェンの交響曲全集や弦楽四重奏曲全集の編曲などをおこなったスペシャリストで、オリジナルに忠実なアレンジにより、弦楽四重奏によるフーガの魅力を巧みにピアノに移し替えています。
イタリアの技巧派による快演
アンドレア・モルテーニは、2021年にペトラッシとダッラピッコラのピアノ曲全集でCDデビューしたピアニスト。作品がほとんど知られていないため、その実力はよくわかりませんでしたが、翌年のスカルラッティ・アルバムでは冒頭のK.24から驚きの演奏を聴かせていました。K.24といえば若き日のプレトニョフによる鮮烈な演奏が有名ですが、モルテーニの演奏はさらに音がよく粒だち、高速演奏の中で作品情報を漏れなく表出するさまが驚異的ですらあります。
感情移入に依存せず、多くの音符を明晰に響かせるこうした演奏様式は「大フーガ」にはうってつけで、4分51秒からの弱音部分、メノ・モッソ・エ・モデラートでは、端正な美しさでコントラストを際立たせています。
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