
故郷の歌で共演する竹馬の友
ハンガリー歌曲集〜バルトーク、コダーイ、リゲティ作品集
カーロイ (メゾソプラノ)、ヴュルツ (ピアノ)
性格的歌唱で定評のあるメゾソプラノ歌手のカタリン・カーロイと、ピアニストのクラーラ・ヴュルツは、幼い頃にハンガリー放送児童合唱団で一緒だったという長い付き合い。このアルバムでは、バルトーク、コダーイ、リゲティによる歌曲と民謡編曲を収録。タイトルだけでも興味深い曲が多く。曲調も平明ながら変化に富み、さまざまな物語や情景に関する歌を表現豊かな歌唱とピアノで聴くことができます。
トラック13の美しい民謡「ヘンルーダの花が咲いたら」は合唱ファンにはラヨシュ・バールドシュの編曲で有名ですが、こちらはバールドシュの師でもあるコダーイによる独唱用の編曲です。
トラック16の「女たちよ、女たちよ」は、色々な曲の元ネタになっていそうな魅力的な曲。
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作品について
リゲティ: 「ヴェレシュ歌曲集」(トラック1〜3)
リゲティがリスト音楽院在学中の1946年の作品。歌詞はハンガリーの作家で詩人シャーンドル・ヴェレシュ[1913-1989]によるもので、リゲティが晩年にカタリン・カーロイのために書いた「シーパル、ドッバル、ナーディヘゲデュヴェル」もヴェレシュの書いたものでした。
詩人シャーンドル・ヴェレシュ[は、同時代の作曲家のシャーンドル・ヴェレシュ[1907-1992]とカタカナでは同じ姓名になって紛らわしいですが、姓の実際の発音はオに近いヴェレシュなので異なり、スペルも詩人が「Weöres」、作曲家が「Veress」なので明確に違っています。名のシャーンドル(アレクサンダーのハンガリー仕様)はスペルが同じなので発音も同じです。
リゲティ: 「5つの黄金の歌」(トラック4〜8)
1952年の作曲。19世紀ハンガリーの詩人ヤーノシュ・アラニーの詞に付曲。テキストも音楽もハンガリーの民謡に根ざしたものですが、最後の曲のみ、スコットランドの詩人、ロバート・バーンズのユーモラスな詩「悪魔が徴税人を連れ去った」[1792]をアラニーが1868年にハンガリー語訳した詞を大胆に音楽化しています。
コダーイ: 「ハンガリー民謡集」から(トラック9〜13)
ハンガリーでは1870年代の終わりから速記者で民俗学者のベーラ・ヴィカール[1859-1945]という人物が民話や民謡を収集し、1896年からは蓄音機を用いた録音もおこなって7千曲に及ぶ民謡を記録していました。その業績は1900年のパリ万博でも発表されたほどで、若きバルトークとコダーイに与えた影響にも大きなものがあったと考えられます。
共にリスト音楽院で学んだバルトークとコダーイは自国の民謡に魅せられ、各地の民謡を蓄音機で記録するだけでなく、実際の演奏に使用できるように伴奏つきの編曲をおこない、多くの人にその魅力を伝えるべく2人で奮闘していました。
バルトーク: 「8つのハンガリー民謡」 BB 47(トラック14〜21)
トランシルヴァニアの民謡を集めたもので、第1曲から第5曲が1907年の編曲、第6曲から第8曲が1917年の編曲。1922年に出版。トランシルヴァニアは現在ではルーマニアとスロヴァキアの領土ですが、当時はハンガリー領で、少数民族の歌や踊りが非常に個性的です。トラック16の「女たちよ、女たちよ」は、色々な曲の元ネタになっていそうな雰囲気もあります。
バルトーク: 「5つのハンガリー民謡」 BB 97(トラック22〜26)
バルトークがコダーイと1906年に共同で出版した「ハンガリー民謡集」第1集には20曲が含まれ、1番から10番がバルトーク、11番から20番までがコダーイという構成でしたが、売れ行きは冴えず、1,500部を売り上げるのに32年を要していました。
ここに収録された4曲は、その第1集から5曲を選んで1928年にHMVのために録音した際に現場で使用されたスケッチなどをもとに復元されたもので、1970年に出版されています。
これはバルトークの友人でブダペストにバルトーク・アーカイヴを設立し、1971年まで館長を務めたベルギー人神父、デニス・ディレ[1904-2005]の尽力によるものです。
HMV録音では、熟練作曲家になっていたバルトーク自身がピアノを弾いており、かなりの手直しがおこなわれていましたが、ここではそれを新しい録音で聴くことができます。
バルトーク: 「10のハンガリー民謡」 BB 43から(トラック27〜30)
バルトークがコダーイとの共同作業で生み出した「ハンガリー民謡集」第1集の続編である第2集は、1906年から1907年にかけてハンガリーの3つの地域で集めた民謡を収めています。しかし第1集の売上がふるわなかったことから出版が遅れ、全曲まとめた形での出版は2002年のことでした。ここでは4曲を選んで録音しています。
バルトーク: 「村の風景」 BB 87(トラック31〜35)
第1次大戦中の1915年から1916年にかけて当時ハンガリー領だったゾリョム(現スロヴァキア領)の村の女性たちから収集したスロヴァキア語の民謡を1924年にハンガリー語に翻訳して編曲し、1925年に初演、1927年に出版されています。濃厚かつワイルドな激しい曲調を含む面白い内容です。
演奏者について
カタリン・カーロイ(メゾソプラノ)
ハンガリー生まれ。ヴァイオリンを学んだ後、声楽をアンナ・パウク、ユリア・ハマリらに師事。その後、ラシェル・ヤカール、ルネ・ヤーコプスと共にヴェルサイユ・オペラ・スタジオを設立。20歳のときからソリストとして歌い、リサイタルを開催。ウィリアム・クリスティーやヘレヴェッヘ、エキルベイらの指揮でオペラ、オラトリオ、室内楽、世界初演のプロダクションなどに参加。
2000年、リゲティが彼女とアマディンダ打楽器グループのために作曲した「シーパル、ドッバル、ナーディヘゲデュヴェル」を作曲し、初演後、Teldecに録音。
CDは、Brilliant Classics、Teldec、Accord、Hungaroton、Stradivarius、Tundraなどから発売。

クラーラ・ヴュルツ(ピアノ)
ブダペスト生まれ。5歳からピアノを始め、6歳から14歳まではハンガリー放送児童合唱団に所属してツアー・メンバー兼器楽ソリストとして各国でのコンサートに出演し、歌だけでなくピアノで間奏曲も演奏。10歳の時には72公演の日本ツアーに参加してもいます(日本での名前はハンガリー少年少女合唱団でした)。14歳になるとリスト・フェレンツ音楽大学の才能ある子どもたちのクラスに入学。17歳からはゾルタン・コチシュや、ギョルギ・クルターグから教えを受け、1985年にミラノのエットーレ・ポッツォーリ・ピアノ・コンクールで優勝。1988年にはダブリン国際ピアノ・コンクールに出場し入賞。1989年にリスト・フェレンツ音楽大学を優秀な成績で卒業。
1991年、コロンビア・アーティスツと契約してアメリカに渡り38の州で100回以上のコンサートを実施。
ソロのほか室内楽でも活動し、アムステルダム・ピアノ三重奏団も結成。2003年、ハイティンク指揮ボストン響とカーネギー・ホールでモーツァルトを演奏したほか、モーツァルト・イヤーの2006年にはザルツブルク音楽祭でモーツァルトのピアノ・ソナタを演奏。
演奏活動のほか、ユトレヒト音楽院で教えてもいます。
CDは、Brilliant Classics、Globe、Regis、Arsisなどから発売。
収録作品と演奏者
ハンガリーの歌 (Hungarian Songs)
ギョルギ・リゲティ (György Ligeti)[1923-2006]
◆ ヴェレシュ歌曲集〜シャーンドル・ヴェレシュの詩による3つの歌曲 (Weöres-dal / Three songs on poems by Sándor Weöres)
1. 第1曲「月の踊り」 (Táncol a hold) 0:51
2. 第2曲「果実の房」 (Gyümölcs-fürt) 2:13
3. 第3曲「イカが大きな鳥と一緒にやってきた」 (Kalmár jött nagy madarakkal) 1:58
◆ 5つの黄金の歌〜ヤーノシュ・アラニーの詩による5つの歌曲 (Öt Arany-dal / Five songs on poems by János Arany)
4. 第1曲「いつわりの光」 (Csalfa sugár) 1:42
5. 第2曲「最も美しい花」 (A legszebb virág) 1:49
6. 第3曲「静かな歌から」 (A csendes dalokból) 0:55
7. 第4曲「隠れ家」 (A bujdosó) 2:57
8. 第5曲「悪魔が徴税吏を連れ去った」 (Az ördög elvitte a fináncot) 1:46
ゾルターン・コダーイ (Zoltán Kodály)[1882-1967]
◆ ハンガリー民謡集から (Magyar népzene)
9. 「高い岩に」 (Magos kősziklának) 4:04
10. 「鷹のような青春」 (Ifjúság, mint sólyommadár) 2:09
11. 「私はどこへ行くのか」 (Az hol én elmegyek) 3:23
12. 「わが星よ、わが水先案内人よ」 (Csillagom, révészem) 2:55
13. 「ヘンルーダの花が咲いたら」 (Magos a rutafa) 2:59
ベーラ・バルトーク (Béla Bartók)[1881-1945]
◆ 8つのハンガリー民謡 BB 47 (Nyolc magyar népdal)
14. 第1曲「黒い頭」 (Fekete főd) 1:16
15. 第2曲「わが神よ、わが神よ」 (Istenem, istenem) 1:19
16. 第3曲「女たちよ、女たちよ」 (Asszonyok, asszonyok) 0:58
17. 第4曲「私の心には多くの悲しみがあります」 (Annyi bánat az szűvemen) 1:08
18. 第5曲「私が外に出かけると」 (Ha kimegyek) 1:06
19. 第6曲「大森林の道を埋め尽くす」 (Töltik a nagy erdő útját) 1:20
20. 第7曲「仕事をしなければ」 (Eddig való dolgom) 1:39
21. 第8曲「雪が溶けていく」 (Olvad a hó) 1:01
◆ 5つのハンガリー民謡 (Öt magyar népdal) BB 97
22. 第1曲「私は故郷を去りました」 (Elindultam szép hazámról) 0:57
23. 第2曲「小船でティサ川を行く」 (Által mennék én a Tiszán ladikon) 0:47
24. 第3曲「ギュラ庭園で」 (A gyulai kert alatt) 1'00
25. 第4曲「小さなマルギッタ村はここから遠くない」 (Nem messze van ide kis Margitta) 2:12
26. 第5曲「タールカー二のはずれまで歩いて」 (Végigmentem a tárkányi) 0:43
◆ 10のハンガリー民謡 (Tíz magyar dal) BB 43より
27. 第1曲「ティサ川のこちら側と、ティサ川の向こう側」 (Tiszán innen, Tiszán túl) 2:01
28. 第2曲「森、谷、藪」 (Erdők, völgyek, szűk ligetek) 1:48
29. 第8曲「ねえ、私が兵士として連れて行かれたら」 (Sej, mikor engem katonának visznek)1:26
30. 第10曲「私の可愛い女の子」 (Kis kece lányom) 0:31
◆ 村の風景 (Falun)BB 87
31. 第1曲「干し草集め」 (Szénagyűjtéskor) 1:05
32. 第2曲「花嫁のところに」 (A menyasszonynál) 1:18
33. 第3曲「結婚式」 (Lakodalom) 2:39
34. 第4曲「子守唄」 (Bölcsőda) 3:53
35. 第5曲「独身最後のダンス」 (Legénytánc) 1:51
メゾソプラノ:
カタリン・カーロイ (Katalin Károlyi, mezzo-soprano)
ピアノ:
クラーラ・ヴュルツ (Klára Würtz, piano)
録音: 2018年6月27、28日、オランダ、スキーダム、ヴェストフェスト教会