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100枚の偉大なアルバム - No. 81

2004年3月4日 (木)

“歌うように吹き、吹くように歌う”Chet Bakerのプレイを正確に言い表したのは、チェットのプレイを究極の美学に標榜する、Love Notesのヒロ川嶋氏。

 まさに感情表現の原初ともいうべきその歌声は、50年近くの時間を経てもまったく輝きを失っていない。

 歌うことも演奏することも、全てが「チェット・イズム」だった1950年代。「Pacific Jazz Label」が与えたのは、Charlie Parkerのオーディションで頭角を現した期待のトランペッターに、歌を全面にフィーチャーしたアルバムを作らせることだった。そして、この作品が制作され、ジャズの歴史に一つのページが付け加えられたといっていいだろう。

 『Chet Baker Sings』は、トランペットの魅力に加えて、あのアンニュイな雰囲気を漂わせる歌声のおかげでジャズのフィールドを超えた人気を博したチェットの最大のヒット・アルバムとなった。最高の選曲と起承転結のはっきりしたプレイ、そして、何度聴いても耳の奥を刺激するユニセックスな声の魅力、その天真爛漫な人生も含めた、大きな意味でのスター、チェットの初期の最高傑作だ。

 そして、この作品には、続く話がある。後年、ステレオ・ヴァージョンがリミックスされ、それにはJoe Passのギターがオーヴァーダビングされた。賛否両論のこの「追加」だが、リズムギターとしての役割が、ややアンニュイだったチェットの演奏に、躍動感を与えアルバム全体が明るくなった。「もう一つのシングス」の誕生だ。

 そして、もうひとつ。10インチ時代の発売から、12インチLP、そして、再発時代になってからの「色違い」など、様々なコレクター的な興味を引く「好事家」向きのアルバムなのだ。

 もちろん、演奏・歌は、文句なく素晴らしい。ハードバップ全盛の少し前、ビバップの香りが残っていた時代に、チェットはすでに30年は進んだ感性を持って、ジャズを体現していた。思わず歌いだしたくなるチェットの歌は、「歌」が持っている本来の魅力を凝縮した心の歌を伝えてくれる。

 その影響はジャズ界だけに留まらず、クリス・モンテスやマイケル・フランクス等のソフト・ヴォーカル系にも広く及んでおり、近年活躍する日本のTOKUもそうした感性を持った一人に違いない。

 1950年代、マイルス・デイヴィスを人気投票のトップから引き摺りおろしたチェット・ベイカーこそは、ジャズを時代の先端へと推し進めた、もう一人の変革者だった。

※表示のポイント倍率は、
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

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Sings -Remaster (紙ジャケット)

CD

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Chet Baker

ユーザー評価 : 4点 (7件のレビュー) ★★★★☆

価格(税込) : ¥2,619
会員価格(税込) : ¥2,410

発売日:2001年07月25日

  • 販売終了

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