Top 100 Albums - No.45

2004年4月9日 (金)

数多く発表されているボブ・ディランの作品中から最高傑作を挙げろ、という問いがあったとしたら意見が分かれるのは当然だと思われるが、時代を限定すれば答え易くなるだろう。60年代の作品となれば一般的に『追憶のハイウェイ』『フリーホイーリン』ということになるだろう。 70年代の作品となれば、1975年発表の『血の轍』 (原題:『Blood On The Tracks』)ということで意見が一致するのではないだろうか(ディープなファンから人気の高い『地下室』は発表こそ75年だが、録音は60年代だし)。

74年8月にディランはCBCコロムビアと5年間の専属契約を交わした。推定契約金は当時の日本円にして約24億円(!)という噂もあった。そして1975年1月にディランの18作目のアルバムとして『血の轍』は発表された。発売と同時にアルバム・チャートの1位を記録したこの作品は70年代ディランの最高傑作と謳われる作品だ。

レコーディングは74年9月にニューヨークのA&Rスタジオで行われた。ユダヤ人たちの新年元旦にあたる9月16日、17、25日の3日間でレコーディングは完了した。74年11月の発売予定で、レコード会社によるプロモーション活動も既に行われていたが、発売直前になってアルバムの仕上がりに違和感を覚えたディランが楽曲に手直しを加えるため、完成していた数曲をレコーディングし直した。12月末、故郷のミネアポリスのスタジオで8月にレコーディングしたうちの6曲を再レコーディング。そしてその中から5曲が最終的に『血の轍』に収録された。新たにレコーディングをされたものはアコースティックなものから、ロックンロール・スタイルに変更になった。このときの未発表ヴァージョンは『ブートレッグ・シリーズ』『バイオグラフ』で聴くことが出来るので、興味のある方はぜひご一聴を(当サイトで試聴だけでも)。

ディランはアルバムの緻密さや整合性といったものに無頓着な人とされている向きがある。もちろん出来上がった作品にはある種の一貫性を感じ取れたり、同じ匂いがすることはあるが、何ヶ月もスタジオにこもってコンソールのつまみをイジリ倒すなどということは決してない。実際この『血の轍』も最初のレコーディングはたったの3日間で終了している。そんな彼がレコーディングをし直すというのも稀なことだったのではないだろうか。

曲調は軽快なロックンロールだが、歌詞の内容が離婚した男の 切ない話(自伝的なところもある?)の“ブルーにこんがらかって” 愛した女性が突然いなくなってしまう“運命のひとひねり” 妻サラ・ラウンズについて歌ったと思わせつつもきっぱりと否定した“きみは大きな存在” など、ネガティヴとまでは言わないけれどもどこか切なく、壊れてしまった人間関係を歌った歌が多いのも『血の轍』の特徴である。既にこの頃からサラとの離婚の前兆があったのかもしれない。

ディランは『血の轍』が傑作とされることに疑問を抱いているらしい。
ディラン曰く「あのアルバムでは苦しみを歌っているのに・・・」
・・・いやいや、でもそこがいいんですよ?!

因みにこの年の10月にディランは「ローリング・サンダー・レヴュー・ツアー」を行った。このときの模様はブートレッグ・シリーズの『ローリング・サンダー・レヴュー』として2002年にCD化されている。

※表示のポイント倍率は、
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

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Blood On The Tracks

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発売日:1987年07月07日

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