ジョヴァンニ・バッティスタ・ボノンチーニは、モデナとボローニャで活躍したヴァイオリニスト、作曲家のジョヴァンニ・マリア・ボノンチーニの息子として1670年にモデナで生まれましたが、8歳で孤児となり、ボローニャのサン・ペトロニオ大聖堂の楽長であったジョヴァンニ・パオロ・コロンナの下で音楽を学ぶことになりました。チェロと作曲を学んだボノンチーニはすぐに才能を開花させ、1685年には早くも3冊もの器楽作品集を出版しています。1687年には最初のオラトリオを作曲。数多く書かれた室内カンタータは出版され、イタリアのみならずフランス、イギリスにも名声を広めました。ローマで有力貴族コロンナ家に仕えた頃からオペラの作曲に傾注。その後ウィーン宮廷を経て1720年にロンドンへ移ったボノンチーニは、聴衆に熱狂を持って受け入れられました。
ティルスという王国の女王の結婚をめぐる恋愛と権力闘争を題材とする『アスタルト』は、1715年にローマで初演され、その後何度も上演された人気作で、オペラ作曲家としてのボノンチーニの頂点となる作品。これに特別な愛着を持っていた彼は、稀代のカストラートとして絶大な名声を誇っていたセネジーノのロンドン・デビューに『アスタルト』を選び、「セネジーノのためのオペラ」とすべく、レチタティーヴォやアリア、オーケストレーションを大きく見直し、それに伴い台本にも改変を加えました。こうして新しい姿となった『アスタルト』は1720年11月19日にロンドンのキングズ・シアターで上演されると、聴衆を熱狂させて大評判を巻き起こし、その後24回も上演されました。
この録音は、1720年の上演に基づく最新批判校訂版を使用したインスブルック古楽音楽祭での上演をライヴ収録したもの。クレアルコを歌うフランチェスカ・アショーティは、テレサ・ベルガンサに学んだ逸材。世界各地で主にバロック・オペラに出演し、圧倒的な歌唱能力で称賛されています。ここでもセネジーノの歌声が際立つように仕立て直された技巧的で美しいアリアを見事に聴かせてくれます。当時随一のソプラノ歌手としてヘンデルのお気に入りでもあったマルゲリータ・ドゥラスタンティが演じたエリザを歌うダラ・サヴィノヴァは、エストニア出身の実力派。気高い女王を迫力ある歌声で表現しています。
指揮を務めるステファノ・モンタナーリは、イタリアの老舗古楽団体アカデミア・ビザンチナで長年コンサートマスターを務めました。近年はその活動の中心を指揮に移し、バロックからベル・カントまで、幅広い時代のオペラの上演を手がけています。エネア・バロック・オーケストラは、フランチェスカ・アショーティが2018年に結成したローマの古楽オーケストラ。主に規模の大きなバロックの声楽作品をレパートリーとし、優れた指揮者たちとともに歴史に埋もれた傑作の掘り起こしを行っています。ステファノ・モンタナーリとは活動の初期から共演し、アドルフ・ハッセのオペラ『カオニアのエネア』の復活上演・録音をはじめ、知られざるバロック・オペラを現代に蘇らせています。
18世紀のロンドンの聴衆を熱狂させたボノンチーニの傑作オペラの復活上演を、実力派が集った圧巻の演奏でお楽しみください。(輸入元情報)
【収録情報】
● ボノンチーニ:歌劇『アスタルト』全曲(1720年ロンドン上演版)
使用楽譜:ジョヴァンニ・アンドレア・ゼーキによる批判校訂版(2022)
エリザ(ティロスの女王)/
ダラ・サヴィノヴァ(メゾ・ソプラノ)
クレアルコ(エリザに仕える大提督)/
フランチェスカ・アショーティ(アルト)
シドニア(王女)/
テオドーラ・ラフティス(ソプラノ)
ニーノ(貴族)/
パオラ・ヴァレンティーナ・モリナーリ(ソプラノ)
アジェノーレ(シドニアの兄弟)/
アナ・マリア・ラビン(ソプラノ)
フェニーチョ(クレアルコの父とされている人物)/
ルイジ・デ・ドナート(バス)
エネア・バロック・オーケストラ(古楽器使用)
ステファノ・モンタナーリ(指揮)
録音時期:2022年8月22,25,27日
録音場所:オーストリア、インスブルック(インスブルック古楽音楽祭)
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)