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『死化粧師オロスコ(完全版)』 釣崎清隆 インタビュー 第1回

Monday, March 10th 2008

無題ドキュメント 『死化粧師オロスコ』 釣崎清隆
 


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『死化粧師オロスコ』
2008年3月22日(土)アップリンクXにて、レイトショー!   
★上映終了後、釣崎監督と日替わりでゲストによるトークショー開催
★イベント情報の詳細は、こちらより



第1回 「オロスコの最後」


--- 『死化粧師オロスコ』が3月28日(金)にリリースされますが、こちらは1999年に制作されて、2000年の夏に劇場公開された作品ですが、2008年の現在、この作品の完全版がリリースされるということと、3月22日(土)から、アップリンクさんで公開されることになった経緯というのをお伺いしたいのですが・・・。

釣崎清隆(以下、釣崎) 経緯はですね、まああれなんですよね、2000年に上映したのもアップリンクさんなんですけど、その前から、アップリンクさんとこの『死化粧師オロスコ』は縁があって。もともとは、V&R プランニングっていう、AVの会社で僕が作ってたんですよ。「劇場公開しよう」ってことになって、東京はアップリンクさんでやって、大阪とか名古屋とかでも上映したんですけど。
 アップリンクさんでは、週末上映を1年間やらせてもらってて、ロングランで。でまあ、そこそこ、盛況って言ってもいいくらいの感じで終わらせてもらったんですけど。
 それで、DVD化っていう問題にぶち当たった時に、V&Rは、一般の販売ルートを持ってないっていうのと、「死体ビデオはもう撮るな」っていう風に、ビデ倫からきつく言われているっていう状況があって。一回脱退してたんですよね、ビデ倫から。でも、僕がこの『オロスコ』撮ってる時に、復帰しちゃって。復帰する時に念書かなんかで、「もう死体ビデオは作りません」みたいな感じだったと思うんですけど。V&Rとしばらく話ししたんですけど、金銭的に折り合いがつかないで、ちょっと宙に浮いたような状態で。で、まあ、ずるずるDVDにせずにいたっていう状況で。
 2年前に、ほんとに小規模なんですけど、自分で作って、インディペンデントで”ネット通販”みたいな形でやってたんですけど、やっぱり何か、去年『ジャンクフィルム』っていう作品をこれもアップリンクさんから販売して、それが結構ハケたっていうこともあったりして。
 そんな状況の時に、ここの社長の浅井さんが興味を示してくれてて、「アップリンクで出せばいいじゃん」って言ってくれて。やっぱり『オロスコ』も、「たくさんの人に観てもらいたいなあ」っていうのがあって。まあそれで、晴れてDVDを出すって感じで。
 99年に完成してますけど、クランクアップが98年なんですよ。そっから10年っていう。制作だけでも3年かかってて、そっから10年って感じですから、結構ね・・・。まあ、早くやんないとね、90年代のお話なんでね、僕みたいなおっさんからみれば、ついこないだなんですけど(笑)。若い人からみたら、かなりもう、古い話になっちゃうじゃないですか。なんで、このタイミングって感じですかね。

--- そのフロイラン・オロスコさんに会ったのが、1995年9月とありました。コロンビアの死体写真家、アルバロ・フェルナンデスさんに、エンバーミングの現場の撮影を勧められて、彼を紹介されたということですが・・・。

釣崎 まあさっき言った、V&Rの絡みで。最初は、「『オロスコ』っていう映画を撮るぞ」っていう感じで始まったわけじゃなくて、「『デスファイル』の新作を作る」ってなったんですけど、そのネタがないってことで、「何か撮ってきてよ」っていう風に言われたのが、彼と出会うきっかけですね。

--- そこからオロスコさんが亡くなるまで、3年間という期間で撮影されてますが、彼が亡くなったからこの作品を形にしようと思われたんですか?

釣崎 うーん、形にしようっていう風には、撮り始めて・・・そうですね、もうV回し始めたくらいから、「これは」って思ってた。どんな風になろうとも、形にしようとは思ってたんですよね。さっき言ったようなV&Rの状況があったりとかしても、やっぱり作品にしようっていう気はあったんで。
 何て言うんでしょうね・・・どういう形で終わるかなんて、ドキュメンタリーなんてわかんないじゃないですか。死んで終わるなんていう風には、全然俺も思ってなかったし。まだオロスコも、いくら最長老とはいえ歳もそんなにね?まあでも、撮ってるうちにどんどん、オロスコの調子が悪くなっていくっていう・・・経緯があるんですけど。

--- それは、釣崎さんが見ていてもわかるものでしたか?

釣崎 それはもう、わりと周りでも話題になってるんで・・・。で、まあ、(彼の死が)ちょうどいいタイミングって言ったらバチが当たりますけど、そういう変遷を終えたっていう感じですかね。

--- 彼の最期をフィルムに収めようとは思わなかったんですか?

釣崎 最期を撮ろうという風に思って撮ってないんでね。だって、死ぬタイミングにしても、はっきり言って偶然っていうか。死の現場には立ち会ってないんですよ、僕は。死んだ時には、コロンビアにはいたんですけど、あの街にはいなくて。
 ちょうどその頃にね、コロンビアで皆既日食があったんですよ。下馬評っていうか、インターネットの情報で、「でっかいレイブがある」みたいな話があって。「コロンビアで?」って感じだったんで、そこまで辿り着くバックパッカーとかレイバーは、大したもんだって思って。で、「ここだろうな」っていう街とかで待ってたんですけど、そんなものはなく(笑)。まあでも、皆既日食の現場にはいたかったし、撮りたかった。そのシーンも、『オロスコ』に入ってるんですけど。
 ちょうどその頃に死んだんですよ、オロスコは。ボゴタに戻ったら、実は死んだっていう・・・。だから、彼の死は後日談として聞いてるわけなんですけど、ほんと偶然で。
 日本でその情報を知るとか、その情報が回ってくるかすらも曖昧ですからね。まあそういう意味では、いいんだか悪いんだかっていう感じですけどね。
 僕ね、「死体に目が眩んで」って本を出してて、あれにも書いてあるんですけど、オロスコの佇まいっていうのがすごい強力なものがあって。なんかこう、不動の力強さみたいなのがあって。病気になって、体調が悪いんですけど、「死ぬことはないだろうな」っていう風に根拠はないけど、なんかそう思ってて。
 で、コロンビアっていうのは案外、みんなすぐいなくなったりとか、行方不明になったりするんですよね。”デサパルシードス”って言うんですけど。人間がこう本当に何ていうのかな、蒸発するようにすぐいなくなっちゃうっていう有名な国で(笑)。そのくらい、人間の価値がすごく希薄な国なんですよ。
 で、そういうのを見てるからその中にあって、オロスコの存在感っていうのは、めちゃくちゃ確固としたものがあって。だからもうそういう意味では、死んで終わるっていう風には、不思議なほどに予想しなかったんですよね。

--- 永遠の命があるんじゃないかって思わせてしまうくらい、神のような、圧倒的な存在感だったんですか?

釣崎 「永遠の命があるんじゃないか」・・・ってまでは思わないですけど(笑)、俺がもたないって思って(笑)。「どうやって終わらせよう」って、途中から考え出すじゃないですか。でもそんなこと考えても、寄り添うしかないわけで。こっちが予想しても、意味がないことじゃないですか。「どういうオチがつくんだろうな」って、自分でも思ったりしましたね。


第2回へつづく…

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