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『死化粧師 オロスコ(完全版)』 釣崎清隆 インタビュー 第3回

Monday, March 10th 2008

無題ドキュメント
『死化粧師オロスコ』 釣崎清隆


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『死化粧師オロスコ』
2008年3月22日(土)アップリンクXにて、レイトショー!
★上映終了後、釣崎監督と日替わりでゲストによるトークショー開催
★イベント情報の詳細は、こちらより



第3回 「生きてる人を映す鏡」


--- あの、実は、作品を拝見する前はですね、「ちゃんと観れるかな」ってどきどきしちゃってたんです(笑)。観た時間も夜中だった・・・っていうこともありましたし。ですが、本当にすごく美しいと思いまして・・・。でも、あの空気感はやっぱり、スチールでは伝わってこないものですよね。

釣崎 そうですね。役割りが違いますからね、映像と写真とでは。あれはやっぱり映像じゃないと、なかなか難しいと思いますね。

--- オロスコさんは死体をエンバーミングするという、”生きている被写体”になるわけですが、釣崎さんの中に「撮りたい」と思うものがあったとして、「これはスチールで撮りたい」とか「これは映像で撮りたい」っていうその判断というのは、感覚的なものですか?

釣崎 基本的にはそうなんですけど、もっと簡単な部分でもあったりとかして。もともと僕は、映像畑の出身で、写真とかってそれまで全く撮ったことないというか。映像やってる人には得てしてありえるんですけど、”スチールのことを差別する”っていうか、”バカにする”っていうかね。もう最初っから、高校生の時に自主映画を撮った頃から、写真とか全然興味がなくて。
 だからほんとに、AVメーカー辞めてからはずっと純粋に、死体しか撮ってないんですよね。なぜそうなのかって言うとそれは、仕事をもらったからなんですけど。それを受けたのは、まあ、死体は動かないじゃないですか?ほんと単純な理由で、「動かないものをなめるように撮ったところで、結局一緒じゃん」って思ったんですよ。思ったというか、成り立つじゃないですか、そういう考え方は。だから、「死体はスチールが向いてるんじゃないかな」っていう、ほんとに簡単な理由なんですけど。
  小っちゃい頃から大学生くらいの頃までずっと、死体のビデオとか、それこそV&Rが撮った『デスファイル』のシリーズとか、それこそ僕の小っちゃい頃とかは、グァルティエロ・ヤコペッティっていう、イタリアのショックメンタリーの作家の作品とかが大好きで、家族揃って観てるわけですけど。そういう意味で何ていうか、そういうものを観る目が肥えてるっていうか(笑)。むかしから好きだったんですよ。
  うちの親父がまた、労働者なんで。肉体労働者って、ああいうのがやっぱり、何か好きなんですよね。世界的にみてもそうですよね。労働者の文化です、大衆文化というか。 かねがね思ってたのは、特に『デスファイル』ですけど、すごい世話になってて批判的なのは申し訳ないんですけど(笑)、「動かない死体の現場を何でムービーで撮る必要があるんだろう?」って。生々しくて、写真より全然ショッキングに見えるんですけど、「いたずらにそうなってるだけなんじゃないかな」っていう気が何かしてて。
 実際に僕が現場に行くじゃないですか?「スチール向きだな」ってその時は思って、スチールの機材を持ってその現場に行った時に、死体をなめるように撮るよりも、「現場がおもしろいな」って思ったんですね、動いてる人たちが。1体の死体のために、何10人っていう大の大人が右往左往してて。1体の死体のためにですよ?いろんな商売の人も、野次馬もたくさんいるし。生きてる人たちがその死体に群がるわけですよ。で、いろんな感情で、それに対応するわけですよね?「そっちの方がおもしろいな」って思って。
  『オロスコ』もそういうことなんですよね。要するに、死体だけを穴が開くまで見ても、何も見えてこないんですよ。死体っていうのはある意味で、”生きてる人を映す鏡”だと思うんで、人が見て、「気持ち悪い」って思う奴は、「本人が気持ち悪いんだ」っていうね。なんかそういう風な見方も成り立つんじゃないかなって、最近は思うようになったんですよね。その時に、その人の人間性が見えてくるっていうか。死体に対応してやってる人間のそれぞれの対応の仕方っていうのは、非常に何かね、感動的なんですよね。まあ、いろんなリアクションがありますけどね。
 それの最たるものっていうか、オロスコっていう人は、そういう意味では”最も感動的な人”だったんですよね、僕にとっても。まあ人生そのものがね、すごいこう特殊な人なんで。”人殺しの贖罪で、死化粧をやってる”っていう。そういうのって、すごいじゃないですか?そんな人、日本にはいませんからね。

--- ”局部がモロに”映ってましたよね?あのシーンはDVDになる時に、NGにはならなかったですか?

釣崎 避けて通ってきました(笑)。でも大丈夫なんじゃないかな?こないだ裁判に勝ったし(笑)-----(2008年2月19日、最高裁判所において、アップリンク発行のメイプルソープ写真を浅井隆氏-アップリンク代表取締役-が国内に持ち込もうとして、国が輸入禁止をした処分の取り消しを求めた行政訴訟に勝訴) 。
 というかね、”猥褻物”かっていう判断でしょ?「死体の局部を猥褻物って言うのは、逆説的な意味で失礼だろ」っていう話しじゃないですかね。俺は、その考え方はよくわかんないんですけどね。でもなんかね、「死体だからOK」っていう言い方をする人が結構いるんですよね。
 最初は、V&Rががっつり関わってたんでNGだったんですけど、後半の方は、”モロ”でやってましたね。かえってエロ屋さんの方が、そういうことを気にしますね。特にV&Rは、痛い目に遭ってるんで(笑)。『デスファイル』の後半なんて、内臓にも”ケシ”が入ってましたしね。目線は入るし、内臓の”ケシ”は入るわで、もうそれこそ猥褻以外の何ものでもなくて、すごくいいんですよね(笑)。不自由で。まあ何ていうか、そこまでがんじがらめになると笑うしかないというか、逆にアートに見えてくるというか(笑)。
 でも僕はやっぱりね、嫌なんですよね、”ケシ”を入れるのはどうしても。それが嫌で、エロ業界から出たっていうところもありますし。でもその内側にいて、「直接戦ってないで何を言えるんだろう」っていう、後ろめたさもあるんですよね。まあでもAV業界は、今のところどうしようもないですからね。
 (『死化粧師オロスコ』の局部のシーンは)あえて撮ってるんですけどね、あの角度から。なぜかっていうとやっぱり、エロチックだからなんですよね。
 で、オロスコもそういう風にたぶん、思ってるんですよ。「女性の死体に服を着せるのが好きだ」って、堂々と言いますからね、あの人は。そういう倒錯的とも取れるような・・・でもそれは真実なんですよね。そういうことが何ていうか、性倒錯とかいうことじゃなくて、自然にそういうことなんだろうと思うし。
 なんて言っても、”エロス”と”タナトス”っていうのはすごくやっぱり、近い関係にあると思うし。現場にいるとね、そういうことがほんとに、ビンビン感じられるんですよね。だから自然と、そういう角度からっていうか、そういう表現になっちゃいますよね。


第4回へつづく…

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