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サカナクション 山口一郎『NIGHT FISHING』全曲解説!インタビュー

2008年2月5日 (火)

無題ドキュメント
サカナクション 山口一郎 インタビュ−
サカナクション:山口一郎
『NIGHT FISHING』全曲解説!インタビュー

インタビュー:保坂壮彦

 Contents
 


「『全曲解説』-イントロダクション-」


--- 「NIGHT FISHING」全曲解説ということで、今日はよろしくお願いします。

山口一郎(以下、山口) よろしくお願いします。

--- まず最初に、全曲解説に入る前に、今まで『NIGHT FISHING』について、様々なメディアにてインタビューを受けてきたと思いますが、その中でも一郎君が言い足りなかったことがあればそれを聞かせてもらいたいんですが。

山口 そうですね。まず色んなインタビューでよく聞かれたのは、 “山口一郎の音楽遍歴は?”ですね。それはそれで自分を振り返るきっかけになって良かったんですけど、それ以外でいまひとつ話しきれていないところというと、今回創った楽曲に対して、“何故今サカナクションがこのようなアプローチの仕方をしているのか?”というところですね。
 結成からここに至るまで複雑な過程を経てきたんだということも含めて。僕的にはそこを語るのがサカナクションにとって今、重要じゃないかなと思っています。

--- ならばそこを重点的に語ってもらえますか?

山口 サカナクションは、もともと僕と岩寺(G)しかいなかったんです。そこで、“どのような音楽表現をして行こうか?”と考えていたところ、いろんなメンバーが集まってきて、今のような形態になったんですが、最初は色んなサポートメンバーと演奏しながら、もう何をやっていいかわからない状態が続いていたんです。
  そこで、草刈(B)が正式にメンバーになってからサカナクションが大きく変わって行ったんですよ。一気にグルーヴが増したというか。

--- 草刈さんの存在は大きいですよね。

山口 そうですね。今まで、岩寺と、その後加入した岡崎(Key)が、“俺が、俺が”と、“私が、私が”という感じで、自己主張のぶつけ合いみたいな感じで。ギターとキーボードの上音がぶつかり合っていて。そんな状況の中、草刈が入ったことで、基礎ががっちり決まって。やはりサカナクションがひとつの塊になるきっかけになった草刈の存在はでかいですね。
  かといって、“サカナクションは草刈が凄い!”だけではなくて。岩寺の存在も凄く大きいですし。あいつが実はサカナクションのアレンジの裏の策士的な存在で。今回、「ナイトフィッシィングイズグッド」を創るときに一番貢献してくれたのは彼でしたからね。

--- では、何故、今、サカナクションはこのようなクラブ・ミュージック的アプローチの手法を持ち込んでいるのでしょうか?

山口 僕は本当に雑食な人間で。色んな音楽を聴いてきて。たまたま今、電子音楽的な、クラブ・ミュージック的な音楽を聴いるだけなので、実は、“サカナクションが、今、新しいクラブ・ミュージックを産み出した!”とか言われると怖いんですよ(笑)。
  だって、今はこういう音楽を演っているけど、次はやらないかもしれないですから。そういう気持ちが常にあるから。もっともっと新しい音楽的挑戦をしていこうとしているメンバーが集まっているのに、クラブ・ミュージック的なという側面だけで語られるのはちょっと…。

--- そうですよね。僕はこの『NIGHT FISHING』を全て聴き終えたときに正直ほっとしたんですよ(笑)。アルバム全部がクラブ・ミュージック寄りの楽曲で埋め尽くされていたらどうしようかと思っていたので。

山口 そうですね。1stアルバム『GO TO THE FUTURE』のときも、今回の『NIGHT FISHING』でもミドルテンポのロックのようなアプローチをした楽曲や、歌をフューチャーした楽曲を入れないと絶対駄目だという意識がありましたから。だからクラブ・ミュージック的な側面だけでなく、今回のアルバムにはよりアンビエントかつフォークな要素もあるというか。そういうところで新しいチャレンジをしていかなければいけないなという感じでしたね。
  僕らと同じ北海道出身のバンドで、sleepy.ab(注:1)というバンドがいるじゃないですか? 彼らもアンビエントな要素を取り入れてるけど、僕らはもっとミドルテンポのロックでそのような表現をもっと追求出来たらいいなって思っていて。四つ打ちのポップ・ロックだけというのとは違うところで勝負出来ればいいなって思っているんですよね。
  その部分が評価されてはじめて、僕のソングライティングというか、原曲に対する評価がされる時なんじゃないかなって思っているんです。今は、まだまだアレンジでごまかしている部分もありますからね。

--- いや、原曲に対しての評価はもっとあってもいいと思いますよ? サカナクションの楽曲を聴いて、一音ずつ上側の音を剥がしとっていって辿り着く根本のメロディーの奥深さには素晴らしいものがあると思っていますよ。

山口 ありがとうございます。

--- 改めて振り返ると、1st『GO TO THE FUTURE』から『NIGHT FISHING』に至るまでの期間ってかなり短かったかと思うんですけど、かなり大変な作業だったんじゃないですか?

山口 そうだったんですよ。ていうか、僕自身、もともと原曲を創る作業というのがとても辛くて遅くて。で、実は今回のアルバムの曲を創る課程で、一度、倒れたんですよ (笑)。曲創っているときに頭が痛くなって、動けなくなって、救急車で運ばれたんですよ(笑)。
  きっと、“曲を創らなければいけない”というのと、“曲が出来ない”というプレッシャーだったと思うんですけどね。でも、倒れたことによって、“あ、俺って限界超えてたんだ”ってことがそこで解ったんで良かったんですけど。

--- 中途半端に限界ギリギリで切り抜けてしまうよりも、一度限界を突き抜けたほうが楽になるということで (笑)。

山口 そう(笑)。一度メーターを振り切っちゃえばね。またゼロからはじまれるから。それで本当に楽曲を創れるようになったんですよ。倒れる直前までは、なんか、スタッフにも大衆的にもある程度答えなければならないっていう。いい曲を狙って創ろうとしていたんですよ。
  でも倒れてからは、“いいじゃん、そんなの。自分が好きなことやればいいじゃん”ってなれたから。気が楽になりましたね。振り切れたから。

--- なるほど。それでは、そのような課程を経て生まれ落ちた作品、『NIGHT FISHING』の全曲解説を始めましょう!

山口 はい!


「ワード」へ続く・・・

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 Profile

山口一郎(Vo&G)
岩寺基晴(G)
草刈愛美(B)
岡崎英美(Key)
江島啓一(Dr)

 

 注釈

(注:1)
sleepy.ab
札幌を中心に活動するバンド。ノスタルジックで抒情的な音世界は、ポストロックや電子音楽というフォーマット以前に札幌という静謐な土地の感覚を呼び起こす唯一無二の存在感。

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