-Calmさんの作品(楽曲、アートワークを含め)からは、往々にして「開放的」なイメージを抱くのですが、やはりPharoah Sanders、John Coltrane、Sun Ra作品といったところからのインスピレーションが大きかったりするのでしょうか?
「元々自分の中ではジャズを(下地などにして)やっているという意識は全然なくて、そういった人達の影響を作り込んでやろうという気も全くなかったんですよね。でも、自然と出てくるものっていうのはあったのかなと。そういう意味では、Pahroah Sandersとか、ああいった人達の、所謂「スピリチュアル」って呼ばれているような楽曲の中のものにすごく惹かれていたんで、そういう影響は出ているのかなっていう気はしますね」
-初めてPharoahなどを耳にしたっていうのはいつ頃だったのでしょうか?
「John Coltraneだとか、Miles Davisは、ラジオでよくかかっていたんですけど、やっぱりPharoah Sandersは、あまりかかっている機会がなかったんですよ。だから、Coltraneとかの流れで自然にPharoahに行ったという感じで。それこそ、レコード屋にものすごい通っていた時期ですね」
-アートワークという点で、ご自身の作品(ジャケット・アート)に直接影響を与えたジャケットなど
はありますか?
「そうですね。ちょうどブルーノートのリヴァイヴァルが初めて起こった、所謂「ジャズで踊る」みたいな時代があったじゃないですか。Prestigeとかが流行った。あの時代には、やっぱりジャズのジャケットワークは、本なんかを含めてよく見ていましたけどね。(自身の作品への)影響という点では、自分の中ではそんなにはないという気がするんですよ。アートワークに関しては、結構、デザイナーの藤田さんにお任せしているんで。もちろんイメージとかは伝えるんですけど。多分、その中にジャズの要素とかって、あまり入ってないんじゃないかなぁ。たまに、ブルーノートっぽいフォントで、みたいな話はするんですけど。だから、すごい影響を受けてアルバムのアートワークに出したっていうことはないですね」
-では、ご自身の作品には関係なく、純粋に衝撃を受けたジャケットというと?
「やっぱりね、ブルーノートのものってすごいなと思って。基本なんですよね、あのレーベルのジャケットは全般的に。スタイリッシュで、クールで、すごいかっこいいいなぁと思って。で、その辺(ブルーノート作品)を見ていた後に、急にインディペンデントな、Strataとか、Tribeレーベルとかのジャケを見ると、ものすごいな!っていう(笑)。」
-レコ屋通いをされていた当時は、最初はブルーノート、Prestigeあたりを掘って、その後いきなりStrataなどのレコードを買うような流れが普通だったのでしょうか?
「ちょうど大学卒業間際にロンドンに行って、その時に(ロンドンのレコード屋などでは)ジャズがすごく盛り上がっていて、そこでまだ掘り下げられるものがブワァーッとあったんですよ。そこで、Strataなどを含めて、かなり色々なものを吸収した感じだったんです。」
-当時のロンドンのジャズを含むダンス・シーンはすごかったのでしょうか?
「すごかったですね。セカンド・サマー・オブ・ラヴとか、アシッド・ジャズとかが終わりかけていて、一方では、ハード・ハウスなんかが盛り上がっていて。で、また一方では、そういった「ジャズで踊る」みたいな流れの人達によるイベントがあって。それと、ドラムンベースやダブなんかも出始めてきた感じでしたね。ヒップホップは意外と遅くて、まだガツンとはきてなかったと思います。その中でも、ジャズ系のイベントとかには、よく行ってた気がしますね。あとは、テクノ、ハウス、レゲエかな」
「それぞれのイベントは、来ている人種も違うんで、盛り上がり方も全く違いましたね。ジャズのイベントだと、ちょっとオシャレでスタイリッシュな感じの、美容師とか、デザイナーとか、服屋で働いているような人達みたいなのが多かったですね」