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『死化粧師 オロスコ(完全版)』 釣崎清隆 インタビュー 第2回

Monday, March 10th 2008

無題ドキュメント
『死化粧師オロスコ』 釣崎清隆


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『死化粧師オロスコ』
2008年3月22日(土)アップリンクXにて、レイトショー!
★上映終了後、釣崎監督と日替わりでゲストによるトークショー開催
★イベント情報の詳細は、こちらより



第2回 「負の磁場の集積されたような場所」


--- オロスコさんが亡くなったということで、3年間という期間で一応の区切りがついたわけですが、その期間というのは、コロンビアにずっと滞在されていたんですか?

釣崎 行ったりきたりでしたね。僕が行く国っていうのは、コロンビアだけじゃなかったりしますし、世界中廻ってるんで。あの頃は年に3回くらいコロンビアに行って、出たり入ったりしてたんですけど。だから本当、タイミングによるというか。都合するとどのくらいだろうな、3ヶ月くらいですかね。

--- 全体のフィルムは、その3ヶ月くらいの滞在の中で、どのくらいの時間になったんですか?

釣崎 うーん、100時間くらいですかね。あれなんですよ、とにかくほんとに危ない場所なんで、カメラを出せないし、まず。いくつもそういう、キャッチなシーンを逃したりはしてますよね。
 やっぱね、何て言っても、世界で一番危険な国だっていう。その中の”泥棒の巣窟”に行ってるんで。なかなか本当に、ずっとカメラを回したり、「ここだ!」ってところを押さえることは難しいですよね。
 僕一応ね、パスポートサイズのハンディカムみたいな、ちっちゃいカメラを使ってやってたんですけど、ああいうの、コロンビアに売ってないんですよ。銀色のぴかぴかした縦長の、とてもビデオカメラに見えないものでもやっぱり、向こうのホームレスとかは、「あれはカメラだ!」ってわかるんですよね、本能で。「高価なものだ」っていうのは、少なくともね。カメラを出した瞬間に、必ずギロって見ますからね。それでも距離感を見計らって、撮るわけですけどね。
 そう、だから、カメラをぶっ壊されても困るけど、かっぱらわれて素材がなくなるのが、一番こわいわけで。ただでさえ、素材、そんなに時間数回せない中でやってるから。

--- その100時間くらいあるフィルムの中で、『死化粧師オロスコ』は2時間弱の作品に編集されていますが、編集で一番大事にされたというか、どういう点を考えて編集されたのかなあと思いまして・・・。

釣崎 まあテーマとしてはまず本線で、”オロスコの日常”っていうか、はっきり言って、毎日毎日仕事の繰り返しなんですよ。それって一応、コロンビアの刺激的な日常なんだけど、ある意味、“退屈な暴力的な日常”っていうか。”日常生活の中の仕事”っていうことに託して描きたいっていうテーマが、まず一つあって。 音楽も自分たちで作ってるんですけど、ほんとにもう、ミニマルのループみたいなそういう、「延々と地獄のように繰り返す、繰り返しっていうのをやろう」ってことで。そういう部分に気を遣うっていうか、考えながら編集しましたね。

--- 死体をエンバームしていくオロスコさんを観ていても、ドキュメンタリーであるのに、コロンビアのボゴタで実際に行なわれているとは信じられないような、現実ではないように映りました。

釣崎 どっちにしろ、現実を表現できるわけがないので、少なくてもバーチャルな形ですから。あとやっぱり、意図はしてますよ?(笑)。「露骨になるべく撮ること、表現することでかえって、現実感のない感じにしよう」っていうね。それは一応、目論みは目論みなんですよね。で、それが一番、コロンビアの特性みたいなのにつながってて。
 コロンビアって国はもう極端すぎて、ほんとにもう、”ファンタジーの世界”なんですよ。ガルシア・マルケスの世界そのまんまっていうか。ガルシア・マルケスの作品に対して、「よくあんなの書けるよね」って人がいるけど、コロンビアってほんとああいう国なんですよね。ほんとにそういうことが起こってる、奇跡的なことがね。
 特に僕は地球の反対側から来てるから、その自然さみたいなことが、非常にミラクルな感じなんですよね。現地の人はそれに慣れちゃってる、それが普通だから、無頓着というか気付かなかったりして。
 たとえばその、エル・カルトゥーチョ(火薬庫)っていう場所がありますけど、あそこはやっぱり彼らは、コロンビアの一部としか思ってないのね。だからあそこに入って、カメラを廻すってこともないし。「撮るだけ損だ」って思ってるのね。だってね、いたずらに危険に晒すだけだから。
 僕らにすれば、”負の磁場の集積されたような場所”なんでね、そうそうお目にかかれないっていうか、「遠くまで来てよかった」みたいな感じですよね。で、そう、当初から死体写真を撮るっていう目的っていうか、意識してやってたことっていうのは、まあ、「きれいに撮ろう」っていうか、”美の表現”として、”死体を素材に扱う”っていう風に思ってやってたし。そういう、「暴力の本質みたいなものを美しく表現できれば・・・」って思ってたから、これはある意味で、その形の一つだなって思いましたね。

--- 先ほどもお話しされていましたが、オロスコさんはやっぱり、特別な存在でしたか?

釣崎 うーん、そうですね、僕から見れば、最初から違ったというか。でも、そこにずっと住んでる人だし、ネイティブの人からすると、いて当然っていうか、そこにいて当然の面構えというか(笑)。逆に言えば、そこにしかいないようなタイプの人間ですよね。だからそうですね、いてもなかなかいないっていうのは確かですね、彼みたいな人は。
 『オロスコ』っていう作品は、”日本人の僕らが撮れた作品”だって言えると思うんですよ。オロスコの発見っていうのは、アルバロ・フェルナンデスは僕より全然前から、オロスコのこと知ってるし。彼は死体関係の情報なんかも持ってるし、マフィアとの付き合いもあるんで、これから起こる死の情報も握ってるっていう。で、その情報を買って、その情報に基づいて現場に行くんですけど。そういう付き合い以上でも以下でもなかったんですよ、アルバロとは。

--- 作品を拝見していて、初めは本当に目を背けたくなるようなシーンの連続だったんですが、だんだんと目が慣れてきて・・・。そうすると今度は、オロスコさんのエンバーミングをしているとは思えないような、美しい動きにみとれてしまったんですよね。映画の中でもう一人、エンバーマーの方、ウィパーさんと比べるとよけいに、オロスコさんのお仕事というのが美しかったり、丁寧な感じがすごくしたんです。

釣崎 なんか、あれですよね。愛情がこもってるっていうかね。それは”人間性の問題”もあると思うんですけどね。だけど今おっしゃったポイントはすごく重要なことで、もちろん、エンバーマーのウィパーっていうのは、テクニックは持ってる人で。
 要するにオロスコっていうのは、貧しい人たちのために最低限のサービスを最小限のお金で提供するっていうスタンスなんですよ。で、ウィパーの方は技術を持ってるから、中産階級より上くらいの人向けに、ちゃんとしたエンバーミングを・・・ちゃんとしたというか、まあ1ヶ月とか葬式やらないで、家の中に置いとかなきゃいけないっていう事情があったりする死体とか、そういう状況にも対応できるっていう人なんですね。
 基本的に”人間性の問題”もあるし、”死体に対する愛情”とか、”死者に対するシンパシー”が全然違うんですよね。それが美しいっていうか・・・それはほんとに、その通りだと思いますね。

--- もう空気が全然違うなって思いました。

釣崎 僕自身、撮っててそういう気持ちになって撮ってるから、それも加味したら、やっぱりそういうことになってると思うんですけどね。まあでも、ちゃんとそういう風に見えてるんだなって思って、安心しました(笑)。


第3回へつづく…

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