スクロヴァチェフスキ&読売日響〜『英雄』&『ジュピター』
2004年3月12日 (金)
スクロヴァチェフスキ&読売日響
『私にとっては、ライヴ録音の方が、100%完璧なスタジオ録音よりも、ずっと面白いのです』(スクロヴァチェフスキ)
巨匠初の「エロイカ」と「ジュピター」レコーディング――凝縮された響きで作品の本質を抉り出す、スクロヴァチェフスキならではの2大名曲大名演登場。ディスコグラフィ、初来日時インタヴュー、公演記録を掲載した充実の24ページ解説書つき!
ここ数年間における、ARTE NOVAレーベルからの「ブルックナー:交響曲全集」の発売と、NHK交響楽団および読売日本交響楽団への数々の客演指揮によって、日本のクラシック音楽ファンの中で、ブルックナーをはじめとするレパートリーで巨匠としての確固たる人気を獲得したスタニスラフ・スクロヴァチェフスキ。昨年11月のザールブリュッケン放送交響楽団との来日公演におけるブルックナー解釈の見事さも記憶に新しいが、80歳をむかえたこの名指揮者は、ギュンター・ヴァントや朝比奈隆が世を去り、クルト・ザンデルリンクが引退した指揮界にあって、その豊富な経験と絶妙なオーケストラ・トレーニング能力、そして作曲家としての独自の視点からの音楽解釈において楽団員からも厚い尊敬の念を集め、矍鑠として世界各地のオーケストラへ客演を続けている。
2004年4月には、NHK交響楽団の定期公演で、3つのオール・ベートーヴェン・プログラムを指揮することになっており、ブルックナーの交響曲全曲録音を完成させた巨匠の次なるターゲットがベートーヴェンであることを伺わせている。それに合わせたタイミングで今回発売するアルバムは、2002年9月にスクロヴァチェフスキが読売日本交響楽団へ客演し、定期演奏会と特別演奏会で3つのプログラムを指揮した演奏の中からセレクトしたもので、これまでスクロヴァチェフスキが録音していなかったモーツァルトの「ジュピター」とベートーヴェンの「英雄」という古典派交響曲2曲による要注目のカップリング。
2000年との初共演以来、「相思相愛の仲」となった読売日響について、スクロヴァチェフスキ自身、「前回とはオーケストラのレヴェルが違う。このようにオーケストラの能力が向上すれば、より深く音楽を追求できるのです」と語っているだけに、ここでも息のあった演奏を聴くことが出来る。読売日響は、1998年に音楽監督に就任したゲルト・アルブレヒトの強力なリーダーシップのもとで、ベートーヴェンやブラームスの交響曲全集のCD録音も含め充実した活動を続け、2002年には創立40周年を祝っている名オーケストラ。その最新の成果がこのスクロヴァチェフスキとの演奏に結実している。
1960年代から始まる長い録音歴を持つスクロヴァチェフスキであるが、モーツァルトとベートーヴェンの交響曲はこれまでスタジオ録音を残していない(モーツァルトでは、ワルター・クリーンとのピアノ協奏曲2曲、ベートーヴェンでは序曲全集が、ミネソタ管弦楽団と録音されている)。日本では、これまでN響と交響曲第5番・第9番、レオノーレ序曲第2番などを演奏しているが、「英雄」は2002年9月の読売日響との演奏会で初めて取り上げた。「この作品はあちこちに出てくるスフォルツァンドを演奏しわけるのが難しいし、対位法も非常に込み入っているが、今回の読売日響との演奏ではそれを細部まで徹底でき、いい出来になると思う」とスクロヴァチェフスキ自身が語っていたとおり、透明な響きの中で、アクセントやスフォルツァンドを強調した筋肉質の演奏は、ベートーヴェンを現代に蘇らせるかのような新鮮な魅力を湛えている。ベーレンライター原典版によるスクロヴァチェフスキ自身のパート譜が使用されている。また、「ジュピター」では、弦楽パートを減らし、この交響曲に不可欠な対位法的要素を徹底的に追求した名演を成し遂げている。
『ミスターSは職人の中の名職人であり、いちばんの特徴は各楽器、各楽想を緻密な分析とリハーサルによって、くっきりと、しかも渋さを失わずに表出する事で、その表現は老練の一語に尽きる。(…)熟し切った味わいはさすがというか、今や他の指揮者からは絶対に求め得ないものであった』(宇野功芳「音楽の友」2002年11月号)
録音は、オーディオファイルの間で高い評価を得ているEXTONレーベルのオクタヴィア・レコードのスタッフが担当、ライヴならではの臨場感と、オーケストラ各パートの明瞭で美しいバランス感を両立させた名録音に仕上がっている。
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ プロフィール
1923年10月3日、ポーランドのルヴォフ生まれ。4歳からピアノをヴァイオリンを始め、5歳の時に最初のオーケストラ作品を作曲し、8歳の時には序曲がルヴォフ・フィルハーモニーによって演奏されている。11歳の時にピアニストとしてデビュー、その2年後にはベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を弾き振りするなどの神童ぶりを発揮した。しかし第2次大戦中の爆撃で手を負傷したため、指揮と作曲に専念することを決心。1947年にはパリに赴き、パウル・クレツキに指揮を、ナディア・ブーランジェに作曲を学ぶことになる。
1946年ブレスラウ・フィルを指揮して正式にデビューし、カトヴィツェのポーランド国立放送管弦楽団(1949-1954)、クラコフ・フィルハーモニー管弦楽団(1955-1956)のポストを歴任し、1956年のローマ指揮コンクールの優勝後、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団の指揮者に就任している(1957-1959)。
ジョージ・セルの招きを受けて、1958年にクリーヴランド管弦楽団を指揮してアメリカ・デビューを果たして大成功を収める。それを受けて1959年にはドラティの後任としてミネアポリス交響楽団(1968年にミネソタ管弦楽団と改称)の音楽監督に就任(1979年まで)、1966年にはアメリカ国籍を取得している。1964年にはウィーン国立歌劇場(ベートーヴェン「フィデリオ」)、1968年にはザルツブルク音楽祭(祝祭小劇場。ウィーン・フィル/ルトスワフスキ:管弦楽のための協奏曲、ショパン:ピアノ協奏曲第1番[ワイセンベルク]、ドヴォルザーク:交響曲第7番)、1970年にはメトロポリタン歌劇場にデビューし、欧米各地のオーケストラに客演した。
1984年〜1992年にハレ管弦楽団の首席指揮者をつとめた後はフリーランスとなり、古巣のミネソタ管弦楽団(桂冠指揮者)、それに1990年代になって密接となったザールブリュッケン放送交響楽団(首席客演指揮者)を中心に、世界各地のオーケストラに客演している。
録音面では、ミネアポリス〜ミネソタ時代に、マーキュリーおよびVOXに数多くの名演を残す一方、ルービンシュタイン(ショパンのピアノ協奏曲第1番、RCA)やワイセンベルク(ショパンのピアノ・オーケストラ作品全集、EMI)、バッカウアー(ブラームスの2番とベートーヴェンの5番、マーキュリー)などと協奏曲の名伴奏を録音している。ハレ管弦楽団時代にはブラームスの交響曲全集、ブルックナー、マーラー、ショスタコーヴィチの交響曲などをイギリスのPickwickレーベルに録音し、1990年代には、彼のライフワークとでもいうべきブルックナーの交響曲全集をザールブリュッケン放送交響楽団と完成させている(旧Arte Novaレーベル)。
読売日本交響楽団
財団法人読売日本交響楽団は、世界最高の発行部数を誇る読売新聞社と日本最初の民間テレビ局である日本テレビ放送網(NTV)、大阪に本拠を置く読売テレビ(YTV)という日本を代表するマスコミ3社が母体となり、1962年4月に発足した。わが国におけるオーケストラ音楽の振興と普及のために、内外のすぐれた奏者を迎えて結成された。同年9月、アメリカから迎えた、初代常任指揮者ウィリス・ページによって、最初の公演を開催。
結成翌年の1963年2月にはハチャトゥリアンの指揮、レオニード・コーガンのヴァイオリンによる特別公演が国際的な話題を呼ぶなど、ただちに日本を代表するオーケストラとして認められた。1960〜70年代にはストコフスキー、シュミット=イッセルシュテット、ヴァン・オッテルロー、ドラティ、ヴァント、チェリビダッケ、バルシャイ、ザンデルリンク、マズア、ロジェストヴェンスキー、フリューベック・デ・ブルゴス、ボド、コシュラーといった名匠を定期的に招くとともに、当時気鋭のインバル、デュトワ、メータとも共演している。
20世紀・現代音楽にも意欲的で、1967年には、若杉弘の指揮でシェーンベルクの〈グレの歌〉、68年にはペンデレツキの〈ルカ受難曲〉をそれぞれ日本初演。後者は日本のオーケストラ史上初の「芸術祭賞」に輝いた。69年にはルトスワフスキの〈オーケストラのための協奏曲〉をヴァン・オッテルローの指揮で日本初演。また、79年から始まった、ロジェストヴェンスキー指揮によるショスタコーヴィチ交響曲全15曲の演奏を95年に完結。同一指揮者、同一オーケストラ、同一都市での全曲演奏は世界初。
80〜90年代もマゼール、ロストロポーヴィチ、ロジェストヴェンスキー、ボド、サンティ、ベルティーニ、フォンクらを客演に迎え、活発な演奏活動を繰り広げ、92年11月の第300回定期公演では、コシュラーの指揮でマーラーの〈一千人の交響曲〉を演奏した。近年もテイトやテミルカーノフなどの大物指揮者の招へいが相次いでいる。1962年、読売新聞社、日本テレビと読売テレビにより創設。常任指揮者はウィリス・ページ、オットー・マッツェラート、若杉弘。
1998年4月から、常任指揮者にドイツの巨匠ゲルト・アルブレヒトを迎え、音楽性とアンサンブルのさらなる充実をはかる。名誉指揮者にクルト・ザンデルリンク、クルト・マズア、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー、ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス、名誉客演指揮者に尾高忠明と、いずれも世界第一級の巨匠を擁している。 (以上、BMG)
■モーツァルト:交響曲第41番ハ長調 K.551 「ジュピター」
■ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調 Op.55 「英雄」
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮読売日本交響楽団
録音:2002年9月20日&21日(モーツァルト)、9月26日&28日(ベートーヴェン)、サントリーホールおよび東京芸術劇場でのライヴ・レコーディング
交響曲最新商品・チケット情報
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ベートーヴェン『英雄』&モーツァルト『ジュピター』 スクロヴァチェフスキ&読売日響
Beethoven / Mozart
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スクロヴァチェフスキ
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