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Review List of 千葉のアリアドネ 

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  • 4 people agree with this review
     2010/01/17

    まずドリームライフさんに深く感謝。本当に鶴首して待った。これで我々は20世紀のモーツァルト演奏を代表するベームのコジの、音楽の美だけでなく、オペラとしての愉しさも十分味わえるようになった。人はそれでも言うだろうか、やはりフィオルディリージはシュワルツコップフだ、ベームのデスピーナはグリストでは、フェルランドはシュライヤーで観たかった、レンネルトの演出でライブで・・・それらをみんな認めたうえでこう言おう。「最高、至高、完璧」と。ヤノヴィッツ(32歳)No.4でAh,guarda,sorella・・・と歌い出すところの声の美しさ。ルートヴィヒ(45)、プライ(40)、ベリー(40)全盛期の歌も演技も感嘆する他はない。アルバ(42)(アバドのセヴィリアCD、DVD)、若き日の美貌のミリャコヴィチ(ベームのフィデリオDVDのマルツェリーネ、クライバー94年の薔薇のマリアンネ-相当逞しくなられた)も高水準で、重唱が決め手の曲にこの布陣は超強力。演出は常套的だが曲の理解を助けこそすれ、声高な押し付けで破壊したりはしない。そしてベーム(75)の指揮。VPO。凛とした造形と美の中に、人間の性(さが)を、エキセントリックな強調でなく、愛情をもって生き生きと描き尽していく。演奏者全員にみなぎる確信と自信。彼らは最高の演奏を世に残そうという強い共通の意思に結ばれていたのではないか。結語を結ぼう。21世紀に通じる「最高のコジ、最高のモーツァルト、最高のクラシック音楽」と。

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  • 8 people agree with this review
     2010/01/16

    傑出した指揮者、名歌手による最高の「魔弾」。72年5月28日、大反響を巻き起こしたヴィーン国立歌劇場の何と戦後初上演(フォルクスオーパーでは「2回」上演あり)のプレミエの記録。シェンクの名舞台(狼谷の場面が特に素晴らしかったという)を見られないのは残念だが、オペラティックな雰囲気満載(序曲-聴衆大拍手-冒頭の合唱部分-ここまで聞けばもう完全にこちらも「芝居の中」)の音楽だけでも、当日の席に身を置いたがごとき気分になる素晴らしいCDだ。1発ライブとは思えない程の精緻な演奏はベームの厳格なレッスンによるというが、それが音楽を窒息させるのでなく、演奏者の自発性を伴いつつ、人間感情の豊かな起伏、雄弁なドラマへと高揚していく様は正にベームの「天才」を示す。オケがまたウェーバーの初期ロマン派の魅力を完璧に表現(ホルンの威力絶大)。歌手も特に絶賛されたヤノビッツ(気品と美しい声!)はじめ、リッダーブッシュ、ホルム(ベームのこうもりDVDのアデーレでお馴染み)、クラス等も素晴らしい。唯一キングだけが本調子ではないのが残念ではあるが、演奏に傷をつける程ではない。「魔弾」はちょっとと思っている方にも是非お勧めしたい。録音も良い。

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  • 12 people agree with this review
     2010/01/11

    ニルソンは自叙伝で言う。「多くの、正確には33人の優れたトリスタン指揮者と歌ってきた。なかでもカール・ベームの音楽解釈に及ぶ人は誰もいないと断言できる。それは初めから終わりまでまるで一つの愛の告白であった」(「ビルギット・ニルソン オペラに捧げた生涯」春秋社2008 P308)。62年以降ヴィーラントの演出(本当にこの舞台を見たかった。もう少し写真でも残っていないのか)により、新バイロイトの頂点と讃えられた演奏の記録だが、特に二人の「あてこすり」のやりとりから媚薬を飲む終盤への精緻且つドラマチックな音楽展開が素晴らしい第一幕、前奏曲の深い情感から、仰ぎ見るスケールと格調を持って愛の死へ進む第3幕の感銘は言葉にならない。再びニルソンの言葉を借りよう。67年12月のウィーン国立歌劇場のトリスタンについて「彼はこのオーケストラからは予想もしないようなトリスタンの音色をひきだせることを知っていた。新聞はフルトヴェングラー以降聞いたことのない完璧な演奏と絶賛した」(一部略同242P)。我々はまだベームのトリスタンの魅力の半分しか知らないのではないだろうか。没後30周年(2011)を前に、是非ベームとヴィーン国立歌劇場のワーグナーを発掘して欲しい。

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  • 10 people agree with this review
     2010/01/09

    長年の思いを叶えてくれたOrfeoには本当に感謝。初演100年記念の当公演はヴィーラントの生前からベームの指揮が決まっていたが、歌手陣はベリー事件はじめ変動があり、当キャストで初日を迎えた。音楽面では大絶賛だったとのことだが、何と言っても素晴らしいのはベームの指揮。重厚さはあるが、ドロドロしない爽やかなロマン性に満ち、早めかつ起伏の巧みな運びで4時間をまったく飽きさせない。合唱の入る部分の精彩はこの曲でも顕著。また第3幕前奏曲が特に感動的。アダム(42歳)は70年のカラヤン盤での名唱にはまだ及ばないが、終盤に向け健闘。クメント(39)は抒情的ワルターを熱演。ジョーンズ(32)の強い声はこの役向きではないと思う(やはりグリュンマーなどが良いのか、カラヤン盤のドナートでは軽すぎる)。マルティン(29)のマクダレーネは好演。ヘムスリー(41)のベックメッサーは普通。録音は金管がOnすぎる感はある(ベームがバイロイトの構造に配慮して強く吹かせている?日本公演の前奏曲ではこんなに強調していなかった)が、弦は瑞々しい(Phのリングよりずっと良い)。Orfeoには更に、65年ヴィーン国立歌劇場でのベーム指揮のローエングリンをまずお願いしたい。

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  • 1 people agree with this review
     2009/12/30

    我々世代風に言うとバックハウスの「旧盤」(新盤とはイッセルシュテットとのステレオ録音を指す)。70年代には廉価盤で出ていたが、評論家U氏が強く推薦したベームとの3番の知名度は高かった。なぜ3番だけベームなのか(50年録音で当シリーズ最初の録音)ヴィーンの盟主を競っていた二人だけに興味深い。演奏はどちらも上質。まだ若書きの2番はクラウスの典雅な色どりが効果的で、バックハウスも古典志向の美しい演奏を聞かせる。3番は音楽自体が段違いの成長をみせるが、バックハウスは即興的ともいえる自由度で曲想に切り込み、古武士のようなベームの指揮と四つに組んで、ベトーヴェンに肉薄する。かといって両者とも美しさも忘れはしない。やはり「黄金コンビ」と言うべきか(ブラ2-Orfeoでわかるようにこの両者のライブが聞きたい人が本当に大勢いる。レコード会社は発掘の努力を!!)。録音は53年の2番にに一日の長有り。さほど音質改善はみられないと聞いたがいかがだろうか。

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  • 2 people agree with this review
     2009/12/30

    火の鳥目当てに購入したが、ドンファン(76年)、28番(73年)が大指揮者の実力を示した熱演(70年代のベームは・・・などという人に聴かせてみたい)。ドンファンは57年SKDに比べると約30秒遅いが、緩徐部が情緒豊かになっており、急速な部分の迫力は壮年期を思わせる程。28番も同様。ベームはVPOやBPOでなくてもしっかりと自分の解釈を実現しており(或る意味VPOでない方がベームの個性が裸形に出るとも言える)、ケルン放送響も響きの美しさでは超一流オケと同等とは言えないものの懸命の演奏。63年録音の火の鳥は残念ながら録音が今一つ(オケの技量も70年代より落ちるようだ)。75年3月17日に聞いた東京での実演と解釈のコンセプトに変化はないと思う。あれは原色的ではない美と、ペーソスと(VPOの木管の威力!)、迫力・高揚感のある独特な、しかし魅力ある演奏だった。当CDを聞きながら懐かしく思い出した次第。ていねいな解説(独、英各8ページ)はいつもながら立派(国内盤も見習ってほしい)。auditeには感謝の気持ちでいっぱいだが、今後は是非60年代のベームの録音発掘に最も注力していただきたい。

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  • 2 people agree with this review
     2009/12/29

    「影の無い女」の全てを味わうには、シュトラウスの巧緻をつくしたオーケストレーションが明確に聞きとれることが必要だ。それでも☆5つを進呈するのは歴史的価値と内容の素晴しさによる。55年ヴィーンオペラ再開公演のうちベ-ムは4公演を担当。フィデリオ、ドン・ジョバンニ、ヴォツェックに加え、シュトラウスでは「薔薇」を先輩クナに任せ、自らはあえてこの曲を採りあげた。当時ウィーンでもこの曲は知名度が低く空席もあったとのことだが、圧倒的な演奏は大反響を呼び起こし、有名なDeccaでの録音(現在廃盤-早急に何とかして欲しい)に繋がった。当CDの魅力は白熱のベームの指揮(第3幕など尋常ならざる高揚感)、VPOの味わい(ボスコフスキーのVnソロ初め魅力横溢)、そして後年に比べカットの少ない点にある。以降ベームは、ルートヴィヒが「生涯最高の音楽体験」としたメトロポリタン、吉田秀和氏を「シュトラウスの全てを体験しているのではないか」と唸らせたベルリン、カラヤンをして「音楽祭最高の贈り物」と言わしめたザルツブルグ、更にはパリ等で記念碑的公演を続け、作品の真価を世に広めたことは周知の通り。まだまだベームの影の無い女を味わいたいと思う。CDでも、映像でも。

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     2009/12/29

    オペラ映像と言わず、クラシックの全ての「レコード(作品)」の中でも屈指のものと言えまいか。誰彼がどう素晴らしいと私ごときが述べても、屋上屋を重ねるだけなのでここでは触れない。第3幕終盤が比類なく感動的とだけ言っておこう(R.シュトラウスを軽んじている人に是非見て欲しい)。気になったことはHMVレヴューにある「生産終了し在庫のみとなっていた・・・」という文言。ミッドプライスでも良いから若い人にも手の出やすい価格で提供を続けて欲しい。今年は当盤と、ついに出たベームの「コジファントゥッテ」のDVD(69年VPO他)を楽しむという贅沢な年末だ。両盤に共通しているのは制作者、演奏者の「最高の演奏」を記録に残そう、世に伝えようという強い情念を感じさせる点だ。我々ファンとしても、20世紀のオペラ黄金期の歴史的究極としてではなく、現代に感動を与えるものとして、その素晴らしさを語り継いでいきたい。

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     2009/12/28

    古い録音だが歴史的価値と抜群の面白さから☆5つとさせていただく。時々ラフマニノフの楽譜と戯れている女房殿は「ここの弾き方面白い」と思った部分が多々ある様で「もし今こういう弾き方をする人がいたら批評家とかどう言うかしら」などと発言。演奏時間は1番:24分23秒(ツィマーマン97年DG26分22秒)2番:31分25秒(リヒテル59年DG34分34秒、ツィマーマン00年DG35分35秒)、3番:33分57秒(アルゲリッチ82年Ph39分41秒、アシュケナージ85年Dec43分28秒)、4番:24分33秒とかなり速く、特に3番の疾走感は凄い。情緒豊かに表情をつけてもテンポが速いのでもたれる感じが無く、スピーディーな部分はダイナミックに弾ききるため全体しては爽快な格好良さが印象に残る。ここを原点としてどんな変遷があって、現在の演奏に落ち着いてきたのか誠に興味深い。指揮は細かい部分が聞き取れないが堂にいったものと評して良いだろう。ストコフスキーも大家との共演のせいか恣意的なところは無い。ラフマニノフファンに限らず、ピアノに関心のある方には是非お勧めしたい

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     2009/12/23

    74年発売の幻想は大変評判になり、ドビュッシー、ラベルと全集が続いて評価され、クリュイタンス、ミュンシュ亡き後、この人がフランス音楽界を背負うのだなあと皆が思っていたところに突然の訃報。76年、マルティノン66歳の早すぎる死だった。以来30年余、ドビュッシーが名盤とされてきた一方、ラベルは線がきついなどとも言われ、評判の上ではクリュイタンス(これは雰囲気豊かな名演中の名演だが)などの後塵を拝してきた感がある。がこうして聞いてみると、明晰でニュアンスに富み、パッションもある演奏は、オケの香気ともあいまって、大変な名演と言わざる得ない。レヴューアーの皆さんに同感。若い人達に評判にとらわれずに是非聞いて欲しいと思う。私は01年に富山で、プレートル(こんな評判になる前で指揮に期待はしていなかったのだが、なかなかやるもんだと思った。ちなみにアンコールはカルメン前奏曲)指揮のパリ管でラヴェルを聞いたが、自信、愛、そして強い個性を感じた。「お国もの主義」と非難されそうだが、個性を尊重し、評価することは決して間違いではないと考える。フランス人以外のラヴェルはダメなどとも言うつもりも勿論ないが。

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     2009/12/20

    51〜58年、壮年期(56〜63歳)のユニバーサル系への録音が纏まって手に入る好企画(バラでは購入不可のものもある)。まず透明度、緊張感の高い(テンポも早い)旧レクイエム、重みと丸みのあるACOと指揮がマッチした3大交響曲(BPO盤より各曲約30秒早い)が素晴らしい。VPOの34.36.38番はリマスタリングのせいか弦の音がややシャカシャカする感があり残念。SKDとのキビキビとした中に抒情あるシュトラウスは大変な名演。ティルの生彩は後年のBPO盤を凌ぎ、ドンファンの追い込みも特筆もの。90年代のCDに比較して音質が相当向上し、覇気あふれる英雄、自然への「感動」に満ちたアルプスをより良い音質で堪能できるようになった。四つの歌の演奏順は初演(フルトヴェングラー)時と同じで作曲者の意志によるという。しみじみとした歌唱に往時のVPOの甘美な叙情が加わった好演。この時期のユニバーサル系への録音では、名演で名高い@ブラームス2番(56年BPO)、A同3番(53年VPO)、Bミサ・ソレムニス(55年BPO)、C影の無い女(55年VPO)が現在国内、輸入とも入手不可。ベーム没後30周年(2011年)を前に早急に再発をお願いしたい。

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     2009/12/19

    値千金、玉手箱の様なアルバム(3枚約4時間)。ルートヴィヒの広いレパートリー、深い芸術性を堪能するだけでなく、往時のウィーンオペラ座がまさに「音楽の殿堂」であったことを味わえる。ルートヴィヒは55年、監督に内定しオペラ座の再建公演に向け準備を進めていたベームのオーディションで抜擢され(ベームはルートヴィヒを「Christa Mein Kind- 我が子」と呼ぶようになる)たちまちスターへの道を歩んだ。若々しい57年のケルビーノ、55年の作曲家(ベームが溌剌としてまた凄い)を聴くだけでも購入の価値あり。カラヤンとのヴェーヌスも指揮ともども最高(ルートヴィヒはこの役を好まなかったともいうが)。この他ドラベッラ-コシ(ベーム)、マルシャリン(バーンスタイン)、染物師の妻-影の無い女(カラヤン)、メリザンド(アバド)… 全曲盤が出ているもの、いないものがあるが、ローエングリンでの鬼気迫るベリーとの掛けあいと迫真のベームの指揮を聴くと、まずこの全曲盤の登場を切に願わずにはいられない。

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     2009/12/05

    全集を目指したプロジェクトは、「皇帝」に続き、80年11月VPOのニコライコンサートで2番を実演、その後セッション録音の予定だったが、ベームの体調不調で実現せず、81年8月のベームの逝去(ポリーニは8月22日ベームの故郷グラーツでの「家族葬」にも参列、敬愛する大指揮者に哀悼の意を捧げた)により、ヨッフムが引継いだことは周知の通り。シリーズ3作目の「皇帝」は両者の共演も脂の乗った感があり充実の名演。若き(36歳)ポリーニが、気合の入ったベームのリードのもと、伸び伸びと、溌剌とした皇帝像を描く。当時のポリーニの絢爛たるピアニズムが曲想とマッチして大変効果的。ドイツ風の皇帝とは一味違うがこうしたベートヴェンも魅力的だ。第4番もハイレヴェルだが、当時のポリーニ(34歳)はこの曲の行間の深み、滋味を表現しつくすには至ってない感がある。ベームの指揮もバックハウス、VSOとのDVD(67年、これは大変な名演だ)に比べるとやや弾力性が不足。ライナーノーツの誤り(3番がこのシリーズ最後の録音←3番は77年5番が78年)、ケース裏の4番の録音年月記載ミス(71年10月ではなく76年6月)。どうしてこの程度のミスがチェックできないのか。商品に対する責任、音楽に対する愛情が微塵も感じられない。猛省を促したい。

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     2009/11/29

    「ポストホルン」は1779年、パリ帰りのモーツァルト充実の作品。交響曲33番、協奏交響曲K364が同時期にあたる。同曲がどの行事のために書かれたのか明らかではないが(一説にはザルツブルク大学の課程修了の祝典曲で、駅馬車用のポストホルンは学生の旅立の象徴とも言われる)、内容は機会音楽の枠を大きく超え、事実1-5-7楽章で交響曲としても演奏された。ベームの演奏はこうした曲の内容をじっくりと、また堂々と表現したものだが、協奏交響曲的な部分では最強のソリスト陣を迎え華の部分にも事欠かない。既に録音から40年近くが経過したが、モダン楽器代表として今後も愛聴されるだろう。「アイネクライネ」はVPOの響きを生かした暖かさある美演だが、VPO主席陣との協奏曲集の高みには達していないと考える。壮年期に録音されれば、溌剌とした運びに、VPOの魅力がブレンドされ、さらに魅力的だったろう(56年BPO盤は筆者は未聴)。素晴らしい「ハフナー」、「13管楽器」も是非このシリーズでの再発を。

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     2009/11/28

    ベーム最晩年(79年、84歳)の録音。イドメネオはザルツブルク(76年)で採りあげ、上演時の主要歌手ならびにSKDと77年に録音。当録音もシュライヤー、ヴァラディ、マティスが共通する。「主役」はティート(シュライヤー)なのだが、むしろヴィテリア(ヴァラディ)、セスト(ベルガンサ)の両役に聴きどころが多く、二人の名唱が当盤の魅力を高めている。特にヴァラディはイドメネオのエレットラ同様「当たり役」ともいえ、激しいキャラクターを余すところなく表現している。ベームは壮年期程の弾力性は無いものの、迫力は充分(第一幕火災の場面等)、情感豊かな部分の味わいは晩年期ならでは。実演でとりあげたことがあるのか未調査だが、熟達の表現と言える。王様がテノールだったり、男性役を女性が演じたり、とまどう部分も少なくないセリアだが、20世紀後半の代表的モーツァルト演奏家がこのオペラをどうとらえていたかを示す貴重な録音であり、ティート入門にも相応しいと思う。

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