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うーつん さんのレビュー一覧 

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     2020/04/18

      いくつか「幻想ソナタ」を聴いているが「幻想・ファンタジー」を儚いほど美しい形で表現しつくしているディスクと思う。フォルテピアノを使っている分ノスタルジックな気持ちにさせるのかもしれない。 同じレーベルから出ているブラームス「クラリネット・ソナタ集」のディスクに収められているピアノ小品集 Op.118と双璧の美しさを持っている。

      「幻想」自体がもともと実体を持たない「何か」であるわけだが、だからこそ表現にも様々なアプローチがあり、その違いに興味をひかれていく。

      アファナシエフの恐怖と紙一重の幻想もあるし、リヒテルの巨大な畏怖すべき幻想もある。シフの端正な響きによる滋味あふれる幻想もあり、メジューエワの慈しむ趣きの幻想や、内田光子の心の暗い淵をのぞき込むような幻想にも惹かれる。その中にあって美しいものへのたゆまぬ憧れ、ひとつ間違えると壊れてしまいそうな繊細な細工のような幻想ソナタを希望するならシュタイアーの当盤をお勧めしたい。即興曲D935も同様の出来ばえでこちらもすすめていきたい。

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     2020/04/18

       彼のシューベルトはとても自由で情感がこもっている。このディスクの後、2008年録音の第18番 D894(Harmonia Mundiよりリリース)もロマンティックで幻想ソナタの名称どおりの美しい演奏と思っているが、こちらも遜色ない。

       チェンバロ・フォルテピアノ・モダンピアノを縦横無尽に弾きこなす彼だが、チェンバロの時よりフォルテピアノやモダンピアノを弾くときの方が自由さが増すような気がする。曲ごとの時代や様式にも左右されるだろうが、このディスクでのシュタイアーは楽器を十二分に鳴らしきりつつ、そこに自らのファンタジーやイマジネーションをアクセントにしてシューベルトの心情に迫ろうとしているように感じた。

       モダンピアノでのシューベルトから少し目線を離してみたい方に聴きやすい音質だと思う。1825年製作と云われるフォルテピアノの音は古さを感じさせず、ひなびた音の感覚は少ないが、現役として十分に豊かな音響には驚いた。

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     2020/04/18

      チェンバロでのゴルトベルク、私が聴いているのはG.レオンハルト、鈴木雅明、武久源造とこのA.シュタイアー。この4種でもっとも「ゴージャス」と感じているのがシュタイアー盤。楽器の特性や構造によるのか弾いたときの鳴り方が他盤と全く違う。濃密で発言力を感じる独特の音。 私が聴くディスクを簡単に俯瞰すると、レオンハルトが謹厳実直、武久源造は侘び寂び、鈴木雅明は軽妙典雅と勝手に考えている。ではシュタイアーは? 甚だ安直に表すと「豪華特盛」。

       そのためか、凄い演奏で一点もおろそかになっていないが聴き終わるとえらく疲れる。時々無性にシュタイアー盤を聴きたくなり聴いているものの、その「聴きたくなる間隔」は他盤ほど頻繁ではないことを告白しておく。とにかく情報量とメッセージが非常に豊富なのだ。そこが良いところであり、もしかすると大変なところなのかもしれない。この辺りについてはmimi氏が前レビューで述べられている優れた論述を参照されたい。

       かと言ってこのディスクが悪いということではない。実に凄い演奏だからだ。ある意味「ゴルトベルクの究極」とも感じる。ぜひ他の方にも聴いていただきたい。

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     2020/04/17

       ページを開くと縦書き2段組でページ余白もかなり狭く、小さい活字でびっしりと書かれてあるヘビー級の内容。戦後から武満徹が、そして日本の音楽芸術がどのように育っていったのかが生き生きと書かれている。

       私が購入し聴いてきたCDの中で武満徹は「弦楽のためのレクイエムはストラヴィンスキーに激賞された。ノヴェンバー・ステップスで世界におどりでた」という「過去形」で書かれていた部分が現在進行形で話が進んでいく。  もちろん編集の妙もあるだろうが、立花隆との対談も相当馬が合ったのだろう。話のテンポは快適、内容は実に興味深く、本人だからこそ語れる話と、それを裏付ける立花隆の綿密な取材と資料収集がうまく混在して武満徹の半生や作品、時代の流れを読むことができる。音楽一辺倒にならずバランスよく話が盛り込まれている点は、立花隆が音楽の専門家でないのが功を奏しているように思える。立場も仕事の拠点も異なるが、その時代の空気を一緒に吸っているからこそ語り合える… そんな、ちょうどよい距離に両者がいるおかげでこれだけの大作が著されることになったのだろう。

       戦後日本の音楽界、作曲などの芸術、文化・思想の変遷、社会の動向がリンクして書かれているのでどれかに興味を持つ方であれば誰でも本書に入り込み、さらに違う分野にも視野が広がることは間違いない。

       ざっくり要約するなら、武満徹の音楽作品に焦点をあてるというより、戦後日本の歴史の様々な諸行の中で「武満徹」にスポットライトを当ててその旅路を追うということになると考える。残念ながら武満徹の逝去でインタビューは完結しなかったがそれでもこの著作の価値が下がることはないだろう。

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     2020/04/16

       ジャケットの写真に見られるメジューエワの真剣なまなざし。控えめな微笑みをたたえたジャケットではない。ベートーヴェンに真っ向勝負を挑むピアニストの顔。そしてその内容はジャケットに写る眼光にふさわしいものとなっている。


       ふくよかな響きを駆使しつつも、甘ったるい部分は全くない。初期から中期、後期から最後の3つのソナタに至るまでどれもぬかりなくベートーヴェンの旅路を追ってくれている。有名なOp.27-2などもムードでなく、響きの発見を追及し作曲者が考える幻想を表していこうとする姿勢が見られ、佇まいを直しつつ傾聴してみた。そんな瞬間がどの曲にもあり、ベートーヴェンの全集を複数持っている方にも買う価値は十分にあり、初めて揃えたい方にも判りやすさと説得力の高さからおすすめできる。


       生誕250年の今年、新たなチクルス演奏会を予定(新型コロナウイルス禍の余波で完結できるか心配だが)しているメジューエワを聴きに行く前にこの全集を再度聴きなおし、やはりこの人の演奏はすばらしいと推薦しておきたい。 全集版(ライヴ収録のボーナスディスクも付いている!)が限定であるため、単発をそろえるしかない現状だが、もし店の棚にこれがあるならすぐ買い物かごに入れるべきだろう。

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     2020/04/15

      男声の緻密な絡みはさながら綾織りの如し。合唱団規模の団体になるとこの精緻な織物の編み目を愉しむことはできなくなる気がする。 


      ディスク紹介にもあるとおり作曲者の人生の歩みはかなりすごいものがあるが、心なしか曲の中に哀切というか諦観の影を感じる。だからこそと言うべきか、言葉そして旋律が切々と訴えかけてくる。その訴えがポリフォニーの綾織りという衣をまとい、懇願や祈り、哀しみや迷い、喪失感など様々な感情が交差しているかのような印象を受けてしまう。SNSに代表されるような良い・悪いの通俗的な二元論では表現しきれない複雑な感情をポリフォニー音楽に託したように感じる。


      最近の新型コロナウイルス禍(2020年)で自宅に籠る方も多いと思う。かく言う私もその一人だが、声高に空虚なおしゃべりをするだけのニュース的ワイドショーあるいはワイドショー的ニュースで時間を無駄遣いするより、このような真摯で密やかな声に耳を傾けた方がこの時期の問題を考えるためにはいいものだ、と思ったりもする。  横道にそれてしまったが、声の力が心に届くためにはしっかりと対峙して聴くしかない。それに値するディスクだと思いお勧めしたい。  私もそうだがキリスト教的な音楽と敬遠せず、そこに込められたメッセージ −−突きつめれば「平和」あるいは「平穏」でしかない−− に心を寄せてみてほしい。人類がいまだに手に入れていないこれらの「目標」に想いを馳せつつ、こんな時期だからこそ聴かれてみては・・・。

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     2020/04/11

      この曲をブラインド・テストしたら、何人が2009年作曲でバリバリの現代作曲家W.リームの作品と答えるだろうか。私は面白い編成でどんな響きと表現をかましてくるのか、と思い入手したがよい意味で裏切られた。紹介分にもあるが現代音楽というより数百年昔に書かれた宗教曲をリメイクした作品を聴いている気にさせられる。  何が何でもゲンダイオンガクを創らなくてはいけない…と考えず、テキストに導かれ、古の音楽に敬意を抱いて研究を行い、響きについての思慮の結果としてこの作品ができたのではなかろうか。  プリミティブで彩度が低く少しザラっとした手触りが感じられる。ECMらしいカバージャケットの秀逸なデザインがこの曲の雰囲気を表しているような気もする。現代作曲家の作品だが余計な色眼鏡を外して聴いてもらいたい。

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     2020/04/09

      特別なことをしているわけではないし、特別にすごい演奏ということでもない。もちろんこれは悪い意味ではないです。ごく普通にシューベルトを弾いているだけ。それがどれほど素晴らしいことなのかは、シューベルトを好きな方ならご理解いただけるのではないでしょうか。自然な語り口の中からシューベルトの人生が淡々と滲み出てきます。

      ピアニストとして名を残す以上、他にない際立った演奏で芸術の高みを目指すものでしょう。そこに「個性」が生まれるのも道理ですが、シフはそこから距離を置いて我が道を行く。そんな彼の代表作が自然体な、このシューベルトではないでしょうか。  もっと彫りの深い演奏もあるし、もっと劇的に表現する演奏もあります。それはそれで好きですが、普段着のような自然体なシューベルトを全曲通して聴けるのはシフの全集くらいではないでしょうか。あるがままに音符をピアノにのせて歌う、これを体験したい方におすすめです。

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     2020/04/08

      モダン系の堂々とした、うねりと歌がある3番ではない。 古楽器オケの演奏ゆえか怒涛の迫力やコクの深さを求めることは難しい気がする。 それでも私は評価してみたい。

      一番嬉しいのはプログラム。このチクルス、ほかの盤のレビューにも書いた気がするがガーディナーの(オケと合唱団両方の)手兵を総動員してブラームスを多角的に表してくれているのが新鮮で愉しいのだ。それがどれもうまくまとまり、特に当盤は選曲が秀逸で一つのプログラムとしてピタッとはまっている気がする。静かに終える第3交響曲でプログラムを終わらせず、さらに最後に悲歌Op.82をおいて幕を閉じるやり方がたまらなく気に入っている。

       ブラームスというと交響曲(時々アルト・ラプソディや運命の歌がカップリングされるのが関の山)のディスクが多数占めるのが現状だろう。 その中にあって声の力、声楽の美しさ…そこに光を当て、加えて交響曲を並べることでブラームス(他作曲家の作品も混ぜることもあるが)のすばらしさを紹介するのが当チクルスの狙いだろうし、その目論見は成功していると思う。

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     2020/04/07

      ヴィヴァルディと細川俊夫、バロックと現代音楽がこうも相性が良いとは思わなかった。絶妙なマリアージュ!

      ヴィヴァルディの本拠地であるヴェネツィアを触媒として両者の音楽が交差する面白さ。ヴェネツィアの入り組んだ水路や曲がりくねった小径を彷徨い歩く私たち。ふと振りむいたり、はたまた水路の向こうから、それとも道の曲がり角からヴィヴァルディが現れてくるような錯覚を楽しませてくれる細川俊夫の曲づくり。

      ヴィヴァルディの活気を感じさせる音楽は往年の、活況を呈したヴェネツィアの人々の往来を想像させてくれる。時代と町と人間とがクロスした面白い企画で愉しめる。バロック好きな方、現代音楽に興味ある方の両方におすすめし、その交差を楽しんでもらいたい。

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     2020/04/07

      最近はA.シフのディスク(ECM)をメインに、時々S.リヒテル(RCA)で聴いていた。 ふと思い出してCD棚の奥からこれを見つけだし再聴してみたが、非常に心に沁み込む演奏であることを再発見できた。シフの美しく端正な演奏とも、リヒテルの融通無碍でありながら自らの人生を刻み込んだような演奏とも異なる(だからこそいくつも集めてしまうのだ)。


      アファナシエフのDENON時代によく言われた「極度に遅いテンポ」はここでは控えめ。というより曲自体がしかるべきテンポを要求してくる構造ゆえ、一演奏者の恣意的な解釈を求めるまでもないというところだろうか。 ハ長調の第1番から一貫して力が抜けきり、美しい音を繋げており、弾き飛ばすことはせず、丹念に律義に前奏曲とフーガのミニアチュールを創りあげている。各声部は混濁せず、声部間の立体感(?)が実に心地よい。なんというか各声部がお互いを聴き合いながら交互に歌を交わしているような感覚に捉われる。 全体通して落ち着いた調子で弾き進んでおり、アファナシエフのスローテンポが嫌いな方でも抵抗なく聴けると思う。  個人的な感覚として、夜に照明を落としてしっとり&じっくりと愉しみたい平均律の演奏だ。 おすすめします。

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     2020/04/06

      DGから同じプログラムでCD(演奏内容についてはCDのページに雑文にてレビューさせてもらいましたので参考になれば幸いです。)がリリースされている。  CDの音源は2013年5月と8月の収録、本DVDは同年6月。演奏のコンセプトも同一なので「同じ曲・演奏ならいらない」という考え方もあると思う。が、私はこちらも入手してしまった。  音だけ追うのと映像でも追えるのとでは感興も異なるからだ。さらにクラシック音楽のDVDはなぜかすぐ廃盤になってしまう場合が多いためだ。


      G.ソコロフのライヴ映像は、加えてこれだけのプログラム内容は貴重。撮り方はテクニックを追うというよりソコロフの演奏を追うオーソドックスな構成で画面転換もそれほど細かくないのでじっくり鑑賞できると思う。  あのすさまじい音がどのような体躯から発せられるのか、あの細やかな表情がついた演奏がどのような指先からこぼれ出るのかを確認できるのはすばらしい。日本にくることはおそらくこの先ないだろうから、せめてDVDからでも体験しておくべきであろう。それともどこかのプロモーターさんが来日公演に向けてがんばってもらえないだろうか。ぜひ期待したいところだ。

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     2020/04/05

     チャイコフスキー後期交響曲のファーストチョイスがこの盤だった。その後もろもろのディスクを聴いてはきたが文字通り「極北の一枚」はコレ。極北は @北の果て A物事が極限にまで達したところ という意味で使われるが、そのどちらにも意味が通じるディスク。

      他のレビューでも評価される圧倒的な統率力と集中力、そこから出てくるすさまじい演奏と響きは現代ではもはや聴かれることはないものだろう。一糸乱れず攻め込んでくる弦、確信犯で暴力的に響かせる管の迫力などムラヴィンスキーの真骨頂。それをチャイコフスキーでやってのけるのだからたまったものではない。録音のせいかもしれないが特に金管の響かせ方には独特なものがあり、これは一聴の価値があると思う。4番や6番の圧倒的な響きはもちろんだが、個人的には5番第2楽章冒頭のくぐもった、あるいはくすんだ管の歌が忘れられない。

       チャイコフスキーらしい旋律で泣かせるような工夫はないが、あまりにもキレすぎる表現でせまってくるので逆に戦慄が走るような出来栄え。指揮者の方針も美音や美しい表現のための指揮ではない気がするのでそこに表面的な美しさや綺麗な音を求めることはできない気がする。よって、美しいチャイコフスキーを聴きたい方にはお勧めできない。逆に作曲者の心裡や屈折した感情を生々しく表現した状態を体験したい方にはお勧めしたいです。


       レコード・CDなどメディアの形態が変われど「記録をする」道具であるのは変わりないはず。あの当時の時代背景や技術、指揮者とオケの関係性の一例を記録を留めている、という意味でも非常に価値のあるディスクといえる。よって「今後も残すべき、そして残っていくであろう」ディスクであると思い、おすすめします。

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     2020/03/29

      あくまでベルリン・フィルが中心。指揮者に重きを置くわけではないので、いわゆる「ブルックナー指揮者による」とか「ブルックナーかくあるべし」な企画でないのは明瞭です。「ブルックナーらしさ」なるものを期待して購入するといくらか裏切られた思いになる方もいると思います(笑ってすまされない価格だけになおさら)。  しかし、ベルリン・フィルと様々な指揮者のコラボによる「ブルックナー作り」をライヴ録音で愉しめるというコンセプトに興味を持つ方ならおすすめです。

      プログラムの人選によるものですが、ハイティンクやティーレマンなどブルックナーに定評のある指揮者のものもありますし、小澤やP.ヤルヴィなどブルックナーが新鮮に感じられるメンバーもあり、のべ8人の指揮者が自分なりのブルックナーを披露。使用版の多様さもあり、一聴に値する演奏ばかりです。公演のBD映像もあるので、楽しみも2倍です。

      自分自身では先述のブルックナー指揮者と言われる人たちのディスクを進んで聴いてきた経緯があるので、聴いてみて正直言うと多少好みが分かれるのも事実です。使用版の問題もしかり。 ですが、肩に力入れてブルックナーを拝聴するという感じが(良い意味で)薄いものが多く、逆にブルックナーの進化(ブルックナー指揮者1人による全集なら「深化」を楽しむことになるだろう)や版による違いを、客観的にリラックスして聴くという面白みを発見できました。

     また、レビューに音質についての感想が多くありますが、私自身そこまで耳もよくないし機材も凝ってないのでそのあたりの細かい音質についての感想は差し控えますが、普通に音楽聴く分なら遜色ないと私は思います。いずれにせよ、ブルックナー全集として面白い着眼点をもったセットであり、定番的なもの以外で…という方におすすめです。

      

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     2020/03/12

       ゆっくりとした歩みをもってマタイが演じられており、早い演奏を好まない方にはちょうど良いと思います。私もそこに惹かれています。

       どこの曲をとってもとんがっていたり舌鋒鋭い感覚はない。むしろ一歩後ろへ下がり客観と主観の間にあるようなたたずまいと感じました。もちろんこれは安易な表現ということではない。のめり込まず、離れずの絶妙な立ち位置でイエスの磔刑までのドラマを切々と語り奏していると解釈しています。
       
       悲しみや嘆きを表わすアリア、受難コラールではゆっくりと心にしみわたるような調子、捕縛の場面や審判の場面、ペテロの否認の場面など劇的な部分でも音楽によるドラマがしっかり立ち上がっているので心配はないはずです。イエスの磔刑に至るまでを「なぜイエスが殺されねばねばならないのか」という怒りに似た強い口調で表現するのではなく、「イエスの自己犠牲があるからこそ我々がいる」という心の奥から湧き上がる悟りに近い哀しみをもって表現している気がします。 ドライというより微温的で柔らかい音楽づくりなのでピリオド楽器で時々あるキツイ音が苦手な方にもおすすめです。

       これを書いている2020年3月時点では鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパンによる再録音(2019年4月録音)がリリースされていますが未入手。もう少しこちらを聴きこんでから揃えてみたいですね。 新録音が発表されてもこの盤の価値がなくなるわけはなく、これから入手を検討される方は(財布が許すなら)新旧両方揃えてみてはいかがでしょうか。 

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