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2人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/07/20
ネルソンスの評判は大変良いようだ。だが、実演を聴いていないこともあるのか、私にはもう一つ焦点が定まらない。どれもそつのない演奏で決して平凡ではないが、心を掴むことのない演奏、というイメージなのだ。ブラームス、ブルックナー、リヒャルト・シュトラウスいずれも。同じラトビア出身で先ほど他界したヤンソンスに似ている。ヤンソンスがコンセルトヘボウとバイエルンを兼任していたのもネルソンスの経歴と被る。このベートーヴェンも水準以上の出来だが、折角のウィーン・フィル起用の魅力はあまりなく、スマートな演奏に終始している。同じDGから出たスタインバーグの50年前録音のほうがワクワクさせられる。今のところショスタコーヴィチが一番良く、ドイツものはまだまだ、あるいは既にピークアウトしているのか。
2人の方が、このレビューに「共感」しています。
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6人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/07/16
HMVのレビューでスタインバーグのコマンド録音はユニヴァーサルにあるはずだから出してほしい、と書いたのが8年前。しかしコマンド音源は紛失したとのことで板起し盤が出たのだが、これが酷い音質で復刻もともかくコマンドの録音自体が駄目なんだとまたレビューで毒づかせてもらった。ところが、コマンド音源はユニヴァーサルに存在したのだ。解説を読んでも、35ミリマグネティックフィルムから直接復刻したのか、それのコピーが元なのかは記されていない。それでも音はこれまでの板お越しとは比較にならず、60年代前半の録音として水準以上のものであったことが今回初めて分かった。演奏の印象も面目一新。引き締まって推進力に充ちたまさにスタインバーグの音楽が詰まっている。どれも実に素晴らしいが、9番だけは世にも珍しい「マーラー版」使用とかでエグイ改変がありお薦めできない。ただ、希少価値はあるだろう。ベートーヴェン記念年に出たものでは個人的に最も満足。
6人の方が、このレビューに「共感」しています。
2人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/06/30
シベリウスの交響曲全集で私が最も気に入っているのがマゼールの第1回録音。よく異色のシベリウスと言われるが、そんなことはなくマゼールはシベリウスの本質を捉えた演奏をしている。民族主義的要素の強い1番、2番ではダイナミックで荒々しい表現が吹き荒れる。今話題のロウヴァリよりもはるかに切り込みの鋭い表現だと思う。後期はより冴えていて7番の壮大かつ緻密な構築による小宇宙の創造は強い感動に誘う。4番、5番も圧倒的。6番も可憐なスタートから美しさの限りだが、終楽章のテーマが戻ってくるクライマックスでテンポを極端に早め、アンサンブルを崩してしまうのは失敗。これがなければ6番も最上の出来だった。ウィーン・フィルの魅力もデッカの名録音もあってフルに発揮されており、弦の美しさ、ホルンのパワー、木管の色どりいずれも味わい深い。北欧の大人しめの演奏だけがシベリウスだはない、という代表的なもので、同時期の同傾向のバーンスタインと比べても断然優れている。
1人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/06/25
指揮者は年齢とともに大成するとかつて言われたが、今はそうではないということを我々は知っている。バレンボイム、ラトル、シャイー、ゲルギエフ…若い頃のほうが魅力的だった指揮者が多数派なのだ。セミヨン・ビシュコフはその中で年齢を重ねるごとに音楽が成熟してきた稀有の指揮者である。パリ管やベルリン・フィルを振っていた頃の彼とは比較にならない。今大輪の花を咲かせているビシュコフの充実を聴くのにこのセットはもってこい。どれも実に素晴らしい出来栄えで鳥肌ものだ。リヒャルト・シュトラウス、ワーグナーはティーレマン、ネルソンスよりはるかに優れた練り上げられた音楽になっていると思う。声楽作品が多いが、その声楽陣がまた最高の出来。「エレクトラ」のポラスキは多分彼女の最上の歌唱であろうし、「ローエングリン」のボータ、ピエチョンカもベスト。ボータは亡くなっちゃったんだなあ。ヴェルディの「レクイエム」は数年前にマゼールの透徹した演奏を聴き深い感銘を受けたが、ビシュコフのものはもっと肉感的であり、よりヴェルディらしいといえるだろう。ラフマニノフの2曲も超名演。これまで愛聴盤だったプレヴィンに比べオケ、合唱のレベルが格段に上。近年のドイツのオケ水準は世界に冠たるものであり、WDR交響楽団が聴ければベルリン・フィルは別に聴かなくてもいいというくらいだ。これだけ胸を熱くさせるセット、カバーの写真はもっとましなものはなかったのか。解説も「鐘」の声楽陣がごっそり抜けていたり、「エレクトラ」のグレアム・クラークがグレアムになっていたり雑な作りなのが本当に残念。
1人の方が、このレビューに「共感」しています。
2人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/06/19
ソフロニツキーは日本コロムビアから出ていたショパン、スクリャービンを持っていたのだが、音が悪く演奏も荒っぽく感じ手放してしまった。HMVの素晴らしい年表(スクリベンダム)を見て再び興味を持ったのだが33枚に恐れをなしメンブランにした。驚いたのはコロムビア盤よりはるかに音がいいこと。メンブランのほうがいいなんて聞いたことがないがマスターが違うのか。リスト、プロコフィエフなど聴くに堪えない音質のものもあるが大半はライヴとは思えないレベル。46年のものが信じられない高音質なのはドイツから没収したテープレコーダーを使ったのだろう。この好条件で聴くと、ソフロニツキーはロシアのピアニストには珍しいテンペラメントのピアニストなのがわかる。ショパンのスケルツォ第1番のこんな高速演奏は聴いたことがないが情感たっぷりで決して機械的なテクニックの演奏ではない。スクリャービンがいいのはもちろんだが、今回とりわけ感心したのは3枚にわたるシューマン。ロシア・ピアニストによるものでは最上ではないだろうか。ギレリス、リヒテルが高く評価しているのはこのテンペラメントに充ちたロマン性なのだろう。これはスクリベンダム盤を買うべきだったな。でもメンブラン盤もコスパで推薦。
1人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/06/07
hmvの紹介でyoutubeに公開しているグラーツ歌劇場の映像が付いているが、それを見るとかなり力の入った演出、舞台のようだ。演出家もコメントしているのに発売がCDだけなのは残念。音だけだとグラーツのオケは弦の人数が少なくひなびた演奏に聴こえる。シチリアの田舎が舞台の「カヴァレリア」には丁度いいとも言えるが、もともと名旋律のメドレーのようなオペラで歌手も飛びぬけた人はおらず(イタリア人は一人もいない。ディ・トロはオーストラリア人)美人指揮者で話題のリニフの聴かせ場も少ないとなると数ある演奏のなかで主張するのも難しいかな、と思える。「道化師」は一転、実に見事なもの。オペラ自体がずっと複雑な分リニフの切れ味鋭い指揮の威力が発揮されているし、歌手、合唱も好演で聴き手をぐいぐい引っ張る。「道化師」の名演は少なく、こちらは推薦に足る出来だと思う。
8人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/05/17
フィストゥラーリの「白鳥の湖」はLSOとの第1回録音が最高という評をかつて読み「オーパス蔵」の復刻盤を聴いたのだが、短縮版で演奏も録音も冴えず失望した。ほんと評論家の言うことは当てにならない。やはりコンセルトヘボウとのハイライト版とオランダ放送フィルとの全曲盤(こちらは不当に評価が低い)がともに劇的で素晴らしい演奏である。このエロクエンス盤ではフィリップス録音の3曲がカプリングされているが、弦楽セレナードは初CD化、「くるみ割り人形」はなんと世界初出と書かれている。これが飛び切りの名演なのだ。録音もよろしい。どうしてお蔵入りしたのか理解に苦しむ。「白鳥の湖」は有名な演奏で国内盤も手に入るが、「眠れる森の美女」(これも名演)を含むフィリップス録音が聴けるエロクエンス盤をお勧めしたい。
8人の方が、このレビューに「共感」しています。
2人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/05/14
私が最も尊敬する指揮者の一人がモントゥーだ。彼の音楽は常に率直であり、かつ生命力に溢れユーモアもある。映像を見るとビートとキューがメインの簡素な指揮でオーバーアクションは全くないのだが、それでもオケは燃え上がる。トスカニーニのような強制ではなく、オケの自発性で白熱した演奏を引き出すのだからこれは指揮の奥義とでもいえようか。残念なのはこれほどの大指揮者がレコード会社からさほど重要視されていなかったことで、典型はデッカがベートーヴェンの交響曲を9番を残して企画終了にしたこと。ブラームスの交響曲全集も残ってないし。これはモントゥー88歳(!!)のライヴだが、相変わらず老いの片鱗も見せない素晴らしいものだ。「タリス」は英国風の「雅」とは遠い熱っぽく意思的な演奏。ベートーヴェンの簡潔で躍動する音楽も全く古さを感じさせない。得意中の得意「エニグマ」は6種持っているが多分もっと録音は残されているだろう。ここでも第1変奏の熱く慈愛に充ちた表現から完全に引き込まれてしまう。そして終曲の爆発の凄さ。これぞ88歳の人間賛歌。ボストンはミュンシュ以来の粗いアンサンブルなのが惜しい。音は歪みがあるが、それでも同じメモリーズから出ているセル/クリーヴランドのものよりはるかに良い。
0人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/04/30
ベルリオーズのレクイエムは大編成なので派手な曲と思われがちだが、実際はむしろ地味で静謐な音楽であり、ヴェルディのようなオペラティックな部分は全くない。ピュアな演奏が求められるが、モルローの音楽作りは久々にそれを感じさせる優れたものだ。合唱は全曲出ずっぱりで、アカペラのナンバーもあるが、大編成のライヴ録音でピッチも落ちず清純な歌声を最後まで聴かせるのは立派。サンクトゥスで出てくるアフリカ系米国人ターヴァーのテノールは実に輝かしい美声で会場に響き渡る。写真を見ると、ステージの一番奥、オルガンの隣で歌っているのだから素晴らしい。シアトル交響楽団自主製作盤だが、この大編成から透明な音を捉えている。LSOライヴとは大違いであり、おかげでシアトル響がLSOより上手く聴こえる。
0人の方が、このレビューに「共感」しています。
3人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/04/25
録音は57年から75年の長期に及ぶので演奏スタイルは微妙に変化している。若い頃はテンポが速く勢いがあるが、70年代になるとテンポも遅くなってきて表情も濃くなってくる。私の好みとしては1番〜3番が好演、後期交響曲では5番がいい。管弦楽曲では「ハムレット」がスケール大きい演奏。ただ、録音時期がバラバラなので音質も大きく違い、一番新しい4番の音が一番駄目。これは58年盤のほうがよかった。音質で損をしている演奏が多い印象であり、HMVの宣伝文句のような好録音揃いとはいえず、優秀録音の全集が増えた今、相対的価値はやや落ちたと思う。データミスがあるのも残念。
3人の方が、このレビューに「共感」しています。
0人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/03/07
マーリス・ペーターゼンがソニー系のソロ・ムジカ・レーベルで続けている「ディメンションズ」シリーズの第1作(これまで3作でている)。ここでは「世界」のタイトルで現世の自然、人の喜び、哀しみをテーマとしている。そのプログラムが素晴らしい。シューベルト、シューマンを中心にゾンマー、コッホというあまり知られない作曲家も加えるが、どれも佳曲ぞろいで全く退屈しない。ペーターゼンは「ルル」歌いとして有名だが、先代の「ルル」歌いクリスティーネ・シェーファーがコケティッシュでアンニュイな歌唱だったが、ペーターゼンは歌詞を深く読み込んだより明晰、知的な解釈を聴かせる。ラーデマンのピアノも絶妙。ところでこのシリーズのHMVの歌手名表記がバラバラなのはいただけない。第2作はマーリス・ピーターゼン、第3作はマリス・ペーターゼン、オペラではマルリス・ペーターゼン。おかげで検索でヒットせず、歌曲はこのCDしかないと思ってしまった。ドイツを代表するソプラノ歌手なのだから日本語表記を統一してほしい。
4人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/02/26
カーメン・ドラゴン贔屓なので結構持っているのだが、それでも半分くらいは初めて聴くもの。スクリベンダムの復刻は優秀で東芝EMIから出ていたものより音質向上しているものが多く誠にありがたい。それでも出来ればワーナーからオリジナルジャケットで出してほしかったんだが、日本以外ではあまり人気がないようなので仕方ないか。ドラゴンのアレンジはゴージャスでアイデア豊富。ロンバーグとコール・ポーターがお気に入りだが、フォスター、ショパンなどもとても楽しい。70年くらいまで活躍したアンドレ・コステラネッツに比べ60年で録音が終わってしまったのは残念だし不思議なことだ。余談だが、ソニーから出たワルター・コンプリート・コレクションの解説(英文)にコロンビア交響楽団はロサンジェルス・フィルハーモニックとフリーランスの楽団員で組織されたと書かれているが、HMVの紹介文によるとフィルハーモニックとはフィルハーモニック・アソシエーションのことでLAPとは関係なくキャピトル交響楽団とほぼ同じ団体とのこと。ワルターの解説を書いた人も知らないんじゃないかと思うが、毎度HMVの調査力には頭が下がらずにはおれない。
4人の方が、このレビューに「共感」しています。
4人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/02/23
第1印象は「明るい」トリスタン。歌手は皆若々しくオケの音色も明るい。従来の暗い情念の渦巻く「トリスタン」とは全く違う。歌手はスケルトン以外知らない人ばかりだが皆大変優秀。イゾルデのバークミンはナクソスから出ているズヴィーデンの「神々の黄昏」でブリュンヒルデを歌っているそうだが、イゾルデ、ブリュンヒルデのイメージとは程遠いリリックな声質。それでもフォルテでヒステリックにならず、高音が突き抜ける。スケルトンとバークミンの二人により「明るい」トリスタンの印象が決定づけられるし、これまでにない若い恋人たちの切ないドラマにもなっている。グバノヴァのブランゲーネが落ち着いた深みのある声でイゾルデと対比されるのもよい。アッシャー・フィッシュの指揮も透明感の高いものだが、ヤノフスキのような精妙だがドラマに欠けるものとは違って盛り上げるところは充分盛り上げる。初めて聴く西オーストラリア響も本当によくやっている。最近のワーグナーでは出色の出来として推薦したい。
1人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/01/30
これはお薦め。ダウランドを中心に17世紀初めの英国音楽をスペインのグループが演奏しているのだが、これがなかなか興味深いのだ。イギリスの例えばルーリーらと比べ、ずっと陰影が深くなる。なんといってもマグラネルのヴィオラ・ダ・ガンバが素晴らしく、アグンデスの声も美しい。最良のヒーリング・ミュージック。
3人の方が、このレビューに「共感」しています。 2020/01/30
確かにテンポは遅すぎる。しかしながらそれによってクナッパーツブッシュではわからなかったシャルク版のオーケストレーション変更がつぶさに確認できるし、なにより最晩年のロジェヴェンの唸り声を発しながらの渾身の熱演に心打たれずにはいられない。指揮者は80歳を超えるとレパートリーを絞るものだが、彼は最後まで好奇心の塊りだったんだなあ。終楽章のバンダ効果はクナを凌ぐ。LSOライブみたいな音質なのが残念だが、価値ある録音。
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