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ココパナ さんのレビュー一覧 

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     2021/03/15

    正直言って良くないです。なぜここまで世評が高いのか不明。ピアノは確かに雄弁で、細かいパッセージの速さなど凄いが、音楽としてその表現が必要という手続きが十分に感じられないため、唐突な印象。なにか、名シーンを派手に演出するために、つなぎの個所であちこち齟齬がでてきた感じがする。部分的に聴けば凄い感じはするが、全体として名曲を聴いたという充足感はない。オーケストラの音も凡庸で、録音のせいなのか、ピアノに焦点が合い過ぎていて、フレーズが存分に歌っていても、それを支えるベースとなる音に深さがない。何度か聴いて、お蔵入りになりました。

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     2021/03/15

    バッハのクラヴィーア作品に、いくつも優れた録音を示してきたコロリオフが、今回はパルティータ集として、パルティータ全6曲のうちの3曲を録音した。第6番ホ短調 BWV.830、第1番変ロ長調 BWV.825、第2番ハ短調 BWV.826の3曲が収録され、「Part 1」と表記されているから、近いうちに残りの3曲も収録されるのだろう。ところで、このアルバム、2枚組になっている。通常これら3曲のパルティータであれば1枚に収録できるのであるが・・・と思って確認してみると、収録時間は合計81分。おそらく、当初の予定では1枚のCDに収まるハズたったのではないか。あまりにも中途半端な形で2枚組となってしまっている。この理由は、聴くと分かるのだが、がいしてコロリオフは平均よりやや遅めのテンポを採用している。その傾向は特に第2番では顕著で、それが積み重なった結果、ギリギリで1枚での収録が難しい演奏時間となってしまったのではないか。というわけで、アイテム的には使用に不便を託つという欠陥があるのだが、演奏は悪くない。このピアニストらしい健やかで見通しのよい響きであり、また、これまでのこのピアニストのバッハ録音と比較して、幾分トーンが軟らかめになっているのも、曲集にマッチした感があり、良いと思う。心地よく歌う旋律と、そこに現代ピアノならではのふくらみが情感として備わっていて、素直にきれいである。コロリオフは、元来バッハのクラヴィーア曲の演奏において、対位法の明瞭化にかなりの意志と注意を注いでいる感じがするのだが、このパルティータ集では、いくぶんエモーショナルなものに多めに配意した感がある。第1番の冒頭に醸し出される豊かなニュアンスにそれは象徴的であり、私は、楽曲の違いという以上に、このピアニストの中でも、変化している部分があるのだと思う。いくぶんゆったりした間合いで、時間をかけて大切に弾かれたパルティータであり、聴き手に感動をもたらしてくれるものになっていると思う。

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     2021/03/12

    サントゥ=マティアス・ロウヴァリというフィンランドの指揮者、何度か来日しているみたいだが、私はこのアルバムで初めてその演奏を聴いた。1985年生まれということなので、当録音が行われた2018年の時点で33才ということだが、いや、その型に嵌らないスタイルにたちまち圧倒された。なんと能弁で表出力の強い指揮だろう。元来、指揮者というのは、自分の中の芸術性を押し通し、その表現のため、オーケストラとの関係を築き上げ、芸術表現に還元させるのであるが、現代の情報化社会にあって、「これが良い」というスタイルが必要以上に流布し、「そうでないもの」を排斥する潮流が全体的にあって、音楽界にもいわゆる前時代的な、巨匠的なスタイルや風格を感じさせる指揮者がなかなか出現しない状況にあるのだが、この指揮者の雄弁さは「あるいは」と感じさせるものに満ちている。とにかく濃厚な表現。シベリウスの交響曲のうち、第1番というのは、もともとこの作曲家の熱血的な側面が強くでた楽曲なので、指揮者の熱い思いを吐露しやすいのかもしれないが、それにしても、オーケストラにここまで自分の「表現したいこと」を憑依させるというのは、たいへんな才能というほかない。緩急、強弱の幅ともに大きく、クレッシェンドの力強さ、クライマックスの畳み掛ける迫力など、凄いとしか形容のしようがない。第4楽章にのみ、やや散漫でまとめきれない感覚が残っているが、それを差し引いても「いいものを聴かせていただきました」と思わず言ってしまう濃厚な味わい。併録してある「エン・サガ」も、かつて聴いたことがないくらいに情熱的で、滾るような音楽の奔流に満ちている。すでに当盤の存在感は十分なものがあるが、なお今後が楽しみな指揮者だ。

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     2021/03/12

    マーラーが開闢者であるともいえる「管弦楽伴奏による歌曲作品」のうち、「子供の不思議な角笛」は、同名のドイツ民謡詩集に基づいて作曲されたものである。同じ時期にマーラーが手掛けた第2交響曲〜第4交響曲にも、共通する主題が用いられている。これら3つの交響曲が「角笛交響曲」と呼ばれることがあるのは、そのためである。また、本盤は「子供の不思議な角笛」全曲が収録されている体裁になっているが、実は、この曲集、「曲順」のみならず、「曲目」も、何をもって全集と呼ぶのか、曖昧な点がある。「原光」は交響曲第2番の第4楽章に、「3人の天使がやさしい歌を歌う」は交響曲第3番の第5楽章に転用されているため、出版時に当該曲集から省かれた経緯があるが、当盤では「原光」を採用している。また、後に「リュケットの詩による5つの歌曲」とともに作曲された「少年鼓手」と「レヴェルゲ(惨殺された鼓手)」は、角笛歌曲集と同じ詩集による作品であり、そのため後世の音楽家たちが、しばしば当該歌曲集に含めるケースがあったが、本来的には、別の時代に、別の経緯で書かれたものである。当盤では、それら2曲を「採用」している。また、通常男声と女声の2人の独奏者を起用するケースが多いが、当盤では、収録曲全14曲を4つの音域に分け、4人の独唱者により演奏を行っている。すなわち、バリトンのゲルネが7曲、ソプラノのボニーが5曲、メゾソプラノのフルゴーニとテノールのヴィンベルイが1曲ずつである。シャイーの録音は、コンセルトヘボウ管弦楽団という優れたオーケストラの機能性を極限まで磨き上げたような精度の高いものである。4人の実力ある歌手の歌唱は手堅く、もちろん見事であるが、この録音の特徴は、ブルーカラーとも言える、美しく透明なオーケストラの響きにあり、この歌曲集によって採用された書法や、歌曲としての演奏効果が、万全の成果を結ぶ形で表現されている。歌い手について触れると、「レヴェルゲ(惨殺された鼓手)」を担当したヴィンベルイの美しく張の良い伸びやかな歌唱が印象に強く残り、この録音の後に亡くなられたことが悔やまれる。

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     2021/03/12

    アシュケナージは、LP時代にシューベルトのピアノ・ソナタのうち第13番、第14番、第17番、第18番の4曲を録音していて、デジタル期に第20番、第21番の後期の2曲を録音している。今にして思うと、それぞれの楽曲がアシュケナージの活動期のふさわしい時期に録音されているように感じる。第13番は1966年の録音なので、1937年生まれのアシュケナージはまだ29才。シューベルトのチャーミングな旋律と、爽やかな情感とスピード感で描いている。ほのかに肉厚な音色で、旋律に相応しい色付けが与えられ、ことに終楽章はお花畑を散策するような、華やぎと若やぎの双方が感じられる。この楽曲の魅力を伝えるには、相応のセンスや感受性が求められるが、元来詩情豊かなアシュケナージのピアニズムは、それらを表現するのにうってつけである。第17番も安直にアプローチすると冗長さの目立つ楽曲であり、場合によっては凡庸に響いたり退屈に聴こえたりするのであるが、アシュケナージの演奏であればそのような心配とは無縁。心地よいスピード感の中で、構造性を維持しながら、メロディに込められた情感を、程よく歌ってくれて、飽きない、第2楽章の零れ落ちるほどの情緒も、この演奏の魅力。個人的に余白に収録されたハンガリアン・メロディーは、なかなか取り上げられないが、好きな作品。今もなお、アシュケナージのこの録音を愛聴している。

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     2021/03/12

    興味の尽きない構成のアルバム。リストとタールベルクは、1800年代の半ば、パリで人気を2分したピアニスト。某資産家夫人の提案による「ピアノ対決」を経て、提案者が「タールベルクは世界で一番のピアニスト、リストは世界で唯一のピアニスト」というお茶を濁しごみの裁定(?)により、その裁定も含めて、より世にその名を轟かせたわけである。また、リストもタールベルクもコンポーザー・ピアニストであり、他者の作品の他、自作、あるいは他者の作品を自らピアノ独奏用に編曲し、コンサートでは、それらの作品を圧倒的なパフォーマンスで弾きこなし、聴衆を圧倒したわけである。当盤はそんな彼らの偉業とパリの興奮により残されたピアノ作品を集めている。前半の「ヘクサメロン」は、ベッリーニのオペラ「清教徒」の主題に基づき、リスト、タールベルクのほか、ピクシス、エルツ、チェルニー、ショパンが変奏を書き、リストがそれらの間のつなぎも含めて全体をまとめ上げたもの。ちなみにこの連作も、前述の資産家夫人の提案によりなされたらしい。そういうお祭り騒ぎにあまり興味のないショパンの変奏が、いかにも「落ち着いた」楽曲になっているのが皮肉めいていて面白い。そして、後半は、リストとタールベルクのピアノ対決を彷彿とさせるような、同時代の任期オペラの旋律を、両者がアレンジした作品が収められている。そして、これらの作品をまとめて弾いているのが、現代世界でも特に技巧に優れたピアニストの一人としてすっかり定着したアムラン。当然のことながら、並大抵の技巧では弾きこなすのは至難なこれらの楽曲を、鮮やかに弾きこなしていて、なかなか爽快。必要に応じて、情感を高め、興奮を煽るそのピアニズムは、これらの作品が生まれた背景を物語っている。

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     2021/03/12

    1987年生まれのアダム・ラルームは、2009年のクララ・ハスキル国際コンクールで優勝したピアニスト。「クララ・ハスキル」の名を冠したコンクールでの優勝に相応しい演奏をする人で、楽譜を深く読み込み、楽想に応じた色彩感や郷愁が薫るような表現に長けている。そんなラルームとブラームスの音楽は相性が良いようだ。特に、ブラームス晩年の傑作、クラリネット(又はヴィオラ)ソナタのピアノ伴奏では、これ以上ないといっても良いくらいの、ツボにはまった表現を聴かせてくれる。クラリネットの瀬ヴェールは1994年生まれというのだから、さらに若い。当盤が録音された2014年の時点で、まだ20歳。その若さでありながら、この楽曲に相応しい哀愁や寂寥を音色に乗せて奏でる様はこころにくいほどで、ラルームのピアノとあいまって、歴史上数々あるこれらの楽曲の名演・名録音たちとならべても遜色ない、むしろ録音が良い分だけ、音源の価値としては上回っていると言っても過言ではないほどの素晴らしい内容となっている。中でもソナタ第1番の第2楽章は出色の出来栄え。さらに1990年生まれのヴィクトル・ジュリアン=ラファリエールによるチェロが加わった三重奏曲も、清潔感と寂寥感が感じられる品のある名演となっている。

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     2021/03/12

    異稿を含むすべてのブルックナーの交響曲を録音することをライフワークの一つとしているゲルト・シャラーが、ブルックナーの管弦楽伴奏を伴う声楽曲に加えて、自身のオルガン演奏によるオルガン曲を録音し、2枚組としたアルバム。比較的録音の多いミサ曲第3番を除くと、録音機会の少ないものばかりであり、それらの楽曲を、共感豊かに演奏し、すぐれた録音で収録した当盤は、とても貴重なものだ。声楽作品は、シャラーのブルックナー・チクルスではお馴染みのエーブラハ大修道院付属教会でライヴ収録されたものであり、豊かな残響を活かした神々しい響きになっており、美しい。シャラーのブルックナー全般に言えることだが、残響についてよく考慮された音響設計がされているため、不用意に輪郭線がぼけたりすることもない。ミサ曲では、ベネディクトゥスの慈愛で包むような響きにこの演奏の特色がよく表れているだろう。テンポは全般に平均的なものを維持し、そのテンポをベースにグローリアなどは壮大な盛り上がりがあり、素敵だ。「詩編146」も聴き洩らすには惜しい佳作であり、この機会に聴けるのがうれしい。2枚目に収録されたオルガン作品集はいずれも音源として貴重だが、LP時代にブルックナーのオルガン作品を録音していたエルヴィン・ホーンが第1交響曲の第4楽章をオルガン編曲した「即興演奏用の主題集」は拾い物という表現が妥当かわからないが、見事な一編であり、シャラーのブルックナー愛が伝わる演奏となっている。

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     2021/03/12

    1975年生まれのカナダの指揮者、ヤニック・ネゼ=セガンが、シュターツカペレ・ドレスデンを指揮して、2008年ドレスデンでライヴ収録されたもの。1873年稿、いわゆる「初稿」を用いた録音で、後にブルックナーが削った冗長性やワーグナーからの露骨な引用がすべて残った状態のスコアによる演奏。この曲に関しては、今世紀になってから「初稿」での録音が増えており、当盤もその一つ。2008年当時、ネゼ=セガンは、33才という若さであったわけだが、この歴史あるオーケストラから壮麗な音を引き出していて、見事な演奏だ。当録音の後に、ネゼ=セガンは、メトロポリタン管弦楽団との全集作成のため、同曲を再録音しているが、当盤の方がスローなテンポで、楽曲のスケール感を大きく捉えていることは、オーケストラの特性を反映させた上での解釈なのかもしれない。「初稿」を用いている、と書いたが「初稿」には魅力とともに弱点も多くある。冗長性、繰り返しの長さ、全休符のたびかさなる挿入。若きブルックナーゆえの思いのたけの強さが、爛漫たる浪漫性になっており、これを整える造形化の作業はなかなか難しいだろう。しかし、ネゼ=セガンは、あえて雄大な構えをとり、その中で自然な抑揚の中に、うまく各パーツを整えることに成功している。オーケストラの対応力が素晴らしいということもあるのだが、全体的なバランス配分やクライマックスへの布石など、ネゼ=セガンの周到さは随所に感じられ、なるほど、33才にして、このオーケストラから声がかかるだけの力量があったことを思い知らされる。深々とした音色、美しい余韻、的確な残響の効果。それらがあいまって、大きな呼吸で描かれたブルックナーの第3交響曲は、ブルックナー後期の3大交響曲に匹敵すような切迫感をもって聴き手に迫ってくる。これは名演だ!ただし、当アイテムを商品として見た時、一つとても残念なことがある。CD1枚にもかかわらず、「CD4枚が梱包できる大型ダブルサイズ」のケースに梱包されているのだ。なんというコレクター潰しの規格!ゆえに☆評価は一つ減じてしまうのである。

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     2021/03/11

    1972年生まれのアメリカのフルート奏者、シャロン・ベザリーによるフルート・ソナタ集。選曲も魅力的だが、驚くのはピアノ伴奏に大家アシュケナージを迎えていることである。聴いてみるとこれが大成功。なんと瑞々しく美しいアルバムだろう。特に私が感動したのはフォーレのヴァイオリン・ソナタ第1番のフルート版である。他の2作品については、原曲であるヴァイオリン・ソナタをアシュケナージはパールマンと録音していて、いずれも名演であるのだが、フォーレについては、私の記憶が正しければ、この曲に限らず、アシュケナージによるフォーレの録音というのは、これが初めてのハズだ。ところが・・・ところがこれが素晴らしいのである。冒頭から深い歌と味に満ちたピアノ、憧憬と情熱を描きながら、フルートの旋律を促し、支える。これほどの伴奏というのはなかなか聴けるものではない。アシュケナージは室内楽や協奏曲の独奏者としても、数々の名演奏を記録した人だけれど、その蓄積の深さは、とても余人からは計り知れないものであることをこの演奏は証明している。「含み」と「表出」、「支え」と「主張」そういった二面的な要素の配分が絶妙なのだ。フォーレのヴァイオリン・ソナタは美しい名品であり、私も大好きだが、ここまで深みのある表現で描かれたフォーレは、一味も二味も違う。そんなアシュケナージの万全のサポートを得たベザリーは、闊達で清々しいフルートを響かせる。当然のことながらヴァイオリンとは異なる印象をもたらすが、それは決してヴァイオリンに比べて不足があると言うことではない。新たな魅力が横溢している。フランクでは、第3楽章がことに素晴らしい。深い呼吸、幽玄の間合い、そして紡ぎあげる情緒、導かれる哀切な歌、すべてに説得力があり、美しい。プロコフィエフでは健やかなリズムがリリカルな響きを導き、これも魅力的。アルバム全収録曲を通じて、テンポは穏当かやや速めであり、遅めのテンポはほとんど採用されていない。しかし、決して薄味に響く演奏ではなく、むしろフルートとピアノの協演、かくあるべしという高い完成度が示されている。

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     2021/03/11

    1978年生まれのスペインのピアニスト、ハビエル・ペリアネスによる18世紀スペインの作曲家、マヌエル・ブラスコ・デ・ネブラの作品集。ブラスコ・デ・ネブラは1750年生まれだから、モーツァルトより6歳年上ということになる。ブラスコ・デ・ネブラは34才という若さで亡くなったというから、その点でも35才で世を去ったモーツァルトと近い。ブラスコ・デ・ネブラは多くのクラヴィーア曲を書いたというが、現在まで伝わっているものはその一部であり、多くは失われてしまった。現在まで伝えられた作品は、そのスコアが教会で保存されていたというが、実際、この録音で聴くと、そんなエピソードがとてもぴったりくるような音楽だ。ソナタは、緩徐楽章と急速楽章の2楽章構成であるが、素朴で透明。ペリアネスの澄んだタッチが、シンプルなモノトーンを思わせる世界を描き出していく。それは墨絵や雪景色を思わせるような純粋さに満ちている。なんといっても冒頭曲が美しく、これを聴くためだけにでも買う価値はあると思うが、どこか秘めやかニュアンスを帯びた情感はあちこちに顔を出しており、はっとさせられる美観がある。ペリアネスの、時に氷を思わせるような響きが、これらの楽曲に相応しい。

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     2021/03/11

    1962年生まれのロシア系アメリカ人、セルゲイ・シェプキンの録音。シェプキンは、かつてレキシントンに拠点をおくongakuという小さなレーベルに何点かバッハのクラヴィーア曲を録音していた。本盤はより新しいものとなり、2011年の録音で、Steinway And Sonsからリリースされたもの。フランス組曲全曲が収録されているが、シェプキンはフランス組曲第6番の前に「平均律クラヴィーア曲集第1巻 から 第9番 前奏曲 ホ長調 BWV854」を挿入している。ただし、CD表記上は、これが明示されておらず、あくまで、シェプキンは当該楽曲をフランス組曲第6番の「第1曲目 プレリュード」として扱っているのだ。そのため、すぐに続いて本来の第1曲目、当盤では第2曲目となるアルマンドが奏でられる。また、「幻想曲とフーガ イ短調 BWV904」については、同じホールで2種の楽器(Hamburg Steinway と New York Steinway と表記)による2通りの録音が収録されている。シェプキンは運動的で色彩感豊かなピアノで、豊穣なバッハを導き出している。急速楽章、例えば第5番のジーグなどでは、高性能マシーンを思わせるようなアップテンポを採用するが、決して無機的に弾き飛ばすわけでなく、その速さゆえの発色性を存分に味わわせる演奏となっている。シェプキンのアプローチは、自由度が高いという点で、伝統的なスタイルからは乖離している。しかし、その演奏は決して不自然ではなく、溌溂とした情感をともなった生気がみなぎっていて、華麗だ。現代ピアノのスペックを存分に活かした輝かしい響きとともに、適度なルバートをふまえて、雄弁で美しいバッハが繰り広げられている。また、前述の平均律からの引用は、是非、聴いてみていただきたいところだが、確かにしっくり行っており、面白い。また、2つの楽器による「幻想曲とフーガ イ短調 BWV904」は、あえて異なるアプローチで楽器に即応した即興性豊かな味わいを感じさせてくれている。

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     2021/03/11

    コロリオフを師とする1983年生まれのロシアのピアニストアンナ・ヴィニツカヤを中心に、コロリオフとコロリオフの妻であるリュプカ・ハジ=ゲオルギエヴァという3人のピアニストによって録音されたバッハのクラヴィーアと弦楽のための協奏曲集。もちろん楽器は現代ピアノを使用。バッハのクラヴィーア独奏曲を現代ピアノで演奏することは一般的であり、ピリオド楽器で演奏するよりメリットが大きいことは言うまでもないが、バッハの協奏曲となると少し事情がことなる。特に複数台のクラヴィーアを用いた協奏曲では、合奏の際の音量バランスが難しく、録音点数も一気に少なくなる。現代ピアノの音量と音幅が豊かさゆえ、合奏の精度調整の壁となるのだ。しかし、バッハのクラヴィーア作品に精通したコロリオフらの録音は、さすがに見事で、複数のピアノの音であっても、必要な独立性と精度が保たれており、品格ある表現に貫かれている。もっとも台数の多い「4台のチェンバロのための協奏曲 イ短調」では、ピアノ3台使用伴によっているが、テクスチュアが鮮明で、それゆえの線的な表現が息づき、スリリングな味わいを殺すことなく情感の幅を広げている。その完成度の高さには驚かされる。また、単独ピアノの協奏曲においても、各奏者は制御を効かせながら、現代ピアノゆえの表現性の高い演奏をくり広げていて、とても楽しい。特にコロリオフが独奏を担当したピアノ協奏曲第7番は神秘と幽玄の気配が漂い、これまでにない感興が湧く。

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     2021/03/11

    「アルカディ・ヴォロドス」という名に何を思うだろうか。私の場合、その超絶的な技巧により、曲芸的とも言える演奏を繰り広げる人で、様々な楽曲を自ら編曲したり、難しい曲をさらに難しくして、それを圧巻のテクニックで鳴らして聴く人を唖然とさせたりする人物。どちらかと言うと、ヴィルトゥオジティに満ちたエンターテーナー、そんなイメージが強い人が多いのではないか。私もそうだった。そしてそれは間違いではない。だって、そういう演奏をしていたんだもの。ただ、それはヴォロドスという芸術家の一面でしかない。それが「一面でしかなかった」ことは、このアルバムを聴けばわかる。なんと滋味豊かで、血の通った見事なブラームスだろう。ヴォロドスは、しっかりした解釈に基づいて、ブラームスが中低音域に込めた感情の動きを丁寧に救い出し、熟練した音楽の表現としてそれをあきらかに示してくれる。その余情の深さと、感動の大きさには言いしれないものがある。力強いラプソディックなシーンであっても、ブラームスらしい孤愁の味わいが示されていて、なんて奥が深いんだろうと感嘆する。古今録音されたブラームスのピアノ独奏曲の中で、特に忘れがたいものの一つとなるだろう。

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     2021/03/11

    1990年から、シュターツカペレ・ドレスデンの名誉指揮者を務めていたイギリスの指揮者、コリン・デイヴィスが2013年に亡くなった。当アイテムは、デイヴィス追悼の意を込めて、既発のライヴ・アルバム6点をBox-set化したもの。この録音について書く前に、一つ吉田秀和氏の著作からの引用を披露したい・・『ある時、カール・ベームの隣に坐って食事をした。一言、二言、話しているうちに、このつぎはいつ日本に来るのかという話になった。そうしたら、彼は「一度ドレスデンのシュターツカペレを呼んだらどうか。あれこそ本当にオーケストラらしいオーケストラなのだから。その時は、私は即座に飛んでくるよ」という。「でも、あなたは日本に来るのはいつだってウィーン・フィル、ベルリン・フィルといった選りぬきの交響楽団と一緒じゃないですか。ドレスデンはどういうわけで挙げるのですか」というと、あの言葉数の少ない巨匠はニヤッとして「まあ、きいてごらん」といっただけだったが、一呼吸おいて「でも、ドレスデンの方で私にふらせるかな」とつけ加え、軽くため息をついてみせた。』・・私にはこのエピソードが興味深い。もちろん、ベームのエピソードは数十年前のものだから、単純にそれを引っ張ってくるわけには行かないが、冷戦時代からドレスデンがいかに自然な呼吸で素晴らしい合奏を繰り出すことのできるオーケストラであったかを物語るエピソードである。そして、私がこのアルバムを聴いて、思い出すのは、そのことである。いずれの楽曲も、シュターツカペレ・ドレスデンはデイヴィスのタクトに応えて、素晴らしいサウンドを繰り出している。ドイツの森の響きである。エルガーやシベリウスは、デイヴィスがこのオーケストラにもたらしたレパートリーという感が強いが、いずれの楽曲も、オーケストラが昔から馴染んだかのような音色である。エルガーはスケールが大きく、壮大にして雄大。第1楽章の裾野の広がり、第2楽章の迫力、第3楽章の優美、第4楽章熱血と申し分なく、この名曲にふさわしい理想的演奏だ。シベリウスは中音域の厚い、太い響きが特徴で、デイヴィスの過去の録音であればボストン交響楽団との録音に近い響きである。合奏音の融合度の高さに新鮮味を感じる。メンデルスゾーンは情感豊かな描写性に溢れていて、快活さ、華やかさ、激しさを機微豊かに表現しており、さすが巨匠と名オーケストラの繰り出す音楽である。ベリルオーズの「レクイエム」もこのオーケストラにとっては珍しいレパートリーだと思うが、巨大なオーケストラが凄まじいばかりの音で鳴っており、しかも統率が良く取れている。デイヴィスが得意とする楽曲ということもあるが、合唱ともども、熱っぽく、突き上げるようなパワーに満ちていて圧倒的だ。私は、この曲に関しては、この録音がいちばん好きだ。シューベルトとブラームスは古典的で端正な表現で、しなやかな木管の響きに魅了される。デイヴィスという指揮者、シュターツカペレ・ドレスデンというオーケストラの双方を堪能できる味わい深いアイテムになっている。

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