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Deadman returns さんのレビュー一覧 

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     2010/12/27

    浜松市楽器博物館所蔵の1830年製プレイエルを用いたショパンのエチュード全曲。演奏の小倉貴久子はプルージュ古楽コンクールなどの優勝歴を持つフォルテピアノ奏者で、これまでも多くのディスクで素晴らしい演奏を聴かせてくれていた。録音自体は2006年に行われているが、ショパンイヤーに合わせてのリリースになったのだろう。私的にはショパンイヤー最大の収穫がこのディスクとの出会いだった。楽器の機構上の制約などまったく感じさせない自由さ、奔放さ、闊達さ。演奏家と楽器がまさに一体となって生み出される音楽の何という瑞々しさ。ショパンが「エチュード」として表現したかったものをいとも鮮やかに眼前に展開される驚きと、新たな発見の喜びを聴き手に与えてくれる稀有な名演奏である。時代楽器によるショパン演奏というと、母国のポーランドで制作された全集もなかなか愉しい聴き物であったが、小倉さんの演奏のインパクトの前にはすっかり色あせたものになってしまったことは否めない。正直言ってレベルが数段違うのである。またこのディスクには来るべきリストイヤーへの橋渡しの意味合いか、「パガニーニ練習曲集」から「オクターブ」「ラ・カンパネッラ」「アルペジオ」「主題と変奏」の4曲を1874年製のエラールで演奏したもの(こちらの録音は2010年4月)が収録されており、こちらも楽器の音色と演奏の美しさに心奪われるひとときを与えてくれる。

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     2010/11/21

    「この人と同じ時代に生きることができて本当に幸福だ!」と感じさせてくれるアーティストがいる。ナタリー・デセイは紛れもなくそんなアーティストの一人。このDVDはそのデセイの魅力がたっぷりと詰まったまさに「お宝」である。歌の素晴らしさは言うまでもないが、彼女の表現者としての圧倒的な力は「完璧のその上」のレベルというものが存在することを教えてくれる。例えば「ルチア」(フランス語版)の「狂乱の場」。悲しみに心を引き裂かれて激情のあまり殺人を犯してしまい、狂気に逃げ込みたいのだが逃げ込めない・・・。そんなヒロインの凄絶極まりない姿。例えば「魔笛」の夜の女王のアリア。怒り、激情、娘への愛情、ためらいと決意など様々な心の動きをわずか5分にも満たない時間に表現しつくす。2種類収められたツェルビネッタのアリアもコンセプトの違いによる演じ分けが見事。その他、賞賛の言葉には切りがないが、最後にもうひとつだけ。グラインドボーンのガラ・コンサートにおける「キャンディード」のクネゴンドのアリア。固定カメラによる記録映像と思しきものだが、思わずテレビの前で涙しながら「ブラヴォー!」と叫んでしまった。

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     2010/11/21

    先日METでゲルギエフの指揮する「ボリス・ゴドゥノフ」を観た。近年、好不調の波が取り沙汰され、どちらかというと期待が裏切られることの方が多いゲルギエフであるが、さすがに得意のロシア・オペラの分野では他の追随を許さない実に見事な演奏が繰り広げられていた。さて、このショスタコーヴィチの第11番であるが、作品の性格もあって、ゲルギエフのオペラ指揮者としてのよさが十二分に発揮された好演である。交響曲としての枠組みや音響による描写よりも、作品全体の雰囲気を大切にした演奏で、十分にドラマティックでありながら、むしろしみじみとした情感が胸を打つ。いわゆる爆演とは異なるが、聴後に残る感銘はその何倍も深い。

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     2010/11/21

    ロッシーニのスターバト・マーテルは難しい作品である。名曲であることは疑いないのだが、聴き手がこの作品に何を求めるかによって演奏の評価ががらりと変わってしまうからである。単純に二元論的に言えばロッシーニらしい劇的な歌の饗宴を求めるか、宗教曲としての雰囲気を優先するかということになるが、パッパーノの解釈はその二律背反する要素の両方を満たそう入念に考えられたもので、感心させられたとともに、ある程度の物足りなさを残す結果ともなった。第1曲は宗教曲らしい節度と敬虔さを湛えた演奏で始まる。第2曲のテノール・ソロも随分と抑制の効いた歌で、オペラティックな感興を求める向きにはかなり物足りないだろう。3曲目のデュエットも悪くはないが、ネトレプコ、ディドナートともに声の美しさそのもので勝負するタイプではないだけに大きな感銘には至らない。続く第4曲のバスのソロは柔らかく耳に心地よい。その後、演奏は注意深く宗教曲としての雰囲気を保ちながら、徐々に雄弁さと熱を加え、第8曲のネトレプコの直球勝負のソロを呼び水として一気に劇性を高め、フィナーレで圧巻のクライマックスを迎える。興味深く、またなかなかに愉しい鑑賞体験ではあったものの少々疲れた。もっとあっけらかんと楽しめる演奏がちょっと恋しくなったのも正直な感想である。

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     2010/11/13

    第1幕冒頭の2小説半が完全に欠落している。録音も一応はステレオであるが、音像が定まらず、素人がテレコを持ってうろうろしながら録音したような至ってお粗末なもの。ドロップアウトの量も半端ではない。歌唱の方もタイトルロールのテオ・アダムやクライバーのお気に入りだったウェンディ・ファインを含め、取り立てて特筆するような出来ではなく、オーケストラもミスだらけである。ということで、本来ならば「欠陥商品」「価値なし」と一刀両断したいところだが・・・。しかし、しかしである。この劣悪な条件の中で聴こえてくる音楽のなんと雄弁で血の通ったものであることか! この20世紀屈指の名作オペラにおけるオーケストラの役割や意義を、ここまで突き詰めて提示してくれた演奏はなかった。例を挙げればきりがないが、ひとつ挙げれば第3幕第4場の結尾部分を他の演奏と比較してみていただきたい。ここは単なるカエルの鳴き声の描写なのだが、続くニ短調の間奏曲へのブリッジとしての意味をこれほど明らかに伝えてくれた例はない。カルロス・クライバー。本物の天才である。

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     2010/11/13

    シュルホフというと、ダダの影響を受け、休符だけの作品を「作曲」したことなどから前衛的・急進的な芸術家と思われがちであるが(因みにその作品「In futurum」もこのディスクには「収録」されている。「演奏時間」は1分40秒ほどである)、このディスクに聴かれる作品はどれも耳になじみやすく、プーランクやミヨー、あるいは同郷のマルチヌーなどの作品に近い。「5つのグロテスク」などという作品は、そのタイトルに似合わない大変洒脱で愛らしい作品で拍子抜けするほどだ。演奏は精妙なタッチで作曲者のジャズやブルースへの傾倒振りを節度を持って表現していて、なかなか見事なもの。録音も申し分ない。

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     2010/05/08

    このディスクの一番の「売り」はシューベルトとベルクという世紀を隔ててウィーンで活躍した2人の作曲家の弦楽四重奏と歌曲を組み合わせた選曲の妙でもなければ、かのエッシェンバッハが歌曲の伴奏でさんかしていることでもない。「抒情組曲」が最終楽章「悲嘆のラルゴ」にボードレールの「深き淵より我は叫びぬ」(ゲオルゲによるドイツ語訳)の歌詞を持つ独唱付のヴァージョンで演奏されている点にある。1977年に発見された自筆譜によって明らかになったこの声楽付ヴァージョン、残念ながらあまり定着せず、ディスクでも全曲演奏はクロノス・クァルテットのものくらいしかなかった(他にラルゴ楽章のみを演奏したものが数種あり)。確かに声楽パートは「声楽的」に書かれておらず、歌唱が難しい割には効果が挙がらないなどの理由は窺われるものの、個人的にはもっと演奏の機会が増えてもよいと思っている。日本初演に接したときにはそれこそ鳥肌が立つほど衝撃を受けたものだ。そんな私にとってこの新しいディスクの登場は喜ばしい限りである。さて肝心のティモスSQの演奏だが、感覚的には磨かれたなかなかの好演ではあるものの、チェロが控えめな演奏に終始しており、そのせいで全体の表出性が弱まってしまったのが残念。シューベルトでは同じ不満は感じなかったので、作品に対する演奏家の踏み込みの差が出たのかもしれない。

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     2010/05/05

    プレートルの持ち味である開放的な音楽性と明るいサウンドが楽しめる演奏。「展覧会の絵」ではライヴならではの即興的なテンポの揺れ(これもプレートルの本領)にオーケストラが戸惑いながらも何とかついていっている様子が窺えて面白いが、完成度は今ひとつで、あえてCDで聴くほどのものではないと言うのが正直な感想。文句なく素晴らしいのが「ダフニスとクロエ」。眩いばかりの輝きと濃密な表情が一体となった名演である。「ボレロ」の第2メロディーの「崩し」は古くからのファンにはお馴染みのものだが、今回このような形でディスクに残されたのは喜ばしいかぎりである。オーケストラがいかにもドイツ人らしい生真面目さで付き合っているのも微笑ましい。

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     2009/11/20

    初めて聴いたヴァイオリニストだが、このベルクのコンチェルトは出色の出来で楽しめた。のびやかなフレージングと温かみを失わない音色で情感豊かに弾き上げており、音楽がギスギスしたり、縮こまったりしていないのがよい。第一部のいわゆる「ケルンテンの調べ」の部分など胸に迫る美しさだ。ネルソンズの指揮によるオーケストラも神経の行き届いたバックで大変好ましいが、第二部の後半でやや音響や音楽素材の整理に神経を使い過ぎて、音楽の求心力が失われてしまったのが残念。若手指揮者の経験不足が出てしまった。ベートーヴェンの方はソロ、オーケストラともに一層のびのびとした演奏で気持ちがよい。

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     2009/09/24

    このセット化&再発売はハイドン・イヤー最大の収穫のひとつといえる。ここに収められている演奏を聴くと、モーツァルトよりもベートーヴェンよりも(もしかするとマーラーよりも)、バーンスタインの音楽性とマッチする作曲家がハイドンなのではないかと思えてくる。現在の流行からすればもちろんオールドスタイルに属する解釈なのだが、何と瑞々しく生命力に満ちた音楽が鳴っていることか。ハイドンの古典的な形式感も機知やユーモアに富んだ才人ぶりも、過不足なく音楽として昇華された形で表現されている。交響曲はもとより、あまり聴く機会がないミサ曲も実に素晴らしい。スタイルを越えた名演奏の記録として、また大指揮者の優れた遺産としてぜひ残しておきたいセットだ。

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     2009/09/24

    このセット化&再発売はハイドン・イヤー最大の収穫のひとつといえる。ここに収められている演奏を聴くと、モーツァルトよりもベートーヴェンよりも(もしかするとマーラーよりも)、バーンスタインの音楽性とマッチする作曲家がハイドンなのではないかと思えてくる。現在の流行からすればもちろんオールドスタイルに属する解釈なのだが、何と瑞々しく生命力に満ちた音楽が鳴っていることか。ハイドンの古典的な形式感も機知やユーモアに富んだ才人ぶりも、過不足なく音楽として昇華された形で表現されている。交響曲はもとより、あまり聴く機会がないミサ曲も実に素晴らしい。スタイルを越えた名演奏の記録として、また大指揮者の優れた遺産としてぜひ残しておきたいセットだ。

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     2009/09/20

    ミヒャエルに尽きる!移りゆくヒロインの心理状態を緻密かつリアルに再現した演技はに一瞬たりとも目が離せない。マクヴィカーの指示もあったのだろうが、彼女自身の力によるところが大きそうだ。根っからの「オペラ女優」魂を持った人なのだろう。歌唱的にはもともとメッゾ出身なので、中音域がしっかりしているのが強み。「ヨハナーンの首を!」という叫びにもたっぷりと情感が乗っていて迫真的だ。エリーザベトとヴェーヌスの2役を一人で演じたベルリンの「タンホイザー」なども映像化されないだろうか。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2009/09/20

    この作品のテーマである恐怖と憤怒を表現しきるには、ブラスとパーカッションの炸裂以上に、頻出多用されるユニゾンの扱い方が大きなポイントとなるが、その点で言うとこの若い指揮者の演奏は残念ながらまだまだ不十分。上滑りしないていないな音楽作りには好感が持てるので、今後に期待する。なお終結の和音の後に鐘の余韻だけ残す(スコアには指示がない)やり方は、ロストロポーヴィチの模倣かもしれないが、やや安直の感が否めない。

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