第11位

2005年8月22日 (月)

Leonard Cohen

静かなるデビュー

その作品と作品のインターバルの長さから過小評価されている最も代表的なバンドがBlue Nileではないだろうか。’84年リリースのファースト・アルバム『A Walk Across The Rooftops』から’04年リリースの『High』迄の21年間に発表されたアルバムはたったの4枚。しかしながら、その妥協を許さないマイペースな活動、自身の音楽に対するひたむきな想いはもっともっと正当に評価されるべきであろう。

ポ−ル・ブキャナン、ロバート・ベル、ポール・PJ・ムーアの大学時代の仲間3名からなるBlue Nileは’81年にデビュー・シングル「I Love This Town」を自主レーベルよりリリースし、地元グラスゴーを中心に評判となる。やがてBee Gees等で知られるRSOレコードより同曲が再発売されるも、残念なことにRSOが倒産してしまい契約を失う。

苦難のスタートとなったが、何とか完成していたアルバム用のデモが、グラスゴーのリン・プロダクツの試験用音源に起用され、この会社の全面的なバックアップのもと’84年ファーストアルバム『A Walk Across The Rooftops』をヴァージン傘下のリン・レコードよりリリースする。不必要な音を廃し、あくまでもシンプルにこだわったサウンドに、ぐいぐいと聴き手を世界に引きずり込みポールの表現力豊かなヴォーカルは各誌で高い評価を得た。

名曲「Downtown Lights」の誕生

生みの苦しみからか次作『Hats』がリリースされたのは5年後の’89年だった。しかし5年のブランクも好意的に迎えられ、『Hats』は前作同様、あるいはそれ以上の高い評価を得たばかりか、その唯一無比な存在のためか、彼等はたった2作でミュージシャンズ・ミュージシャンの地位を確立させてしまった。Rod Stewart『Spanner in the Works』Annie Lennox『Medusa』の中でこのアルバム2曲目の「Downtown Lights」を取り上げている。彼等を語る上で欠くことの出来ない名曲である。

沈黙、リリース、そしてまた沈黙・・・

7年間の沈黙を破り’96年にようやくサード・アルバム『Peace At Last』がリリース。レコード会社をワーナーに移籍した今作は、シンセを多用し、打ち込み主体だった前2作とは違って、生ドラムやベース、アコースティック・ギターも使ったサウンド面での変化や、今まで以上にキリスト教色を増したポールの詩にも注目が集ったが、一段と円熟味を増したポールのヴォーカルが何とも言えぬBlue Nileらしさを感じさせる好盤となった。

もうすっかり彼等のペースには慣れたとは言え、4作目『High』のリリースまでには8年後の’04年まで待たされた。5年、7年、8年と徐々に長くなるインターバルにはあきれるというよりは、素直にまた彼等の作品が一つリリースされた事への喜びに似た感情を持たずにはいられない。また『High』国内盤には先述したデビュー・シングル「I Love This life / The Second Act」がボーナス・トラックとして収録されるといううれしいサプライズもあった。

おそらく今後もマイペースな活動を続けていくのであろうが、今後は作品と作品の合間に例えばライヴ・アルバムとか、数多あると想像される未発表曲やテイク集等のリリースも実現してもらいたいというのが一ファンの本音というものだろう。ミリオン・セラーやヒット曲はただの1曲もないが、Blue Nileとは確実に記録ではなく記憶に残るグループの一つであろう。

※表示のポイント倍率は、
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

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