第9位
2005年8月26日 (金)
留まることを知らない果て無き才能
60年代後期のイギリスが生んだ英フォーク・ロックの名グループ、 フェアポート・コンヴェンションのリーダーだったことでも知られるリチャード・トンプソン。また70年代初頭にフェアポートを脱退してからのトンプソンは、1974年から1982年までの間に彼の夫人であったリンダ・トンプソンと数々の共作アルバムの名アルバムを制作。その後はソロ・アーティストとして活動を続けている。
フェアポートからソロへ
リチャード・トンプソンは1949年4月3日、ロンドンに生まれている。そして60年代後半にフェアポート・コンヴェンションの一員としてミュージシャン活動を開始した。トンプソンが1967年から1971年まで在籍したフェアポート・コンヴェンションは、もともとアメリカのフォーク・ロックやサイケに影響を受けたグループだったが、その一方でブリティッシュ・トラッドの要素とエレクトリックなロックンロールの融合させながら、実にオリジナルなロックを展開した。そのグループでトンプソンは、サンディ・デニー、イアン・マシューズ、サイモン・ニコル、デイヴ・マタックス(1969年から参加)といったメンバー達とともに、ファースト・アルバム 『Fairport Convention』(1968年)、『Unhalfbricking』(1969年)、『Full House』 (1970年)といった、現在でも優れた作品として評価の高い名作を世に送り出し、英国のエレクトリック・フォーク・ロックにおけるひとつの原型を作り上げるという功績を果たした。
その後1971年初頭にフェアポート・コンヴェンションを脱退したリチャード・トンプソンは、ザ・バンチ・アンド・ザ・サン名義で、さまざまな友人達と組みながら二枚のアルバムを制作した。1972年、彼のファースト・ソロ・アルバム『Henry The Human Fly』発表。なお本作の制作に関わったリンダ・ピータースは、アルバム・リリース後に行われたツアーにも同行した。やがてトンプソンとリンダ・ピータースは結婚し、私生活上でも仕事の上でもパートナーとしてともに活動していくことになる。そのリンダ&リチャード・トンプソンの最初の共作アルバムは『I Want To See The Bright Lights Tonight』 。1974年に発表された同作品は、高い評価を受けたが、これをはじめとしてその後、彼らデュオは『Pour Down Like Silver』(1975年)、『Sunnyvista』(1979年)、『Shoot Out The Lights』(1982年)といったアルバムを発表していった。中でも彼らの最高傑作といわれる『Shoot Out The Lights』は特に高い評価を受けている。
リチャード・トンプソンはまた現在までソロ・アーティストとしても活躍している。付け加えると、リンダと離婚した1982年を境に彼のソロ活動には弾みがついたといえる。代表的な作品をここで挙げると、『Guitar Vocal』(1976年)、全編インストゥルメンタルで占められた『Strict Tempo!』(1981年)、『Hand Of Kindness』(1983年)、『Across A Crowded Room』(1985年)、『Rumour And Sigh』、Mirror Blue(1994年)といったところか。最新作はつい先ごろ(2005年8月)に発売されたばかりの『Front Parlour Ballads』ということになる。なおトンプソンの作品は、ここに挙げたもののほかでも、いずれも評論家筋にウケがいいということも付け加えておこう。
ギタリストとしても超一流
リチャード・トンプソンはギタリストとして非常に卓越した技術と音楽的センスを併せ持っている。フェアポート時代から、ブリティッシュ・トラッドとロック・ギターをブレンドした革新者であったトンプソンは、米国のカントリーを思わすトリッキーなベンドを用いたエレクトリック・ギター・プレイやピックの端でプレイするハーモニクス、その他豪放で鋭いロック感覚溢れるプレイや、英トラッドの影響を感じさせるアコースティック・プレイでの変則チューニングなどなど、実に幅広い演奏を聴かせる。またそうした幅の広いサウンドを聴かせつつも、どこかストイックさに貫かれているのも彼のプレイの特徴で、アメリカの音楽を感じさせながらも、同時にその根底にはイギリス特有のダークな感覚を感じさせるところもある。上手くは纏められないが、とにかくリチャード・トンプソンのいわく言い難い、シブいギター・プレイは、その魅力に一度とりつかれたらなかなか抜け出せないような感触を携えているように思う。
なお最後になってしまったが彼のパーソナリティを強く感じさせる味わい深いヴォーカルや、その職人芸的なソングライティングの才も高く評価され、音楽ファンから慕われていることを付け加えておきたい。
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