第3位

Wednesday, September 7th 2005

元祖政治的メッセージを発信したバンド

扇動的なゴリゴリの政治性とそれに負けないハードでノイジーなサウンドでIggy Pop & Stoogesと共に､元祖リアル･パンク･ロック･グループの名を与えられているMC 5。 パンク以降のバンドやHR勢、そしてガレージR&R勢の源流に位置付けられる、伝説のデトロイト・バンドでその影響力は絶大なものだ。

MC 5（モーター・シーティ・ファイヴ）はRob Tyner(vo)、Fred "Sonic" Smith(g)、Wayne Kramer(g)を中心にMichael Davis(b)、Dennis Thompson(ds)によって結成された。（後にRob Tynerは一時バンドを離れるが復活する） コピー・バンドとしてスタートした彼らはイギリスのバンド、The Whoをテレビで見て衝撃を覚えたそうだ。

人種差別やベトナム政策などの影響により学生運動が活発になった1964年彼らはライヴ活動をスタート。結成当時のメンバーで一時期バンドを離れていたRob Tynerと偶然であった彼らは再び彼をバンドに迎え入れた。
1966年にはバンドとして初のレコーディングをスタート。そしてこの時期に政治活動家であるJohn Sinclairと運命的な出会いをしている。バンドは彼をマネージャーに迎えると、極左過激武装グループ“ブラック・パンサー”に共鳴していたということもありみずから“ホワイト・パンサー”を結成した。

67年頃から彼らの政治的活動は過激さを増しアメリカ国旗を焼き払い、扇動的なメッセージを持った集団へと変貌。その過激すぎるパフォーマンスによって幾度となく逮捕されるということが起きた。

衝撃的なデビュー・アルバム

1968年、アメリカ史上に残る大事件へと発展したシカゴ民主党大会でライヴを行った彼らは偶然その場に居合わせたエレクトラ・レコードのA&R、Danny Fieldsの目に留まり1968年エレクトラ・レコードと契約。 すぐさまレコーディングの準備がされ1968年10月30日、31日にグランディ・ボール・ルームでライブを録音、1969年にアルバム『Kick Out The Jams』として正式にリリースされた。

「破壊せよ」と叫び怒りや破壊といったイメージなのだが、その裏にあるサウンドへはソウル、ブルース、フリー・ジャズに深く根ざしていてただメッセージを伝えるだけに終わらないサウンドは後のパンク、ヘヴィ・メタル、オルタナへと繋がっていくのだった。 しかし、アルバムのタイトル曲"Kick Out The Jams"の中で叫ばれる「Motherfucker」のあまりにも過激な歌詞により全米各地で放送禁止や販売中止となったのだった。 この曲は後にJeff Buckley、Rage Against The Machine、Blue Oyster Cult、Presidents of the United States of Americaらによりカヴァーされているのだが、とりわけその革新性を受け継いだRage Against The Machineヴァージョンはかなりの迫力で迫ってくるものがある。

早すぎた革新

翌年1970年には早くもセカンド・アルバム『Back In The Usa』がリリースされたのだが、プロデューサーの手によりこれまでのMC 5。のイメージを一新することとなり、過激な政治的メッセージはまったく排除されてしまった。 こうしたことによりファンが反発、71年には3枚目のアルバム『High Time』をリリースするも商業的に失敗。レーベルを追われることとなったのだった。

MC 5。が行った政治的革新性はその当時のアメリカでなら湧き上がってきて当然のことだったのだろう。これをここまで高らかに音楽というジャンルで表現できたのはものすごい激情と衝動だったのだろうが、時代は彼らの革新に追いつかなかった。 しかし、この革新性はRage Against The Machine、System Of A Downといったバンドに引き継がれている。