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うーつん さんのレビュー一覧 

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     2019/08/14

      聴いていつも感じるのは「わびさび」。なぜか分からないが、いつもそう感じる。チェンバロによるゴールドベルクとしては鈴木雅明のゴールドベルクではそうは感じない(こちらも好きな演奏で、華やかな明るさと軽妙さを感じたいときはこちらを聴いている)し、、A.シュタイアーのゴージャスで重厚な響き(チェンバロの機能のすべてを駆使した演奏と言えばよいだろうか)とも異なる。

      少しざらっとした肌触りを感じ、磁器というよりはむしろ陶器に近い土の質感(?)を聴くと想像してしまう。演奏のすばらしさ、楽器の音質などは前出のレビューの方が十分に論じられているので、「どのゴールドベルクを聴こうか」と考えている方の参考材料に。

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     2019/06/22

     オーボエの名手にして、作曲・指揮など理論と実践の両面を極めているホリガーの面目躍如たる一枚として面白く聴けた。そういえばシューマンもピアノ演奏・作曲・理論・文学・評論・出版など多方面に明るかったのでその意味でも両者には共通する部分もあるのだろうか。


        ホリガーが深く傾倒しているシューマンを軸に自作や編曲交えシューマンと対話するかのようなプログラムはかなりマニアック。渋めの小品からオーボエが豊かに歌いはじめ、Op.94に移ろいロマン的な香りを漂わせていき、ホリガーの自作へガラッと染まる。   シューマンへのオマージュというかシューマンの人生への考察を音楽にしたのだろうか。やがて狂気にむしばまれていくシューマンの内面を現代音楽として表現したものと解釈している。決して聴きやすい曲とは思えないが、これが中心にあることで前後の曲に「ただのロマン派の作曲家ではない」というメッセージが加わり、曲にも深みと苦みが添えられていく。 妻・クララや盟友J.ヨアヒム、シューマン夫妻と深いつながりを持つにいたるブラームスの影(影も”灰”色と言えるだろうか?)が垣間見え、シューマンの人生の絵巻を1枚にまとめたようなディスクとしても聴こえる。


        ”灰”と”灰色”が違うのは承知しているが、聴いた感触として、天真爛漫な明るい”白”でもなく、救いようのない暗い”黒”でもない。どちらの性質を持ちつつ、そのどちらでもない”灰色”に包まれたディスクにも感じる。  オーボエが好きな方、シューマンが好きな方、ホリガーに興味を持つ方はもちろんだが、音楽の”精神の系譜”を考えてみたい方にもおすすめしたい。

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     2019/06/22

     柔らかく温かなフルート(フラウト・トラヴェルソ)の音色。これを盛り立てつつ包み込むチェンバロの涼やかな音色。ヴァイオリンやヴィオラ・ダ・ガンバも魅力的。  主役であるフルートの特性や材質、ピッチの違いもあるのだろうが、グイグイ耳に攻めこんでくる感がなく、どちらかというと和室でしずかに聴きたくなるような風合いがあり、聴いていると何やらみやびな落ち着きをもたらしてくれるディスクだと思う。
     
        内容はもちろん申し分ないが加筆するなら、このシリーズ全般のジャケットデザインに使われている有本利夫の時間が静止したような美しい絵が音楽の方向を物語るようでとても気に入っている。絵なのだから静止は当然のことだが、氏の絵はおそらく動画であっても動く気配が想像できない。その独特な時代性と環境の中で永遠に留まっているような不思議な一瞬が切り取られているように思える。 私はなんとなくこのジャケットを見たら「こんな演奏なんだろうな」と誘われたように購入した気がする。

        蒸し暑いこの季節にはこんな音楽を感じたくなる。推薦。

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     2019/06/18

     今年(2019年)4月、「東京・春・音楽祭 2019」内のコンサートで同6曲の演奏会に参加する機会を得た。ヴァイオリンとチェンバロの掛け合い、または対話(おしゃべりの時もあり)であったり、信仰告白にも近い場面など様々なドラマがあり、それこそがこの曲の面白さと感じたものだ。   

    そしてこの盤。自然ではつらつとふたつの楽器が鳴り響く。個人的な感覚で悪いが、うますぎて鮮やかすぎるあまり、興ざめしてしまうことが稀にあるファウストのヴァイオリンがここでは全然気にならない。ただ、そこに音が響き、音楽が伝わってくるとしか言いようがない。バッハの曲が技術性を超越しているのか、ベズイデンホウトのチェンバロが中和しているのかは判らない。   いずれにしても音楽に浸れる悦びを感じられる。実に自然ではつらつとしたヴァイオリンとチェンバロの音が織りなすバッハの宇宙を他の方にも感じてほしい。推薦。

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     2019/06/01

     1999年、ハノーファー現代音楽祭におけるライヴ収録とのこと。細川俊夫の作品も作曲されたのがたまたま現代というだけで、伝統楽器のために作られ、演奏されると「ゲンダイオンガク」に聴こえないのが面白い。ほかの収録曲も新鮮で、現代音楽祭の聴衆にも「フレッシュな音楽」として聴こえるのだろう。   
     日本では絶滅危惧種的なローカルな音楽になっており、かく言う私も進んで聴きに行くとは言えない。これらの曲もこのようにして聴くと、なるほど実に面白い。三味線でも琴などの伝統楽器による音の粒立ち、強靭さにも感心させられる。

       現在の日本でほとんど聴かれない音楽、使われない楽器と唄を聴くために海外の現代音楽祭に行かないと耳にできないというのは日本人として少し考えさせられる。「新しい」「古い」というカテゴリーで区切り、「古い」から聴かない・目を向けない考え方に反省を促す教材でもある気がする。たとえ作られた時期が古くても、それは「作品が古い」と同義にはならない。当盤の演奏後、聴衆が送った拍手がそれを物語っている。  個人的な意見だが、今のニホンで「最新のミュージックシーン」として湯水のごとく流されていく音楽よりも音楽が締まっており、メッセージは強いとさえ思う。

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     2019/05/23

     24番 K491は思うにプレヴィンが最も好んでいるモーツァルトのピアノ協奏曲なのではないだろうか。他のディスクやDVDでもこの曲を取り上げ、NHKsoとのコラボでも数回弾いている(そのうちの一つはディスクで登場済み)がこの盤がコンディションでは最良ではと思う。いわば自家薬籠中の作品で、モーツァルトで「おしゃべり」ができる気心知れたウィーン・フィルとの共演なのだから、楽しくないわけがない。

      悲劇的であり、にもかかわらず典雅な空気に包まれたこの曲を、それほど悲劇ぶらずに、ほのかな憂いをまとわせつつ涙ぐみながらも微笑みを漂わせるような雰囲気が曲全体で伝わってくる。急ぐことなく、じっくりと弾き振りするプレヴィンとオケの呼吸がぴったり合っていてとても安心して聴くことができる。 

      カデンツァは数ある同曲のカデンツァの中でも特に優れたものではないだろうか。ほんのりジャズにおけるImprovisationの香りを私は感じる。おそらくそれこそプレヴィンらしさなのだ。

      他の盤で書いたかもしれないがプレヴィンの演奏を一言で表すなら「中庸の美」と言えるのかもしれない。このディスクにもまぎれもないその「美しさ、温かさ」があり、それが他の音楽家と一線を画す資質と思える。 彼のモーツァルトの中でも、というより彼の持ち味をすべて味わえるのがこのK491(もちろんカップリングのK453も美しく潤いを持った素晴らしい演奏)だと思う。ゆえに未聴の方(そして音楽を愛するすべての方々)にお勧めしていきたい。     …音楽に愛された音楽家、アンドレ・プレヴィン氏の冥福を祈りつつ、レビューをしておきます。

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     2019/05/01

     レビューにもある2018年サントリーホールでの公演で感銘を受け、購入。 2018年の公演では「Preludes to a lost time」と銘打ってアンタナス・ストクスの写真をスライド上映しながら1時間弱、求道的に当盤の作品紹介にあたっていた。満員のサントリーホールで我々には耳慣れたとは決して言えないヴァインベルグのソロ演奏で勝負をかけ、しかも会場の空気を支配してしまうクレーメルの力量と企画力に脱帽した記憶がよみがえってくる。



      先に言っておくが、聴いてすぐに「あ、いいね、コレ」と言えるような内容ではない。しかし、訴えかける情感は尋常でなく軽い気持ちでは聴きとおせない「秘曲」の類。24の各曲が統一したテーマを持っているとか関連性があるようには思えず、それぞれにしのばされた感情や場面、光景を自分なりにイメージしながら聴くのがお勧めだと思う。


       ひとつ注文を付けるならストクス氏の写真作品をもう少し加えてみた方が内容的には良かったのではないかと思う。当盤の内容はパトスの発露とでも言ったらいいのだろうか、ヴァインベルグが見聞きし体験した人生から得たものを音に込めたものである気がする。そのヒント、もしくはインスピレーションの源となりそうな光景が2018年公演時のスライド上映ではいくつも観ることができた。  まあ、写真のことは措いておいても曲・演奏はおすすめです。

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     2019/04/30

     おりしも改元フェスティバルの感すらある平成最後の買い物のひとつ。他に買ったシューベルト:ピアノ・ソナタ 第19・20番ほか(A.シフ ECM)、ヴァインベルグ:24の前奏曲 Op.100(G.クレーメル Accentus Music)も楽器や作品の思想背景に「時代」が関連してくるものを選んでしまったのは偶然か深層心理がはたらいたのか。



      いずれにしてもこの「巨人」も、作曲・初演当時の空気や息吹きを感じることができたことで「時代」というキーワードに共通するようだ。楽器編成の前知識あってこそだが、とても新鮮な気持ちで聴くことができた。決定稿が作曲者の最終決定だからそちらの価値も認める一方で、このように新鮮で才気と気概に満ちた演奏を聴くと、様々な版での録音も愉しめるというものだ。音の見通しは当盤も十分だが、ブーレーズの同盤(版はもちろん異なる)に感じられる「すべての音が見渡せる」気持ちよさと少し違い「初演した会場の空気や雰囲気、マーラーの時代の始まり」を見渡せるような気持ちよさが当盤の特徴だろうと思う。個人的な感想として、「花の章」の一見のどかなメルヒェンの中にほんのり狂気というか恐ろしい「異質な何か」が萌芽としてみられるような気がした。

      第一楽章の明るい靄の中から朝日が森や平原を次第に照らしてゆくような空気感はまさに時代の始まりを予感させるような清々しさをも感じさせる。ロトが今後マーラーを全集にまとめるのかは定かではないが、それを期待させる素晴らしい出来栄えと思う。

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     2019/04/30

     平成という時代の最後に購入したディスクのうちの一枚はこれ。数年前にリリースされたソナタ18番&21番の続編で後期ソナタ集の完結編ともいえるディスク。前回同様、1820年ごろ製作といわれるフォルテ・ピアノでの演奏は魅力であふれた内容となっている。



       いつものことながらシフの弾くピアノ(ピアノフォルテでも)、特にシューベルトにおいては(ほかの演奏者と比較して)控えめな表現であるのに、心情がそのまま心に沁みこんでくるような独特の情感がある。 今回のフォルテ・ピアノでの演奏はその最たるもので、その時代の香りすら感じさせるといったら言い過ぎだろうか。目を閉じて現代の視覚情報をシャットダウンして聴いてみることをお勧めしたい。  演奏自体はあっさり通り過ぎていくのに、そのあとにくるほのかな苦みと寂寥感や心の震えはシューベルトの晩年の作品であるがゆえか、それともフランツ・ブロードマン製の楽器の音色の魔法ゆえか。



       おそらくこのディスクはシューベルト初心者でも聴きやすいと思う。が、はじめ「きれいな曲」とだけ思えたものが、聴きこんでいくうちにその魔力、もしくは深みから離れられなくなり、その中で悶え苦しんでいくような「シューベルトの毒」を放ってゆく事になるであろう。 ピアノ・フォルテでの演奏は他にも多くあるが、シフの奏するディスクほど音の佇まいがあり、なおかつ演奏者の存在を超越して音楽そのものが伝わるのは少ないであろう。



       シフのこの演奏は永く聴きこめる滋味深い内容でどなたにもお勧めしたい。 平成・令和などの時代の変化があろうと、はたまた現代とシューベルト在りし時代の変遷が激しくなろうと、良い作品は残りつつ更に輝きを発し、それを最善の方法で伝えようとする人物も絶えることはない。そう信じてみたいものだ。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2019/04/03

     曲目は決して万人受けするとは思えない。一見するとバラバラな選択とも思える。また、演奏もみんなが嬉しがるものとも思えない。もっとかっこよく弾く人もいるだろうし、もっとスマートに弾く人も星の数ほどいることだろう。そんな中にこの曲目をこの演奏で自分の人生の信仰告白として発表するアファナシエフの矜持たるや…。 だからこそ、聴いて受けとめる価値があるのではないだろうか。そんな作品集だ。



        TESTAMENTというと何かいわくありげなタイトルだが、その後のインタビュー記事などを見ても「これでおしまい」でないのは嬉しいところ。演奏者自身のマイルストーンとして、今までの人生の歩みへのオマージュとしてこの6枚が作られた様子だ。


       どの曲も一筋縄ではいかない晦渋な音の運び、そうは言っても昔ほど驚くほどのテンポ設定はないので純音楽的にじっくり聴いていきたくなる内容。 音の隙間(行間とでも言ったらいいのか)に、この演奏者特有の「味」が出ている。 




        音楽が作曲者の人生や思想を表わしたひとつの形態であるのと同じ意味でこの曲集が、アファナシエフという「ピアノを使う、ある思想家」のアルバムとなっていることではほかにあまり類を見ない表現形態と思う。曲についての感想やレビューはおそらく必要ない気がする(それでは音楽レビューにならないのは承知しているが)。音楽というフィルターを通して何を思い、何を考えるか…そこにこのアルバムの醍醐味があると私は思う。

      

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     2019/03/28

     ゲルネ&エッシェンバッハによる素晴らしい「美しき水車屋の娘」。 数ある「水車屋」の中でも筆頭にあげたいディスクだ。テノールだと水車屋の娘に振り回され(または勝手にいれあげて)ずたずたになっていく青年の心の過程がリアルに伝わるのに対し、バリトン(特にゲルネの深い呼吸による低音)では、少し客観的に聴こえる気もする。しかし、だからこそ詩の内容がストレートに響いてくるのではないだろうか。その意味で、このディスクの歌唱は痛切に心に届いてくる。


      そして、特筆すべきはエッシェンバッハのピアノ。  ある時、ふと聴いたら、彼のピアノ(特に「朝の挨拶」、「涙の雨」や「水車職人と小川」、「小川の子守歌」など)の最初の1音に強く心を揺さぶられたのだ。その曲に潜む痛み、そして内奥にある「若き職人の、傷つきやすい心への共感、そして死への恐れと憧憬」とも言えそうな仄暗いものが、その第1音から滲み出てきたように思えたのだ。歌の前、伴奏の音にも「詩」が含まれているのだ。



      このディスクが発売されてかなり経ってからの投稿だが、エッシェンバッハのピアノ(もちろんゲルネの歌唱も)を聴いてほしいと考え、今更ながらレビューします。

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     2019/03/12

     聴いていると自然と背筋がピンとして、佇まいを正したくなるような凛としたバッハです。ピリスの演奏はどれも「凛」という言葉がとても似あうと感じています。バッハの禁欲的な音楽とは相性も良く、だからと言って感情を抑制した(禁欲的を誤解した考え方としての)非人間的なバッハに陥らないところがピリスのいいところ。鍵盤にのせて人間的な喜びや悲しみが歌い上げられていく。2018年に発表された引退がかえすがえすも残念でならない…。これを聴くたびにそんな思いに駆られてしまいます。


      技術満載なバッハや奇抜なバッハを聴きたいなら他をあたってほしい。心にしみこむバッハを望む方にはピリスの当盤をお勧めします。

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     2018/12/23

     無色透明な美しいオーボエの歌声。ゆえに様々な時代や地域の音楽をひとつの楽器で、かつ1枚のディスクにまとめるにはぴったりなのだろう。 「橋(Bridhes)」がタイトルにつけられたのもそれゆえか。   
     
      細川作品が目的で入手したが、他の作品も時代が違えど魅力的な作品ばかりで、編成も様々のため聴いていて飽きることがない。一本の楽器を通して様々な作品に光を当てて紹介してくれるのは非常に嬉しいし、楽しいものだ。ここにゼレンカのトリオやベリオのセクエンツァなど入ってきたらもっと面白い気もするが収録時間を超えて難しかったのだろうか。  いずれにせよ挑戦的であり、意欲的なファレンティンの今後に期待していきたい。

       

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     2018/12/23

     笙のための雅楽作品と細川俊夫の作品(笙とアコーディオンのための)が交互に演奏される。そこから感じられるのは古くから奏される雅楽の作品も現代に細川によって創られた楽曲も同じように感じられることだ。   


      雅楽は古い曲にあらず、現代作品と並んでもひけをとることがない「先鋭的」な作品でもあることに気づかされる。ここに収められた雅楽作品の由来に明るいわけではないが、雅楽で表されたものも細川作品も「水平に流れている時間の中から刹那の時を感じ取り、垂直方向に深く聴きこんでいく」というスタンスは同じものなのだろうか。

        私の素人考えで、お気軽な陽気な楽器というイメージのアコーディオンがこれだけ深い音楽を奏でられることに気づくことができたのもこのCDのおかげであり、笙との相性の良さも学ぶことができた。難しいことを考えずに、閑に時間の深みを推察したい方におすすめしたい。常に気ぜわしく時間に追い立てられ、時計の回転が速くなってしまった現在において、この手の音楽に浸ることはおそらく必要なことのように思える。

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     2018/12/23

     孤独に思いをはせる夜のような、深みのある暗いゲルネの声と歌いぶり。ヒンターホイザーの伴奏は、さながら月の明かりが夜の暗闇を余計に際立たせるよう。


    心のアップダウンが激しいシューマンの「ダウン」気味な曲がメインとなっているようだが、ただの陰鬱とはちがう、心の闇を散策することを愉しむかのよう。いわばシューマンが心の闇の部分を芸術へと昇華させた結果がこのアルバムで聴くことができるように思う。孤独や闇(夜という具象的な意味でも、精神的な意味合いにおいても)を否定したりなおさら強調するわけでもない、そこへしずかに身を浸しているような趣きが感じられる。

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