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9人の方が、このレビューに「共感」しています。 2018/01/06
世の中には「わかっていてもできない」ことがある。この巨匠のベートーヴェンはそういう演奏だと思う。サイトのレヴューで観ることがなかったら、絶対に入手など考えもしかったセットであるが、まず思ったのは、あれだけ日本に来てくれていた巨匠にも関わらず、一度も実演に接しなかった後悔。世の巨匠は晩年になるとベートーヴェンでもインテンポではなくなると小生は思うのだが、ブルゴスは本当に適切なテンポを決め、インテンポを守る。その結果、メロディとスケールが両立した素晴らしい演奏を聞かせてもらった。少し遅めのこのテンポ、なぜか懐かしさと納得感が半端無い。7番3楽章のトリオなど「やっぱりこのテンポだよなぁ」と正にほっこりしたし、エロイカでは全曲にわたりしっかりとしたテンポ、造型の上に充実した響きが鳴り渡る。終演後の客席の盛り上がりも当然である。このように細部より全体の流れと響きを両立させた演奏、最近ではお目にかかれない。気鋭の指揮者たちはこのブルゴスのような演奏がいかに難しいか知っているのでは無いだろうか。「知ることとできることの差」は我々素人の想像以上なのだろう。アランフェスはこの演奏と映像があること自体が有り難すぎる。幻想は巨匠も表現の幅が大きく自由。展開部の繰り返しを省略して流れに任せたり、マルティノン以来(?)の素敵なコルネットを聞かせてくれたり。それでも全曲にわたり計算が行き届いている。画像については小生門外漢なのでカメラワーク等について全くわからないが、デンマーク国立交響楽団の巨匠への共感はしっかり捉えている。この楽団、巨匠逝去後、昨年ファビオ・ルイージが首席に就任したとのこと。このコンビで是非とも来日して欲しい。
9人の方が、このレビューに「共感」しています。
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4人の方が、このレビューに「共感」しています。 2017/11/26
悪魔か天才か、ではなく間違いなく天才だ。春の祭典も素晴らしかったが、この悲愴は本当に凄い。小生は細部に拘り、各声部をしっかり聴かせる演奏が好きだが、クルレンティスは拘りという狭い範疇ではなく、音楽として全てを表現し切っている。各楽章に聞きどころは多いが、とにかく第4楽章のコーダを聞いて欲しい。こういう音楽は誰もなし得なかった。スコアを見たら、確かにその通りだった。なのに誰もやっていない。チャイコフスキーは死ではなく、生きることの辛さを表現したかったのだろうと思えた。この演奏は聞いている時は新たな発見を、聴き終わってからは曲自体の存在感を聞き手に意識させる稀有な演奏だと私は思った。
4人の方が、このレビューに「共感」しています。
2人の方が、このレビューに「共感」しています。 2017/10/29
この名曲、CDはアルバンベルクとアマデウス(ライブ)とラルキブデッリが双璧と思っていたが、この名手たちの演奏はその上をいく。1番の冒頭から「ああ、これはいい」という感覚に満たされる。その理由は名手たちがお互いをリスペクトして、一歩引いたところに身を置きながら、瑞々しさを失わないところにある。誰がこの演奏のリーダーだったのか?誰がこういうフォルムを決めたのか?これだけの名手揃いになると自ずと決まるのだろうか?とても小生のような素人では想像がつかない世界がここにはある。名手揃いだが、それでもクレメンスは上手い。2番の第一楽章第二主題など、心が震えるレベルの演奏だ。ライブでの良い演奏は、聴衆も演奏家も本当に幸福になれるが、このディスクはその記録である。この2曲が好きなら、是非聞いてほしいと願わずにいられない。
2人の方が、このレビューに「共感」しています。
6人の方が、このレビューに「共感」しています。 2017/10/11
自分の好きな曲になると、皆自分なりの評価軸を持っており、その軸に近いかどうかで演奏を評価する。技術的にある一定水準を上回れば、あとは「好みの問題」とも言われる。小生にとってはシューベルトの20番がそれに当たる。このツィマーマンの演奏、細かいテンポの動きとか作り込みはあるものの、どちらかというと造形美を優先させた演奏で小生の好みではない。曲に対する共感が薄いように感じる。しかし、何度も聞くと録音の良さも相俟って、ツィマーマンがやりたかったことが見えてくる。彼が強調する声部は必ず意味がある。これはしっかりとした造形の中で細部を徹底的に表現したこだわりの演奏だと思う。一方21番は20番より感情移入がストレートで、ツィマーマンの「私もこの曲、好きなんですよ」という声が聞こえるようだ。小生はツィマーマンの演奏会に何度か通ったが、実は都度あまり感心しなかった。結構表面的だよな、と思っていた。ところがこのディスクを聞いてこのピアニストを理解するには集中力が必要で、私にはその力がなかったことを思い知った。またツィマーマンの演奏会に行こう。今度は違う彼に会えるだろう。
6人の方が、このレビューに「共感」しています。
17人の方が、このレビューに「共感」しています。 2017/09/07
技術は向上する。それも単に向上するのではなく、新しい価値を創造する。スマホができてまだ10年なのに、モデルチェンジを毎年繰り返し進化し続けているが、その進化には常に「新しいものを創造する」技術者の熱意が詰まっている。この演奏、最新鋭のスマホに似ていて、ベートーヴェンのカルテットに新しい価値を見出そうとする演奏者の熱意の賜物である。ラズモフスキー3番の終楽章を聞けば、その凄さがわかる。このテンポで縦の線が寸分のズレもなく揃うのは当たり前。外声優先のカルテットなんてもう遺物と言わんばかりに4声が常に均等の響きで鳴り続ける。ここまでは先人カルテットもやっているが、この団体はこの先を行く。それは何か。ここまでやるのか、と舌を巻くダイナミズムの徹底である。fとpを瞬時に切り替える。クレッシェンドの途中でも4声のバランスは崩れない。ffは朗々と響くが、終結部にさらなる大音量を出す奥深さ。最後に一番大きな30号を打ち上げる花火大会のような満足を聴く者に与える。とにかくキリがないくらいの徹底である。加えて音の融合にも最大限配慮している。ハープの冒頭を聞けばわかる。4声が完全に混ざって、新しい音を聴かせる。技術は高すぎるほど高く、そのために徹底した計画を実行し、かつギクシャクした感じを全く与えない。 小生は以前ゲヴァントハウスを絶賛したが、この演奏は間違いなくその上を行く。タカーチも良かったがここまでのダイナミズムの徹底はない。アルバンベルクすらオールドスタイルに追いやったこの演奏の価値は高い。エマーソンやハーゲンはこの路線ではない。小生は現在アルテミスが一番すごいと思う。もちろん他のすべての演奏を聴いたわけではなく、もっとすごい演奏があるかもしれない。もしご存知の方がいれば是非教えて欲しい。演奏技術はここまで向上したのだ。そして単に技術だけなく。表現の幅も広がったのだ。これを知れば最早過去には戻れない。
17人の方が、このレビューに「共感」しています。
3人の方が、このレビューに「共感」しています。 2017/07/29
70年代までのドイツには、なぜか「職人」と呼ばれるような、そういう方々がおられた。例えばサッカーならフォクツ。指揮者ならライトナー、コンヴィチュニー、そしてこの名盤の主役イッセルシュテットである。彼らは与えられた仕事に最善を尽くし手を抜かない。時に相手に嫌がられようとも目的達成に向け迷いが全くない。この演奏はその観点からとにかく冒頭から練りこまれている。KYRIEの呼吸は深く、ゆったりとしたテンポで堂々と始まる。合唱団が訓練されている。セーデルストレムの最初の「Christe」の巻き舌がまぁすごい。気合い入ってます。GLORIAはもちろん職人ハンスの腕の見せ所。特にどっしり構えた「In Gloria」のフーガがたまらない。しかし、CREDOはその上を行く。この章、冒頭旋律が投げやりな気がして、小生は少々苦手だったが、この演奏を聴いて目から鱗だった。やはり「Et vitam venturi saecli. Amen.」からのフーガはこの演奏が小生の中では一番だった。よくここまでやってくれた。SANCTUSとBENEDICTUSは合唱の発声が前章を引きずったのか少々硬く、実直すぎてちょっと違和感がある。でも職人に天使は似合わない。当たり前だ。そしてADNUS DEI になるとまた表情が変わる。合唱が音色を使い分け、祈りの部分と現世の差異を際立たせる。さすがだ。最後まで手を抜かない。 ということで、この演奏本当に素晴らしい。あまりの仕事ぶりの徹底にProf.クレンペラーが「やれやれ、生真面目にやるだけが能ではないのに・・」とぼやく声までが聞こえる気がした。 さて、仕事ぶりも最後の部分がやってきた。イッセルシュテットは最後も堂々と終わらせて仕事を締めくくると思っていた。ところが、である。職人は400小節前から慈愛の顔になり、神と楽聖と演奏に携わった全ての人に心からの感謝を述べる。これはずるい。あんな妥協を知らない男が最後に笑顔になって感謝するのである。小生はこの部分を通勤途上歩きながら聞いていたが、一瞬で落涙した。こんな経験はザンデルリンクの引退コンサートのハイドン変奏曲以来だ。こういう演奏がまだ世の中にはある。ハンス・シュミット=イッセルシュテットに、今度は私が感謝したい。このディスクを名盤と呼ぶのに、いささかの躊躇いもない。
3人の方が、このレビューに「共感」しています。
2人の方が、このレビューに「共感」しています。 2017/06/11
たまらん!この曲はTM NETWORKの最高傑作である。マニアは好きな曲の別ヴァージョンを聞きたがる。この心情をトコトンまで突き詰めてくれた。誰がこの曲のこんなアルバムを企画したのか。誰がその企画を「GO!」と許可したのか。誰がこれだけの音源を持っていたのか。考えれば考えるほど「たまらない」。あの痺れる転調が何度も聞ける。感謝以外の何物でもない。これはある意味桃源郷のようなアルバムである。
3人の方が、このレビューに「共感」しています。 2017/05/21
この演奏については既に評価が確立している。冒頭こそ少し大人しめだが、聴き込むうちにこれも計算の内ということがわかる。隅から隅まで、一点の曇りもない素晴らしい書を見るようだ。それも曲線は優雅なれど全体は均整が整った楷書である。とにかく第九の数あるディスクの中でも相当上位であると断言できる。もう一つはUHQCDである。先日OTOTENでUHQCDを聞いたが、一聴して違いがわかるレベル。HQCDとは大違いである。日本コロンビアはBlueSpecCDで従来の名演を再発したが、今回もまた同じ手口で我々のフトコロを狙ってきた。その手には乗るか、と言いたいが、コロンビアが出しているUHQCDのサンプラーCDを入手して聞いたら、その手に乗るかもしれないと思わざるを得なかった。ノイマンの新世界とか、アファナシエフのブラームスとか、買っちゃうんだろうなぁ・・あ、もちろんこの第九も。。。
1人の方が、このレビューに「共感」しています。 2017/05/13
私はこのディスクとても良いと思います。ドヴォルザークの五重奏曲は名盤に恵まれておらず、ググってもあまり出てこない。スメタナとアルバンベルクくらいかな。でも、このディスクはチャーミングな出だしから、とても90歳の方の演奏とは思えないパッションが繰り広げられます。第一楽章終わって拍手起こるのは私は納得。この演奏聞いたら嬉しくて拍手したくなります。ところがプレスラーはその拍手に応えず、あっさり第二楽章に入ります。これもまた矜持っぽくていいんですよね。あとDVDがいい。プレガルディエンの歌もアンコールのドビュッシーのカルテットの佇まいもいいし、最後のショパンも身に沁みます。 こういう演奏会、聴きに行きたい。間違いなくそう思わせる素敵なディスクです。
1人の方が、このレビューに「共感」しています。
0人の方が、このレビューに「共感」しています。 2017/04/22
アメリカと我が生涯は定評あるアルバムですね。アルバンベルクは基本的に歌うカルテット。楽器間のバランスとかより全体のフォルムで聴かせる団体と思ってます。だからアメリカとか曲想が志向に合うので名演になるのは必然です。ところが、10番と14番、これがいい。10番はドヴォルザークの十八番、旋律美とドゥムカ等素直に聞ける曲なのでABQの志向に合致。14番は思い切りベートーヴェンを意識して書いた曲。オマージュともパロディとも言えます。これをABQいつもの旋律重視ではなくバランスとって聴かせます。10番と14番。気に入りました。この値段なら、皆さん買ってみませんか?つくづく、ドヴォルザークってすごいと思えますから。もちろんそれを教えてくれたのはABQ.メンバーは元気かな?
0人の方が、このレビューに「共感」しています。
3人の方が、このレビューに「共感」しています。 2017/01/14
これは恐るべき名演ではないか。あまた名盤は多く、情念美演派と構造明晰派に大別できたと思うが、ハイティンクはこの二つを両立させた。一言で言うとどっしり構えたテンポで全ての声部をしっかりバランス取りながら、なおかつマーラーの情念美を描き切った演奏。もしチェリビダッケがこの曲を演奏したらハイティンクのこの演奏のような表現を目指すのではないか、とすら思った。小生バイエルンとのブルックナー5番を聴いて、「美に流れすぎ」と思っていたので、ここまでハイティンクが構造側に舵を切るとは思っていなかった。無知を恥じるし、ハイティンクという指揮者を代表する名盤だと申し上げるのになんの躊躇いもない。また、これだけの要求をこなし切ったシカゴ響も凄い。このオーケストラは、書道で言うと「楷書」的アプローチの上に音楽性を要求する指揮者の下で最良の演奏をする。通常CDでの感想だが、SACDだったらもっとすごいのかな。これ以上クリアになると逆にバランスが崩れるような、そんな気もした。確かに3楽章が白眉だが、小生は4楽章も「よくぞここまで頑張った」と賛辞を送りたい。
4人の方が、このレビューに「共感」しています。 2016/11/30
この演奏はオリンピックの銀メダルである。当時私は大学生だった。この演奏がNHKのFMで放送されたのは春だった。バーンスタインがベルリンフィルを振って、それも、マーラーの9番だった。万全の状態でエアチェックして、そのテープは宝物だった。私が死んだらこのテープを棺に入れて欲しいと思っていた。しばらくして少し冷静になって、スコア見ながら聞いたら、おいおいっていうほど、皆さんご指摘のようなミスも多かった。この演奏がベストフォームかというと、そうではないのは間違いない。それでも、それでも、この演奏には当時の状況を含めて何が違うものがある。バーンスタインにすれば、もっとやりたいことがあったはずだ。もっと突き抜けた演奏ができたかもしれないし、ベルリンフィルも同じだっただろう。もっとできたかもしれない、というもどかしさも含めてこのディスクは「その時の全力」の記録である。金メダルじゃない、だけどこの演奏には全力を尽くした銀メダルの輝きがある。皆さんも比較ではなく、この全力演奏の素晴らしさを聞いて欲しい。私は自分が辛くなるとこの演奏を聴く。また頑張ろうと思う。
0人の方が、このレビューに「共感」しています。 2016/09/03
アラベスクに関してはオットーさんに全面的に賛成!冒頭を聞くと滑らかな歌とバスの音形の対比が絶妙で、他のどの演奏を聴いても、このホロヴィッツの演奏と比べて納得させられる演奏に出会ったことがない。クラシック音楽の世界では「絶対的」という演奏は希少だが、このアラベスクに関してはホロヴィッツのソニー盤が「絶対的」である。オットーさんには悪いがフルトヴェングラーのブラームス4番よりこちらの方が、全盛期の鶴田や小橋と同じ「絶対王者」である。シューマンのアラベスクという曲ほどピアノの歌謡性を極めた曲はなく、モーリス・ラヴェルはこの曲が好きでたまらなかったのではないかと小生は妄想しているが、ホロヴィッツこそこの曲の本質を見抜き、力を抜いた綺麗なフォームで再現している。どうしたらピアノでこのような滑らかな歌が謳えるのか。小生はホロヴィッツを聞くならシューマンとラフマニノフと思うし、作曲家が自作をこういう演奏で聴けたら絶対に泣くのではないかと思わせるものがこのディスクにはある。曲と演奏の幸福な一致が聴ける。
4人の方が、このレビューに「共感」しています。 2016/07/31
小生もアーノンクールの良き聴き手ではなかったが、このディスクには脱帽した。104番の冒頭を聞けばこれらの演奏の凄さがわかるだろう。充実した響きながら、リズムをしっかり刻むため、重くならない。104番の冒頭はのっぺりしたモノが多いが、これは全く違う。主部に入っても各声部のバランスが絶妙。かつ細かいフレージングにも拘っているので聞いていて発見が多い。いくらカラヤンやチェリビダッケが良い録音を残していても、ここまで流れと細部を両立されたら敵わないのではなかろうか。この演奏があったからミンコフスキはハイドンの古楽演奏にチャーミングさとか優しさとかを持ち込むしかなかったのかもしれない。コンセルトヘボウはこの前にモーツアルトの演奏があり、アーノンンクールのスタイルへの共感があるのだろう。どっしり踏み込んでおり、共感が漂う。良き指揮者と良き楽団がハイドン演奏の理想を目指し取り組んだこのディスク。一聴をお勧め申し上げる。
8人の方が、このレビューに「共感」しています。 2016/06/25
この録音の成り立ちはみなさんご存知だろう。フィッシャーは本当に最大限の努力をした。淳メーカーさんのレヴューにあったが、悲愴の冒頭を聞けばわかる。小生がピアニストだったら、こういう音を出したいと切望するだろう。リズムは淀みなく、ハーモニーは全ての音で計算され、なおかつ旋律線が虹を描く。それだけではない。全ての声部のバランスがここまで徹底されているのか、と驚愕する。ワルトシュタインの最初の一音の存在感といったら比類がない。世に多くの優れた演奏がある。全集となれば益々星は煌めく。それでも申し上げたい。この演奏を聞かないでベートーヴェンのソナタは語れない。願わくば、多くの方がこの演奏を聴き、レヴューを連ねることにより、後世にこの演奏の価値を伝えることを祈ってやまない。
8人の方が、このレビューに「共感」しています。
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