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遊悠音詩人 さんのレビュー一覧 

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     2010/09/14

    SKDの黄金期は、個人的には1970年代だと思っているが、この《巨人》は1962年の録音である。その頃のSKDには、より朴訥とした渋さがあるが、決してパワーで押すタイプではないため、聴き方によっては力量不足に思われるかも知れない。アンサンブルも、昨今ありがちな楽譜追求型の杓子定規な演奏に慣れていると、ラフな印象を持たれる恐れがある。しかし、声高に叫ぶだけがマーラーではない。勿論、冷静に組み立てるだけでもマーラーではない。マーラーを、ベートーヴェンやブラームスなどをやるときと同じような、構築的にして歌心にも事欠かないロマン派作曲家として捉えているのだ。重心を低く保ち、金管よりも弦楽器を主体とし、ゾンダーマンのティンパニが小気味よいアクセントをつけていくという、SKDならではの演奏である。熱狂しないだけ疲れず作品を俯瞰出来、しかも重厚な表現なので聴き応えも充分という、優れたバランスを持った演奏と言えよう。併録の《さすらう若人の歌》も、《巨人》を理解するのに好都合だし、プライの慈しむような歌唱がとにかく聴きものである。録音も、旧東独のシャルプラッテン原盤だけあって優秀で、特に《巨人》のラストにおけるティンパニのドラムロールは圧巻の一語に尽きる。マーラー・イヤーに鑑賞してみては如何だろうか。

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     2010/09/13

    特定の作曲家には、必ず定番となる指揮者が付く。ベートーヴェンにおけるフルトヴェングラーや、マーラーに対するワルターなどがその典型だろう。ショスタコーヴィチに関しては、まず間違いなくムラヴィンスキーの名が挙がる。まるで「ムラヴィンスキーを聴かざる者はショスタコーヴィチを語ること勿れ」とでもいうような不文律がまかり通っているのだ。もっとも、ムラヴィンスキーは自他共に認めるショスタコ演奏の第一人者であり、初演した作品も夥しい。だが、ムラヴィンスキーやその他旧ソ連のものは金管楽器強調型快速演奏が多く、故に細部が御座なりになってしまっていることがしばしばある。そうした、デフォルメされた演奏に慣れきっていると、ザンデルリンクの指揮を、単に遅めでインテンポの平凡演奏として片付けてしまうことになろう。だが、一度固定観念をなくして聴いてみると、如何に説得力溢れる演奏をしているのかが分かる。弦楽器を主体とした豊かなサウンドは、ショスタコーヴィチが、緩徐楽章における透明感にも事欠かない優れた管弦楽法を持っていたことにも気づかせてくれる。勿論随所でアクセントをつけるパーカッションの小気味よさも特筆ものである。殊に第10番は、ムラヴィンスキーとは全く異なるスタイルにしてムラヴィンスキーに比肩する名演!録音も優れており、まろやかだ。

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     2010/09/10

    白眉はラフマニノフの3番。この手の作品は、大概、テクニックのお披露目に終始したり、オーケストラが貧弱になったりしてしまう。だが当盤は、強靭な打鍵にしてオケの力感にも事欠かないという離れ業をやってのける。ロシアのオケにありがちな、ラッパが威張る余り他のパートが埋没してしまうようなアンバランスさではなく、全てのパートが溶け合うようなサウンド作りをしており、殊に至るところでアクセントをつけている重低音が素晴らしい。ベートーヴェンは偶数番号がよい。これは柔らかな音作りが多分に影響しているだろう。特に4番の滋味深さは随一の出来である。シューマンはさすが初演団体のゲヴァントハウスだけあって聴かせ所を弁えており、特に弱音部での得も言えぬ透明感は筆舌に尽くしがたい美しさだ。作曲家ゆかりといえば、ウェーバーにおけるシュターツカペレ・ドレスデンもそうだ。ブロムシュテットの端正な指揮も相俟って、まるでオペラの一幕のような味わいを醸す名演となっている。総じて音質も(チャイコフスキーが厭に腑抜けた音になっているのを除き)良好であり、レーゼルの芸風を味わい尽くすのに最適なセットとして推奨したい。

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     2010/08/27

    「栴檀は双葉より芳し」という言葉がある。ケルテスは寿命こそ短かったが、若くして既に巨匠級の指揮を披瀝出来た。水難事故死という悲惨な最期を遂げなければ、更なる円熟が期待されようが、壮年期のこの録音でも聴き応えは充分である。いやむしろ、ハンガリーの代表としての姿勢を如実に表している。コダーイやバルトークの系譜を継承した野生味溢れる表現で、変に洗練されたような西欧かぶれの雰囲気は皆無。ドラティやセル、オーマンディなど、ハンガリー出身のライヴァルも多いが、そんな中でも若々しさと求心力の面では屈指の出来栄えである。録音も、ステレオ黄金期のデッカだけあって優秀の部類に入るだろう。もっとも、ややドライな印象は拭えないが、オン気味のマイクがアグレッシブな質感を演出するのに一役買っており、殊に打楽器群の力感が小気味よい。値段も手頃でありお勧めだ。

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     2010/08/21

    純ドイツ風ハンガリー舞曲!少しもマジャール系の香りがしない、徹頭徹尾ドイツ人のドイツ人によるドイツ人のための演奏である。こう書くと、単に重くだぼついた演奏に思われてしまうかも知れないが、それは違う。重厚でありながら躍動感にも事欠かないという離れ業を、実に鮮やかにやってのける。力強い重低音や小気味よい打楽器群に支えられ、厚みのある弦楽器や仄暗い管楽器が豪快に踊り抜くという、ダイナミックな演奏である。特に後半の作品など、著名な第1番や第5番などに比して余り聴き応えのない曲ばかりだと思っていた先入観を、見事に粉砕してくれた。こんなにも愉悦と哀愁に満ちた曲達が並んでいたとは!加えて録音がとにかく優秀!さすがエテルナ!聖ルカ教会の音響も相俟って、重厚でありながらなおも細部まで見通せる透明感を持った最高のサウンドを提供している。また、原盤の持ち味を損ねることなくCD化して下さったKINGレコードの技術者にも感謝申し上げたい。聴けば聴くほど味わいを増す、玄人好みの演奏だ。

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     2010/08/21

    詩情溢れる名演!チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲といえば、巷ではハイフェッツやらオイストラフやらに注目が集まる。しかし、私にしてみれば、ハイフェッツなど情感に乏しく歌心に欠け、機械的で拙速で、音色も汚く荒削り、おまけに録音もざらついているという、最悪な印象しかない(そのくせ、レコ芸の先生方や一部の狂信的にして他者排他的なファンらによって、未だに神棚に祭り上げられているという由々しき実情がある)。オイストラフも、演奏自体は素晴らしく、リリカルかつパワフルな名演であるが、如何せん録音状態が芳しくなく、正規盤ですら不自然な音響になり果てている。過去のいわゆる名盤と呼ばれているものがこのようならば、昨今の名盤も難ありだらけである。ビブラート過多なムター、線が細過ぎるハーン、神経質過ぎるツィンマーマン、面食らう程のデフォルメをして悦に浸っているレーピンなどなど、挙げ出したらキリがない。要するに、曲の持ち味を殺してまで自分自身の個性を売り込もうとする輩が跳梁跋扈しているのだ。挙げ句、そんな彼等を“現代最高の名人”などといって持て囃し、ディスクの売上と芸術の本質的価値との違いすら分からない人達が我が物顔でいる。これが現実だ。そんな中、真に芸術的な演奏を求めようと、殆ど縋るような思いで辿り着いたのが、このフンケの演奏である。 ハッタリや虚仮威しなどから最も遠い、自然体の表現。響きは豊饒でありながら適度な渋味を伴っている。旋律の歌い回しや、ちょっとした間の取り方にもそつがなく、すっと心へ入り込む。バックを務めるシュターツカペレ・ドレスデンの力量も素晴らしい。円やかさと重厚さを調和させた独特の燻し銀サウンドで、殊に第二楽章における限りない透明感は他の追随を全く許さない。音質も、聖ルカ教会でエテルナの技術者が収録しただけあって極めて優秀である。協奏曲の録音となると、ソリスト中心でオケが引っ込んでいるような音作りをされることがあるが、当録音はソリストを活かしつつオケの力強さにも事欠かない見事なバランスの音響になっている。総じて、殆ど話題にならないCDだが、古今の名盤を凌ぐ一枚として推薦したい。

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     2010/08/18

    コダーイの諸作品を網羅した格好の一組であり、ハンガリー人の指揮者とオーケストラが演奏した決定版として名高いセットだが、私の耳にはどうもドライな印象を拭えない。これはドラティ特有の“音を区切る”演奏法に加えて、DECCA特有の鋭角的な音作りが災いした結果であろう。非常に丁寧でありながら、求心力不足の印象も否めず、結果、ハンガリーの野趣のようなものを今一歩感じ取ることが出来ない。殊に金管楽器の力量は、致命的とは言わないにせよかなり力不足で、本来パンチが効いているはずの部分でも貧弱な響きに成り果てている。とはいえ、《ハーリ・ヤーノシュ》や《孔雀》といった名作のみならず、コダーイの知られざる作品にまでスポットをあて、決して一流とは言い難いオケをドライヴしたドラティの功績は偉大だ。この点においては他の追随を許さないであろうから、OKの評価としたい。

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     2010/08/14

    清楚にしてこの貫禄!「天才美少女」という触れ込みから、何やらビジュアル勝負のアーティストを想起しがちだが、それは違う。昨今、特にJクラシックの分野においては、演奏家のルックスを全面に押し出したセールスに走る嫌いがある。この手の演奏家は、「見た目はいいんだけど肝心の演奏がねぇ……」という由々しき評価に堕すか、あるいは手当たり次第コネクションを使って図々しく生き残るか、さもなければ飽きられて使い捨て同然に扱われるか、何れかである。しかし、リーズは、そのルックスもさることながら、音楽の深みが他の同年代の演奏家と比較しても抜きん出ている。自然に心へ染みる独特なテンポの揺れや、繊細さと強靭さを兼ね備えたタッチの幅広さなど、若々しいなかにも貫禄たっぷりである。これからの成長が大いに期待できるゆえ、一人の偉大な才能をじっくりと育てあげようとするNaiveレーベルの態度にも大いに好感が持てる。また、協奏曲にシュターツカペレ・ドレスデンを起用したことも、SKDファンとして大変喜ばしい。オーソドックスながらコシのあるこのオケ独特の燻し銀のサウンドが、若きリーズを有機的に支えている。また、ライヴ録音ということで、終演後の温かな拍手まで収められているのも嬉しい。ショパン・イヤーということでリリースされたものに玉石混淆は付き物だが、その中でもハイクオリティな一枚と言えよう。

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     2010/08/04

    何ともいえない温もり。ツォフとSKDが奏でる至福の音!決して有名ではない三曲だが、どんな曲でも、真に一流の演奏家がやればそれらは素晴らしいものになる。演奏は重厚で味わい深い。これは優秀な録音によるところも大きい。聖ルカ教会にてETERNAのスタッフが収録した1970年代のアナログ録音には、カラヤンを筆頭にドル箱探しに躍起になっていた西側の諸レーベルのそれとは比較にならない程の、自然体で人間味溢れる魅力がある。加えてSKD特有の燻し銀サウンドが、聴き手を極上の音響世界へと誘ってくれる。ツォフの芯のあるハープは、愛らしさと力強さが高い次元で融合したような音色を持っており、華美一辺倒になりがちなこの楽器から、思いがけない豊かな表情を醸し出す。真の芸術に触れたい方にお勧めしたい一枚だ。

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  • 12人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/07/23

    超激安廉価盤だからといって、侮ってはいけない。旧東独時代のシュターツカペレ・ドレスデンの懐深い響きと、マイヤーの若々しいサウンドが融合した名演だ!EMIプレスだが、原盤は勿論ETERNA。無駄な加工をしない輸入盤の方が柔らかい音作りである。マイヤーのソロが何故か時折ユニゾンに聞こえるという珍盤でもあるが、これは中音域がとても豊かに響く聖ルカ教会での録音の所以だろうか。もっとも、マイヤーがまだ若い頃の演奏の為、テクニックに溺れていると捉えられかねない向きもある。また、70年代までのSKDは、例え協奏曲の録音だったとしても外部からソリストを招聘せずに首席奏者を立てて録音したという経緯もあり、何故このようなセッションに至ったのか、やや疑問が残らない訳でもない。だが、一見ミスマッチに見えるこの組み合わせが、逆に老舗楽団を沸き立たせたと肯定的に解釈することも可能であり、その意味においては欠くことの出来ない素晴らしい名盤と言えよう。特にウェーバーにおける解釈は、作曲家ゆかりのSKDならではの非常に味わい深いものである。勿論モーツァルトも、バセット・クラリネット特有の渋い音色がSKDの特性と合致し、中々の聴きものになっている。

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     2010/07/17

    シュターツカペレ・ドレスデンならではの渋いベルリオーズ!フランスの作曲家の作品は、大概、光彩陸離たる華麗な響きを全面に押し出した演奏をされることが多い。だが、SKDの演奏は違う。音は中音域を中心に溶け合っていて、あたかも艶消し加工を施されたかのような、渋味の効いたサウンドになっているのだ。もっとも、90年代以降のSKDのサウンドは、東西統一と同時にメンバーが入れ替わったこともあり、全盛期(60?70年代)のサウンドより硬くなっているので、評価を分けるであろう。だが、例えベルリオーズといえども騒々しさを排すところは、この楽団の美学と言ってよく、デイヴィスの確信に満ちた指揮も相俟って素晴らしい出来となっている。そもそもSKDは歌劇場専属のオケであり、この手の序曲はこなれたものである。ドイツの老舗オケがイギリス人の指揮によってフランスの作品を演奏する、そのちぐはぐ感を超越した熱演といえよう。

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/07/16

    滋味深く、心の中へじんわり入る素晴らしい《新世界》!特筆すべきはティンパニの上手さ!要所要所で悉く決めていく。撥を色々と使い分けているのだろう。張りのある音から篭った音まで自在に操っている。ゾンダーマンとシュターツカペレ・ドレスデンや、ザードロとミュンヘン・フィルなどを引き合いに出すとよく分かるように、ティンパニの上手いオケは大概アンサンブルがずば抜けているものだ。当時のチェコ・フィルのティンパニ奏者が誰だか分からないが、“陰の指揮者”と呼んでよい程の存在感であり、それによって重心のしっかりした渋いサウンドが生み出されている。無論管の丸みのある音や弦の艶やかな音も重要な要素だ。特に第三楽章における木管の音色は独特だし、ティンパニや低弦による力強い重低音など本当に痺れる。終楽章も、とかく勢いに任せた演奏が多い中、地に足をつけた重量級の演奏となっている。リズム打ちが明瞭で、それが曲の核となって躍動感を醸し出すのである。これぞ、古きよき時代のアンサンブルであり、現在のチェコ・フィルからは聴くことの出来ない、ボヘミア魂全開の演奏なのである。録音も古臭さなどなく、高音を少し補強すると抜けも良くなり最高である。廉価かつ良心的なリマスタリングによって至高の芸術に触れられる。お勧めの一枚だ。

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     2010/07/13

    美しいロマンの飛翔!リストの名曲というと、作曲家自身もややするとそうであったように、とかく技巧一辺倒に陥りがちである。しかし、ボレットの演奏はどうであろう。リストが、まごうことなきロマン派の大巨匠であることが、ひしひしと伝わってくるではないか!《溜め息》のアルペジオの鮮やかさや《森の囁き》の幻想味はもとより《愛の夢》や《ラ・カンパネラ》といった超名曲でさえ、紡ぎ出される音楽は上質そのもの。有名なDECCA盤を遥かに凌ぐ華麗かつ繊細な表現であり、微妙なタッチの差を明瞭に捉え切る録音も優秀そのもの。《タンホイザー序曲》には特に後半でミスタッチが散見されるが、これは他の収録曲とは違い、言わば偶然の産物として収まったものであり、本番一発撮りという事情も勘案すると、その壮絶さがよく分かる。DECCA盤をお持ちの方にも是非聴き比べて頂きたい名盤といえよう。

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     2010/07/05

    騏麟も老いては駑馬にも劣る。名ヴィルトゥオーゾも老いぬれば、悪趣味な誇張と煩雑なミスタッチばかりの駄目な演奏しか出来なくなる。晩年のホロヴィッツといえば、かの大御所、吉田秀和が「罅割れた骨董品」とボロクソに酷評したことでも知られているが、ともかく、久々の里帰りという歴史的一大事を勘定に入れても、どうしても推薦出来ない。バーンスタインのベルリンの壁崩壊記念の第九同様、史実以外に全く取り柄がない演奏の代表格。聴衆のブラヴォーが多いのは、演奏そのものに感銘を受けたというより、カリスマ的教祖的人格が目の前にいるということだけに酔わされているのだ。このことは、12年の沈黙を破ってカーネギーで行われた1965年の“ヒストリック・リターン”(因みに知り合いに、“ヒステリック・リターン”と皮肉った人がいる)にしても同じようなことが言えるだろうが、1986年モスクワ・ライヴはホロヴィッツ自身の老衰も手伝って深刻な状況だ。得意曲のスクリャービンやラフマニノフ、スカルラッティやモシュコフスキなど、プログラム自体は面白いので、最悪の“だめ!”評価にはしないが、厳しい批評になることには変わらない。

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     2010/06/18

    フィリップス(現デッカ)のアラウ&デイヴィス盤と極めて近い録音年代でありながら、性格は全く違う。ツァハリアスのピアノはシャープで、ノリが良い。もっともオケの響きはデイヴィスの方が温もりがあって好きなので甲乙付けがたい。これは録音方法にも因るだろう。何れの録音もシャルプラッテンとの共同制作だが、機材が違ったのだろう、フィリップスはオン気味、EMIはオフ気味の仕上がりであり、それがオケ特有の燻し銀のサウンドをどう捉えるかによって大分印象がかわる。個人的には、オン気味の録音のほうが地響きのするような重低音やティンパニの質感を捉えるのに適していると思うので、EMIの録音は今一つ好きになれない。だが、国内盤に顕著な加工しまくった劣悪な音響ではなく、やや小振りながら良質な音で聴けることは評価に値しよう。併録のヴァイオリン協奏曲は、ベートーヴェンがピアノ協奏曲としてアレンジしたカデンツァを元にシュナイダーハンが編曲したバージョンを使用。ヨアヒム版やクライスラー版が一般的なだけに、このシュナイダーハン版は貴重!ヘルシャーのヴァイオリンはやや線が細いが、バックを務めるSKDのサウンドが実に有機的にソリストを支えている。特に第一楽章はティンパニの役割が重要だが、SKDにはかのゾンダーマンがいる。この意義は大きい。マズア指揮のものは、LGOの表現が何ともルーティンワーク的な感じがしてどうも気に食わないが、シャイー就任後更に煩雑になったことを思えば、はるかに安心して聴ける。それにしても、CD5枚組でこのお値段とは、有り難いかぎりだ。

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