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5 people agree with this review 2011/09/15
CD初出ながら、物凄い録音があったものだ。本ディスクの白眉はバルトークのPC3!エンジニアは御大K・ウィルキンソンでアシスタントはJ・ダンカーリーという夢のようなコンビである。切れば血が出るようなサウンドとはまさにこのディスクを評するためにあるのではないかと思わせるミラクルサウンドだ。オケとピアノのバランス、力感、パワー、解像度、Fレンジ、Dレンジ、SN、距離感、広がり、奥行き、レゾナンス、パルパビリティが高次元で結晶した超絶的なサウンドである。CDのリマスタリングも素晴らしくSACDにも引けをとらない。
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1 people agree with this review 2011/09/14
リファレンスの総帥キース・ジョンソンが英国に乗りこんで収録した意欲作であり、J・ダンカーリーが収録した歴史的な優秀録音として有名なアーノルド自作自演の「イギリス舞曲」「スコットランド舞曲」(英リリタ)を彷彿とさせる優秀録音である。ブックレットにはセッション風景が掲載されているが(楽器編成が異なるので別の演奏だと思われる)、中央のメインマイクの位置こそ異なるものの、左右両端に高くセッティングされたアウトリッガスマイクや、最小限のピックアップマイク配置、また客席を畳んでオケをステージ手前に張り出すなど、ジョンソンが黄金期のデッカスタイルを相当意識していることが分かり興味深い。低域成分の豊かなホールレゾナンスを伴って左右奥行き共に原寸大のオケがリスニングルームに再現される様は まさにデッカ的であり、彼の米国録音ではけっして聴かれない魅力といえる。ただし収録に際しリミッターを用いていないため、全体的なCDの音量レベルが低く、弱音部で音が痩せ気味になるのが唯一残念である。音楽はアーノルドらしい親しみやすい旋律と、カラフルなオーケストレーションで聴き手を飽きさせない。
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4 people agree with this review 2011/09/12
数多の優秀録音を生み出したデッカ録音史において最高峰に位置するK・ウィルキンソンによる超優秀録音である。ここには録音芸術に求められるすべての要素が恐るべき高みで結晶され、個々の要素を取り出しても、全体でのバランスから見てもいずれも最高レベルにあり、曲が始まると同時に聴き手は70年8月のキングスウェイホールにワープし、オケやデッカクルーの一員と化して、豊潤かつ豪華絢爛なサウンドの波にただ呑み込まれてしまう。全盛期のメータの指揮もプッチーニ最後のオペラの東洋的な和声と名旋律をしっかりと鳴らしきっており、本演奏をもってトゥーランドット史上最高の一枚と賞するのにいささかも臆するものではない。唯一の不満はこれだけの名録音、名演奏があまり世間で認知されておらず、未だにハイビットリマスターCDすら発売されないことである。残念ながら現行のCDは歌手の口がピンポイントで定位するオリジナルLPのレベルには至ってない。ハイビットリマスター、否SACD化を切に希望したい。
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4 people agree with this review 2011/09/07
プロデューサはA・コーナル、エンジニアはJ・ダンカーリーで、初出の経緯はともかく純粋なデッカサウンドである。 シェーンベルクはイエスキリスト教会でのセッション。デッカによるイエス・キリスト教会での録音といえば真っ先に思い浮かぶのがG・パリーが収録したカラヤンの「ラ・ボエーム」であるが、ダンカーリーが収録した本盤は、スウィートな弦と色彩感豊かな木管群が耳に心地良く、DG録音で耳に染みついたイエスキリスト教会のモノトーン気味なサウンドとも異なる透明感に富んだ、瑞々しいサウンドが心地良い。 一方のマーラーはライブ録音とあるが、録音月が6月から8月に渡っていることから、一発収録ではなく追加セッションによる切り貼りを行っているもよう。再弱音部においても客席ノイズは皆無なのでマスタリング時に相当ノイズカットを行っていると思われ、このせいかダンカーリーとしてはやや整理されすぎているように感じられるのが残念だ。しかし全体としての仕上がりは相変わらず素晴らしく、ドイツのエンジニアによるドイツ録音からはけっして聴けない、左右奥行き共に広大な音場と、コントラバスやグランカッサに聴かれる豊かな低域は実に魅力的だ。本曲の優秀録音は数多くあるがその中でも本ディスクは最高峰に位置する一枚であり、これがオケやマイクの位置決め制約だらけのライブという条件で成し得たことを考えるとダンカーリーの類まれなる手腕にただただ唖然とするしかない。蛇足ながらアシスタントを勤めたサイモン・イードンはデッカレコーディング部門の解散後、 師匠であるダンカーリーをスーパーバイザーとしてABBASという録音会社を設立した。最近ではジンマンのマーラー全集が代表作だが、 残念ながらこれらの作品でも師匠ダンカーリーが録った本ディスクのレベルには達していない。 最後にアシュケナージの指揮は、何も足さない何も引かないオーソドックス路線ではあるものの、押さえどころはしっかりと訴えており音楽そのものに集中して浸ることができる。ここではラフマニノフの交響曲集同様、アシュケナージの指揮者としてのベストフォームを見ることができる。
1 people agree with this review 2011/08/23
今回のSACD、ベト4では大きな改善が無くショスタコも期待をせずに聴き始めたが、こちらは良い意味で裏切られた!やはり曲の有するダイナミックレンジの広さや楽器の種類の多さ、そして何よりもオーケストレーションの差が両者の違いを生んだのだと思われる。このタコ5リマスターはマストバイだ。
3 people agree with this review 2011/08/18
HMVの曲目詳細は誤記でありフレイレとのデュオである「悲愴協奏曲」のみがサラトガでのライブ録音で、他の2曲はお馴染みのユスターシュ教会でのセッッション録音である。ジョン・ダンカーリーによる優秀録音が有するディテール情報がSACD化によりついにその全貌を現し、リスニングルームがユスターシュ教会の空間ごとそっくり置き換わるという衝撃的な体験が容易に得られることはショパンの協奏曲でも絶賛したばかりだが、このセッションの2曲も同等の素晴らしさだ。本ディスクが有する恐るべきディテールの豊かさは、ラヴェル冒頭のスネアドラムのブラシによるピアニッシモを聴けば瞭然である。同時期に録音されたプロコフィエフ、バルトークも強くSACD化を希望したい。この優秀録音を聴けばアルゲリッチのピアノの魅力が、豪快な強打鍵だけでなく、消え入るようなピアニッシモにも存在することがわかる。録音、演奏ともに素晴らしい仕上がりだ。なおショパンの協奏曲SACDにはプロデュ−サもエンジニアもクレジットが一切無いのに、こちらのSACDには詳細が記されており、毎度のことながらEMIジャパンの姿勢は不可解だ。
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4 people agree with this review 2011/08/14
SACD化で客席ノイズや弱音部の解像度が向上しティンパニの一撃も実在感を増した。残念なのはCD同様にヒスノイズを除去し過ぎていること。これが全体的に演奏の勢いの再現性を著しく損ねている。アウディーテのクーベリック盤のように、マスタリング無しのオリジナルサウンドも一緒にカッティングすべきだと考える。また解説書の写真がCD時のデータをスキャンしたのか、細部が潰れ色もベタ塗り状態になっているのも興ざめだ。値段を考慮するとやや残念。
9 people agree with this review 2011/07/18
本XRCDは問題作だ!そもそもXRCDの精紳はオリジナルマスターテープのダイレクトトランスファーだったはずであるが、今回はいかにも日本人が好みそうなサウンドにイコライジングされているのが気になった。客席ノイズも低減処理されており、ライブ感も薄くなっている。NHKによるNHKホールでのライブ収録の録音自体、TVやFM放送を前提に収録されており、そのサウンドの限界は過去の音源を聴けばいわずもがなであり、本録音とて例外ではない。かかる歴史的な演奏の再発盤に求められる事は、マスターテープをなにも加工しない状態でそのままDSD化し、後はリスナーが各自記憶の中の好みの音色に調整できるようにすることだと思われる。間違っても本ディスクがマスターテープに一番近いサウンドだと思ってはいけない。
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2 people agree with this review 2011/06/22
キージェ中尉における演奏と録音のポイントは、次から次へと名人芸を披露するソロ楽器群のミクロダイナミクスの再現性とプレゼンス、そして要所要所で部屋を揺るがすバスドラムの迫力との両立に尽きるといっても過言ではない。 そして録音ではルイス・レイトン収録による本盤と、ジョン・ダンカーリー収録によるデュトワ&モントリオールが王座を分かち合っている。さすがに当時の録音機材の限界による高域の硬調感は否めず、バスドラムの超低域方向の伸びもいまひとつではあるが、ソロ楽器のトランスペアレンシーと演奏ノイズも含めた臨場感では本盤に軍配が上がる。 さらに演奏の魅力を加味すると、ライナーの深いスコアの読みと無慈悲なまでに正確な指揮は本曲の持つシニカルな魅力を最大限引き出しており、黄金期のシカゴSOの名人芸の魅力と併せて本盤の価値は計り知れない。名盤だ!
2 people agree with this review
黄金期のデッカ録音の技術を継承する最後の名人ジョン・ダンカーリーによる圧倒的な優秀録音である。最近はピアノの音像や距離感が異様に不自然で、音色も金属的で耳触りなピアノ録音が蔓延っているが、さすがダンカーリー、最新の機材を使い切ってデッカ伝統のサウンドを見事に現代に蘇らせている。冒頭から、豊かなホールレゾナンスと演奏ノイズに伴って現れる、 実物大のヤマハコンサートグランドのサウンドはあまりにリアルであり、自分がリスニングルームにいるのか録音会場に居合わせているのか、次第に分からなくなり、演奏者の力強い打鍵によるダイナミクスに、ただただ唖然とするばかりである。ダンカーリーが収録した上原彩子のディスクは残念ながら本作のみであるが、結果として演奏と録音が最高の状態で結晶した本デビュー盤は、今後も録音史に名を残すことになるに違いない。
3 people agree with this review 2011/06/03
音そのものはレジェンズ盤とウリ二つなので、オリジナルアナログマスターからのDSD変換ではなく、レジェンズで使用された96khz24bitデータからDSD変換されたものと思われる。とはいっても御大K・ウィルキンソンによる名録音のSACDがまた一枚増えたことを素直に喜びたい。SACD化のメリットは左右奥行き方向へのサウンドステージの圧倒的な広がりと、ピアニッシモ部分のミクロダイナミクスの拡大にあるが、このメリットはウィルキンソンのようにホールの空間をまるごとマイクに収録する優秀録音でより顕著に確認することができる。シューマンのコンチェルトの冒頭に、何か物を落としたノイズが、キングスウェイホールの豊かなレゾナンスを伴いながら自然に減衰していく部分など、気味が悪くなるほどリアルだ。録音の古いチャイコフスキーもレジェンズ盤で聴かれた高域のピーク感が見事に解消され、ナチュラルかつスウィートなサウンドなった。Decca録音好きにとってマストバイの名ディスクだ。
2 people agree with this review 2011/05/23
これまでデッカの達人J・ダンカーリーによるSACDは、唯一シャイーのトゥランガリラがあったが既に廃盤であり、本盤は非常に貴重なディスクだ。 ダンカーリーのような豊かなレゾナンスとディテールの精緻さを極めて高い次元で両立させた、録音の真価はやはりSACDでないと分からない。 本ディスクも小音量再生では、なんの変哲もない平凡なサウンドに聴こえるかもしれないが、ボリウムが原音量域に近づけば近づくほど、 リスリングルームがユスターシュ教会の空間と丸ごと置き換わる様を体感することができる。慣れ親しんだデッカのCDと比べると音色はやや地味に聴こえるが、これはEMIのリマスタリングエンジニアの好みであり気になる範囲ではない。アルゲリッチのファンのみならず、オーディオファイル必携の優秀録音だ。
9 people agree with this review 2011/05/08
録音の神様ケネス・ウィルキンソンとその一番弟子であるコリン・ムーアフット、二番弟子ながらもその後師匠に勝るとも劣らない技術で、黄金のDecca時代の最後を担った名手ジョン・ダンカーリーらが協力して収録した、まさに夢のような録音。そして予想通りその音響たるや、最新のDSD録音すら寄せ付けない驚異的な高みにある夢のような超ハイファイ録音だ。ラフマニノフの多彩なオーケストレーションのディテールと迫力をここまで完璧に納めた録音は存在しないといって過言ではない。通常のCDより1オクターブ以上伸びた低域と高域、コンセルトヘボウのたっぷりとしたレゾナンスとミクロディテールとの信じ難いような両立だけをとってみても、この録音の凄さが分かるだろう。この後ダンカーリーはコンセルトヘボウでシャイーらと「夜の歌」「マンフレッド交響曲」「展覧会の絵」といった超優秀録音を生み出していくのだが、その源流には師匠と一緒に録った本録音があったとはうかつにも認識していなかった。凡庸の権化ともいえるアシュケナージだが、ここでは意外にも濃厚かつダイナミックな表現でラフマニノフのロマンティシズムを描ききっており、彼の指揮者としてのベストフォームを見ることができる。ラフマニノフの交響曲は本ディスクだけあれば他はいらない。
1 people agree with this review 2011/05/08
出だしのホルンはなんとナチュラルホルン!続いての木管は弦より前に定位するなんともユニークな音場。演奏も相当手練手管を尽くしていると思われるが、音楽自体は自然に流れていくし、録音もナチュラルなので、聴き終えても非常に心地がいい。ただし、これが何回も取り出して聴きたいと思うディスクになるかどうかは、今度はスコアを片手にもう一回じっくり聴かないと評価しづらい演奏だ。
1 people agree with this review 2011/03/28
ロンドンのヘンリーウッドホールでの元デッカクルー、サイモン・イードンによる収録である。楽器との距離感や音像の大きさは適度で、ホールトーンとのバランスも良好だが、やや硬質でメタリックな印象の音質はやや刺激が強いように感じる。尤もこれは録音というよりは楽器の調律やアムランのタッチによるものかもしれないが、アナログ全盛期からデジタル初期にかけて、ウィルキンソンやダンカーリーらによるアシュケナージやボレットの録音で聴かれるような、ピアノが置かれた空間ごと切り取ってきたかのような超リアルなサウンドステージの再現はもはや望むことはできないのかもしれない。アムランの演奏は研ぎ澄まされたテクニックで正攻法で作品に向かっており、不自然なアゴーギグやダイナミクスとは無縁の堂々たるものだが、やはり減点対象は、細身で冷たいピアノの音色である。
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