ハビエル・バルデム インタビュー1
Wednesday, July 23rd 2008
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『コレラの時代の愛』ハビエル・バルデム インタビュー
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ハビエル・バルデム(以下、ハビエル) 2006年1月にこの映画の話を聞きました。「コレラの時代の愛」は、僕が14歳のときに読んだ小説でした。自分が別の次元に引きつけられた初めての経験でした。読んだときは、まるでカルタヘナに行ったように感じられたし、あの市場にいるようでした。僕がそこでフルーツを売っているみたいでした。僕は「この作家、すごいな!いったいどんな人だろう?」と思ったものです。その後、2度ほど読みました。だから映画になると知ったときには、この脚本を読んでみたいと思ったんです。脚色が見たかった。小説とは絶対にマッチしないと思っていたからね。でも、予想に反してそれは小説のエッセンスをとてもよくつかんでいたんです。それで、マイク・ニューウェル監督がこの役に僕は合わないと考えていたのを知りながらも、「フロレンティーノを演じたい」と言わずにいられなかったんです。 --- なぜあなたにフロレンティーノが合わないと? ハビエル 小説では、フロレンティーノは小さな男です。まるで影のような、ネズミみたいな男なんです。僕は大きなクジラタイプだからね(笑い)。でも僕には情熱があった。監督からOKをもらってから作業し始め、このフロレンティーノが生きる小さな箱の中に自分を埋め込もうと努力しました。これは『ノーカントリー』とは正反対だったです。
ハビエル フロレンティーノは、振り向いてくれない女性に深い愛を抱くという甘い恩恵に与(あずか)った、実に人間らしいキャラクターだと思います。当初、まだ彼らが若かった頃、二人の恋愛はうまくいきかけましたが、その後、二人を引き離す出来事が起こります。フロレンティーノは自分にとって彼女がどれほど大切な存在であるかを思い知らされ、彼女を追い求めることに残りの人生を費やします。肉体的にではなく、精神的にね。彼は、出会った女性たちの中に、彼女の面影を見つけようとするんだね。 --- この映画で難しかったことはどんなところでしょうか? ハビエル このキャラクターがどんな男なのか、自分で読み取った直感を信じる。ということですね。どんな男として描かれるべきか、何百万人もの人が自分なりに思い描いています。それと戦うのは初めから負け戦だとわかっていますからね。エッセンスを捉えようとして、四六時中小説に戻ったんです。ほとんど取り付かれたように。そしてある日、「もう十分だ!」と思いました。本は閉じよう。もう開かない。情報は十分得た。あとは自分がしたいようにやってみよう。みんなのイメージするフロレンティーノに合わせるなんて、不可能ですからね。 --- ガルシア=マルケスとは話をしましたか? ハビエル 2度話しました。最初は緊張しましたね。彼はとても優しかったけれどね。普段から話しているみたいに、とても面白く、親しみがありました。僕は「先生はこのキャラクターを見事に、感動的にすばらしく、細かいところまで描き込んでいらっしゃいます。ただ、私は俳優です。腹立たしいほどしつこい人種だ。役をきちんと作り出すためにはもっと確かなものが必要なのです。私を助けていただけますか?」と言ったんです。彼は「もちろんだよ。何が知りたいのかね?」と答えました。そこで僕は「肉体的な特徴としてこうあって欲しい部分をいくつかあげるなら、どこを取り上げますか?」と聞いてみました。「彼は決して声を荒げない男だと思っている」と彼は答えました。それはフロレンティーノが、人の注意をなるべく引き付けたくないからなんですよね。彼は常に影の中に潜んでいたい。自分の存在が周りに知られるのを怖がっているみたいにね。「私は彼を野良犬のように見ていた。ずっと殴られ続けてきた犬のようだ。怯えながら街を歩くような男だが、それでも愛を渇望している。抱きしめられることをね」僕は「先生、ありがとうございました」と言いました。そしてそれが僕のやり遂げようとしたことです。影のような人間を肉体的に表現しようとしたんです。 --- ガルシア=マルケスが描いた登場人物についてはどのような感想を持っていますか? ハビエル 『コレラの時代の愛』という物語の独特なところは、フロレンティーノが別の視点からストーリーを語るところにあるんです。その一つが、フロレンティーノと多くの女性たちとの恋愛関係です。彼は、女性たちの内面にあるフェルミーナを探そうとするけれども、見つからない。でも、誰もフェルミーナではないのだから当然ですよね。これはとても悲しいことだと思うけれど、時に面白い状況を作り出すんです。 --- この物語で描かれている愛について、あなた自身の思いを教えてください。 ハビエル この映画における、ガルシア=マルケスの愛の描写には…、これが最高傑作たるゆえんなんですが…、愛のあらゆる定義が盛り込まれているんです。様々な関係や状況、彼女(フェルミーナ)の視点から愛する登場人物たちを通して、それは語られています。そして最後に、「本物の愛は永遠である」、「本当の愛に気づくためには、時に時間がかかる」というメッセージを投げかけていると思いますね。 --- 役者としては、この原作をどのように解釈したのでしょうか? ハビエル 原作をじっくり読み解くことは避けては通れない作業で、「作者はこの登場人物をこう表現している」とか、「これはこの人物特有の言動だと作者は考えている」なんて、メモを取ったりもするけど、最終的にはそれを演じなければならないんです。描写の中には、演じることが不可能な理論的概念の記述もあり、そういう場合は、感情に訴えなければならないと思いました。特にこういう作品はね。 --- この物語のロマンティシズムに共感しますか? ハビエル 全てはマルケスが作り出したものです。愛やコレラという病が同じ場所から発生しているというアイデア。それは呼吸するための、痛みと苦悩、誰かを死ぬほど渇望する心です。その痛みをフロレンティーノは経験しなくてはならない。それは我々すべてに関わるものだと言えるでしょうね。我々は全員、愛し、愛されているのだからね。
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