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ガテン系ピアニスト天平インタビュー!!

2008年3月19日 (水)

無題ドキュメント



【ARTIST PROFILE】

 神戸に生まれ5歳より音楽教育を受け始めるが、中学・高校はケンカ・煙草と荒れた思春期を過ごし、15歳で高校を退学。その後1人暮らしをしながらとび職・解体業などの肉体労働で生計を立てながらその日暮らしの生活を送る中、音楽への熱い情熱で再び17歳でクラシック・ピアノを猛特訓。見事芸術大学のピアノ科に進学、首席で卒業。 在学中、ハンガリー人の超絶技巧、個性派ピアニスト・故ジョルジュ・シフラ(1921-1994)に強い衝撃を受け、自らもジャンルや国境、世代を超えるピアノ曲を創造するコンポーザー・ピアニストになることを決意。2005年に自主制作CD「天平」をリリース。現在はニューヨークを拠点にさらにクラシック、そしてジャズなどの音楽技法を追究する中、ライブ活動・楽曲制作に没頭する日々。まさに型破りな経歴と、これまでのピアニストにはいなかった肉体派ガテン系コンポーザー・ピアニスト、天平とは一体…!?今回はそんな異質なオリジナリティを放つ彼に、アルバムのこと、そして経歴などについて語っていただいた…。


天平/TEMPEIZM 天平/TEMEIZM


曲目: フレイム / 一期一会 / エチュード C-moll / 幻想曲 / コンソレーション / 龍の涙 / 鬼神の円舞 / 君がくれたもの / ディスペア / エリア51〜組曲『夏の記憶』 / プロローグ / ソラを駆ける / 渓谷 / 神社 / Aki


--- 4月に行われた一般公開のショーケースもあっという間に埋まって完売って…すごくピアニストとしては異例ですよね。

天平:  そうなんですか?!いやぁ…(照)実はまだ…そんなに実感はないんですけど。 今のところ一応普通に街も歩けてるし(笑)そんなに大きく生活が変わったことはないんですよ。でも密度が濃くなってきたというか。今はコンサートの疲れを癒しつつ、まだまだこれからという感じでしょうか。 これはもうホントに皆様のおかげです。ショーケースに沢山の一般の方々や、記者の方が集まってくださって、本当に感謝してます

--- 異例と言えば、やっぱりその隆々とした逞しい体に、ラフなTシャツスタイル。これもかなりのインパクトがありました。

天平: 普段からこういう格好なんで、ピアノに向かう時も自然体でできればなって。演奏する時だけカチっとした普段とは違うスーツだとか、フォーマルにキメるとかって、なんかしっくりこないというか弾きづらいかなって(笑)。例えば僕みたいな格好でもロック・ミュージシャンとかだとごく当たり前だと思うんですね。ホールでピアノを弾くっていうスタイルでは新鮮に映るのかも知れないけれど…僕の場合はホールに限らずストリートでも小さなライブハウスでもどこでも演奏するんで、実はあまり特別な意識は持っていないんですよ。 とにかく自然体っていうのかな。
 

--- あと、やっぱり目を惹くのはアスリートばりのその逞しい腕ですよね。これもピアニストにはなかなか珍しいというか…。

天平: 今は特にジム通いしたり、特別に鍛えてるわけじゃないんですけどね。時々腕立て150回とか、片手腕立てとか、やり始めたらみっちりやっちゃうんですけど。

--- さて、この6月リリースされる「TEMPEIZM」について、このアルバムでまず伝えたいこと、表現したかったことって何ですか?

天平:まず、これまで自分の中にあるいろんな思い出とか、インスピレーションを受けた心象、パッションをピアノで表現してみたかったんですね。ミュージシャンとか作曲家も、思い出から音楽を作るってよくあると思うんですが、僕の場合もそうで、いわばこのアルバムは僕の人生のサウンドトラックというか。そういう思いをこめて“ TEMPEI-IZM“というタイトルにしました。 人の人生って映画とか物語だと同じでそれぞれの” イズム”があって、そこには何か音楽が流れていると思うんです。音楽はそれを思い返すきっかけ、サウンドトラック、頭の中の脳内音楽っていうか。だから僕の音楽を聴いて、その記憶とシンクロしたり、イメージしている世界がリンクしてくれたらすごく嬉しいですね。

--- 先日初めて天平さんのピアノを聴いた時、色んな音楽の要素が1つの曲を通して凝縮されている感じですね。クラシックでいうピアノ・コンチェルト的なスケールの中で、フレーズの細かい部分にはジャズのようなスライド感やスピード感もあったり…特に「フレイム」ではそういうインパクトがありました。

天平:  「フレイム」は作った当初よりもかなりアレンジを加えてよりエネルギッシュな感じになりましたね。「幻想曲」はプログレからの影響を受けて、ピアノ1台で鍵盤トリオの臨場感みたいなものを表現してみようと作った曲です。

--- かと思えば、ものすごくロマンティックでノスタルジー感のあるピアノの曲があったり。「一期一会」など。天平さんの逞しい見た目のイメージと違ってもいて(笑)。先の「フレイム」や「幻想曲」とはうって変わって久石譲さんのような、シンプルでリリカルな空気感で、サントラで流れているようなピアノ・ソロだったり。

天平: 「一期一会」はある人の結婚式の為に作った曲です。僕はパワフルな楽曲も好きな一方で、ノスタルジックになるととことんそうなっちゃうんですよ(笑)。

--- そのコントラストがかえって曲想の良さが際立つ感じですね。楽曲のコントラストもそうだけど、ひとつの曲の中にもいろんな音楽の要素がつまってるというか。ふれ幅が広いというのか…
ところで、天平さんの最初の音楽のきっかけって何だったんですか?

天平: ほんっとにすごく音楽に目覚めたのは中学の頃ですね、14歳とか15歳くらいの頃。阪神淡路大震災で実家が全壊しちゃって祖母の家から学校に通ってたんですが、やっぱりその時期って反抗心とか多感な時期で学校にも行かなかったり(笑)。だからやっぱり最初の音楽はバリバリのロックでしたよ。

--- 確かにその腕っぷしなら…ケンカも強そうですねー。

天平: 負けずキライではあります(笑)。どんな強い相手でも、負けるやろな、って分かってても気持ちでは負けたらあかん、とは思ってました。僕のいう喧嘩ってプライドとプライドのぶつかり合いだと思ってますから。

--- 高校を半年で退学されたとか。また…随分やんちゃだったんですね(笑)

天平: なんかねー(笑)、当時の僕って勉強ばかりできるヤツってカッコ悪っ、とかって思ってたんですよ。中学の頃も、さっきお話したような感じだったし、進学した高校がまた各地の気性荒々しいやつらが集まる学校だったんですね。休み時間なんてタイマンとかケンカ当たり前で(笑)。当時は1年で80人100人平気で辞めちゃってたんじゃないかな。で、僕もタバコとかケンカで停学食らうハメになって…。

--- じゃあ、音楽を志すきっかけというのは?

天平: 高校を辞めて、まずは1人暮らしするために働き始めたんですよ。解体屋、とび職、荷揚げ屋、引越し屋…いろんな肉体作業の仕事を転々としながら。下水工事なんかもやりました(笑)

--- バリバリのガテン系じゃないですか(笑)

天平: 楽しかったですよ、仕事はエラかったけど、終わって仕事仲間なんかと一緒にメシ食ったり。体動かす仕事の疲労感って気持ちいいし、ご飯もおいしいし(笑) 。ただ、そういう単純な楽しさの繰り返しって、ふと後で考えると飽きるっていうのか物足りないっていうのか、そういう瞬間があって。この頃はバンドでキーボードをやっていて、作曲なんかもやったりしてました。もうほんとにTOTOが大好きで…いや、ホント、TOTO大好き(笑)。あとは…エマーソン・レイク&パーマー、ボンジョヴィ、ヴァン・ヘイレンとかね。映画のBack To The Featureで主人公も確か、ギター小僧で好きだったアーティストですよね(笑) 。だから、もともと自分が音楽が好きなのはわかっていたし、だったら好きなもん真剣にやってみよう、って思ったんです。

--- 音楽を取るか、格闘家になろうか迷ったとか。

天平: まず高校の資格が取れて音楽も勉強できる学校があるのを知ってそこに入学しました。17歳の頃です。高校の頃、ボクシングとか習ってたんですけど、それで格闘家もいいなーなんて思って、ジム通いしたりしてました。

--- ピアノやるのにそんな手首酷使しそうなのダメでしょ(笑)

天平: ハイ、音楽学校の先生に「あかんに決まってるやろ」って言われました(笑) 。

--- やっぱり(笑)

天平: 今でも時々腕立て150回とか、片手腕立てとかする時ありますよ。友達と競争してみたり(笑) やり始めたらみっちりやっちゃうタイプなんですよね。

---さっきの曲作りのお話伺ってもそうですが、おっしゃるとおりやるときめたらとことん、っていうその集中力はすごいですね。それで、大学ではピアノ科を専攻されたんですよね。大学でいきなりピアノ科って、ここまでお話伺っててクラシックの話題が出てこなかったんでちょっと意外な感じなんですが。

天平: いくつか段階を経てるんですよ。まず音楽をやろう、と思ったのが17歳の頃の第一段階、クラシックの勉強を本格的にやってみよう、と思ったのが大学入る19歳の時。 入り直した学校がバンド系の音楽学校だったから、クラシック系に進むのは異色でしたよ。ふつうはスタジオ・ミュージシャンとかですもんね。本格的なクラシックの勉強というのは大学進学1年前からでした。

--- ということは…、ベートーヴェンとか、バッハとかいきなり弾き始めたってことですか?

天平: そう、ショパンの「革命」( ※「革命のエチュード」) とかバッハの平均律とか、いわゆる入試に必要なクラシックの勉強はここからです。いきなり弾けんのかな?とか思ったけど練習してるうちに弾けるようになって…その代わりもうその1年猛練習でした。そりゃもうかなりの曲を弾いた記憶がありますね。

--- じゃあ大学入学後は、バンドでキーボードをやりつつ、ピアノも勉強しつつ、という感じですか?

天平: そうですね、もちろん大学に入るために必要な基礎的な知識や技術は勉強していたものの、その頃はまだバンドの活動の方に力入れてましたね。演奏だけじゃなく作曲もやって、バンドに本気でデビューするぞ、ってつもりで。だから入学してしばらくはクラシックと半々くらいでした。ピアノに決めようって強烈に思ったのって大学入って3年目くらいかな。

--- 恩師であるハンガリーの先生の影響だと伺いましたが…。

天平: はい、どうしても習いたかった先生なんですよ。その先生にお願いして…今でもその先生がいなかったら、あそこまでピアノに本格的に目覚めなかったし頑張れなかったかもしれないですね。それくらい僕の中では影響力のある先生でした。

--- まさに一期一会ですね。もう1人、天平さんが強く影響を受けたハンガリー人ピアニストがいますよね。

天平: ジョルジュ・シフラです。

--- シフラの演奏で一番衝撃を受けたのは?

天平: 「熊蜂の飛行」を聴いた時かな。それはシフラがアレンジして弾いてるんですけど右手と左手とで交互にメロディを弾いて、さらにその間にちゃんと和音があって、1人で弾いてるようにはとても思えないんですよ。それまで僕の中の「熊蜂の飛行」ってボロゾフのイメージだったんですよ。で、あれ?なんか普通のと違うぞ、誰!? って思ったのがシフラだったんですよね。それがきっかけで聴き始めて、バラキエフのイスラメイ、リストやシフラ本人による編曲物やパラフレーズなどが入ったハンガロトン(Hungaroton)“Paraphrases and Transcriptions ”はほんっとに衝撃的でしたね。シフラの音楽って、それまで僕が今まで聴いてきたクラシックのピアニストとは全然違って、ジャンルの枠におさまってないんですよ。例えば8ビートに近いものがあったり、一種のグルーヴ感っていうのかな。ピアノ1台でこんなにいろんな表現ができるんだなーって。クラシックのピアノを聴いてそういうふうに感じる自分がなんかすごい新鮮だったし、いい意味でショックでした。クラシックのピアニストに対する見方が一変しちゃったんで。それからですね。真剣にピアニストになりたいって思ったのは。

--- でも天平さんの場合、プレイヤーだけでなく、さらに自分で作曲したものを弾いてるんですもんね。

天平: クラシックだと作曲家の曲を演奏する、それを聴衆が鑑賞する、っていうのが当たり前なんですけど、さっきお話したようにバンドをやってたでしょ、当たり前なんですよね、自分で作った曲を自分で弾く、っていうのが。だから「えっ、作曲もするの?」って聞かれることのほうが逆に僕には新鮮というか。クラシックのように作曲者のこの曲のこの部分はどういう意図で作ってそれをどう解釈するか、みたいなのももちろん1つの音楽の楽しみ方であり美学ではあると思うんですけれど、僕の場合、音楽ってやっぱり作曲した人が表現した音で聞いてみたい、っていうのがあるし、自分の音楽についても同じような気持ちが強いんですね。その曲を作った人となりのリアルなオリジナリティを体感したいし、また自分の音楽を聴いてもらえる人にもそれを体感して欲しいと思う。

--- では今後はこんなことに挑戦したい、こんな音楽を作ってみたい、というものがあれば教えて下さい。

天平: そうですね、さっきお話の中でピアノ・コンチェルトみたいだ、とおっしゃってくださいましたが、ピアノ協奏曲はぜひ今後作曲してみたいと思っています。それから、世界遺産、秘境の地でのライブやコンサートも今後も続けて行きたいな、と。特に、負の世界遺産である「原爆」をテーマにした作品なども世界に発信したい。とにかくジャンルを超えて聴く人の心を引き込むような、自分が世を去ったあとも自分の曲が他のピアニストにも演奏されるような作品を残していければいいですね。


2008.04.12 texted by Yamada Tomomi




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