森達也 『死刑』創刊記念インタビュー(1)
2008年2月22日 (金)
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森達也 『死刑』創刊記念インタビュー(1) 基調低音―『放送禁止歌』 | ||||||||||||||||||||||
森: 放送禁止の楽曲が多いと噂されるソウル・フラワー・ユニオンがNHKに出演している状況って、ちょっと嬉しくなりますね。
森:僕の世代は団塊より一回り下。つまり遅れてきた全共闘世代です。中学や高校時代にいろいろ政治的な刺激は受けながら、大学に入ったときにはすっかり終わっていた。インプットばかりでアウトプットがないという感覚は共通しています。だから芝居や映画に進む人が多かった。放送禁止歌について言えば、やっぱり高校時代にラジオの深夜放送でさんざん聴いていたということがまずはありますね。放送禁止歌はたくさんあったし、それが当時の時代状況や青臭い意識と繋がって、権力への怒りみたいな感情にもなっていました。
森:すべて実体がないとは僕も言い切れないけれど、でも実体がないのに恐怖や不安ばかりが発動している場合はとても多いんじゃないかな。人は不安や恐怖がとても強い生きものです。だから群れる。そして暴走しやすい。つまり一人称単数の主語を放棄する。放送禁止歌という実態なき制度が業界のルールとしていつのまにか定着していたその理由のひとつは、規制や制度がない状態が怖いという心情が働いているからだと思います。無意識に規制や統治を求めている。日本人はこの傾向がとても強い。だからこそ死刑制度を手放せない。悪に対して厳然たる処罰を与える強圧的な権威、つまりお上が存在していてほしい。それがないと不安になる。そんな感覚は間違いなく働いている。今ふと思ったけれど、一神教における絶対的な神の機能を、この制度は部分的に担っているのかもしれないですね。だから諸外国に比べても、死刑存置を主張するパーセンテージが突出して高い。
森:表現は人を傷つけます。たぶん僕も大勢の人を傷つけていると思う。それは当たり前のこと。それが辛いのならこんな仕事をすべきじゃない。
続く・・・
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森達也(もりたつや)
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映画監督/ドキュメンタリー作家。 1998年オウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画「A」を公開、各国映画祭に出品し、海外でも高い評価を受ける。 2001年、続編「A2」が、山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。著書に『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』、『クォン・デ〜もう一人のラストエンペラー』『世界が完全に思考停止する前に』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』(晶文社)、『下山事件』『東京番外地』(新潮社)、『池袋シネマ青春譜』(柏書房)、『いのちの食べかた』『世界を信じるためのメソッド』(理論社)、『戦争の世紀を超えて』(講談社)、『ドキュメンタリーは嘘をつく』(草思社)、『王様は裸だと言った子どもはその後どうなったか』『ご臨終メディア』(集英社)、『悪役レスラーは笑う』(岩波新書)など多数。
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