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2015/10/24
クレンペラーのMozartは、指揮者本人がこの作曲家の天分を如何に愛くしみ、楽しんでいるかが直に伝わり、一度聴くと魅力に取りつかれる愛聴盤だ。Beethoven, Brahms, Bruckner, Wagnerで聴かれるような持前の重厚感や劇的緊張感から放出される推進力とは違い、本質的なdynamismは共通ながら、音楽が随所で汲めども尽きぬ自由な泉として溢れ、たとえようもなく瑞々しく流れていく。音楽の骨格の創り方など指揮者像として両極端・正反対のイメージながら、聴後感はJosef KripsのMozart演奏が与える自由な天分の奔出や品格を共通点に持ち、大変意外だが、おそらくMozartの中に同じものを聴きとっているようで大変興味深い。Walter, SchurichtやFricsay, Szell, Bohm Suitnerなど過去から現代のあまたの名演奏のなかでも、その溌剌とした天上感という点でMozartについてはこの2人は別格に双璧だ。No.31 Paris, No.36 (`62), No.38(`56), No.41 (`54), Zauberflote, Cos`i , Eitfuhrung, Don Giovanni, Tito, 総じて50年台の演奏に際立って顕著だが、いづれもMozartが齎す音楽の愉悦を現代に伝える至宝だ。
(但しWalter/NYPのJupiterの宇宙感は、また異なる金字塔だ)