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遊悠音詩人 さんのレビュー一覧 

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/06/17

    純ドイツ的フランクの超名演!フランクの交響曲は、フランス流とドイツ流の合いの子のような作風を持っていることで知られている。色彩感覚を重視する純然たるフランス流儀にはない、重厚さや仄暗さが特徴だが、それをここまで意識させた演奏は多くない。嫌に派手に加工するような演奏が多い中、ザンデルリンクとシュターツカペレ・ドレスデンは独特の厚みのある渋いサウンドで、味わい深く聴かせてくれる。決然とした第一楽章や快活にして強靱な第三楽章では、殊にティンパニの押しが見事で、また低弦も、今日には見られない逞しい響きになっている。第二楽章も、冒頭のハープ(ユッタ・ツォフだろうか)からして叙情を感じさせる。続くオーボエも、フランスのオーボエより暗い響きになっており、確かにこの方が格段にしっくりくる。併録なメタモルフォーゼンは、SKDとしてはケンペの超名演もあり甲乙付けがたいが、さすがリヒャルト・シュトラウス縁の楽団だけあって、真実味が違う。第二次大戦、残虐な空襲によって廃墟と化したドレスデン。その哀しみと対峙しつつ、演奏は決然と進む。二曲とも音質は良好。フランクの終楽章、若干位相が左寄りだが、変な揺れはなく、遜色なく聴ける。お薦めの一枚だ。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/05/20

    数多の復刻盤の中で屈指の音質!「EMIはリマスタリングするたびに音質が悪くなる」というのは、もはや噂でも迷信でもなく、れっきとした事実らしいことが、自分の耳で確かめられた。というのは、筆者は同一音源のリマスタリング違いを比較しているからだ。ドビュッシーの方はART国内盤とGEMINI輸入盤を、ラヴェルの方はHS2088国内盤とGEMINIおよびTRIPLE輸入盤を聴き比べている。ドビュッシーのART国内盤は、音がシャープになった分ドビュッシー特有の幻想的な空気感はかなり剥奪されている。艶のない、厭に重い音に変貌しているのだ。GEMINI盤は、特に《春》など、音場が常にLチャンネルに偏っているし、その他も音響が人工的でおかしい。ラヴェルの方では、HS2088盤のノイジーなことといったら、目も当てられぬ程ヒドい。特に《ボレロ》など、クライマックスでは音割れの大乱舞となって、到底聴けたものではない。GEMINI盤およびTRIPLE盤は同一リマスターだが、かなり高音偏重型であり、本来艶やかなはずの弦が金切り声のように聞こえてしまう。このように、リマスタリング一つで全く印象が変わってしまうのだが、1988年(ラヴェル)および98年(ドビュッシー)にリマスタリングしたという当盤は、リマスターとしては上記の何れより古いにもかかわらず、音質が際立って優れている。艶めく弦、抜けの良い管、鮮やかな打楽器、これらの絶妙に溶け合った時に醸される、他に代えがたい程の気品……。こうした特長が、過不足なく再現されている。こんなにも良い音質を、何故再発売の際に改竄してしまうのだろう。それが、久々にページを覗いて唖然。まさか廃盤だとは。EMIは、一体何を考えているのか?

    8人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/05/20

    シュターツカペレ・ドレスデン(以下SKD)の魅力は何といってもその懐深い響きにある。クラシック音楽ファンは大概、一つの曲に対しいくつかの演奏に接するものだが、SKDの演奏を聴くと、今まで聴いてきたものは一体何だったのかと恥ずかしくなるくらいに、曲の魅力にすっかりハマってしまうということが、かなりの頻度で起こり得る。僕の場合、リヒャルト・シュトラウスがそうだ。今まで幾度となく彼の作品に接してきたが、その何れも「冗長・難解・演奏至難」というイメージであった。しかしケンペの演奏を耳にし、これら先入観は180度覆されたのだ!特に《ホルン協奏曲》におけるペーター・ダムのソロが素晴らしい。まろやかで軽やかで趣がある。作品自体も、調性や主題が明確で聴きやすい。《ブルレスケ》のピアノとティンパニの掛け合いも見事。ティンパニはまず間違いなくペーター・ゾンダーマンだろう。一見単純そうに見えるこの打楽器から、かくも色彩豊かなニュアンスを紡ぎだせるとは、もはや神業!大曲《アルプス交響曲》は全集中の白眉!さすが被献呈団体だ。雄大な自然が目の前に迫るような見事な描写力だ。ケンペはさながら登山隊長のように、聴き手に登山の醍醐味を存分に味あわせてくれる。他に、終曲に《フニクリ・フニクラ》の旋律が登場する《イタリアより》や、バロック様式を模した《クープランのクラヴサン曲による舞踏組曲》など、マニアックながら聴き落とせない佳作も入っている。勿論《ツァラトゥストラ》や《ティル》、《ドン・ファン》といった名曲も、SKD特有の渋い音色が特徴的な名演だ。とかく名技性のお披露目に堕しがちなこれらの曲から、味わい深いニュアンスを引き出すことに成功している。ケンペ編曲の《薔薇の騎士》の絢爛豪華なことは愉悦の極み!録音は、薄っぺらなEMI復刻よりも格段に雰囲気が良い。もっとも、原盤担当のシュトリューベン氏が目指したサウンドとは違うのかも知れないが、それでも、恒常的に手に入るディスクの中では一番だろう。バジェット・プライスながら聴き応え十分な全集といえよう。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/05/12

    ベームがシュターツカペレ・ドレスデンと共に、作曲家生誕の地であるザルツブルクでモーツァルトを演奏!これだけでも胸踊るが、期待に違わぬ素晴らしさ!ベームはモーツァルトの大家として知られ、交響曲第29番もウィーン・フィルやベルリン・フィルとの録音が残っている。だが、相手がSKDとなると、更にいっそうふくよかさと味わい深さが加味される。ベームは終楽章を速めのテンポで振り切るが、これは同オケのスウィトナー盤にはない躍動感だ。足を踏み鳴らすベームの姿が目に映る。ルートヴィヒのマーラーも良いが、やはりリヒャルト・シュトラウスは絶品!ドラマティック、ロマンティック、ダイナミック、三拍子揃った超名演。振幅大きく、怒濤の展開を見せ、最後の変容の場面の神々しさはまばゆい程である。録音は、ORFEOの悪癖たる高音偏重の嫌いがあるが、音像の揺れなどはなく、安定して聴ける。終演後の拍手までしっかり収まっている。特に《死と変容》終演後の様子は、生演奏の凄味をよく伝えるものになっている。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/05/11

    熱く漲る血潮!エルガーのスペシャリスト=デイヴィスと、屈指の老舗名門オケ=シュターツカペレ・ドレスデンが奏でる、超熱演だ!エルガーの交響曲第1番は、とかく長大で晦渋な曲として知られ、敬遠されがちである。確かにとっつきづらいといえばその通りだ。しかし、このCDは例外。SKDの驚異的な合奏能力とデイヴィスの超人的なハイテンションで聴かすこの演奏で、曲のもつ魅力にすっかり開眼してしまった。《威風堂々》で見せた気宇壮大さ、《エニグマ》で聴かせたロマン、《弦楽セレナーデ》で香らせた優美さ、《チェロ協奏曲》で鳴らした渋み、これら要素が、一曲の交響曲に全て含まれている。その上、時折同世代のリヒャルト・シュトラウスの雰囲気も加味されている(リヒャルトゆかりのSKDならなおのことかも知れない)。録音も優秀。もっとも、観客の咳払いを除去しようとする余り音が籠もり気味になったり電気ノイズが入ったりするProfilレーベルの悪癖がみられないわけではない。特にベルリオーズは音場が揺れているようにも聞こえる。しかし、SKD特有の燻し銀サウンドはよく捉えられているし、デイヴィスの唸り声や楽譜をめくる音まで克明に収められている。エルガーファン、SKDファンなら必携の一枚だ。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/05/07

    ブロムシュテット&シュターツカペレ・ドレスデン×Eterna=超名演名録音!これぞドヴォ8の最高傑作!徒に民族色を強調せず、しかし叙情豊かなニュアンスがこの上ないほどに生かされている。特に第2楽章。冒頭の弦楽合奏からして何たる瑞々しさ!鳥のさえずりを模したフルートと、それに続くクラリネットとの掛け合いが見事。第2主題ではペーター・ミリングによると思われるヴァイオリンのソロが絶品!その再現部における弦のふくよかさや管のまろやかさには言語を絶する。第3楽章もこれまた美しく、木管楽器の掛け合いや弦の刻み、なかんずくクルト・マーンと思しきオーボエが、実に叙情に溢れ、有機的で、人間味ある温かな響きになっている。終楽章も秀逸。金管がでしゃばる余り他の楽器が埋没してしまう演奏が多い中、全員一丸で築き上げるコーダが爽快だ。例えどんなに音が混み合おうとも、どんなに感情が高ぶろうとも、響きは常に見通しが良く、どの音も均質に鳴らされている。しかも無理矢理コントロールさせられているような窮屈さは微塵もなく、むしろ楽団員の自発性や誇りが手に取るように分かるのだ。これぞシュターツカペレ・ドレスデンの伝統であり、性格であり、音楽なのである。民俗性で押す演奏とも、はたまた国際派の解釈とも一線を画す、最高のドヴォルザークだ。

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/05/07

    SKDの妙技が冴える!「ウィンナ・ワルツやポルカはVPOが一番だ」と頑なに譲らないような人にこそ聴いて頂きたい。何たる躍動感!何たるロマン!何たる歌心!スタジオ録音だというのに、ライヴ以上にライヴ的なノリの良さ!VPOがややもするとルーティンワーク同然の演奏をすることもあるのに対し、SKDの演奏は音楽が今まさに生まれてくるようだ。《こうもり》序曲のラストの捲りもさることながら、やはり《金と銀》の絢爛豪華かつ人間味溢れる表現は、ケンペの音楽性の高さも相まってこれ以上ないほどの美演だ。手練手管を駆使しながらも嫌味に聞こえず、むしろ親しみ易ささえ感じさせるという離れ業をやってのける。スウィトナーの同様の盤とともに、SKDとウィンナ・ワルツとの絶妙な相性の良さを窺い知ることの出来る、貴重な一枚と言えよう。録音も、聖ルカ教会にてシュトリューベン氏らが収録しただけあって水際立っている。特に小太鼓を始めとするパーカッション類が効果的に響いており、躍動するリズムに花を添えている。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/04/26

    エルガーのヴァイオリン協奏曲の決定盤登場!シュターツカペレ・ドレスデンの懐深い響きと、スナイダーの完璧なヴァイオリンの融合!エルガーのヴァイオリン協奏曲は、演奏時間の長大さもさることながら、内容が晦渋であることから、余り録音に恵まれているとは言えない。そんな中でのデイヴィス盤の登場であるが、さすがエルガーのスペシャリスト!一見気難しい雰囲気を持つこの曲を解きほぐし、ロマン溢れる演奏を披露している。デイヴィスといえばヒラリー・ハーン盤もあり、それも名盤として知られているが、余りスパンを置かず再録された当盤はさらに上を行く名演奏だ。これはデイヴィス自身の解釈の深まりはもとより、シュターツカペレ・ドレスデンの極上の響き、そしてスナイダーの芯の太いロマンティックなヴァイオリンが三位一体となった所以であろう。殊に第2楽章のノーブルな質感や透明感は、息を呑むほど美しい。全曲を通しても、これほどファンタジーを飛翔させ、夢に溢れ、情熱を内在させた演奏は他にないのではないか。聖ルカ教会での録音も秀逸。弦の擦れる音やブレスまで克明に収録されており、さながらライヴのような熱気さえ感じられる。大きくうねるように振幅するオケの力感もよく伝わってくる。自信を持って推奨したい。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/04/19

    ブロムシュテットのブラームス1番というと、N響への客演が記憶に新しく、そちらを絶賛される方もいる。しかし、映像を確認して頂きたいのだが、ブロムシュテットと共にもう一人、著名なヴァイオリニストが客演していたことにお気付きだろうか。そう、シュターツカペレ・ドレスデンの首席コンサートマスター、ペーター・ミリングである。あれはN響の実力というよりも、SKD縁の2人に支えられた所以の名演だったのだ。さて、当CDはN響のそれより十数年前のSKDの録音だが、やはりN響とSKDでは響きの格が違う。勿論N響も核心に迫っていたが、SKDの内声部の充実ぶりは追随を許さない。音の層が幾重にも折り重なるような独特のサウンドであり、どんなに微弱な音にも魂を宿らせる。全ての音が有機体のように相互作用しつつ、しかも全体のまとまりにも事欠かないという希有な合奏能力!もっともライヴゆえ、ややアンサンブルが乱れるところもある。しかし、作品に真摯に向き合う姿勢は、ややするとルーティンワークになりがちな有名曲でさえ、今まさに出会うかのような新鮮さを感じさせる。音質はややヒスノイズがあるものの概して良好である。因みに“SKDでブラームスの1番はザンデルリンクだけ”というのは誤りで、実際にはケンペ盤やハイティンク盤もある。個人的には、廃盤となったハイティンク盤の再発売を望むが、ブロムシュテット盤も中々聴かせると思う。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/04/06

    “世界のワカスギ"ここにあり。もし、若杉弘が、旧東独ではなく西側で多く活躍する指揮者だったとしたら、恐らく小澤征爾以上に世間一般に知れていただろう。そもそも、「日本人の指揮者がヨーロッパ音楽の伝統の権化と言っていいシュターツカペレ・ドレスデンを指揮した」というところに、ある種の話題性はあるだろう。だがそこには「日本人にヨーロッパの伝統が分かるだろうか」という、いつまでも消えない先入観(もっとも、真実である部分も大きいのであるが)が付きまとう。そんな中、若杉は余計な細工を施さず純粋に音楽を語らせることで、ごく自然にシュターツカペレ・ドレスデンの美質を活かすことに成功している。勿論、特に《巨人》では、綺麗すぎて掘り下げ不足だと感じるきらいもある(同オケなら断然スウィトナー盤を採る)。その体躯に似てスマートすぎるのが欠点だが、感情過多になるか冷静すぎるか、どちらかにしかなくなってしまった昨今のマーラー演奏よりはるかに愛着が湧く。《英雄》も自然体な演奏だ。反復もしっかり行うところが、いかにも律儀な若杉らしい。ワーグナーの諸作品でも、無用に高ぶらない中庸を得た表現に徹している。録音も優秀。シュトリェーベン氏もエンジニアとして携わっているが、シャルプラッテン時代のようなオン気味のサウンドではなく、デンオンとの共同製作時代に見せた残響たっぷりの音響に近い。その点、逆に力感不足に感じてしまうこともあるのが残念だ。よって「すばらしい」止まり。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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     2010/04/05

    アンチ・ピリオド派狂喜!シュターツカペレ・ドレスデンはやっぱり凄い!ザンデルリンクというと、「おとなしい正統派」という印象があるが、いやはや全く違う。シュターツカペレ・ドレスデンの初来日ということも相まって、もう出だしから、熱き血潮がたぎっているのが分かる。それでいて暴走とは無縁。中音域を活かした厚みのあるサウンドは、安易にハッタリや虚仮威しに走ることを許さない。地に足をがしりと着けつつ、しかも躍動感にも事欠かないという離れ業を、実に自然体でやってのける。《ハフナー》も《ベト8》も、時代考証一辺倒に走る昨今の演奏からは絶対求め得ない、ドラマティックな演奏である。それは、作品を“頭”ではなく“心”で共感している証。これこそ、シュターツカペレ・ドレスデンの醍醐味であり、真の音楽なのである。録音も《ニュルンベルクのマイスタージンガー序曲》で音像の揺れが顕著だが、その他は概して良好である。聖ルカ教会やゼンパーオーパーなどではなく、東京文化会館や厚生年金会館というデッドなホールで、しかもほぼぶっつけ本番で収録したという事情を鑑みると、録音の優秀さが分かるだろう。廃盤になる前に是非!

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     2010/03/30

    シュターツカペレ・ドレスデン伝統のサウンドに惚れ惚れ!シュターツカペレ・ドレスデン(以下SKD)は、1548年宮廷楽団として創立した老舗中の老舗であり、幾多の歴史的危機にも屈することなく、現在にまで伝統と革新に生きていることは周知の通りである。だが、その初代楽長であるヨハン・ヴァルターが、宗教改革の第一人者マルティン・ルターの大親友であったことは、どれだけ知られているだろうか。そうした背景と、メンデルスゾーン自身の敬虔な祈り、更にデイヴィスの熱き棒が三位一体となった《宗教改革》の演奏は、まさに奇跡とも言うべき崇高さに溢れている。音の一つ一つが生命力に満ち、他を埋没させることも自ら埋没することもせず、しかしそれでいて一体に融和する響き。そのありようは、平和を希求する想いそのものに直結するようだ。そしてこれこそ、SKDにしか出来ない表現、演奏の凄味なのである。《スコットランド》でもSKDの魅力は十全に発揮される。第一楽章冒頭の何たる静けさ!ピンと張り詰めた空気感や寂寥感を、ここまで的確に表した演奏が他にあるだろうか。テンポはやや遅めだが、しかし単に遅いだけではなく、SKD特有の厚みのある中音域をゼンパーオーパーの会場全体に響き渡らせるのに効果的に作用している。終楽章コーダ(以前のプレスでは編集ミスと思しきカットがあったが、最近のプレスでは解消済み)では《宗教改革》のコラールに一脈通じる気高ささえ感じる。音質も、若干ノイズなどがあるが、SKD随一の響きを再現するのに不足はない。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/03/27

    以前、「演奏は良いが録音が悪い」という趣旨のレビューを書いたが、撤回させて頂きたい。関係各位にこの場を借りてお詫び申し上げたい。というのは、特にシューマンの協奏曲で高めのテープノイズがあり、それに気を取られていると耳が勝手に「ハイ上がりな音」と早合点してしまったようだ。しかし、聴き進むにつれてノイズは気にならなくなり、逆に豊かな響きに魅了されるようになる。いやはや、しっかり聴いてからではないとレビューはしてはいけないと痛感した。さて演奏はというと、どれもが秀逸である。特に《英雄の生涯》が絶品!管弦楽曲の中でもとりわけ演奏至難な曲として知られているだけあって、演奏によっては退屈な45分間を過ごさねばならない時もあるし、単なる技巧のお披露目になってしまうこともある。しかしさすがはシュターツカペレ・ドレスデン!渋さと甘さ、優しさと力強さが絶妙に調和している。デリケートなピアニシモから壮大なフォルテシモまで振幅が大きく、時折うねるような表情を見せる。それでいて一瞬たりとも騒がしい雰囲気を与えないところが凄い。ペーター・ミリングのソロも、貞節さと色気を併せ持つ魅力的な伴侶を演じている。《牧神の午後》はいわゆる“フランス的”な演奏からは乖離しているが、これはこれで美しい。個々の楽器が“独立して”色彩美を作り出すのがフランス的だとすれば、ドレスデンの作法は“調和して”温もりのある音響を作り出す。《ピアノ協奏曲》は、冒頭やや散漫な印象も見受けられるが、第一楽章の中程から徐々に熱を帯びていき、最後には全員一丸の合奏になる。こういう熱量も、ライヴならではである。勿論若干のミスもあるが、許容範囲内だ。それから特筆すべきはブックレットが充実していることだ。貴重な写真が満載である。耳からも目からも楽しめる一組といえよう。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/03/21

    温もりと情熱を併せ持った希有な名演!チャイコフスキーの名盤といえば、大概はムラヴィンスキーやスヴェトラーノフなどのロシア人指揮者の演奏を挙げるだろう。彼らの演奏には、ロシアの大地のエナジーを彷彿とさせるような、爆発的な力強さがある。もっともムラヴィンスキーとスヴェトラーノフの芸風は似て非なるもので、前者は完璧な統制の中に強烈な響きを聴かせ、後者は扇情的な身振りでグイグイと押すタイプの演奏をする。ではクルツ&シュターツカペレ・ドレスデンはどうか。一言で言えば「柔らかく包み込むような」演奏である。ドレスデンの音の豊かなことはこの上ない。肌理細やかな弦、まろやかな管、力強い打楽器、これらが絶妙に調和している。誰かが出しゃばったり、逆に引っ込んだりしない。全員一丸の見事な合奏である。さりとて例えばカラヤン&ベルリン・フィルのような絢爛豪華な雰囲気かと言えば、これまた違う。カラヤンには、度を超して綺麗である故の人工臭さが鼻に付くことがあるが、ドレスデンの音はとても自然である。殊に中音域の豊かさは驚嘆する程であり、他の楽団では滅多に聴けない多層的な響きに酔い痴れることが出来る。メロディとリズムだけ揃えて中身がスカスカな演奏解釈が跋扈する中で、それらとは一線を画す名演と言えるだろう。非ロシア系チャイコフスキーの隠れた名盤と呼べる素晴らしい一枚だ。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 9人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/03/12

    これぞマーラーを聴く醍醐味!最近のマーラー演奏は、やたら精緻なだけの、血も肉もない無味乾燥な代物が多く見受けられる。この手の演奏は、確かに今まで聴かれなかった豊かな響きに触れられるメリットもない訳ではないが、個人的には由々しきものと思っている。幼少より相次ぐ肉親の死に接し、自身が没するまでその恐怖から逃れられず、聖俗入り乱れる旋律の幻聴に苛まれ続けてきた人の音楽が、単に即物的で理路整然としているとは、とても思えないのである。マーラーの音楽は、どんな曲にも“死”の影が付き纏う。《復活》とてやはり、“永遠の命”の影に“死”が内在している。テンシュテットは闘病を通じ、この“死”というとてつもなく大きなものと向き合っている。それは即、マーラーと対峙することに繋がるのである。そのマーラーの苦悩とは「神はいるのかいないのか。もしいるのなら、何故我々は、かくも苦しまなくてはならないのか」という“全人類の苦悩”でもある。魂の叫びを、時に激しく、時に美しく、あるいは支離滅裂(といっても、表現するテンシュテットは真剣白羽)にぶつけていく。これら前提があって初めて、遅いテンポに真実味が出てくる(単に遅いだけではないということだ)。少しの心情の変化も見逃さんとするように、オケは絶妙な緩急をつける。一瞬たりとも、耳をそばだたさずにはいさせない。合唱も、呻き、叫び、そして迷いの中に一条の光を見出だすようだ。フォークナーの録音は、これら特徴を過不足なく捉えることに成功している。殊に合唱における、神々しいまでの自然倍音さえも、明瞭に捉え切る手腕はさすが。演奏・録音ともに、数多ある《復活》の中でも屈指の超名盤と言えよう。

    9人の方が、このレビューに「共感」しています。

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