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100人の偉大なアーティスト - No.94

2003年3月20日 (木)

ビッグ・ビート・ムーヴメントの立役者、奇才DJ/プロデューサー、ダンス・ミュージック・シーンにおいて最も影響力を持つ男、ノーマン・クックことファットボーイ・スリム。彼の場合、どのアーティストに影響を及ぼしたか、ということを考えるより、そのプロデュース・ワークス、リミックス・ワークスの膨大な量を見たほうが一目瞭然だ。

順不同で羅列してみても、ビースティー・ボーイズジェームス・ブラウンア・トライブ・コールド・クエストアンジェリック・キジョヴァネッサ・パラダイスアズテック・カメラJC・ロッジアンダーワールド...とジャンルを超えた著名アーティストたちがこぞって彼にリミックスやプロデュースをオファーしている。しかもこれらのアーティストの作品は、彼の仕事の氷山の一角であり、もし全てのリミックスやプロデュース作品を掲載したらこのページだけではとてもじゃないが収まりきらない。

ファットボーイ・スリム 本名ノーマン・クックは1963年7月13日、ブルームリーに生まれレッドヒルで育った。大学入学と同時にブライトンに移り住み、DJをやり始め、またクラッシュに衝撃を受けバンドにも参加。’85年ネオ・アコースティック・ムーヴメントの中、級友のPaul Heatonの誘いを受け、彼のグループHousemartinsにベーシストとして正式に加入。’86年にアイズレー・ジャスパー・アイズレーの名曲「Caravan Of Love」をカヴァーして、いきなりブリティッシュ・ナンバー・ワンを記録、一躍注目を集める。しかし、メンバーとの折り合いがうまくいかずグループは’88年に解散。ダンス・ミュージックを溺愛していたノーマンはブライトンに戻り、バンド在籍時から始めたDJ活動に没頭するようになる。まず、エリックB & ラキムの「I Know You Got Soul」でリミキサーとしての第一歩を踏み出す。

’90年には自身のグループ、ビーツ・インターナショナルを結成。デビュー・シングル「Dub Be Good To Me」が全英ナンバー・ワンに輝くが、離婚等の理由もあって、グループは解散、ノーマンもそんな私生活にいやけがさし、2年間、まったく音楽活動から遠ざかってしまう。その後、Ashley Slaterと共にフリークパワーを結成、シングル「Turn On, Turn In, Cop Out」はもう少しでブリティッシュ・ナンバー・ワンになるところまで行ったが、結局、ビーツ同様、アルバムを2枚残して解散。

この頃からノーマンは何種類もの名前を使い分けてレコードを制作するようになり、ハンドバックにはPizzaman、ハウスにはThe Mighty Dub Kats、トリップ・ホップにはFried Funk Food、そして’95年からはファットボーイ・スリムというように...Fatboyの名前の由来は40年代に「Baby, I Want A Piece Of Your Pie」というヒット曲で有名になったルイジアナのブルース・シンガーから取ったという。1stシングルのタイトルは「Santa Cruz」。Damien HarrisによるSkintレーベルからの初リリースであった。程なくしてThe Sunday Social(ケミカル・ブラザーズの本拠地)を始め、ロンドン中のクラブでこの曲がかかり始め、やがてブライトンに彼が専属DJを務めるThe Big Beat Boutiqueがオープン、これが大成功を収める。また、ファットボーイ・スリムとしての2ndシングル「Everybody Loves A 303」もリリース。エドウィン・スターの「Everybody Needs Love」に強力なブレイク・ビートを加えたそのサウンドは、その年の最大のダンス・ナンバーとして絶賛された。

その後も「Punk To Funk」、「Going Out Of My Head」、「Everybody Loves A Carnival」と立て続けにヒットを飛ばした彼は、’96年、遂にファットボーイ・スリムとしての1stアルバム「Better Living Through Chemistry」を発表。当初はあまり話題にならなかったが口コミでそのサウンドの評判はどんどん広がっていった。リミックス活動も盛んに手掛け、ワイルド・チャイルドの「Renegade Master」、コーナーショップ「Brimful Of Asha」、あのフリークパワーの「No Way」等々。この頃には日本でも確実に火が付き、デビュー・シングル「The Rockafeller Skank」に続く2ndシングル「Gangster Trippin'」も爆発的なヒットを記録、その名を世界中に知らしめた。

’98年秋には2ndアルバム「You've Come A Long Way, Baby」を発表。シングル・カットされた「Praise You」がアメリカで大ブレイクしたのをきっかけに、セールスもどんどん伸び、マドンナ リッキー・マーティンといったビッグ・ネームからもリミックスの依頼が殺到するようになった。彼のプレイするフロアにブラッド・ピットとジェニファー・アニストンがやってきたり、グラミー賞の席でリッキー・マーティンと肩を並べたり...といった具合にその成功を物語るかのようなエピソードも伝わってきている。

そして21世紀を目前にした今年、待望、そしてノーマン自身、始めての3rdアルバムとなる「Halfway Between The Gutter And The Stars」を発表。DJとしての自らのルーツ、ハウス・ミュージックに立ち返った本作は、これまでのロック的なアプローチを最小限に抑え、純粋なクラブ・ミュージックとしてのスタンスを貫いた。ジム・モリソン(ドアーズ)のヴォーカル・サンプリング曲「Sunset(Bird Of Play)」を始め、 メイシー・グレイブーツィ・コリンズローランド・カーク等をゲストに迎え、”癒し”と”覚醒”とも言える彼のサウンド・ワールドが堪能できる傑作となった。

21世紀もファットボーイ・スリムの進撃は間違いなく続くだろう。そして、「Live On Brighton Beach」の存続、ノーマン・クックとしてのリミックス活動もファンとしては今後も大いに期待したいところだ。
※表示のポイント倍率は、
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

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