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森達也 『死刑』創刊記念インタビュー(4)(最終回)

2008年2月10日 (日)

無題ドキュメント
森達也インタビュー


  Contents

  (1)基調低音―放送禁止歌
  (2)『A』、『A2』から『死刑』へ
 
(3)維持せねばならない理由はどこにあるのか
  (4)本来みんなにあるもの、みんなが持っているものなんだと思う





森達也 『死刑』創刊記念インタビューC
本来みんなにあるもの、みんなが持っているものなんだと思う


 その回路はみんなが持っているもんなんだと思う


--- 先ほど、実際に死刑で死んでいくであろう人と会ったことで死刑に対する意識が活性化されたというお話がありましたよね。実際に死刑囚と交流のある森さんと、ふだん会う機会のない私たちの死刑囚や死刑制度に対するイメージや実感には、やはり温度差や違いがあるんじゃないか、と思ったりもしたのですが、どうでしょうか?

森: うーん、ただ、死刑囚たちがとても特別な人たちで、会わないことにはわからないと指摘されれば、それは違うと言いたくなる。さきほど『A』の撮影で会った信者たちは、みんな普通で優しくて善良だったと話しましたよね。死刑囚も同じです。僕らと変わらない人たちで、僕がそういう人たちと会うってことは別に特権でもなんでもないんですよ。たまたま会って話をして気づいたことではあるけれども、たとえ会ったことのないみんなも自分と変わらない普通の人をイメージしてくれればいいんですよ。

さらにいえば、面会って実はそれほど難しくはない。確定死刑囚は会える人が限られていますけれど、未決囚(裁判で刑が確定していない人)なら基本的には会えます。それに半分以上の人は家族や友人がいなくて孤独に喘いでいます。みんなで手紙をまず書いて、それから会いに行けばいい。法務省が隠すのならこっちから塀を乗り越えればいい。・・・だから人を救いたいって思う気持ちは森だけじゃないのか?ってことじゃなくて、本来みんなにあるものだし、その回路はみんなが持っているものなんだと思っています。光市母子殺害事件の弁護人の安田好弘さんも、「なぜあなたは死刑廃止を主張するの?」って聞いたら、「(その人に)会っちゃったから」って。会ってしまうとやらざるを得ない、それは僕が言ってるのと同じだよね。それはもう誰もが同じなんですよ。会えば、いま目の前にいるこの人を死なせたくないって。もちろん100%の人がそうだとは言えないけれど。

 思っているほどそんなに難しいことじゃないです


--- 確かにメディアの報道だとどうしても罪を犯した人の残虐性が強調されるので、私たちはイメージを刷り込まれてるかも知れませんね。モンスター化してしまうと言うか。逆に被害者遺族へのイメージも固定化してしまってる部分がある。だから森さんの本を読んでいて、直接自分で話を聞いてみたいという気持ちになりました。

森: 屠畜についての本(『いのちの食べかた』(理論社))を書いた時、読んだ人にどうやったら屠場に行けるんですか?って聞かれて、場所を調べてそこに電話すればいいって答えています。基本的には見学は可能です。オウムを撮ったとき、解放同盟を取材したとき、右翼を撮ったときもそう。どうやって取材を了解させたのか?って聞かれるのだけど、答えはいつも一緒。撮っていいですか?って聞いたらいいよって言われたから撮ったんです。死刑囚にも誰だって会えます。あるいは「あすの会」(全国犯罪被害者の会)もあるし、そこでボランティアをやりたいっていう若い人も多いみたいだし、実際に足を運ぶ、会う、話を聞く、顔を見るって、みんなが思っているほどそんなに難しいことじゃないです。だからよくね、「森は会えるからいいよ」なんて言われたりすることもあるんだけど、誰でも会えるんですよ。僕に特権なんてほとんどないんだから。

--- 誰でも会えるとは知りませんでした。でも会えるんだ、っていう感覚はこの本を読んでて伝わってきました。「死刑」というテーマは確かに重いし、法律とか色んな知識がないとわからないんじゃないかと思ってたんですが、読み始めると、決して難しくはないし、ごく自然にどんどん読めて行って。場面が変わって読み進むごとに、ほんとに自分が実際にそこにいて話を聞いて感じたり考えたりしているような、森さんの心の変遷が体感できました。

森: ありがとうございます。それが一番嬉しいですね。

--- だから、今日森さんから直接お話を伺って、いろんな人たちがいろんな思いをしながら死刑問題を考えてるんだな、ってことをあらためて知ったというか。若い人たちにも1人でも多く読んで頂きたいって痛感しました。

森: ありがとう。もちろんテーマは重苦しいけれど僕が書くのだから難しくはない。知り合いの中学生の娘さんも一晩で読み終えたって言ってくれました。

--- 確かに読んだ直後は、色々考え込むだろうし、逡巡もする。応報観念ひとつとっても…わかりたくてもわかりえないもどかしさだとか、本当に色々な感情が交錯します。でも読まなければそれにすら気づかないままでした。逆にしんどい思いして学んで良かったな、って思います。
現在も死刑の取材は続けていらっしゃるんですか?

森: 現時点ではこの本でピリオドは打ったつもりですけれど、何年か経ったらまた・・・っていう可能性はありますね。それは僕にとってのオウムがそうなんですが、毎回終わっているつもりでもどうしても終われない。ただ、現段階ではこの問題については書けることは書いたという感覚です。執筆ってリレーに似ている。僕はバトンを持ってとにかく走りきった。だからあとは読者にバトンを渡します。そんな感じかな。僕はしばらく座り込んで息を整えます。




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  森達也(もりたつや)
森達也 映画監督/ドキュメンタリー作家。
1998年オウム真理教の荒木浩を主人公とするドキュメンタリー映画「A」を公開、各国映画祭に出品し、海外でも高い評価を受ける。 2001年、続編「A2」が、山形国際ドキュメンタリー映画祭で特別賞・市民賞を受賞。著書に『放送禁止歌』(光文社知恵の森文庫)、『「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔』、『クォン・デ〜もう一人のラストエンペラー』『世界が完全に思考停止する前に』『職業欄はエスパー』(角川文庫)、『A2』(現代書館)、『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』(晶文社)、『下山事件』『東京番外地』(新潮社)、『池袋シネマ青春譜』(柏書房)、『いのちの食べかた』『世界を信じるためのメソッド』(理論社)、『戦争の世紀を超えて』(講談社)、『ドキュメンタリーは嘘をつく』(草思社)、『王様は裸だと言った子どもはその後どうなったか』『ご臨終メディア』(集英社)、『悪役レスラーは笑う』(岩波新書)など多数。

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  (1)基調低音―放送禁止歌
  (2)『A』、『A2』から『死刑』へ
 
(3)維持せねばならない理由はどこにあるのか
  (4)本来みんなにあるもの、みんなが持っているものなんだと思う





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