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スノードロップ さんのレビュー一覧 

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     2024/07/08

    カラヤンのシューマン4番はどれも秀演揃いだが、中でもこのEMI盤はダイナミック&ストレートかつロマン薫る超名演。冒頭から往時のBPOの仄暗い音色が空間いっぱいに広がり、深深とした弦から渋みを残した管、野太く轟きわたるティンパニなど、後年DG盤とは大きく違う魅力を放つ。特にアレグロの部分での畳み掛けるような気迫は尋常でなく(第1楽章序奏から主部への移行や、終楽章コーダ等)、壮年期のカラヤンが腕をしならせながらBPOをドライヴする姿が目に浮かぶ。緩徐楽章での濃厚な歌もDGより自然体で感動的。余白のワーグナーは’74年の名盤(SACD化で音質優秀)があるため分が悪いが、当盤の魅力はまだ洗練されきっていない黒光りするような当時のBPOサウンドと、小細工無しのストレートな高揚で、特にタンホイザーはドレスデン版なので終結部の野太い咆哮も痛快!音質はモノラル末期で安定感があり陰翳濃く各楽器の質感も豊かで良好。

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     2024/07/04

    マルツィを鮮明なステレオ録音で聴ける悦び!モノラルでは聴き取れなかった繊細なニュアンスがはっきり分かるのが嬉しく、慈愛深く端正高貴かつ濃厚なマルツィの至芸が克明に記録されている!まず最初のバルトークから凄い。同郷の血が滾るような気迫と集中力の熱演で、瑞々しく気品漂うフォルムながら、随所でマグマのように噴出する凄絶なエナジー放射に圧倒される!一転モーツァルトは少女の瞳のように澄み切った純潔の美音と端正な造形で聴かせこの上なく美しい…十八番のシューベルトはアントニエッティとの濃厚優美なモノ録音も捨て難いが、当盤はクリアな音質も相まって清楚で透明感バツグンの高潔な抒情が魅力的で、急速楽章も飛ばしすぎることなく豊穣な歌心に満ちた典雅な美演を聴かせる。音質はセッション録音ということもあるが非常に高鮮度で明瞭、晩年のマルツィによる名演を存分に堪能できる。

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     2024/07/02

    ドヴォルザークの五重奏曲集の決定的名盤!黄金期BPOメンバー達による洗練されたアンサンブルと木目の香りを湛えた音色に魅了される!何と言っても弦五第3番op.97が最高の名演で、この曲の肝であるVaは我が国が誇る名手・土屋邦雄と神様カッポーネが担当!2人の柔らかく深みと憂いを帯びた豊かな音色が、この名曲の香り高い抒情性を見事に表出する!特にカッポーネの室内楽録音は少ないので、氏の妙技を堪能できる数少ない音盤でもある。コヴァセヴィチを迎えたP五重奏曲も最高で、底抜けに明るく粒立ちの良いタッチで明朗爽快に駆け回るピアノと抜群の機動性でぴたりと付ける弦の掛け合いは手に汗握る!また、珍しい弦五第1番では懐かしの名手E.マースのVnも聴ける。音質はアナログ円熟期のPHILIPSによる優秀録音で、弦のしっとりとした質感は勿論、ピアノのバランスも出過ぎる事無く理想的。

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     2024/06/30

    これは凄い!円熟期のシェリングによる珠玉の美演、モーツァルト最初の一音から溢れ出る気品と美音、高潔な歌に心を鷲掴みにされ金縛り状態。トッコの控え目ながらツボを押さえた絶妙なサポートを得て、還暦を過ぎたシェリングの温かみと深みを増した音色が存分に発揮されている。ブラームスはルービンシュタインと共演したセッション録音を長年愛聴してきたが、本ライヴ盤は実演ならではの高い集中力と柔軟性、円熟した豊穣な歌心で作品の典雅な抒情性を見事に描き出しセッション録音を凌駕した!だが何と言っても極めつけはベートーヴェン。勿論ヘブラーとの共演盤も屈指の名演で遙か昔からの愛聴盤だが、こちらは更に彫りが深く、より豊かな情感と気迫を加味した最高の名演!そして第2楽章の清楚な歌には思わず涙(穏やかに寄り添い歌うトッコのピアノも泣かせる)…音質も’79Liveだが会場にいるかのような臨場感で非常に優秀!

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     2024/06/27

    これぞラサールSQの神髄、白熱・絶美の超絶ライヴ!まず最初のシューベルトから凄まじい集中力と完成度、甘く歌うのに精巧・鋭敏に引き締まったラサールの個性が刻印された名演!続くルトスワフスキはさすが初演団体というだけあって堂に入っており、かなり自由な作品であるが古典的な印象すら与える佇まいの美しさで聴かせる見事な演奏。そしてメインのラヴェルは、名盤のDGセッション録音をも凌ぐ超名演!冒頭から滴るような美音と精緻を極めたアンサンブルで聴き手を圧倒し、それでいて冷たさなど一切感じさせず豊かに歌う!特に香るような情感の第3楽章が絶品で、ライヴで乗ったラサールSQの歌心を存分に堪能できる。アンコールのベートーヴェンも抜群の機動性とアンサンブル、そして作品が孕む諧謔性をDG盤以上に表出しておりたまらなく魅力的!音質は残響がやや多めながらしっとりと美しく非常に優秀。

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     2024/06/25

    VPOとのDECCA盤や、同じBPOとのEMI盤も良いがこの映画版は豪華なセットや特撮、キャスト陣の熱演を楽しめるのが魅力で、特にヴィッカースは役に没入した迫真の演技を魅せる。グロソップのヤーゴも、見た目も声もいかにも悪そうでハマり役。EMI盤とは近い時期の録音で、音質の安定感ではEMIに軍配だが(当DVDでは古いオペラ映画にありがちな場面の切り替えに伴う音量レベルの変動などがちと気になる)、ザルツブルクで収録された当DVDの音声は、爆発的に咆哮する金管や乾いたティンパニの打ち込みなど熱の入り方はEMIを凌駕する圧倒的なもので、手に汗握る熱演!映像面では、ここでのカラヤンの演出は分かりやすく見応えがあり、それをフィルム撮りの鮮やかな画質で見る事ができるのも魅力。

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     2024/06/24

    両曲ともに屈指の名演。一気呵成に運びながら、随所でVPOの蠱惑的な音色が溢れるように響きわたる!まずプラハは巨匠お得意のレパートリーだが、高名なコンサートホール盤にも比肩する至高の美演。モノラルながら往年のVPOならではの艶やかな音色が克明に捉えられており、眩いばかりのアレグロも、深遠でデリカシーに満ちたなアンダンテもシューリヒトの独擅場!続くジュピターは古今東西の同曲演奏の中でも最高と言える名演で、疾風怒濤の第1楽章から柔らかく歌う第2楽章、堂々のメヌエットを経て壮麗な終楽章を迎える。このフィナーレの素晴らしさたるや、かのクレンペラーVPOやヨッフムVPO(いずれも優秀ステレオ)さえも霞むほどの輝きと閃きに満ちており一瞬たりとも耳を離せない。特に集結部の神々しいまでの威容!音質はモノラル・ライヴながら鮮明で(特にジュピター)演奏を十分に堪能できる。

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     2024/06/23

    久々に聴き返したが、やはり私にとってベートーヴェンはズスケが基準。適切なテンポ感、特定のパートが突出しない溶け合った響きのバランス、そして美しい録音。4人の技巧は大変優れておりキレも歌心もアンサンブルも完璧、それでいて嫌味な所は皆無ですべてが理想的。技巧的に走りがちなラズモ3番なども、切れ味のよさを備えながらまさに燻し銀というべき落ち着いた風格と品位で聴かせるし、セリオーソでは意外なほどに鋭く硬派な(それでいて人肌の温もりを強く感じさせる!)音楽を描き出す。op.131など個性盤溢れる現在では淡白に感じるかもしれないが、聴けば聴くほど、その引き締まった堅牢なフォルムの美しさと渋く深い音色に魅了される。そしてこんなに良い曲だったのかとハッとさせられる初期作品の爽やかな魅力!音質は通常盤でも非常に優秀(現在はBC0274で所持)。

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     2024/06/22

    シューベルトを得意とする団体だけあって、非の打ちどころの無い名演。ブランディスはカラヤン時代のコンマス3人の中でも特にBPO臭の強い音を出す人だと言われており、ここでも太めの豊かな音色だが突出することなく4本がバランスよく調和している。弱音部での繊細な表現も見事で、随所で多用されるトレモロも多彩な表情で聴かせるし、これ以上ないというほど適切なテンポ感も心地よく、第1楽章リピート有だがダレることなく高い集中力をもって一気に聴かせる。各所で言われているように、後年のニンバスへのシューベルト録音も名演揃いだが、このORFEOへの一連の録音はまた格別の出来だと思う。また、同時期にハルモニアムンディへ録音したベートーヴェンもすこぶる付きの名演ばかりなので、是非とも再発して欲しい(特にop.132は至高の名演)。音質優秀。

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     2024/03/24

    巨匠ザンデルリンクの至芸を克明に記録した超名盤!皆さん書かれているがまず1曲目のサン=サーンスP協2からザンデルリンク+BPOの生み出す超重量級のゴッツイ響きに圧倒される。そこに脂の乗ったブロンフマンの冴えたピアノが加わり、更に終楽章はツェペリッツ率いるバス軍団を中心に烈火の如く白熱しまさに圧巻!そしてメインのチャイ4は巨人的な超絶名演!全編にわたり大河の如きテンポを採り、これでもかとBPOの重量級サウンドを炸裂させる。クレッツァー、ハウプトマン、ライスター、シェレンベルガー、ダミアーノら管楽セクションの妙技も去ることながら、レンベンス(!)によるティンパニのなんと意味深い響き!殊に第1楽章ではテーリヒェンの重みとフォーグラーの粒立ちを両立させたような絶妙な撥捌きで聴き手を圧倒する。兎に角これは同曲史上最高の名演と言っても過言ではない。画質は古く粗いが音質は非常に優秀。

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     2023/04/21

    ワインガルトナーの作品は王道ロマン派ともいうべき分かり易く美しい作品ばかりだが、このVn協奏曲も例によって非常に美しく耳当たりのよい旋律に彩られた名作。甘いだけでなく、時折ピリリとスパイスを効かせた管弦楽法が顔を見せ飽きさせない。当盤は今のところ同曲唯一の音盤だが、オケもソリストも伸びやかに演奏しきっており、この曲の魅力を存分に引き出している。シューベルトの交響曲はワインガルトナー版で他にレーグナーの録音もあるらしいが、第1楽章など確かにシューベルトらしさが随所に見受けられ、「グレイト」等に通じる歌謡的かつ豪壮な曲調で愉しく聴けた。両曲ともオン気味でクリアな迫力ある音質で満足。

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     2023/04/20

    鬼才マデルナ/ハーグ・フィルの濃厚ライヴ、予想以上の怪演…!まずドビュッシーだが、これまでに何十種類もの「海」を聴いてきたが、これはその中でも屈指の個性盤。速めのテンポを基調としながら、歌うところでは時に流れを損ねかねないほど極端にテンポを落とし濃密にねっとりと歌いまくる!オケもこの激しい棒に熱く食らいついており聴き応え満点。ヒンデミットはあまり馴染みのない曲だが、作曲家マデルナの面目躍如たる分かり易く愉悦感に満ちた演奏。メインのマーラーは、これまた激しくテンポを揺さぶる怪演で、濃密に咽ぶ弦やカタストロフでの粗野な咆哮、そしてブルックナーもかくやのパウゼなど、一筋縄ではいかない。アダージョのみ、しかも演奏時間も短めの22分台なのにこの手応え、恐るべし!音質は1972年のライヴながら優秀、オンマイク気味で生々しくヒスも少なく非常にクリア。

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     2023/01/13

    濃厚な白熱名演!両者とも圧倒的技巧をベースに緩急自在の熱演を繰り広げる。これでもかとロマンティックに歌い込むショパンも良いが、両者の演奏スタイルは特にラフマニノフにハマっており、骨太の濃密な歌心を存分に発揮した熱演となっている。速い部分での畳み掛けるような気迫と熱量は圧倒的だし、緩徐部でのしっとりとした語り口も絶美。ラストなどオケ曲に匹敵するほどの威容を獲得し熱く歌い上げており圧巻!併録のヴォカリーズがまた絶品で、遅いテンポでじっくりたっぷりかつ繊細に、驚くべきスケールで聴かせる名演!録音もオン気味で生々しく良好。随所でクニャーゼフのアツい息遣いが聞こえるのもリアルで良い。

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     2023/01/12

    メータのシュトラウス録音を集めたボックスだが、なんと言ってもBPOとの録音群が聴きモノ。家庭やアルペンはデッカの旧盤よりも恰幅が増し細部まで磨きあげられたが旧盤で聴かれたマッシヴな推進力はやや後退した。ただそれが弛緩ではなく、オケの自発性に繋がっており独特な魅力を放つ。オペラ管弦楽曲集はもっと緻密かつ大スケールでうねりまくる熱演に満足、オペラ指揮者としての面目躍如たる名演。そして極めつけはサロメ!以前から気になっていたがこれほどの名演とは!マルトンやヴァイクルの歌唱はクセなく正攻法だが、メータ率いるBPOの凄まじい音響がドラマを煽り立てる。特に7つのヴェールの踊り以降の劇的緊迫感は圧巻で、飛沫をあげるような弦や金管、壮烈に強打するTimpなどBPOの妙技がこれでもかと炸裂し最後の場面も一層強烈な印象を残す。音質も総じて良好or優秀で大満足。

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     2022/12/11

    やはりライヴのベームは凄い!ベーム/フランス国立管の組み合わせと、何とも魅力的なプログラムに惹かれ購入したが、全部期待以上の名演!まずジュピター…これぞベーム、どっしりと構えフランスオケに低重心の響きを叩き込んだオールドスタイルで聴き応え満点。白眉は終楽章で実演ならではの推進力とフランスオケ特有の管の華やかな味わいが絶品。トリスタン…速めのテンポで引き締まっているがオケの明るめの音色もあり息苦しさ皆無、深い呼吸と色彩的なエナジー放射が魅力で、愛の死ではニルソンの絶唱に酔いしれる!レオノーレ…後半ミスが目立つがそれを覆す爆発的熱量、随所に仕掛けられた瞬発的cresc.も聴き手の興奮を煽る。そしてサロメのフィナーレ…ベームのオハコなので悪かろうはずが無いが、当盤の魅力はやはりフランスオケならではの色彩的音色&官能的芳香で、ニルソンのパワフルな歌唱に一層華やぎを添える。終演後は勿論盛大な喝采(長めに収録されているのが嬉しい)。音は少しオフぎみで各帯域とも欲張らずバランスよくまとまっており、実際のホールでの雰囲気に近く好印象。

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