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100人の偉大なアーティスト - No. 47

2006年9月23日 (土)

伝説のバンド、 ドアーズのヴォーカリスト、詩人ジム・モリスン。そのカリスマティックなヴォーカル/パフォーマンスはもはや神話化されている。メジャー、ショービズ的な場面で闘ったドアーズのフロントマンとして、ジム・モリスンは当時の世間に違和感を持たれるような強烈な個性を見せつけ、高い文学性を有した歌詞をメジャー・フィールドに持ち込むことで時代に大きな楔を打ち込んだ(同時期に活動したヴェルヴェット・アンダーグラウンドルー・リードがマイナーな存在に終わったことを思えば、驚異的な成功といえる)。

またシンガーとしての彼は最後まで、その生まれ持った特異な資質、声質を研ぎ澄ますことに終始していたという気がする。彼のヴォーカルは結局のところ、ドアーズ後期におけるR&Bコンプレックスみたいなものと無縁だったのではないか、それとは別の部分で評価されるべき性質のものだったのではないか、というのが後追いで聴いたリスナーの一人としての正直な印象だ。最後までジム・モリスンのヴォーカルには一貫性があったし、そのヌメっとした声の質感(本人自身、キング・オブ・リザードを名乗った)や、その深く不気味な歌声の唯一無二な個性は、初めて聴く人に強烈な違和を与える(慣れるとこの上なく心地好いともいえるのだが)。ヨーロッパの詩人に憧れる文学的な資質とスキャンダラスな言動という当時の謎めいたパブリック・イメージとともに、作品を通して聴かれる、その声の存在感、ときに扇情的、ときにこの上なくメランコリックで繊細な詞世界というアンヴィヴァレンツな魅力が、ジム・モリスンを今でも特別な存在にしていると言える。

ジム・モリスン(本名:ジェイムス・ダグラス・モリスン。vo/1943年12月8日、フロリダ州生まれ)は厳格な軍人の家庭に生まれた(ドアーズのデビュー当時は両親と死別したと公言しており、ミステリアスなイメージを演出していたと言われている)。 1961年にジョージ・ワシントン・ハイスクールを卒業した彼は、フロリダのピーターズバーグ・ジュニア・カレッジ、フロリダ州立大学を経て1964年ロス・アンゼルスのUCLA演劇学科に入学。後にドアーズ の"ジ・エンド"を自らの映画 地獄の黙示録 に使用するフランシス・コッポラも彼の学友だった。 モリスンレイ・マンザレクはじめ後にドアーズのメンバーとなる人物達と邂逅。彼らは4〜5ヶ月をリハーサルに費やし、ロス・アンゼルスの有名クラブ、ウィスキー・ア・ゴー・ゴーの専属バンドになった。そしてその頃にはオリジナル曲を加え、モリスンのセクシャルと評されるステージング、即興的なサウンドで人気を集めていく。1966年末、エレクトラ・レコードのプロモーター、ビリー・ジェイムスに認められた彼らは、新興のエレクトラ社ではラヴに続く二組目のロック・バンドとして契約し、レコードをリリースしていった。

ジム・モリスンに多大な影響を受けたアーティストとして思い浮かぶのは、その文学性とヨーロッパ耽美主義的な個性を発揮するニック・ケイヴ(オーストラリア人として外部からヨーロッパを眺めている視点も似ているのかも)辺りや、またヴォーカル・スタイルと熱狂を生み出すステージング、ある特定のジェネレーションを代表するアメリカン・カルチャーという側面からすればパール・ジャムのエディ・ヴェイダー辺りもそうかもしれない。ただ余りにもジム・モリスンの存在が特異であり、またニック・ケイヴやエディにしても独自の個性を持っているため、シンガーとしてのフォロワーとするのはどうかとも思う。どちらかと言えば精神的なルーツとして刻まれている、と表現したほうが良いかもしれない。そうしてみるとニックやエディ以外にもその個性に影響を受けているミュージシャンはそれこそ星の数ほど居るような気もしてくるが…。

その活動や私生活においてはトリックスター的なものを演じて見せながら、ジム・モリスンの個性的なヴォーカルには、不器用なまでに自らの資質のまま突き進んでいくような部分を感じる。広げていくことではなく深く沈み込んでいくこと。うまく言えないが、その凄まじく個性的な声に、毎度の如く聴くたびに驚かされつつも、凡人の筆者にも、どこかで彼は決して器用な性分ではなかったのだろう、ということが伝わってくる。彼が伝説として生き長らえながらも、何かそれほど神棚が似合わないのはそういうことではないだろうか。そんな普遍的な人間臭さが、彼の歌をいつまでもリアルに響かせているのかもしれない。

※表示のポイント倍率は、
ブロンズ・ゴールド・プラチナステージの場合です。

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