100人の偉大なアーティスト - No. 97

2006年7月22日 (土)

アメリカにおける初めてのパンク/テクノ・バンドとして日本の YMOほか多方面に影響を与えたディーヴォは1971年、ケント州立大学のキャプテン・ビーフハート同好会にてマークとジェリーが出会った事に端を発している。その後マークは大学を中退、ジェリーは無事卒業するが、職には付かず共同経営という形でグラフィック・アート・ショップをオープンするのであった。自主で短編映画を作ることになった2人はその映画の音楽製作もかかねてバンドを結成する。メンバーはマーク、ジェリー、ジム（マークの実兄）、ボブ1号（マークの実弟）の」4名。この時のバンド名はまだSexted Devoであった。

映画用に作った音楽が意外にも好評で気を良くした4人はほどなくしてライヴ活動も開始する。電気洗濯機などをステージに持ち込んだアヴァンギャルドなライヴを展開していた為か、周囲からはイロモノ的な白い目で見られていたという。まもなくジムはマネージャー業に専念するためバンドを脱退。後任としてボブ1号の友人でジャズ・ドラマーだったアランが加入。同時にジェリーの実弟ボブ2号もサイド・ギタリストとして加入。これを機にバンド名をディーヴォと改め,共同経営のアート・ショップも店じまいしバンド活動中心の生活へとシフトしていく。

７７年には自主レベール「ブージーボーイ」を設立。“Joko Homo”と“Satisfaction”の２枚のシングルを同時にリリースする。この直後からディーヴォに対する評価はアメリカかたヨーロッパへと広がりデヴィッド・ボウイ、トッド・ラングレン、ブライアン・イーノといった新しモノ好きな大物ミュージシャンからも絶賛されるようになる。

７８年にはスティッフとシングル３枚のみの契約を交わし先述の２枚に加え“Be Stiff / Social Folls”をリリース。そして間髪いれずワーナー・ブラザーズ、ヴァージン・レコードという大手と契約。ブライアン・イーノ・プロデュースによる伝説のデビュー・アルバムQ Are We Not Men ? A We Are Devo（邦題：類廃的美学論）をリリースする。

79年には早くもセカンド・アルバムDuty Now For The Future（邦題：生存学未来編）をリリース。時を同じくして初来日公演を敢行。この時の模様はテレビ放映もされ、後にはTVCMにも登場するなど日本はディーヴォによって一大テクノ・ブームを迎える。YMOがブレイクの時期を迎えるのもやはりこの頃であった。

80年代前半は順調に活動を推し進めるが84年の『Shout』をリリース後、無期限の活動停止を宣言する。4年後にようやく沈黙を破り、88年にEnignmaから『Total Devo』をリリース。その後の活動は常に流動的で96年にはオルタナティヴ・ロックの祭典に出演も。2000年に入ってからはサウスパークやパワー・パフ・ガールズといったアメリカのアニメーション映画のサウンドトラックに楽曲を提供、ぽつりぽつりライヴを行うなどして現在も活動を続けている。

奇妙で奇天烈な恰好にピコピコとした電子音。ハイテクの国、日本で70年代末から80年代に思春期を過ごし、少なからずサブ・カルチャーに興味を抱いていた者であればディーヴォという存在は必然的なものであっただろう。その後に与えた影響力という点でもやはりディーヴォの存在は絶大で、YMOをはじめとする日本のサブカル系バンド、Plasticsや有頂天、電気グルーヴ、最近だとポリシックスやBeat Crusadersもディーヴォからの影響をほんのりと、あるいはおおっぴらに滲み出している。日本だけでなくイギリスやヨーロッパのニューウェイヴ系バンドのおおよそがディーヴォの影響下にあると言えよう。

途絶えているリリースを埋める作品.がいつになるのかはメンバーのみが知るといったところだが、時代の先の先を常にリードしてきたディーヴォだけに21世紀を迎えた今でも充分に時代と呼応した作品を創り上げる事は想像に難しくない。DVDのリリースも呟かれるなか、「その時」が来るのを首を長くして待とうではないか。