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2009/09/25
Sinfonia Varsoviaを振ったDisc1(23,28,35)、Disc2(26,29,39)、Disc3(30,34,31)の3枚と、Philharmoniaを振ったDisc4(36,38)、Disc5(25,40)、Disc6(32,33,41)の3枚、計6枚のボックスセットである。6枚を聴きとおして誰もが抱く感想は「6枚ともSinfonia Varsoviaで録音してほしかった」というものだろう。それほど、前半3枚と後半3枚の価値には差がある。Sinfonia Varsoviaとの9曲は、すべての音符が生気に満ちて鳴っている。「この録音で我々の実力と音楽観を世に問う」とでも言いたげな全力投球の清々しさに胸が高鳴る。自然と、繰り返し聴きたくなってしまう快演だ。それに対して、Philharmoniaとの3枚からは、無数のレコーディングをこなしてきた練達のオケが「まあ、こんな感じですか。」と指揮者の要求に応えた、ビジネスとしての演奏しか聴こえてこない。水準以上の演奏だし、マリナー/ASMFに比肩しうる出来なのだが、曲の新しい魅力を発見させるほどではない。となると、後期3大交響曲の39番がVarsoviaで録音されたことに感謝の念を禁じ得ない。総評として言えば、マルチバイで値段が下がってるときに、38、40、41番はオマケに入っているのだと割り切って買うならば十分推奨に値する。演奏への注文は以上だが、録音スタッフへの身勝手な注文をひとつ言わせていただく。Philharmoniaの音を、シノーポリが振ってアルゲリッチと入れたベートーヴェン協奏曲1、2番のDG盤並みの豊穣な響きに仕上げることはできなかっただろうか?そうすれば、演奏のヴォルテージがいまひとつなのをずいぶんと補えただろうに。