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ほんず内閣総理大臣 さんのレビュー一覧 

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     2013/04/11

    こちら、実にすばらしい出来栄えで、大いに満足しました。基本、上品。「惑星」はめったやたらに鳴らす指揮者が多いですが、スラトキンはそんなことはしません。十分な迫力は保ちながら、逸脱するようなことはない。全体に繊細さ・上品さを際立たせた演奏で、それが「惑星」の魅力をしっかりと引き出しています。音響効果に頼らない、芯のある演奏。さすがであります。そしてそうした姿勢はVWの2曲で一層引き立つこととなり、まさに美しさの極み。録音も超優秀。ディスクを再生し始めてすぐ、オーケストラの美麗な響きに魅了されます。微かに聞こえるコーラスも実にいい感じ。どこにも文句のつけようのない、傑作ディスクです。大いにお薦めしましょう。

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     2013/04/11

    「復活」は当時FMで聴いたなあ。ずっしりした迫力を感じた記憶があるぞ。「巨人」は記憶なし。今回これら2曲を聴いてみて、正直どちらもよい出来だとは思いませんでした。その原因は、恐縮ながらN響の能力にあります。弦はアンサンブルがやや雑で、表現力も高くない。木管と金管は個人技が稚拙な人がいて、アマチュアっぽいくらいのレベル。そしてそれらを覆うかのように強打される打楽器のアンバランスさ。会場での印象はあるいは「迫力満点の勢いのある演奏」であったのかもしれませんが、このディスクで聴く限りは精度の低い雑な演奏と言わざるを得ません。年代の割に録音が悪いのも原因の一つかもしれません。特に新しいはずの「復活」は、開始早々ヒスの多さに驚き、マスターの状態が悪いのか、一部には明瞭にゴーストも聞かれます。奥行き(立体感)のない平面的な音像で、金管群は何か「壁」のような音の突っ張り方。1950年代のライヴ録音と言ってもうなずくくらいの状態です。古い「巨人」の方がまだましですが、こちらもいいとは言えません。といふことで、個人的には相当に期待外れ。「記録」という以上の意味を見出しがたく、これまで多数が存在する2曲のディスクと比肩して価値を持つとは思われません。N響シリーズ、リリースはもちろん大歓迎で意義深い企画だと思うのですが、聴いてみるたびにN響の演奏の瑕疵が気になって仕方ありませんし、惜しまれてなりません。本当に残念です。

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     2013/04/09

    これはとてもいいアルバム、傑作です。ドヴォルザークの交響曲第7番は、もちろん8番や9番には及ばないでしょうけれど、だいぶ浸透してきたと思われる、魅力的な曲。いかにもモントゥーさんらしい清潔なタッチで、すがすがしい出来栄え。エルガーの傑作「エニグマ」は、むしろしっかり緩急と起伏をつけて各部分を描き分け、存分に楽しめる出来となりました。ま、曲の魅力もあって、「エニグマ」がとりわけ素晴らしいと思います。録音は、もともとの音はきっとよく録れていると思うのですが、リマスタリングで手が入ったのか、やや硬質でそして少し崩れて(混濁して)いるような気がします。惜しいなあ。とはいえ鑑賞には何の問題もありません。巨匠モントゥーさんのすばらしい遺産、大いにお薦めします。

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     2013/04/08

    『パルシファル』、全曲が3枚のディスクに収まっております。やや速めのテンポで、粘らず引きずらず、しかしなかなかの迫力を以って演奏しております。但し、全体のできは今一つかなあ。歌手がどうもよくない。ほとんど(まるで)知らない歌手ばかりですが、音程がふらつく人、声の威力がない人、役に合わない人、いろいろおります。グルネマンツやクンドリーはいささか頼りない。ティトゥレルは妙に明るい若やいだ声で、この役にまるで合わない。歌いだした途端、「へっ?!」と脱力。こりゃ、いかん。パルシファルはまずまずかな、張りきっております。でも、これ外題の割には意外に見せ場のない音楽しか割り当てられていないですやね。こんなところでしょう。オケは充実。クーンさんとワーグナー上演を重ねてきた蓄積が活きているのでしょうか。コーラスはいい時と悪い時あり。なお、この演奏で大減点が一つあります。舞台裏のバンダをオルガンで代用していることです。荘厳さが失せてチープなだけで、しかも妙に歯切れのよい音の扱いが違和感を増幅します。これはいけない。どうしてこんなことになったのかな。ブラスメンバーの調達くらいできたでしょうに。ということで、それなりに問題の目立つ『パルシファル』でした。いつもなら泣けてくる「聖金曜日の音楽」も感銘が薄かったなあ。残念です。

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     2013/04/07

    大好きな『メリー・ウィドウ』、ジルベスターで演奏するとは何とも心憎い。いい雰囲気溢れる何とも楽しいディスクの登場です。ティーレマン&DSKがニュアンス豊かによく歌い、美しいことこの上なし。オペラオケの面目躍如で、実演で聴いていたらいっそう素晴らしかったでしょうねぇ。フレミングは必ずしも万全ではなかったかな、ちょっとツライ個所もなくはない。相手のマルトマンは知らない人だなあと思いましたが、調べるとディスクも結構出ていて、しかも自分で持ってるものまであったりして、これまで注目していませんでした。ここではなかなか朗々たるダニロで、結構でありますな。脇役はみなよろしいでしょう。抜粋ということながら、もう少し曲は増やしてもよかったな。カミーユとヴァランシェンヌの「私(君)は貞淑な人妻です」のナンバーは欲しかったし、ハンナ登場のシーンも欲しかったな。そこでちょっと減点。あと、私の買ったディスクは、トラック2のラストで画像と音声が乱れまして、それもちょっと減点。でも、トータルはステキなアルバムです。よかったなあ。(^_^)

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     2013/04/06

    第4楽章付きというところは、実は本盤の重要な特徴であり「売り」でもあるわけですが、それでもやはり、@第1〜3楽章の演奏の出来、A第4楽章の出来・意義、という二つに分けて評価を考えるのがよさそうです。@については、なかなかの高評価であります。ラトルのブルックナー、以前に出た交響曲第4番はさっぱりイカン演奏でしたが、この第9番は結構でしょう。無用な小技や作為がなく、むしろ素直な姿勢であり、それが曲想とうまく合いました。ベルリンフィルも見事な技量で堂々たる響きで鳴っています。ですがねぇ、かつてカラヤンが指揮したディスク(1975年)を聴いた時に感じた、見かけの豪壮さに比べて訴えかけるものがない空疎さが、ラトルにも感じられないわけではありません。一種とりとめのないこの曲に何を感じ取り、何を表現しようとするか、極めて難しいものではありましょうけどねぇ。さて、A。個人的感想としては、「交響曲第9番の第4楽章(フィナーレ)はこの曲ではないよなあ」というものです。こんな終わり方、こんな楽想ではないんじゃないかな、という想いです。これなら無くてもよい、無くても全然不満じゃない、という気がいたします。補筆完成に携わった方々のご努力には敬意を払いますけれど、やっぱり「試み」以上のものではありませんね。マーラーの交響曲第10番のような立派な成果とはなりませんでした。でも、興味のある方はどうぞ。録音は優秀。

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     2013/04/06

    いろいろと考えながら聴き、聴き終えた後も考えました。何とも不思議な演奏なのです。「この演奏のコンセプトはなんだろうか?」ということを、やはり考えずにはいられません。思い至ったのは、「これは、歌を前面に立てたロマンティック・オペラとしてのタンホイザーなのだな」ということでした。歌手陣は最強の布陣。1960年代にバイロイトで主役を張った大歌手が並んでおります。その歌手たちは、「どうだ!」と言わんばかりに朗々たる声を響かせ、また一方、情感のこもった表情豊かな歌を披露しております。そうしたワーグナーの手練たち、ベテランたちが、自分たちの「歌」によってこの劇をぐいぐい引っ張り先へ先へと進めてゆきます。「タンホイザー」というオペラ自体が「歌合戦」を題材にしているわけですが、この演奏自体が「歌合戦」になっていて、そのシンクロぶりはなかなか面白い。演奏のコンセプトは、この強力歌手陣を選んだ段階でもう決定したというところです。ワーグナー演奏においては比重が大きい指揮者は、ここではその方向に合わせてアンサンブルを揃えるという以上の意欲(野望?)は持っていないようです。序曲から第1幕は特に気勢上がらず、正直不満が大きいです。第2幕でも合唱は抑え気味。第3幕でようやくオケも存在感を発揮して鳴り始めますが、全曲の終結などは至極あっさりしていて、大曲を聴き終えたという充実感がまるでなし。なんかねえ、歌主導のヴェルディのオペラのスタイルをワーグナーでやってみたという感じで、そしてそれには限度があるぞということが痛感させられるアルバム。「歌合戦」としてユニークですが、それ以上の優越点を見いだせない気がします。なお、強力な歌手陣についても不満はあります。ウィントガッセンは毎度の通りラフな印象の歌。ニルソンも、私はどうも美声だと思えないので、肉付きの良さだけが引き立つ感じ。なお、ヴェーヌスはともかく、このエリーザベトはイメージから外れていて失敗ではないかな。アダムやディースカウらは立派なもの。録音は全般に歌手を引き立てたバランスで、オケはやや引っ込み勝ち、コーラスはずっと奥にあり、その辺も物足りない。総じて、いま一つの出来栄えと言わざるを得ないかな、と思います。

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     2013/04/05

    全曲が一枚に収まったということで、何かよほど快速テンポなのかなと予想しましたが、聴いている間は特にそんな速さやましてせわしなさを感じることもなく、すいすいと流れてゆくそのテンポのよさに身を委ねてむしろ大いに楽しんだというのが感想です。仕上がりは上々で、荒いところはないし、物語にふさわしい快活な気分があって、私は気に入りました。おとぎ話的な雰囲気は希薄かもしれませんが、ま、こういうのも一つのあり方。結構でしょう。録音も優秀。

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     2013/04/05

    カラヤン最晩年の録音。ややゆったり目のテンポで、大きく構えたような演奏を展開しています。このオペラにはそれがいささか重荷に過ぎ、軽妙さが失せてしまいました。ストーリー的には不倫(疑惑?)と殺人という重い主題ながら、登場人物の誰もがなんだか真剣み(深み)がないという軽薄なこのオペラにはちょっと似つかわしくない。たとえばオスカルのシーンの音楽なんかはスーパーノーテンキにできておりますが、ここではそれすらどこか足取りが重い。歌手ではドミンゴの独り勝ち。声の状態も含めて、彼の最良の歌唱ではないでしょうか。他はみな彼の引き立て役みたいなもの。そういう意味で、出来上がりはバランスがあまりよろしくない感じとなりました。それに結局、どうにも大したことのない作品だなあ、と思ってしまいました。人物の感情表現と劇の起伏とを音楽がきちんと表現していないんじゃないかな。いわゆる「ブンチャッチャ・オペラ」の典型の一つで、ヴェルディらしいけれど、立派な作品ではないな。上記のような演奏の出来が、作品の欠点を露わにしちゃったかな。

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     2013/04/03

    廉価盤『リング』として一部に有名なアルバムで、私もだいぶ前に1780円(!)で買っておりました。カールスルーエの劇場の『リング』公演。この町は人口約30万人ほどの中都市。そこの劇場でのライヴ録音であります。質の高い、立派な演奏でありまして、大変感服した次第であります。『リング』は何しろ大作でありますから、どこでもそのプロダクションには周到な用意をするもので、バイロイトでもウィーンでもメトでも立派な演奏を提供しております。そうした中、このアルバムは、いわゆるメジャーな歌手はほとんどおらず、指揮者やオケも未知数、ということで、通常なら勝負にならぬところでしょう。しかし、ここに聴く演奏は実に立派なもので、確かに抜きん出た名唱などはないにせよ、みなしっかりした地力の持ち主で各自の役を果たしています。男声はみな立派。女声はちょっと高音がつらそうな人もいて(ブリュンヒルデ!)、今一歩かもしれないかな。オケとコーラスも立派。いい音で鳴っていますよ。ノイホルトさんの指揮も無理のないもので、うまく流れを作っていると思います。ま、強い個性とか、あるいは様々な工夫とかはちょっと欠けていて、『ワルキューレ』の第2幕や『ジークフリート』の第1幕、『神々の黄昏』の第1幕などのように、長い対話が続く場面ではいささかもてあましているきらいもあります。しかし、総じて大変立派な出来栄えにて、ヨーロッパ劇場の底力に感服した次第です。サヴァリッシュさんが自伝で、ある小劇場ではコントラバス2本ほどの小編成で『トリスタン』を演奏したと書いておられましたが、そういう形でワーグナーは演奏され親しまれているのですね。そして地方に数多存在するそうした小劇場を基部にする劇場のランキングのピラミッドがあって、我々はその頂点に位置する大劇場の演奏ばかりディスクで聴いているのだなあと改めて思い起こしながら、こうした中堅どころの活動にもこうして触れて敬意が湧き起こるのを禁じ得ないものです。大変意義深い試聴体験でありました。但し、大廉価がこの体験のきっかけになったのも事実でして、レギュラー価格ならば購入はしてなかったですね。だからみなさまももし興味がおありなら、廉価のものでお求めになるようお薦めします。さすがに5000円を超えるとメジャーレーベルのものに並ぶのは難しいですね。

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     2013/04/02

    シッパースとグーセンス、往年のレコードファンにとっては何とも懐かしい顔ぶれであります。さて、シッパースはチャイコフスキーの交響曲第4番。第1楽章はなかなかに気力のこもった演奏です。勢いというのではありませんが、ドラマティックな雰囲気があります。第2楽章は一転憂愁の歌を聴かせ、第3楽章は泡立つピツィカートの嵐。第4楽章は意外にもスピード感がありませんが、力感は十分。ま、なかなかの力演であります。録音が古いのでレンジが狭く、打楽器の音が軽くかつ明瞭でないのが惜しまれます。グーセンスの「古典」はやや乱暴な演奏。この曲の持つ皮肉や軽さが活かされていないように思います。でもまあこういうのもありでしょうか。以上、これらの曲の名演ディスクということではなく、往年の不遇な指揮者二人の遺産を聴いてみようという興味でお聴きになるのがよろしいでしょう(シッパースは病気で早逝。グーセンスはちょっとした事件で失脚)。

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     2013/04/01

    著者の堀内さん、次のようにおっしゃいます。「ワーグナーは時代を呼吸し、絶えず変化する。新しい問題が見出され、表現されている。ここには正しいワーグナー像はなく、正しい作品案内もない」(はじめに、12〜13ページ)。堀内さんがこのように言うのは、音楽の面ではなくて、主に演出に関してであるといってよいでしょう。この本の「T ワーグナーの舞台」はまさしく近年多い「読み替え」演出について多く触れているからであります。堀内さんはそれらの新演出を必然かつ必要なこととして肯定しておられるようです。但し、私はなかなか同意しかねるところであります。といいますのは、まずは、作曲者がその曲(オペラ)を作ろうとした動機、霊感を再現することなしに曲の適切な理解はないと思うからなのであります。たとえば『ローエングリン』。コンビチュニーは小学校を舞台にし、いじめやらなんやら、そんな要素を盛り込んだそうです(未見)。ワーグナーがあの美しい音楽を書いたのは、小学生のいさかいを表現したかったからなのでしょうか?小学生の喧嘩に感動して、あのオペラを書こうと思ったのでしょうか?絶対に違いますよね。作曲者がなぜその曲を書こうとしたのか、何を表現しようとしたのか、そこから外れた演出を施すのは「適切ではない」と思うのです。「正しい」「正しくない」ではなくて、「適切か否か」で語るべき次元だと思います。もし絵画で言うならば「読み替え演出」は配色を変えたもの、とでも考えてみましょうか。「モナリザ」を下敷きにして彼女の顔を青に塗るとか、あるいは歌舞伎の隈どりを施すとか、そういうことはできましょう。そしてそのことであの女性の心理を掘り下げたとか何とか、説明も付けられましょう。でもそのことであの絵が輝きを増したり、まして作者の霊感に近づけるものでしょうか。「読み替え演出」は賞味期限も短く、しょせん児戯に等しいものと思います。近年のバイロイトのヒドさは悲しいばかりです。以上はあくまで私見。いろんなご意見や楽しみ方はあってよろしいかと思います。ただ、この本は最近のそういう動向に対してあまりに好意的であり、いささかいきすぎじゃないでしょうか。選べるものがたくさんあることが即幸福なのではないと思いますが。個人的にはやや期待外れの一書。ワーグナーの「魅力」をもっと素直に語ってくれたらよかったのに、と考えます。

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     2013/03/30

    60年前近くの驚異の録音。まずは音の状態から述べましょう。もちろん、1955年のライヴとして驚異的な高質の録音です。歌も管弦楽もまことに明瞭で、しっかりと録れています。これより後の時代のバイロイトでもほかの劇場でも劣悪なライヴ録音が大量に出回っておりますが、1955年でこの水準はまことに見事なものでしょう。但し、勿論限界もあって、確かにニーベルハイムの場面はヒスが結構気になります(ここだけヒドイ)。また、管弦楽はやや引っ込み気味で、ずっしりと迫って来るあのワーグナーらしいオケの魅力は減退しています。そういう意味で、「当時としては驚異的な高音質だし、この演奏を楽しむには十分ですが、過剰な期待をしてはいけませんよ」というレベルだとお考えください。さて演奏ですが、いかにもこの時代の劇場定番演奏という感じではないでしょうか。観客を前にしてステージで繰り広げられる歌の劇、まさしくその形でありましょう。ですから、微細な表現にもとことんこだわって余すところなく歌やドラマを表現する(最近の傾向はこうかな)というのではなく、ドラマの流れを重視した骨太の演奏という感じでありましょうか。だから聴いているうちは、結構すいすい音楽が流れていくような調子でありまして、意外にあっという間に聴き終えてしまいます。劇場で全4部作を演奏し切り聴き切るにはこういうスタイルでいいんだなあ。歌手の皆さんにも無理なところは一切なく、カイルベルトの指揮もその意味では「濃い味」のものではなく、ディスクで聴くよりも劇場映えのするものであったろうなあ。そんなことを想った次第。今やずいぶんたくさん出ている「リング」のディスクと並べて優劣を競うような性格のアルバムではなく、やっぱり「記録」としての意味が大きいものではないでしょうか。そんな風にお聞きになればよいかと思います。

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     2013/03/24

    チェドリンスのトスカは比較的楚々としたもので、こういうのもまた良いと思います。成り行きで殺人までしてしまうトスカですから、恐るべき女丈夫的な歌を聴かせる歌手が多いですけれど、本職は歌手なんだしね、不必要なまでに豪傑にしなくていいのですな。美しい出来でよいでしょう。ボチェッリのカヴァラドッシは、声の持つヒロイズムとヴォーカルの無作為さがどうにももったいない。もうずいぶんボチェッリさんもオペラを歌っているからキャリアは十分なんでしょうけれど、たとえばスカルピアとの掛け合いとかの場面では強弱やニュアンス付けでまるで役者が違う。まだまだかなあ。ほかの歌手陣はみなぼちぼち。メータは3度目の『トスカ』だそうで、まあ手慣れたものでしょう。ただ総じて若干意気が上がらない感じ。この大芝居をもっとガンガン噴き上げるようにやっちゃっていいのになあ。といふことで、トータル、やや残念。録音は優秀。

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     2013/03/24

    私はもうただ素直に感動いたしました。往年の巨匠、名だたるスーパーオーケストラ、熟練の名歌手たち、そうした人たちが作り上げた過去の名演と肩を並べるような出来栄えでは確かにありませんし、もともと一種のイヴェント的演奏会でありますからそういうものとは比較すべきではないのでしょう。でも、だからと言ってこの演奏の持つ意味や与えてくれる感動が小さいということはありません。例の「エル・システマ」については、ドキュメンタリーも見、本も読み、その試みの志の高さに大変感動したのですが、その試みがただの大人の自己満足ではなくてこうした素晴らしい成果に結びついたところにまたまた私は感動を新たにするのであります。この曲の第二部、ラストでは栄光の聖母がみなを率いて高みへと昇ってゆきますが、「エル・システマ」に携わった多くの人たち(特にホセ・アントニオ・アブレウ博士。この映像にも出ていますね)、そしてマエストロ・ドゥダメルに率いられて、本当に多くの人がこの現実世界においてこの演奏の瞬間に高みへと昇って行ったのじゃないかなあ。マーラーのこの交響曲も、こうした高揚と陶酔を期待していたかのよう。もちろん演奏上のいくつかの問題点はあるにせよ、聴き終えた後の感動でそんなものは全部帳消し!満点!推薦!!みなさまにぜひ見ていただきたいなあ。スペクタクルとしても凄いよ。ステージに並んだこの大人数のまあスゴイこと!お客さんより多いんじゃないのと思うくらい。破綻をきたしやすい曲ですが(事実、ある)、ドゥダメルさんはしっかりリードしてよくまとめ上げました。見た目は指揮台上のアンドレ・ザ・ジャイアントという感じですが(すみません)、大変な才能・手腕でありまして心から感服しました。近頃スローテンポでややデレッとした演奏が多かった交響曲第8番ですが、ショルティを彷彿とさせる決然たる傾向で、それもまたいいなあ。なお、カーテンコールの風景がとても感動的です。音楽の持つ力をこれほどに感じさせる光景はめったにありません。とにかく、よかった!!

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