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ゲニウス=ロキ さんのレビュー一覧 

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  • 3人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/08/02

    「室内楽のようなワーグナー」というと可笑しく聞こえるが、ドホナーニの精妙な耳を通して再現されたこの「ラインの黄金」の印象は、まさにそんな感じ。妙な作為に溺れる事無く、輻輳する線の絡みが鮮やかに解きほぐされ、心地よく耳が開かれると共に、知らず知らず物語の綾に誘い込まれる。壮大なスペクタクルで圧倒するショルティの「指環」も確かに魅力的だったが、文字通りその対極にあったドホナーニの「指環」が未完、というのは余りにも残念なことだ、と遅ればせながら悟った。

    3人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2012/05/01

    バンベルク交響楽団の滋味深い響きと、ノットの鋭い洞察が見事に実を結んだ演奏。
    ダイナミックな両端楽章も素晴らしいが、何より二つの夜の歌を含む中間楽章(2&3&4楽章)の素敵なこと!さながら、森の精霊や動物達がのそのそと蠢く秘密の夜、といった風情。全編通して、深い彫琢を極めながら、マニアックなあざとさとは無縁、悠々とした運びを司るその息づかいと空気感は”自然”そのもの。怪奇と卑俗が刺戟となったホンモノのメルヘンの世界に、終始酔い心地で浸らせてくれる。
    毒を含んだこの魅力を味わった後では、水彩画風のジンマン盤では物足りなくなってしまいそう。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/10/29

    深い読みに基づきながら、しかし音楽は何処までも自然な息吹を失わない、稀な演奏。
    しばしば金管の鋭い”アメリカン”な響きが耳を突くが、表現としての必然を破綻させるような質のものではない。
    ことさらに”ウィーン風”をやってみせた第3楽章は、確かに相当にあざといが、愉しい発見に溢れていて新鮮。
    絶美はアダージェット。
    息も絶え絶えに揺れ動くその様は、死に憧れるエロスそのもの、というくらい官能的。
    そして壮麗なポリフォニーの大伽藍が大らかな歌の中から出現する、圧巻のフィナーレ。
    ホーネックの独自性が隅々まで行き渡り、見事に花開いた名盤、と感じた。

    4人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 10人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/05/13

    しばしば歴史的録音とはされながらも、評者の”転ばぬ先の杖”か、必ず何かしらの留保付きで語られて来た当全集、ようやく念願叶って全曲通して聴くことが出来た。
    実際に触れてみると、いささかの躊躇も不要、思慮深い使命感と客観性に貫かれた、素晴らしい演奏ではないか。
    確かにオーケストラのメカニカルな技量そのものを内実と切り離して”測定”すれば、超一流とは言えないに決まっていようが、要するにそれは只それだけのこと。
    アブラヴァネルの深謀と熟練のタクト、それに自然に共鳴するかのようなユタ交響楽団の響き。
    温かくも鄙びた魅力が細部に至るまで沁みわたっている、というだけでなく、それらが各作品の壮大な構成の中で、驚く程有機的に生かされている。
    共感と慈愛に溢れてもいるが、その飄々とした味わいは、時に一方的に”感動”を煽るバーンスタイン流のアジテートとは、およそ対極にある。その点では、表層の仕上げ方の甚だしい違いにも関わらず、あのMTTのマーラーにも通底する、ある種の遊民的な楽観性を感じさせるものかも知れない。
    全集を通じての表現のスタンスの一貫性も、それこそ感動的なまでのマーラー音楽への信頼を、立派に体現している。

    今更ながら、マーラー演奏の一つの原点に出会った、そんな幸福感でいっぱい。

    10人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 7人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/05/06

    驚くべき遠近の妙。
    奥行きある空間を感じさせる素晴らしい録音を味方にして、マーラーの線的な書式が透し彫りを見るように鮮やかに浮かび上がる。
    客観主義に徹したその響きの美しさは、あのブーレーズ/VPO盤に匹敵するが、縺れ解ける垰やかな曲線の艶かしさは、むしろそれをも凌駕しているのではないか。
    ヘップナー&マイヤーの歌唱は、ドラマティックな性格を基調にしているが、これだけの悠然矍鑠たるオーケストラを背景とすれば、何ら表現過多・演出過剰には感じられない。バレンボイム盤ではパワフルでいささかあざとい歌唱が鼻についたマイヤーの声すら、ここではすぐれて人間的で、しばしば可憐(!)にすら聴こえるから不思議だ。
    広大な自然界と悠久の時の流れ、そこに佇む人間存在の孤独と寂寥…晩年のマーラーが成したある到達点の、深奥にまで踏み入った、現代的かつ普遍的な、稀にみる名演。
    かつての「才人マゼール」のイメージが邪魔をするのか、これ程のクオリティを誇る演奏が、まるで注目されていないというのは、全く不可解という他ない。

    7人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/03/18

    ストラヴィンスキー等では壮快極まるソリッドな演奏を聴かせてくれるMTTだが、この交響曲No5では、意外にも、洗練の極みから敢えて一歩退き、不易の王道を闊歩するような、堂々たる演奏を繰り広げている。殊に第2楽章では、ブラームスさながらの厚みある豊かな響きを実現している。

    一方のピアノ協奏曲No4は、衒いのない遊びに溢れたアックスの独奏と相俟って、いっそうゆとりある大らかな音楽が展開される。

    免罪符よろしく”ピリオドアプローチ”を標榜する演奏が氾濫する今日、こうした一見”古風な”アプローチを反時代的と謗るのは容易い。しかし、同時発売となったアイヴズ/コープランドのシンフォニーアルバムと併せて聴くと、先人によって築かれたアメリカ音楽の巧まざる”伝統”をあらためて確かな文脈の裡に甦らせよう、というMTTの仕掛けた壮大な意図が浮かび上がってくる。

    実に極めて戦略的・挑発的な選曲であり、演奏であるらしい。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/09/29

    マルティヌーの音楽に潜む鈍色の美しさを浮かび上がらせた秀演。ヒューマニズムに貫かれたノイマンの同時代的演奏も素晴らしかったが、このヴァーレク&プラハ放響は、彫り深くも決して声を張り上げる事なく、自閉的とも言える解き明かし難い両義性に満ち満ちたマルティヌーの音楽の、多層的な音響世界を見事に展開してくれました。どの曲も極めて質の高い演奏ですが、とくにしばしば”明るい”と評される第4番に通底する不穏な空気や、歪められ傷ついた現実世界にこの世ならぬ幻想が立ち顕われるような第6番が、強く印象に残りました。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/06/13

    マゼールの鋭く深い読譜が生かされた名演奏。
    伝統の厚みを感じさせるウィーンフィルの豊かな音色と、異邦人マーラーの音楽とが軋み合う。
    情緒的共感に逃げる甘さがない、というだけで、決して冷ややかな即物主義ではない。
    細部の彫りも深いが、さりとてマニアックな末端肥大に陥るわけでもない。
    厳しい客観主義に裏付けられた悠然たるその表現から、各曲の希有壮大な構想が、じわじわと浮き上がる様は、圧巻。
    時代を超えて聴き継がれるに価する、王道を行く全集であると思う。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/05/31

    深々とした呼吸、悠然たる運び、粘りのある独特の美感に彩られた演奏。ジンマンのような楷書的な端正さとは違う、エッシェンバッハならではの草書風の自在な表現が光っている。シャイー&ACOの「巨人」も素晴らしかったが、登場人物の居ない美しい森の風景だけを見るような空虚さがあった。エッシェンバッハの「巨人」からは、それに加えて、血の通った生身の人間が豊饒の森に分け入っていくような、切実なドラマが聴こえてくる。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/05/23

    全てが戦慄的な美しさで一新されたような、新鮮な魅力溢れる演奏。
    中でも長大な第4楽章では、重苦しい深刻さが支配する代わりに、多彩な音色が迸るように次々と繰り出され、疲弊・退屈ということを知らない。

    只一点、それだけに惜しむらくは、第2楽章と第3楽章のトラック間隔が実演ではあり得ない程短い上に、御丁寧にもブツッという雑音が入っている。これでは余韻も予兆も台無し。明らかに編集の際の不手際と思われる。

    空間を感じさせる優れた録音であるだけに、しかも最高の美演たる第3楽章の前だけに、興醒め極まりない。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/05/14

    バレンボイムの、確固たる主張が貫かれた演奏。
    マーラーに接近するにあたって慎重に慎重を期したという彼ならではの、熟慮の後が伺える、骨太で彫りの深い秀演。
    奔流のような作曲者の情動に決して流されまいとするかのような、ひたむきな音楽の運びが胸を打つ。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2009/12/29

    荘厳な、しかし柔らかい響きに包まれた”アルプス交響曲”。全ての細部が鮮やかに描き出されながらも、それらが冷たく遊離する事なく、一つの巨大な有機体として息づいている。45分の大曲があっという間に感じられるのが不思議。いよいよ偉大な指揮者となりつつあるビシュコフの真骨頂を聴くようだ。”ティル”も、物語に丁寧に寄り添った、新鮮極まりない演奏。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2009/09/11

    音楽の深淵にまで迫ろうとする、果敢な志に貫かれた凄絶な演奏。
    バレンボイムは決して表層の”美しさ”に拘泥することがない、しかしそれ故に野獣のような荒々しい美を、退っ引きならない切実さの内に産み出して行く。
    理知にかまけず、情念に溺れず、その葛藤そのものが、現代における地獄巡りさながらのアクチュアルなドラマを成す、このような稀有な演奏に出会えたことは歓びだ。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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