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風信子 さんのレビュー一覧 

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     2017/08/06

    ポーランドから暖かい灯の影が差している クリスマスが人の心に慈しみと愛の灯を点すものならば こうした音楽と演奏が欧州の地に連綿と在り続ける事実に 東の辺境に暮らすモンゴリアンの末裔も心素直に首肯こう WARNER CLASSICSの”insp!ration”シリーズには掘り出し物が多い ポーランドの同胞が集い奏でるバロックのコンチェルト・グロッソ集に聞き惚れる 巧まずして精励な指揮をするマクシミウクの音楽はいつも自然な息遣いのうちに豊かな流れを描く そのわだかまりのない清流に触れる清々しさを愛す オーケストラはあのベートーヴェン全集を成したポーランドCOとあれば聞かずにはおれない 夏のクリスマス音楽もいいものだ わたしは曲を追うごとに聞き入った トレッリが好きだが ロカタッリには参った しみじみしていると掻き立てられてまた抒情の渦中に引きずり込まれる 揺られ振られ抱きしめられ溜まったものではない なんて音楽だ これは拾い物 聞かぬ手はない

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     2017/08/05

    参った この洒落た演奏のアンソロジーは誰が作ったのかしら 前半の粋な音楽は街角で足止めて聞く絡繰り時計から流れてくる趣に浸れる コケティッシュでセンチメンタルな心の風貌がショスタコーヴィチの本質だったかどうか分からないが 彼の手から生まれいつまでも人々の耳に残る音楽であることに間違いはない 後半アレクセーエフのピアノが登場しても趣は変わらない 音が明るく軽い 草原を吹き渡る風の如く翔け抜ける音楽か 場末のサーカスが奏でるじんたの風情は強烈なアイロニーを叩きつけてくる こうした音楽が精神の閉塞感から生まれたことを忘れてはいけない いやいやヤンソンス マリナー そしてマクシミウクの炯眼にこそ喝采を贈ろう 何よりも美しい上の軽快さは聞く者の心に届く光となる そこで初めて音楽は何かを語るだろう ぜひ大勢の人の耳に響いて染み込んで欲しい音楽と演奏がここにある  

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/08/03

    長い間手を出さずにいた全集をようやく聴いた 先入観が災いした 名を遂げたヴィルトゥオーゾが指揮棒を握った演奏に幻滅する経験をし過ぎたせいだろうか 音大卒業作品”第1番”を聴いて猛省した 通念であれば習作扱いされて不思議のない時期の作品だが 瞬く間に 政府の思惑もあったのだろうが 世界中に伝播して持て囃されてしまった 勿論秀作である事は今や世界の認識だが この演奏は人によってまちまちで聞くたびに別の曲じゃないかと思うほど楽曲の顔つきが変わる 強いて言えば恣意的と言うか 良くて贔屓の引き倒し的 虻蜂取らずの印象が残ったものだ 作曲者を軽んじている 楽曲を理解していないと言ったら言い過ぎだろう ロストロポーヴィチは違った 見事な造形のシンフォニーになっていた 焦点が定まっている 例えばピアノのバランスだ オーケストラの一楽器の位置に納まっている 打楽器が楽曲の骨格を組み立てるのに如何に重要かを明確に示した ベートーヴェン以来の動機の変奏展開による音楽であることを完全に伝えている 印象派や表現主義音楽と一線を画す音楽だと聞こえる 同じCD1にある”第9番にも触れたい テンポが遅いなと言う印象で始まるが これも楽曲の真をつく名演となる 風刺や揶揄いを目論んだ音楽ではないことを示した 戦禍に倒れた人々への鎮魂と追悼の思いが音楽となっているのだ 戦争に勝利などはない 無残な殺戮の痕だけが心に残るのみ 人間の愚かさと悪意への怒りと悲しみが止まらない ショスタコーヴィチは声にならない声で叫んでいる 辛い音楽 わたしのようにまだ聞かなかった人はお聞きを また残虐な征服心を持っていることに気づいていないあなたもお聞きを     

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     2017/08/02

    聴いて好かった ”フェードラ”前奏曲で由って来る音楽性は明らかだ 今も協和音による和声法で音楽が書けることを証明している 時代錯誤の化石的音楽と揶揄する人があれば言おう この美しい音楽に横槍が刺せるのか それとも過去の誰かの音楽に似ているとでも言うのか 唯一無二の個性から発した創意である事は明らかだろう カエターニ夫妻による”真夏の歌”と題されたピアノ・コンチェルトの演奏を堪能した 素晴らしい演奏だ ピツェッティの音楽は語らう事で進行する そこには尽きない平明さと和やかさの流れを見る 何か思い込んだ方角へ突き進んだり ひとり心の奥に沈潜していくような姿は全く見られない だから狂喜乱舞する時もない おおらかで繊細な心配りと慈しみがにじみ出ている音楽は優しい美しさに染まっている 本当に聞いていて気持ちがいい 一人でも多くの人の耳に届くことを願っている   

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     2017/08/01

    入手不可能を惜しむ 95年の生涯に12曲の作品を残したと物の本にあるが全容を知らない もちろん凡てを聴いてもいない この二枚のCDに”全集”とあるが10曲しか紹介されていない もともと様々なディスクから拾うように一曲ずつコピーしてCDRに4曲からなるミニ・アルバムを作って聴いていた だからティルソン・トーマス盤の出現に欣喜雀躍したものだ いつになったらラッグルズの真の全集が世にでるのだろうか アメリカ20世紀の作曲家と言ってもコンサート・ピースに加わることもなく 次々に録音が出るでもなく 時間の狭間に消えて行ってしまいそうだ 本当に残念だ 大管弦楽による小品ばかりでいかにも実用的でないのが災いしているのだろう 何しろ”太陽を踏む者”が一番長くて演奏時間16分では オーケストラにとって労多くして益ない曲なのだ ラッグルズを愛する指揮者とオーケストラが現れることを期待するばかりだが 先ずはこのディスクの重版・再販を願う 一度聞けば忘れられない魅力に富んだ逸品なのだ ラッグルズは  

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/07/31

    我らが世紀の音楽を愉しんだ 作曲界がロマン主義を脱して100年 されど演奏界は営々とロマン主義の波跡を曳きずっている 21世紀に雪崩れ込んで17年 未だ”時代”と呼べるようなエポックに行き当たらない 前世紀の傑作がコンサート・プログラムを飾ることも無くはないが 20世紀後半を代表する逸品の発掘すら為された感がない 況んや21世紀作品をや 音楽は書かれただけでは宝とはなり得ない その時代に演奏されてこそ未来にかけがえのない人類遺産となる たとえ理解の足りない不十分な演奏であっても演奏されることが不可欠なのだ 演奏家は同時代に生まれた音楽を聴衆に届ける努力を怠ってはいけない リントゥはそれをしてきた指揮者だ ここ10年以内に創作されたリンドベルイ マグヌスの見事な作品が紹介されている 重層した響きを特徴とするリンドベルイの管弦楽がヘルシンキ・ミュージック・センターの優れた音響特性も相まって細部まで克明に再現されている 美しく聞き応えのあるオーケストラ音楽が堪能できる その音楽は広大な未知のFieldへ踏み出して慄きながらも勇躍する思いで歩み出す人のようだ ルネサンスの終わりに大海へ 20世紀に極点へそして宇宙へ向かった人のように 繊細で大胆な音楽だ お聴きを

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     2017/07/31

    繰り返し聴いてしまう ショスタコーヴィチは第一楽章にModeratoを置くことが多い モノローグで語り出さないと音楽が始められない人だったようだ これを本人は「私小説」だと言う それは紛れもなくショスタコーヴィチの人生で それを走馬灯の中に描いてくるくる回して見ているようだ 流れる光の中に過ぎ去りまた現れる夢の跡 悲喜交々を超えて儚い人生の残像を共に見る 第二楽章は躍動した魂の記憶 後ろ髪引かれる甘い夢と悔いの影が付きまとう 第三楽章はベートーヴェンの”月光”によるインプロビゼーション 何ものかに仮託した自己表現はショスタコーヴィチの常套手段であれば 最後に至って最も彼らしい終わり方だ 弦楽四重奏曲の後期作品の三曲をベートーヴェン・クァルテットの面々にそれぞれ献呈したが ヴィオラのドルジーニンが欠けていた 最後の最後にソナタと言う形で生涯の感謝を示した しかも辞世の句に等しい作品を託したのだから その思いの丈が如何許りだったかを知ることになる カシュカシアンの演奏が十全か否かは知らない ただショスタコーヴィチの声が聞こえる事は確かだ お聴きを

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     2017/07/17

    詳細な楽曲解説とシベリウスとは誰かを解き明かす資料を有していなくても シベリウス交響曲の真実を伝える記念碑的全集だ リントゥ&RSOがシベリウスのスコアから掘り出した宝珠は抱えきれないほど多い 先ず響きの美しさ 次に音の息吹 そして魂に通う血潮 一音たりと意味を持たない音がない充実した演奏に吸い寄せられた この演奏録音の四年前に完成したヘルシンキ・ミュージック・センター大ホールが齎した音響特性あっての成果だと付け加えなければならない 豊田泰久氏の設計によるヴィンヤード型ホールは深い響きを湛えながら音切れがよく混濁しない 楽器一つ一つが最弱音でも明瞭で音の表情のニュアンスが聞き取れる優秀さだ 自ずとオーケストラの性格も隠しようがない 当然指揮者の力量が問われることになる リントゥは優秀な指揮者だ スコアを読み解いた上に感じている曲性を親愛して皆が安堵する港へ導いていく 信頼と勇気をオーケストラに与えた 聴き終えて7曲が7曲それぞれにかけがえのないものだという感を深めたが モダニズムと表現主義に傾倒した第3番第4番に指揮者リントゥの真価を見た 我が愛する第6番との距離をさらに詰めてくれたことに感謝する 最後にフィンランドの聴衆が如何に高い知性と芸術性を有するかを目の当たりにして感動した これまでで最も高い声を持って推薦をする 

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2017/07/16

    TR126の全集を中古で求めて聴いた HMVのカタログに全集がないので この一枚のレビュー欄を拝借した 全集のCD1がこの盤だ ライヴを編集したものだから 実際のコンサートプログラムは不明でも メインが”熱情”になる曲目だろう 明朗闊達な演奏で第23番を愉しんだのはいうまでもないけれど 耳を惹きつけられたのは人気曲ではない三曲の方だった こんなに面白い曲だったのかと識る 目から鱗が落ちるを久々体験した プリュデルマッシュは次から次と解釈という名の表現の錆を削ぎ落としている まるでコンピューターミュージック(機械による自動演奏という意味で)のようだという揶揄が聞こえてきそうだ ここから聞こえ見えてきたものはベートーヴェンの脳内で鳴っていた音楽そのものだ この200年間幾多の褒めそやした美辞麗句による賞賛の全てをもっとしても まだ足りないほどベートーヴェンはわたしたちの先の先を歩いていたのだと分からせられた すごい音楽なんだ 今更バカじゃないか そうだわたしたちは未だベートーヴェンが産み落とした赤子にもなっていない ただひたすら真正のベートーヴェンが希求した道を辿り続けるのみだ 全集復活を願う

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     2017/07/16

    突き抜けた明朗さが心奥を震わせる名演 何より言葉に力がある ホイットマンの”草の葉”に深く感動した日を思い出す 生涯を費やして書き上げた長大な詩集はまさに宇宙的視野を与えてくれた それは七つの海を航海して探検に身を賭した冒険者たちの心の風景でもある すなわちわたしに”人として生きる旅”への希望とその意義を自覚させてくれた詩集だ その言葉を明確に伝えることに力点を入れたダニエルの方向性は正しい 歌の国イギリスの人RVWにとって最初の交響曲がオラトリオと見まごうばかりに歌に満ちていて何の不思議もない 何より素晴らしい世界観を表現した見事な交響曲ではないか 妙な先入観から特別視することこそホイットマンやRVWの思想から乖離してしまう もっと多くの機会に演奏されて大勢の人の耳に届くことを願うばかりだ  

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     2017/07/15

    バティアシヴィリの美音と技巧が生きたのはリンドベルイ・マグヌスのコンチェルトだ 現代フィンランドの作曲家の傑作だ オーケストラもソロも演奏して愉しかったはずだ 名前で損をしている リンドベルイという音楽家は沢山いる マグヌスは埋もれ気味でなかなか行き合わない もっと演奏されていい優れた作品が沢山ある 演奏されてはいても地球上は相変わらず広いのだろう 本邦の音楽シーンが辺境にあるのか 将又偏狭なのか わたしたちの耳には届かない シベリウスには申し訳ないが 音楽内容としてもリンドベルイが面白い バティアシヴィリも往年の名曲をお浚いするばかりでなく ややもすると時間の襞の中に隠れている傑作を掬い出す労を取られた方が報いられるのでは 出来上がった壁を化粧し直すような仕事をする職人には事欠かないご時勢だろうから 関わらないことだ リンドベルイ・マグヌスの曲を聴こう  

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     2017/07/14

    夏の風に吹かれて 詩的に語らう ひねもす夏の庭にいて 飽かず昊の青と雲の白に心預けていた そろそろ陽も陰りはじめた頃 フーガを聴く 突然迸り出る生命の焔に立ち尽くす 言の葉を拾い 肯き心に収め 慈しみの情を持って 少ない平易な言の葉を返しては 朋の双眸を覗き その情念を受け取っては 歩き 語り 見交わしあった朋輩の激しい感情の噴出に驚く 第13番Op.130+133がベートーヴェンの私的叙事詩(叙情詩でも同じことだが)なのだと初めて識った ミロQのベートーヴェンは200年間に着いた時間の貝殻を削ぎ落とした 聴衆がついてくるにはもう少し時間が要るのだろう 人の耳は慣れたものを美しいと思い込む 劇性を排したミロQの表現に物足りないものを感じてしまう人々を非難しても詮無い 四挺のヴァイオリン属弦楽器が完全なバランスで鳴っていることがまだ奇異に感ずる耳は多い だがベートーヴェンはそういう音楽を書いたのだ スコアを素直に弾けばミロQのサウンドになる 当たり前と言えば当たり前過ぎることを言う 音楽は人間の言葉なのだ 人の心なのだ ベートーヴェンはそれを書き残したからわたしたちは今も彼と語らえる ミロQはまたベートーヴェンと出会わせてくれた いつかご一聴を 

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     2017/07/14

    補筆完成版につきまとう批判は避けることができない 作曲者が 多くの場合は他界したことで 書きかけのまま残した草稿から演奏可能なスコアを創出することへの忌避 罪悪感すら抱く人がある どこまで調べ推量して書いても 偽作 偽物の誹りを間逃れない カシュカシアンが演奏したシェルリー版にもその批判が付き纏った オーケストラ部草稿の貧弱さは如何ともし難く その多くをシェルリーの筆に任せる以外 わたしたちがバルトークの絶筆を耳にすることはできなかった ヴィオラ協奏曲は30分足らずで終わる ディスクの余白には指揮者エヴェトシュとクルターグのヴィオラ入りオーケストラ曲が続く これがなかなか素晴らしい楽曲で大いに愉しめた ハンガリーの三人(四人)が書いたヴィオラ独奏とオーケストラによる楽曲集は実に味わい深い逸品となった ここで面白いのはエヴェトシュの曲名が”レプリカ”なのだ 模写 模造品 はてどういう了見か 何か意味深ではある カシャカシャ(失敬 カシュカシアンの私的愛称)の演奏を愉しんだのでわたしに文句はない

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     2017/07/12

    面白い! スウィングしてる わたしが一番好きなバッハ演奏は20世紀最後の年 雨のライプツィヒ市役所前広場で夜を徹して敢行された「バッハ没後250年記念コンサート」世界から集まった様々な形態の音楽集団や個人が”バッハ”を歌い継ぐ(演り継ぐ)演奏会 ライプツィヒ市民は傘もささず立ったまま”バッハ”に酔いしれていた そして聴衆を笑顔で踊らせたのがジャック・ルーシェ・トリオだった これがバッハだ これが音楽だと識った グールドの名を出すまでもない わたしたちをバッハに巡り合わせてくれた演奏家は枚挙に遑がないが 皆一様に面白い 面白くない音楽は音楽じゃない バッハじゃない エマーソンQのコンビューター・ミュージックであるかのような均一性ある音像再現は不可欠だ こうでなくてはバッハは聞こえない わたしはあの簡素なスコアを見ながら全曲を聞いた 見事に再現している しかも弛まない 不鮮明にならない 全てのラインが生きた声になって歌っている これでこそバッハが愉しめるというものだ そして何より”今”エマーソンQはバッハに遭っている その喜びが溢れている だからもっと嬉しい 日常生活の中で聞き続けられるバッハがここにある  

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     2017/07/12

    高い評価がある録音の四年前にあった 同一曲の同一演奏者によるライヴ映像 思わぬものが思わぬ時に現れたものだ 何しろ四半世紀以上前の記録だから 大時代ものかと訝しんで覗いた ピリオドスタイルでも違和感なくシューベルトが味わえる”今” ヴィブラートをたっぷり利かせたロマンチック演奏なんて気持ちがついていけないんじゃないかと危惧していた 確かに塩川 ペレーニ共に20世紀伝統の奏法で弾いていた しかし映像が役立ってくれた 小さな窓だけの窮屈な小部屋で演奏され 奏者の貌と手元だけが浮き上がる程度の薄暗さが聴くものの集中力をも高めてくれた VnとVcは十分に歌いよく鳴っていたが 音楽堂のひらけた空間とは真逆の環境が幸いした 音響空間の限界を超えた音量は出せないから三者が聴き合い奏でる室内楽本来の発音体へそれぞれが整えられていった それが顕著だったのがシフのピアノだろう 三者の中で最も控えめで必要以外はVnとVcを立てる姿勢が貫かれた 一見伴奏者のタッチで弾いているかと思うほど密やかな指運びだった だがこれでいいのだ シフが弾いているのはピアノフォルテでフォルテピアノではないのだから ”今”のピアノで主体的な或いは主導性ある演奏をしたら二楽器を食ってしまう 室内楽のパランスは崩れ去る シフ-塩川-ペレーニのシューベルトは奏法の是非を超えて 当に楽興の時を刻んでいた その長大さにおいて敬遠若しくは忌避されるシューベルト音楽をここに聞くことはできない 真に音楽の天国又は桃源郷が広がっていた 多くの方にお奨めしたいが もうこのDVDは入手困難になっている 是非再発売又はBlu-ray化を願いたい     

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