2008年12月1日 (月)
text : KOMORI (HMV)
二階堂和美(以下二階堂):この数年、ライブだレコーディングだで、特にこの2年はほとんど家にいませんでしたが、ライブラッシュも一段落して、ニカセトラが完成して、ジャケットやツアーの手配もひととおり済んで、なんか4年間くらいのツケを払ったような気分ですよ。あとこの数日、家に居ると、一緒に住んでるおばあちゃんもちょっと元気になってくれたので嬉しい。(近況過ぎますね) --- 今回はバラエティーに富んだ選曲ですが、どのような点を重視して選んだのでしょう?李香蘭から童謡から都市レコードまで、凄く振れ幅広いですよね!そして選曲に”季節感のある風景”を感じさせるものが多いですが、これは偶然でしょうか?二階堂:ありがとうございます。どれも素晴らしい名曲です。歌わせていただきたい曲はたくさんありすぎますが、今回は季節が感じられる曲というところに絞りました。一年を通して、カレンダーみたいなアルバムにしようと最初から決めていて、それが4年以上前なんですが(笑)、その間、ことあるごとに季節の曲を探しては拾い集めしていました。それらを春夏秋冬春、と並べてみて、さらにそこに人の気持ちの流れも作りたかったんです。春に出会って、夏に向けて盛り上がって、秋にちょっと倦怠ムードがきて、冬に孤独を感じ、春にまたふりだし。ふりだしの戻り方は、受け入れていくパタンもあれば、あらたなスタートのパタンもあると思うんですけど、どちらにせよ人の気持ちも繰り返しみたいになってるなって感じていたので、それを季節が巡るさまにオーバーラップさせてみたかったんです。 --- 前回インタビューで「子供の頃のテレビの歌番組とかからの影響が大きかった」とお伺いしたのですが、今回選曲した楽曲のなかで特に音楽にリンクした体験で思い出深いものってありますか?二階堂:リアルタイムでほんとにテレビから入ってるのは、南野陽子さんの「話しかけたかった」ですね。松田聖子さんももちろん当時から好きでしたが、聖子さんは姉がファンだったのでレコードやカセットの情報もありましたね。南野陽子さんの頃は中学生で、姉のうけうりじゃなくて、自分の意志で好き嫌いが生じ始めた頃だったと思います。遅いですね(笑)。歌詞がね、自分に近い感じがしたんですね。歌詞に共感できるか出来ないかとか思い始めた頃かもしれません。そのうちまたどうでも良くなるんですけどね(笑)。それからまた重視し始める時期が来たり。こういうのも全部繰り返すもんでしょ?人生、なんでも堂々巡りばかりのような。 --- 今回は弾き語りを基調にしてますが、この狙いは?二階堂:とにかく曲そのものが間違いなくいいので、なるべくシンプルにその歌の世界に自分が寄り添いたいと思いました。その状態で皆さんにも聴いてもらったらどうかな、と。曲が出来たままの状態に、いったんぐうーーっと戻って、作詞、作曲された方の最初の手書き原稿くらいまで戻って、そこから私に頂いた曲、みたいな妄想で歌いました。『二階堂和美のアルバム』を作るときに、作詞をしてくれた鴨田くんに最初にみせてもらったときみたいな感じです。歌本を見ていると、そういう気持ちに近づきやすいですね。歌本って、前奏とか間奏とかのコード書いてないんですよ。突然歌い出し(笑)。あの、歌本をぺらぺらめくって手当たり次第歌っているときの幸せな時間(笑)が今回の原点なので。 --- 録音はどのように進められたのでしょう?二階堂:いや〜これが楽しかったんですよね。もともと宅禄でやろうと思っていて、春夏の曲のいくつかはもう2004年に録ってたんですよ。残りの秋冬にとりかかるまでにあれよあれよで3年経ってしまって。そしたら去年、屋外で24チャンネル回せますよ、という若手のおもしろいエンジニアさんに出会って、あら、それおもしろそう、じゃあ試してみましょうか、ということで、いくつかの録音を実際に屋外で録りました。全編ほとんど弾き語りなれども、一曲一曲その歌の世界に合った空気感を醸し出したいと思っていたのが、この出会いで見事に自分の中で合致したんです。全曲、歌とギターは同時に演ってるので、パンチインとか全く出来ないで、その代わり何回も何テイクも録りました。「蘇州夜曲」や「世界でいちばん熱い夏」などは、アレンジや録音場所のバージョンもかなりの数ありますね。どれも捨てがたかったですが、最終的には曲の並びでしっくりくるのを選びました。 --- 歌う上で新しい発見があった楽曲があれば教えてください。二階堂:童謡の「赤とんぼ」は、ギター伴奏つけてみたりもしましたが、そんな“楽曲”ぽくするより、歩きながら口ずさむ感じがいちばんぴったりくるな、と思いました。なので実際に秋の山の中で、夕日を浴びながら歌いました。あと「夏のお嬢さん」はロックだな!と。「卒業写真」も自分で歌ってみて初めて「ひとごみーになーがさーれてー かわってーゆくーわたーしをー」のあたりでぐっとこみあげる感じを味わって、この伸び上がるメロディとこの歌詞っていう絶妙のコンビなことに恐れ入りましたね。あと、季節の曲を探していると松任谷由実さんにぶつかるっていうのも新たな発見でした。カバーはとにかく勉強になります!ははーっ!ってうなってばっかりですよ(笑)。 --- さらに、歌う上で一番難しかった曲も教えてください。二階堂:子供の頃からものまねしてしまう癖があって(笑)。聖子さんは危険ですね。オリジナルへの経緯なんですけどね。あと、その曲の気分に入りすぎて声のキャラクターが変わりすぎてしまう傾向があって。「蘇州夜曲」でチャイナっぽくなりすぎたり、「夏のお嬢さん」でアフリカっぽくなりすぎたり、「雪の降る街を」でシャンソンぽくやりぎたり、とか。つい盛り上がって大げさなところにいきそうになるので、コミカルにならないラインを見極めるのが一番難しいです。 --- リリースされるのがちょうど年末の”そわそわ感”がはじまる様な時期ですよね。二階堂さんご自身の、この季節で一番好きな風景や日常の瞬間を教えていただけますか?二階堂:そう、「A HAPPY NEW YEAR」の歌の世界がまさにそういう年末から年始にかけての、過去を振り返るセンチメンタルと、未来へのほのかな希望がまざりあっていて大好きなんです。このアルバムの流れにもそういうのを込めてますが、終わりと始まりが混在している状態っていうのがたまらないですね。胸が締め付けられるような拡がるような、収縮の幅が大きくなります。この季節で言うと、寒い中待ち合わせしてる姿はなんとなくひたむきで、いいですよね。携帯のなかった時代はもっとあれこれ想像力が働いて、感情も豊かだったでしょうね。 --- 最後にHMV ONLINEをご覧の皆様へメッセージをお願いします!二階堂:ようこそここへたどり着いて読んでくださってありがとうございます!もし私がどこかあなたの近くで歌いに行かせていただく機会があったら、是非生の声を聴きに来てください。そしてあなたの生の声も聴かせてもらいたいなと思います。ライブってほんとに生もので、相互作用ですから。楽しみに待っています。 --- ありがとうございました!
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