Mark Murphy 来日記念インタビューB
Thursday, May 8th 2008
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Mark Murphy インタビュー
--- 例えば、今年行なわれるオリンピックを契機に、世界各国の様々な文化や習慣が、中国に入り込んできそうですし。そのひとつとして、ジャズという音楽が、そこに広く根を張る可能性はあるかもしれないですよね。 Mark そうかもね。『ホワイト・コンテス』(邦題:上海の伯爵夫人)という映画は観たことある?レイフ・ファインズが、盲目のアメリカ人外交官の主人公を演じて、上海に自分のナイトクラブ「ホワイト・コンテス」を開くという話なんだけれど。面白いのが、30年代のジャズを演奏しているんだけれど、その演奏者のほとんどがアジア人なんだよ。映画の終盤には、上海から、もっと西洋化された香港に舞台をうつして、演奏を行なっているんだ。30年代の上海を的確に描いているんだ。映画というのは、文化のミックス・アップされたものが反映されたシチューみたいなものなんだよ。この当時は、世界中で戦争が勃発しているっていう時代だよね。歴史的背景を持った、ものすごくいい映画だよ。 今、世界の人々は、何かポジティヴなアクションが起こらないだろうかと、待っているような状況だと思うんだ。また、しょっちゅう戦争をやっているような人間に対して、そんなことは許されないんだと、はっきり言えるような世の中にもなっているし。そういった敵対心や闘争といったものは、なかなか簡単に根絶できるものではないんだけれどね。 歴史というのは、ある一時点で色々な出来事が次々と巻き起こる。人によっては、なぜそういった不安定な状況になるのかを分析して、原因を突き止めようとする。でも、ジャズのような音楽というのは、そういった状況下で、まさにセラピーとなり得るんだよ。ジャズは、自分の人生というのは、自分の手で即興的に作り出すことができるんだというのを教えてくれるんだ。私の音楽を聴いた人が、何かを始めて、それがダメになっても、ひと休みして再度やり直すことを学んでくれれば嬉しいよね。 --- 最後に、HMVオンラインをご覧のファンの方々にメッセージをお願い致します。 Mark HMVのようなショップがあるというのは、とてもラッキーなことだよ。どんどん行くべきだよ。オンラインでも使えるわけなんだから。 『Love Is What Stays』では、「My Foolish Heart」で、リー・コニッツがサックスを吹いてくれているんだけど、こういった人達の起用の仕方が、ティルは非常に巧くてね。要するに、時代の趨勢(すうせい)にチャレンジして、音楽として、一時的なものを作ろうとはしていないということなんだ。長い間、みんなに楽しんでもらえるようなものを作りたいんだよ。 インプロヴィゼーションというのは、その時に即興的に出てくる音楽だよね。でも、その瞬間的に出来たものは、その時その時の「今」という時間においても、必ず楽しんでもらえるようなものにしたいんだ。 以前、ジャイルズ・ピーターソンとよく訪れていたロンドンのカムデン・タウンにあった建物が、火事で焼け落ちてしまったことがあったんだ。そういった風に、自分たちが気に入っていたものが、ある日なくなってしまっているということは、とても耐え難いことだよね。だから、何か自分が好きな物事を見つけたりしたら、すぐに行って、やりたいことをやった方がいいんだよ。明日にはなくなっていたり、できなくなっていたりするかも知れないからね!
【取材協力:COTTON CLUB】
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マーク・マーフィー
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グラミー賞に6度ノミネートされ、アメリカの有名ジャズ雑誌「ダウンビート」人気投票でも数え切れないほどの首位に輝くシンガー。女性歌手が圧倒的に多いジャズ界で、ただひたすら「都会の粋」を歌い続けてきた男、それがマーク・マーフィーである。1956年にレコーディング・デビューした彼の半世紀にわたる歩みは、まさに「粋の軌跡」。無名同然だったビル・エヴァンスや、デヴィッド・サンボーン、マイケル・ブレッカーなどをいち早く起用し、ジャンプ〜ジャイヴ、ブラジル音楽、ジャズ・ファンクまで、あらゆる楽曲をスタイリッシュに歌いこなしてきた。近年はファイヴ・コーナーズ・クインテット、ユナイテッド・フューチャー・オーガニゼイション(U.F.O.)などとのコラボレーションでも話題を提供。2007年には、ティル・ブレナーのプロデュースのもと、最新アルバム『Love Is What Stays』を発表した。
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