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Mark Murphy 来日記念インタビューA

Thursday, May 8th 2008

無題ドキュメント
Mark Murphy interview

Mark Murphy インタビュー


マイルスは、私の中でジャズのピカソなんだ。
マイルスもピカソも、私にとって最高のロール・モデルだよ


--- マークさんにとって、ご自身のヴォーカル・スタイルを決定付けたり、あるいは大きな影響を受けたシンガー、アーティストというのは?

Mark  2人いるんだ。ひとりは、シャーリー・ホーン。『Love Is What Stays』の最後で、彼女に捧げた曲を歌っているんだ。もうひとりは、ペギー・リー。私とシャーリーは、ペギーの影響下にあったシンガーとも言えるんだ。私がまだ小さい頃、叔父が1930年代後半のベニー・グッドマンのレコードをたくさん持っていて、そこで専属歌手として歌っていたのがペギー・リーだったんだ。

あとは、マイルス・デイヴィス。マイルスは、私の中でジャズのピカソなんだ。ピカソは、様々な(画を描く)スタイルで表現をしてきた。マイルスもピカソも、私にとって最高のロール・モデルなんだ。

--- 近年は、ファイヴ・コーナーズ・クインテット、4ヒーロー、そして、日本のU.F.O.などとコラボレーションを行なっていますが、彼らのような新しい世代による「ジャズ」を、どのようにお感じでしょうか?

Mark  ファイヴ・コーナーズ・クインテット。彼らはヘルシンキの出身だけど、アルバムのレコーディングはニューヨークで行なったんだ。たまたま、フィンランドのフェスティヴァルで共演したのがきっかけだよ。すごくラッキーなアクシデントだったよ。

4ヒーローは、マーク(・マック)がいきなり私のところに電話をしてきて、「「12(=Tweleve)」っていう数字に関する曲を書いてくれないか?」って(笑)。私の誕生日が14日だから、「2つ数字が足らないなぁ」って言ったんだよ(笑)。結局は、12の惑星についての詩を書いたんだけれどね。ロンドンでレコーディングしたんだけれど、実は、それ以前にお互いのトラックとリリックを全く事前に情報交換していなくてね。でも、いざレコーディングし始めると、エンディングがピタッと合ったんだよ(笑)。これには、さすがに驚いて、大笑いしてしまったんだ(笑)。とてもクールだったよ。彼らはまだやってるよな?それ以来、しばらく会っていないんだ。
         4ヒーロー『Creating Patterns』収録「Twelve Tribes」

例えば、フューチャー・ジャズのようなものの「フューチャー」という言葉は、気をつけて使わなければいけないと思うよ。それは、あっという間に過去になってしまうからね(笑)。ヘルシンキで、ファイヴ・コーナーズと演ったときは、他にも色々な新しい世代のアーティストから共演のオファーがあったんだ。でも、音楽ビジネス自体がここ最近、以前と大きく変わってきてしまったんだ。東京には、レコード・ショップがまだあるらしいから、日本人は、とてもラッキーだと思うけど、ニューヨークなんかは、Virginしかレコード・ショップがないだろうう?10年ごとに、周期があるのか?10年前にあったものが、今はなくなっている。そんな感じだよ。

--- 日本、特に東京でも最近、多くのレコード・ショップが店をたたんだり、縮小せざるを得ない状況になっていますよ。

Mark     本当に?まぁ、ネットやウェブ・ショップの拡張のせいなんだろうね。ネットでいきなり、自分のおばあちゃんについて調べることができる時代だからね(笑)。


Mark Murphy


--- 前回の来日公演でもポエトリー・リーディングをなさっていたのですが、やはり、「ビートニク」的なものも、マークさんの音楽表現の中では重要な要素になっているのでしょうか?

Mark     そうだね。確かに重要な要素だよ。ポエトリー・リーディングというよりは、スポークン・ワードと言えるのだろうけど。でも、言葉の問題もあって、日本でそれを演るのは控えようかなと思っている。レコードだと、何度も繰り返し聴かせることができるし、ジャケットの裏に言葉が記載されていることも多いんだけれど。

--- マークさんのスタイルの特徴の1つであるスキャット。マークさんにとってスキャットの魅力とは?

Mark  スキャットは、歌詞は関係のないものだから、ある意味、新しい言語なのかも知れない。人によって、好き嫌いはわかれるけれど、日本のリスナーはみんな好きみたいだよね。私がスキャットをするというのを、本当によく知っているよ。

--- 初めてスキャットにトライしたのは、いつ頃だったのでしょうか?

Mark  ニューヨークのシラキュースに住んでいて、そこのジャズ・クラブに行くようになった頃に始めたんだ。あの頃は、ちょうどビ・バップが花開いたときだったんだ。私自身、その時にスキャットを広めようと思ったんだけれど、あまりポピュラーなものにはならなかったんだ。だけど、バップのプレイヤー達はみんな、私のリズミックなスキャットを気に入ってくれて、よくセッションに呼ばれたんだよ。最近は、もう少しスローな楽曲、いわゆるバラードを主体に歌っているんだけれど、実は、スキャットを使ったリズムのある楽曲もすごい好きなんだ。

結局、誰が聴き手なのかっていうのが問題なんだよ。その聴き方にもよるし。ありきたりというか、判りやすいようなものが好きな人にとっては、私のパフォーマンスを聴くということは、ある意味チャレンジなんだ。一度慣れ親しんでしまえば、楽しいものなんだよ(笑)。

最近は、そういったことはあまりやっていないんだけれど、7月に、ギリシャのコフ島へ、私の教え子のシーラ・ジョーダンと、スキャットを教えに行くことになっているんだ。歌い手にとっても、聴き手にとっても判りやすく、とっつきやすいスキャットの歌い方っていうのがあるんだよ。それを教えに行くんだ。


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マーク・マーフィー
グラミー賞に6度ノミネートされ、アメリカの有名ジャズ雑誌「ダウンビート」人気投票でも数え切れないほどの首位に輝くシンガー。女性歌手が圧倒的に多いジャズ界で、ただひたすら「都会の粋」を歌い続けてきた男、それがマーク・マーフィーである。1956年にレコーディング・デビューした彼の半世紀にわたる歩みは、まさに「粋の軌跡」。無名同然だったビル・エヴァンスや、デヴィッド・サンボーン、マイケル・ブレッカーなどをいち早く起用し、ジャンプ〜ジャイヴ、ブラジル音楽、ジャズ・ファンクまで、あらゆる楽曲をスタイリッシュに歌いこなしてきた。近年はファイヴ・コーナーズ・クインテット、ユナイテッド・フューチャー・オーガニゼイション(U.F.O.)などとのコラボレーションでも話題を提供。2007年には、ティル・ブレナーのプロデュースのもと、最新アルバム『Love Is What Stays』を発表した。

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