Traincha 来日記念インタビューA
Thursday, May 1st 2008
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Traincha インタビュー
Traincha それはもう、レジェンドだから、彼と一緒にスタジオに入れるということは、素晴らしいとしか言いようがないわよね。今年80歳になるのだけれど、すごいエネルギーを持っているわ。まだ現役でこの世界の第一線でやっていることが、とにかくすごいわ。彼自身も、何をやりたくて、その為に何をやるべきかというのをきちんと判ってるの。かといって、全てを一人でコントロールしようというわけではないから、私の方からもアプローチをしやすかったの。だから、一緒の時間はとても心地良くて、リラックスできたし、彼の前でナーヴァスになったことはなかったわ。本当、一緒に仕事ができて光栄だった。 それと、新しい曲が出来上がった時の彼の喜びようが、忘れられないの。「Who’ll Speak For Love」は、私の為に書き下ろしてくれた曲なのだけれど。彼自身が、新曲を自ら歌ってパフォーマンスするということはもうないので、誰か別のシンガーがそれを歌って、作品として完成させなければいけないから、それが私であったことが、とても光栄なことなのよね。 --- その「Who’ll Speak For Love」で、プロデューサーのパトリック・ウィリアムスは、「彼女がこんなに熱気を持って、作業をしている姿を見たのは、久々だ」とおっしゃっていましたが、かなりの気合の入りようだったのですね。 Traincha そうね。オリジナル曲を書き下ろしてもらうというのは、アーティストとしてとても光栄なことなの。今まで誰もパフォーマンスしたことのないまっさらなものだから、そこに客観的に自分のカラーを付けていくことができるの。だから、それまでのレコーディングとは違う貴重な体験ができたわ。あとは、新曲を完成させた作曲者の喜び。この特別な瞬間を実際に目の当たりにできたという点でも、とても親密でラッキーな瞬間を味わうことができたの。ディオンヌ・ワーウィックらと同じような機会を与えてもらったのよ。そういった、バカラックのエネルギーを体中で感じながらのレコーディングだったので、きっと、パトリックはそう感じたのね。 バカラックと一緒に仕事ができるということ自体が、素晴らしいのよね。ポップ・ミュージックの歴史や流れを作り上げ、変えていった人なわけだからね。こんな言い方したら失礼かも知れないけれど、お年を召している方だから、あとどれぐらいこうやって私達と作曲活動してもらえるかはわからないの。だから、こうした機会に恵まれて本当にラッキーだと思うわ。 --- 同じく、バカラック作品には欠かせない作詞家・ハル・デヴィッド。彼の書くリリックの世界の魅力とは? Traincha ハル・デヴィッドのリリックというのは、パズルみたいなもので、すべてが最後にぴったりと収まる感じ。歌詞とメロディがとてもよく合っているのね。「陰」と「陽」のように、バランスのとれたものになるの。あるメロディ・ラインというのは、ある言葉・歌詞を必要としているわけであって、バカラックとハル・デヴィッドの組み合わせというのは、まさにそれなのよね。 ほとんどの人が、曲を書くときにラヴ・ソングを書くと思うのだけれど、ハル・デヴィッドの書くリリックには、予想もつかないような展開やひねりがあるの。みんなが共感はできるのだけれど、どこに行き着くかわからないところがあって、所謂ストレートなラヴ・ソングではないのよね。でも、みんなに愛されて、100年先も歌い継がれているような普遍性があるのよ。
Traincha ディオンヌがオランダでコンサートをやった時に、そのバンド・リーダーにロブ・シュラックというピアニストがいて、彼を介してディオンヌとは知り合ったの。ロブは、バカラック・バンドのピアニストでもあって、私の今回と前回のアルバムにも参加してくれたのよ。 彼女の持つ「間合い」や「タイミング」というのは、やっぱりすごいわよね。どの曲も、まさに彼女のために書かれたものなんだなって強く感じるわ。とても大きな存在ではあるのだけれど、実際、私がレコーディングする時には、彼女の作品は参考にしないようにしていたの。自由にやりたかったし、きちんと客観性をもってレコーディングに臨みたかったからね。他の人が録音したバカラック作品も同じ。なるべく聴かないようにしていたわ。レコーディングが終わってから聴いてみて、「なるほどね。面白いわ。」というのはあったけど。まぁ、ディオンヌのようには歌えないし、そうしてはいけないと思っているしね。 --- アルバムのハイライトともなる『Raindrops Keep Falling On My Head』は、日本でもとても人気がある1曲です。 Traincha この曲はあまりにも知られているから、オリジナルの割りとテンポが速いヴァージョンとは全く違うものにしてみたかったの。バラードにアレンジされ、素晴らしいフリューゲル・ホーンのパートを作ってもらい、オリジナルとは全く異なるものになり、私にもぴったりの曲調になったと思うわ。歌詞も、スローにすることによって、違ったアプローチに聴こえるしね。 多分、バカラックがこのフリューゲル・ホーン・パートのアレンジをしてくれなかったら、この曲は取り上げなかったと思うわ。多くの人に歌い継がれて、あまりにも知られすぎているからね。 --- トレインチャさんが、こういったバカラック・ソングを通して、リスナーに伝えたいこと、あるいはメッセージは何であったりするのでしょうか? Traincha バカラックの曲というのは、とても魅力的で、歌い継がれて、永遠に残しておかなければいけないものだと思っているの。よく「もうすでに、たくさんの人に歌われている曲を、なぜ、またあえてレコーディングするのか?」って質問をされるのだけれど、例えば、ディオンヌのパフォーマンスだったりは、過去の世代のものであるわけね。だから、私は今の世代を代表して、バカラックの素晴らしい曲を、ちゃんと新しい世代に伝えなければいけないと思っているの。聴き継がれていくべきものという点では、ジャズ・スタンダードなんかと一緒よね。メッセージというよりは使命感に近い部分があるかも。 --- 唐突なのですが、バカラック以外の偉大なコンポーザーの作品を取り上げるとしたら、お次は? Traincha あはははは、難しい質問ね(笑)。ガーシュウィンはすでにやっていて、大好きなスティーヴィー・ワンダーの作品もライヴ・アルバムとして出しているわ。でも、スティーヴィーの作品は、機会があれば、もう1度やってみようかなとも思っているわ。 バカラックとスティーヴィーがコラボレーションして、曲を書いてくれたらベストなんだけれどね(笑)!2人が私の永遠のアイドルよ。非現実的だけれど、そうなったら本当に素晴らしいわよね(笑)! --- ホーランド=ドジャー=ホーランド集のようなモータウン・ソングブックなんかをやられても面白そうですよね? Traincha そうね。モータウンは大好きだし、私自身のバックグラウンドとして聴いてきたのが、ソウル、R&B、ゴスペルだから、とても面白いものができそうね。
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トレインチャ
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オランダのアムステルダム生まれ。本名は、トレインチャ・オースタルハウス。父親は、元牧師で教会音楽作詞家。母親はクラシックのヴァイオリン奏者。地元の先輩キャンディ・ダルファーと活動する間、兄ティエールとのグループ、トータル・タッチで96年にデビューを飾る。1st、2ndアルバムがトータル・セールスで100万枚を突破。8万枚売れれば大ヒットと言えるオランダで、数々の記録を塗り替えて国民的人気のトップ・アーティストに。その反響を受けてソロ・キャリアを歩み始めると、99年、スティーヴィー・ワンダー・ソングブック『For Once In My Life』もプラチナ・ディスクに。その後も八面六臂の活躍を見せ、ジャズ・フェス、音楽番組などで、パット・メセニー、ライオネル・リッチー、アンドレア・ボチェッリといった実力派と共演するなどして広くその美声を届けてきた。名門ブルーノートから昨年リリースしたバート・バカラック・ソングブック『The Look of Love』では、巨匠バカラックとのレコーディングも実現。再び巨匠と組んだソングブック第2集の最新作『Who'll Speak For Love』を引っさげ、初のソロ名義での来日を果たした。
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