サカナクション 山口一郎『NIGHT FISHING』全曲解説！インタビュー

--- この曲はもうイントロのシンセの音一発でぶっ飛ばされました（笑）。

山口　まじっすか？　実はこの「サンプル」は色んなヴァージョンがあって。で、もともとこの曲をリード曲にしないという前提があってのこのアレンジだったんですよ。

--- 意外でしたね。逆に意図的にリード曲にするためにこのようなアタックの強いシンセの音を持ってきたのかと思ってたんだけど。

山口　実はこのシンセをイントロに入れることで少し大衆性を失ってしまったかなと思ったんですよ。リード曲にするならば、もうちょっとわかりやすい感じにしたかったんですけど、そうすればもっと歌詞の世界とはまるんじゃないかと思っていて。だから、この曲をもう一度レコーディング出来るなら、もっとたくさんやりたいことが一杯あるんですけれどね（笑）。でも、原曲は今回のアルバムの中で一番いいと思っていた曲なんで。

--- 先に“クラブ・ミュージック的なアプローチを〜”と言っていましたが、「ワード」にしても「サンプル」にしても、それに対応すべくなのかどうかわかりませんが、『GO TO THE FUTURE』に収録されていた楽曲よりもBPM（ビートの速度の単位）が少し早くなってますよね？　そこは敢えて意識して創ったんですか？

山口　そうですね。意識しましたね。『GO TO THE FUTURE』収録曲の「三日月サンセット」がBPM122で、「白波トップウォーター」がBPM124か126だったんですよ。でも「ワード」にしろ「サンプル」にしろ、2か4しかBPMを上げてないんですけどね。でも印象がかなり変わりますよね？

--- うん。そうなんですよね。初めて聴いたときは、“お、ちょっと早いな”と思ったんだけど、実際DJをするときにかけてみるとさほど変わらないという。

山口　本当はもっと早くしたかったんですけどね。でもこれ以上早くすると僕の歌が死んじゃうんですよ。言葉が伝わりにくくなっちゃうんですよね。「サンプル」は特にそうで。

--- リスナーが聴きづらくなるとか、一郎君が感情を込められなくなるとか？

山口　そうではなくて、歌詞の印象が変わっちゃうんです。僕の曲はフォークで創ってきてるものがほとんどだから、そのゆるさというかだるさというか。そういう空気が変わってしまって、ちょっとアーバンな感じになっちゃうんです。
　 そう考えると、そういう田舎臭さを残すとなると、ぎりぎりでBPMが126ぐらいなんですよ。あとまあ、126ならフロアでかかっても踊れるかなと。

--- 今、フォークで曲を創ると言ってましたが、作曲はギターの弾き語りで創ることが多いんですか？

山口　そうですね。アコギ一本で成立しない曲は、サカナクションではやらないということがルールになっているんですよ。例えば、創った曲でアコースティックライブが出来なかったらそれはダメだという感じですね。

--- なるほど。一郎君がサカナクションの曲をアコギ一本で弾き語りをするライブっていうものもいつかは見てみたいですね。

山口　そうっすか？　いつでもやりますよ（笑）。酔っぱらえばどこでも唄いますから、僕は（笑）。

--- じゃあ機会があったら（笑）。あと、この「サンプル」の曲途中の間奏のブレイクで鳴るギターの音色、その後続くドラムのブレイク・ビーツを聴いて、“凝ってるなぁ。かっこいいなぁ。”と思ってしまいまして。

山口　ありがとうございます。実は、“変に間奏が長いバンドだ”って1stをリリースしたときに色んな人に言われたんですよ。主に歌ものを聴く人からするとそう感じるらしく。
　 でも本当はその手法が僕らの売りだったんですけど、改めてメンバーと色々と試行錯誤して。あと、ライブで生きるアレンジにしたいという気持ちもあって。曲後半にポリリズム（拍の位置が異なるリズム）的な要素を入れれば多分生きるだろうなという意図もあり。あと、ギターの岩寺をフューチャーしたかったんですよ。

--- ギターの音、いいっすよ。1stでは解らなかったギターの音と存在感。こういうギターが鳴ってもサカナクションとして成立するんだなと改めて実感させられましたね。

山口　次の3作品目ではもっとギターの音を出したいんですよね。

「ナイトフィッシングイズグッド」へ続く・・・