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2人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/02/01
ピリスのシューベルトの新譜がやっと出た。去年か一昨年に一度告知されるも延期になっていた分、期待もひとしお。 ピリスらしい、凛とした音楽が詰まっている。ERATOから出ていた旧録音(D960)から更に深い落ち着きをもったソナタを堪能できる。 ポリーニのように輝かしい音でもなく、アファナシエフのような重い足取りでもなく、内田光子のような情念たっぷりの表現でもない(注:この3人のシューベルトも大好きです。)、自然に何の作為もなく弾いているようで実にいろんな息遣いが聴こえてきて、心に沁み込んでくる。 最後のソナタD960、第1楽章の中間などすこし強奏部分が行き過ぎの感もあるがあの小さな身体からこんな渾身の音が奏でられるのに驚かされる。体力という意味でなく心の強さがこの音を出させるのだろうか。布生地でたとえさせてもらうなら絹とかビロードでなく、麻のような素朴だけどとても懐かしくもあり、ぬくもりと強さを兼ね備えたような…。 もしも今までシューベルトのソナタは「単調で退屈」と敬遠している方はぜひ聴いてみてほしい。他の演奏者でも「単調で退屈」なことはないが、このCDならみな安心して聴けると思う。おススメです。
2人の方が、このレビューに「共感」しています。
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5人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/30
私がこのCDを購入したのは1997年(か1998年)だったと思う。陰鬱なシューベルト…。ECMでの録音とも違う、ひどく屈折した暗さと絶望的な足取りのごときテンポ。はまってしまった。おそらく作曲者自身これらの曲を作りながら「この若さで“晩年”の作品を書いている」と自覚していたのではないだろうか。そんなシューベルトの心情を気持ち悪いくらいにリアルに表しているように感じる。 個人的な解釈として、D958は「生前の苦闘」、D959は「生から死へ」、D960は「彼岸の世界」のようなイメージを持っている。D959の第2楽章、死の運命を知ってしまったようなショッキングな情景、第4楽章の今までの「生」を走馬灯のように思い返しているような作り。D960の第1楽章…彼岸の世界のような穏やかなメロディーと、生前の様々な苦悩がはるか後ろに響いてくるような感覚を覚えさせる奇怪なトリル・・・。 あくまで個人の思い込みだが、そんな思い込みにしっくりくるのがこのCDだ。全曲一気に聴くのは相当「疲れる」が「憑かれて」みたい方にお勧めである。
5人の方が、このレビューに「共感」しています。
2人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/27
2010年、紀尾井ホールで聴いた感動がよみがえる。もっとも当日の演奏はもう少し違った(あまり書くとネタバレになるので自粛。当時の演奏会評を参照されたし。)ものだったが、こうしてCDとして手元にあるのはやはりうれしい。たしかあのコンサートの前に腹ごしらえに吉野家で牛丼喰っていたなあ、などと関係ない情報まで思い出される。 いつもの仏頂面であいさつもそこそこに弾かれる姿、音の合間にひらひら舞う手の柔らかさ…。といった視覚的な情報まで聴きながら思い出される。 演奏も良かった。昔の楽しかったことを思い出しながら訥々と語りかけるような趣。 「幻想ソナタ」でもあるし、「追想」ソナタでもあるような感覚があった。 DENONでの最初の録音のような衝撃的なテンポは取らず、むしろ自然なおそさ。あの日の夜、アンコール(特にブラームスの小品が心に残った)も終え、会場を出ると少し雨が降っていた。それでも演奏の心地い余韻に酔いながら歩けたのもいい想い出。 おまけの即興曲はぜひ、全曲でCD化(と演奏会)を期待。
1人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/27
各パートの音がまんべんなくギッチリ耳に飛び込んでくるシューベルトの傑作。五重奏のはずなのにオーケストラのような音が出てくる。全体に早めのテンポで押してくる。音のダイナミックな構築では最右翼になるのではないか? ただ、第二楽章のAdagioに少しなじめなかった。あの楽章の中に込められた(と私は思っている)、孤独や絶望、祈りみたいな想いが私にはあまり感じることができなかった。中間部は非常に激しいのだがその前後のAdagioがスーッと流された感じで私の中ではいまいち。愛聴しているロストロポーヴィチ&メロスSQによるDG盤との比較だが、時間だけでみるとアルカント盤が13:35なのに対し、メロス盤は16:07(私のプレイヤーでの表示)。あくまで個人的な感覚だがもっとゆっくり&じっくり奏でてほしいところ。私にとって第2楽章が一番好きな部分であるので評価を少し低めにした。
1人の方が、このレビューに「共感」しています。
1人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/25
後期の作品でまとめる形はアシュケナージもDECCAから出していたはず。あれも軽快な粒ぞろいの音でまとめられて楽しかった。ピリスのこの盤はじっくり聴かせる演奏でアシュケナージとは趣が異なると感じた。ピリス盤では晩年(と言っていいかわからないが)のショパンの静かなまなざしを感じさせる。ソナタ第3番は決然としていながら、そして静謐。第3楽章の静けさには心が洗われる。マズルカやノクターン、ワルツなどの小品も大切に弾かれる。ひとつひとつが小さいけれどほのかな光を放つ宝石のような味わい。チェロ・ソナタが最後に弾かれるのもいいプログラミングだと思う。いくらいいピアノでも2枚ずっとでは疲れる。もちろん「箸やすめの一曲」というレベルでない凛とした演奏。愛好者のみでなくこれからショパンを聴き始める方にもじっくり付き合えるCDとなると思う。
7人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/25
ラトル自身も満を持してのチャレンジなのであろう。ブラームスを世に問う格好の楽器を手にしてやっと取り組んだのだろうか? 数々の名演を記録してきた名うての楽団をドライブして過去の全集と比べても特筆できる作品となった。 スリムな線の細い演奏を予想していたが、見事に裏切られた。テンポも思ったよりスロー(チャカチャカ早いわけではないという意味でのスロー)カラヤン時代の戦車のような重厚さには及ばないがどのパートも鳴らしまくっており、聴いていても心地いい。個々のパートがここぞというところで主張するが全体を通すと嫌味にならない。古色蒼然のブラームスとは少し違う、でも斬新ギラギラなブラームスではないので安心。4曲の中では第3番が一番気に入っている。第1楽章からとても伸びやかで堂々としている。歌うところはしっかり歌う。第3楽章のPoco Allegrettoも「泣ける」演奏ではないがちょっぴり憂愁を含ませて上品。 特典でDVD(こちらも見応えがあるおまけ。全集を2セット買ったようなお得感がある。特筆すべきは安永さんが第1番のコンマスで第2楽章のソロも担当。退任前の素晴らしい仕事に拍手。)がついているのにつられて発売直後に購入したが今でも聴くたびにベルリン・フィルのメンバーによるソロはもちろん、合奏時にも垣間見える主張から「あ、この音の塊の中に、こんな音が含まれていたんだ」と嬉しい発見をすることがある。今後もじっくり付き合っていきたい・・・。
7人の方が、このレビューに「共感」しています。
2人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/22
(楽譜を読めない私が言うのは不謹慎かもしれないが)何もしない、楽譜をただ音にあらわす…。当たり前のようなことが一番難しい。それがごく自然にこのCDから聴くことができる。余計な飾りもないしこれ見よがしのひけらかしもないのにこの落ち着きは一体何だろう。 普通の白米が普通にうまい、滋味深いブラームスのデュオを聴きたい方にお勧め。ヴァイオリンは柔らかに音を紡いでいく。H.ドイチュによる温もりのあるベーゼンドルファーのピアノの音がヴァイオリンをひきたてる素晴らしい二重奏。 私が買ったのは93年だからSACDの音質はレビューできません。でもSACDでなくても音楽の良さは伝わるはず。
3人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/21
第6集(白鳥の歌&ソナタ第21番)のHMVレビューのヘッドには“完結”と書いてあったが、嬉しい続編登場。しかも「魔王」や「鱒」など、言い方は悪いが「音楽の教科書によく出てくる歌曲集」の様相。私としては「戸外の自然の中で」のテーマとして聴くことにしてみた。 それにしてもゲルネの歌の振幅の広さに驚かされる一枚。「月に寄せて」で月夜の静けさと一抹の寂しさを謳いあげた後、「魔王」で夜のドラマを劇的に表し、そのあとに「湖のほとりで」の夢幻の世界を穏やかに歌う…など表現意欲たっぷりと感じた。 明るめのピアノの音(もう少し抑え気味の方が私は好きだけど)にのせた、朗々とした歌声にほっと一息つかせてもらった。 今後もこの企画を続けて、師匠であった故ディースカウの衣鉢を継いでいただきたい。
3人の方が、このレビューに「共感」しています。
3人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/19
80分は入るCDにわずか一曲。30分そこそこのベト4のみ。それにもかかわらず他のCDより大切に思えてしまうのはなぜだろう。手にしたときに聴く前からワクワクしてしまうのはなぜだろう。 ライナーノートにクライバー自身による一筆にもあるクライバー最良の「スナップショット」に魅せられる気持ちいい1枚。こんなに楽しく演奏しているCD、義務教育の音楽の授業でもこういうCDを聴いてもらえばクラシック音楽への印象も変わってくると思う。さいわいダンス科目が増えてきた現在、「踊りだしたくなるようなベートーヴェン」もぴったりだと思う。
5人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/19
長らく愛聴していたDG盤(といくつかの海賊盤)のライブラリーに嬉しい追加。私としては大好きな演奏。VPOとのセッション録音(DG)の緊張と官能が同時に楽しめる演奏も好きだが、こちらの盤の良さはついつい身体がスィングしてしまうテンポとリズムのキレ。官能がレッドゾーン振り切ったようなこの演奏もクライバーらしくて嬉しい。 気分によって「どちらでスッキリしようか」と選べる。大事な仕事に出る前、シャキっと気分を高める時はDG盤。仕事が終わり緊張を解放する時は当盤を選ぶことが多い。 この曲の性格的におとなしい演奏は似合わない気がする。これくらい暴れてくれた方が楽しい。 かしこまった7番やおとなしい7番に満足できない方はお試しあれ。 あとリクエストとして、1986年の来日公演でのベートーヴェン第4&7番のDVD化や1993年(?)にVPOと録音したはずのR.シュトラウス「英雄の生涯」&モーツァルトの33番のCD化。 来年(2014)の没後20年の追悼盤として「クライバーの生涯」を思い出すきっかけになると思うが・・・。
0人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/15
再発売CDはジャケットデザインが難ありなのを我慢すればやはりお買い得。エッシェンバッハの弾き振りなら面白そうと買ってみたら的中。 演奏もCPも納得の1組。 特にK467(21番)は5曲中一番のお気に入りであり、中でも第1楽章・カデンツァ前の一瞬のひらめきの後とカデンツァ本体が曲中一番のお気に入り。「え? あの曲のこのフレーズがこう繋がってくるの!?」と感心してしまった。 最近、K467を10枚くらい集めてiPodに入れ、車中で続けざまに聴くマラソン・コンサートを敢行したが最も驚きに満ちたカデンツァがこれ。あまり頭のいい聴き方ではないかもしれないが、こういった楽しみ方ができるのもモーツァルトならでは、とおゆるしを。もちろん、他の曲も楽しめる。K595(27番)第2楽章のピアノの静けさも清々しい。できれば今後、新録音で彼の弾き振りを期待したい。
0人の方が、このレビューに「共感」しています。
3人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/14
「けれんみがない」という言葉が一番似合う。「My Wild Irish Rose」のシンプルな演奏に込められた想い。「Be My Love」のせつなさ…。全10曲のすべてが、小さいけれど大切な宝物。 お世話になった方、大切な友人に何か贈り物したい時、真っ先に思いつくのがこのディスク。
4人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/14
「白鳥の歌」+「ソナタ第21番」の強力カップリング。ゲルネとエッシェンバッハのタッグなら外れなし。第3集の「水車屋の娘」でも印象深い歌唱と伴奏がまた聴ける。 私の印象では作詞者が違っても全体としてモノトーンな歌唱で統一されている気がする。 特に聴きごたえあるのは「ドッペルゲンガー」。これ1曲でひとつのオペラ作品みたいに聴ける。 エッシェンバッハのソナタ第21番もすばらしい。伴奏を務めた「白鳥の歌」と同じ路線での演奏、というより「白鳥の歌」の兄弟として「無言歌」のソナタが作られたのではと思わせる。アファナシエフ(1997年 デンオン)とは違った意味で冥府的な音楽。特に第2楽章の歩みの凄さに脱帽。 蛇足ながら、以前DGに録音した同曲の再発売もぜひお願いしたい。
4人の方が、このレビューに「共感」しています。
1人の方が、このレビューに「共感」しています。 2013/01/13
今となっては古めかしい録音で、演奏も現在の若手でバリバリ弾きこなす人もいるだろう。しかし、このCDはこれからも生き続けていくことだろう。何度聴いても飽きることがない。 私は入浴中に第3楽章を、湯ったり聴いている。牧歌的な懐かしさ、作曲者の心の平安に触れることができる一枚。
お買い得なセット。他のレビューにも見受けられる「現在の演奏を聴くと、いまひとつ…」という意見もうなづける。でも、それでもこの落ち着いた佇まいはなんだろう。セカセカしていない、大人のモーツァルト。サポートのオケもすばらしい。 と偉そうにいってもこのCD選んだきっかけは村上春樹の「ノルウェイの森」の文中にカサドシュのモーツァルトについての節がありそれにひかれて買ったミーハーな俺・・・。
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