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kurokage さんのレビュー一覧 

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  • 6人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/07/17

    最新SACDの音が聴きたくて購入したディスクなのでまずは音の話。期待通り非常に優秀だ。直接音の鮮度も密度も高いが、同時にホールトーンの質も上がっているので、切り抜いて貼り付けたような違和感がなく、演奏会場で聴く本物の楽器の音に明確に近づいている。テレビで言えばハイヴィジョンと通常放送くらいの違いは十分にある。フルオケの咆哮にも飽和しないし、弦が張った時にも変に膨れたり引っ込んだりせず、定位の安定感も高い。但し、録音が良くてもオケが上手くなる訳ではないので、CDの世界で毎日なじんでいる世界のスーパーオケに比べると、弦の艶や厚みが薄いところもそのまま再現される。
    演奏は客観性の高い現代的な演奏。リズムに粘りを持たさず、アゴーギグも押さえて、ドラマは曲が持つ構造自体で表現する。このスタイルで特に早めのテンポも取らずに緩徐楽章を持たせているのは、逆にもの凄いテンションの高さと言える。こうした演奏を聴くと、21世紀にもなるとマーラーも普通の曲になったのだ、とつくづく思わされる。思い入れを外して聴けば成る程そこはそういう構成になっているのかと、改めて気づく部分も多い。中途半端なバランスを求めず、冷静沈着に曲との距離感を保ち切っているところがジンマンの見識であり、他の類演と一線を画しているところであろう。
    とは言いながら、作者とともに祈り、号泣し、奮闘しながら、楽譜の迷路の中を出口を求めて彷徨うかのごとき演奏に郷愁を感じるのは、恐らく私だけではあるまい。突出した音の良さともあいまって、持っていたいセットではあるものの、これだけでマーラーを済ませる訳にもいかない(第一大地の歌が欠けてるし)、そんな感じの全集である。

    6人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/03/05

    リスト演奏に何を求めるかにもよるのだろうが、私にとっては、「リスト=自己顕示欲に満ちた俗物根性丸出しの大道芸人音楽家」との認識を改めるに至った衝撃のディスクである。クリダの演奏の焦点は、明らかに難技巧の再現ではなく、過剰な装飾音・挿入音に埋もれた意外と素朴でシンプルなリストの歌の表出にある。楽想が変化するさいの間合いやテンポ設定が絶妙で、必要と感じれば弾き潰れることを恐れずハイスピードのまま突っ込んでいる。怪物的におどろおどろしくなりがちな左手声部も、オケの低声部のように全体の有機的パーツとして制御されており、筋肉質でスポーティで爽快だ。この結果、ほとんどの奏者で、技巧をひけらかすための安直な楽想素材の適当な継ぎ接ぎにしか聞こえないリストの曲が、心理的必然性を伴った一連の歌として聞こえてくる。長大なピアノソナタも短く聞こえるし、誰もが弾きたがる「鐘」も、唯のバラバラのエピソードの寄せ集めでなくクライマックスに向けての流れがしっかり確保されている。録音も70年代前後のものとしては非常にコンディションが良い。高音の輝きや伸びに限界はあるが、音の粒立ちも間接音とのバランスも良好。ややスリムで透明感のあるクリダの音が上手く捉えられている。ショパンの憂いもシューマンの翳りもない、真っ直ぐ外に向かう強い光のようなリストのピアニズムの意味合いが、改めて理解できる演奏であり録音だ。一曲ずつディスプレイに表示される曲名からは、製作サイドの意気込みも伝わってくる。「マダム・リスト」の称号に恥じない素晴らしい選集だと思うのは私だけであろうか。

    8人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/02/24

    鬼気迫るような古楽団体の対極にある演奏。急速楽章は軽やかに弾むがある意味のんびり、緩徐楽器は楽器が美しく鳴り切ることを目指し、問題意識のかけらもない。しかし、それが実にいいのだ。大体ヴィヴァルディに哲学や主義主張を持ち込んでも仕方がないではないか。聴くだけで心が晴れ晴れする、それがどれほど素晴らしいことか。「四季」や「調和の幻想」に加えて買う必要があるのかというのも、「どうなるか分かっていて何故水戸黄門を見るのか?」というレベルの愚問である。500曲とも600曲とも言われるヴィヴァルディの協奏曲の中から、生涯「四季」ばかりを聴く方が余程不思議ではないだろうか。録音が又極め付けに優秀で、文字通り「水も滴る美音」が収められている。この音を聴くためだけに買っても十分価値がある。

    0人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/02/18

    マルチヌーの面白さは、ガチャガチャしたおもちゃ箱的な部分や、息の長い旋律による伸びやかな歌、はたまた深い沈潜や祈り等々が、自在に入れ替わったり同居してしまったりするところにある。P協のシリーズでは、1番辺りは振幅が小さくやや単調。曲番が進むにつれてこうした特徴も増していき、後期の作品では作者の繰り出すあの手この手に興じている内に、「どうしてそういう展開になるんだ?」と疑問を挿む暇もなく時が経っている。
    ただ、独奏楽器としてのピアノが活きているかというと、ユニークな音響効果や楽想展開はオケが担っているケースが多く、ピアノも登場の多いパーツ楽器の域を出ていない。ピアニズムにも取り立てて目新しいところはなく、交響曲のシリーズの方が作風との相性が良く出来が良いように思う。
    デジタル初期の録音なので、Dレンジは狭く中域中心のこじんまりした音作り。フルオーケストラの迫力や輝かしさは物足りないが、聴きにくい音ではない。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 0人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/02/18

    マルタンは20世紀の作曲家なので、従来の分類であれば現代音楽のジャンルなのだろうが、今となってはそれ風のライト・クラシックという趣だ。聴いて不快ではない範囲に常に制御されており、耳を劈く不協和音も聴き分け不能の複合リズムも登場しないが、その分表現力・伝達性に乏しく、長く聴いていると同じようなことの繰り返しに聴こえてつい聴き流してしまう。同郷のオネゲルに通ずる作風だが、より個性も作品密度も低く、従って知名度もそういう順なのがうなずける。
    録音は器楽系が70年代と古く楽器の艶やかさや余韻感には乏しいが、近接した録音パターンでソロのクローズアップも昔風に利いているため、声部の動きが鮮明で音響的な面白さはある。アカペラの響きもきれいに録れている。
    多彩な作品が収められており、オリエンテーション・キットとしては格好だが、これだけ聴けばもういいかな、という感じは否めない。

    0人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 5人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/01/04

    歌謡的な部分にもロマン派風のあざとい表情付けやアゴーギグを使わず、インテンポを守った極めて正統派の信頼感ある演奏だ。織物の折柄がいつの間にか移り変わって、遂には壮大なクライマックスへと登りつめていくバロック音楽は、変に弄繰り回すと本来の魅力が薄れてしまいがちだが、曲にも楽器にも精通した練達の技のおかげで安心して音楽に浸ることができる。録音はテイクによって差があり、オルガンによってはピッチが不安定な楽器もあるが、総じて残響豊かで最新録音と比較しても遜色のないレベル。価格を考えると超お買い得版と言えるのではないか。

    5人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2011/01/04

    通常は弾き飛ばしてしまう経過部分に徹底的にこだわったユニークな演奏。そのためテンポは遅くなり演奏時間も異様に長い。ブルックナーでこんなことをすると、重く間延びした音楽になりそうだが、オケの軽目で明るい音も幸いしてか、美しい歌に満ちた独自の魅力を獲得している。先入観に囚われずに聴くと、「なるほどそこはそう気分が変わってそう繋がるのか。」と改めて気付く点も多い。
    録音は間接音中心で音量も低く、弱音部の綺麗さに焦点を合わせたこれまた独自のアプローチ。金管群の咆哮は頼りないが指揮者の意図には適っているのだろう。スタンダードとして常備するようなディスクではないが、聴き慣れた曲に新しい光を当てる一枚としてはお勧め。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 2人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2009/07/13

    サティの曲が面白いと思ったことは特にないのだが、これだけまとめて掛け流しに流し続けていると段々耳に馴染んでくるから不思議なものだ。家具の音楽とかいう概念は元来そんなようなもので、居住まいを正して耳をそばだてるのでなく、日用品のように転がしておけば良いのだろう。代表作のジムノペディも、知らぬ間に始まって知らぬ間に終わってしまうように書かれている。思わせぶりなタイトルやひねくれた曲想に囚われて、何か深い意味や意図があるのかと思い悩むのは、皮肉屋の作者の思うツボ。グラス片手に聴くともなしに聴けばヒーリング効果はそれなりにある。何人ものディスクを聴き比べるほど聴き込んではいないので演奏を語る資格はないが、元々華やかな技巧やピアニズムとは無縁の音楽であるし、そういうものとして聴く限り特に不満はない。

    2人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 8人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2009/07/03

    ピアニストを聴いているのか作曲家を聴いているのかで評価が分かれているようです。技術的難所をいかに鮮やかにクリアしてより聴き栄えのする音楽にするかという観点からは、余り見るべきものがないということになるのかも知れませんが、つっかえながらも情動に突き動かされて矛盾や混乱を内包したまま大きくロマンを歌い上げてしまうのがシューマンの独自性であると思えば、ある意味曲趣に適った演奏で、曲の構造が却って掴みやすくなっているとも言えそうです。
    私自身は作曲家派なので、鑑賞に耐えないような演奏や音質であるとは思いませんし、ありそうで余りない全曲集がこの値段で買えたことだけでも結構満足しています。

    8人の方が、このレビューに「共感」しています。

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  • 1人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2009/04/26

    北欧=陰鬱という既成概念をぶっ飛ばす超根アカ音楽。それじゃムード音楽かコマソンでしょ、程度の楽想も、大編成オケでアッケラカンと弾き切られると結構痛快だったりする。金管大活躍で和声は標準、濁り・翳りが少ない。スタイルからしてフィルアップの舞曲や組曲の方が決まっているのは致し方ないところだが、ともかくリフレッシュには好適。コンサートホールバランスの録音でオケも渋いので、もう少し賑やかな方が曲想にはマッチするとは思うが、まずは決定盤だということで。

    1人の方が、このレビューに「共感」しています。

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