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0 people agree with this review 2021/03/04
シリーズ第三弾。基本的に倒叙もので、女性で小柄で刑事らしくない福家が犯罪現場や証言などの細かい矛盾を見つけ、犯人を追い詰めていく。倒叙という点では『刑事コロンボ』の影響が顕著だが、挙動などはブラウン神父を思い浮かべる人がいるかもしれない。 連作なので、マンネリにおちいる危険性があるものの、著者のストーリーテリングの才能でそれを回避している。第1話が2005年に書かれ、2018年にシリーズ第5冊が刊行されていることがそのことを示している。 本書に収録されたのは3編「禁断の筋書」「少女の沈黙」「女神の微笑」。全体に長めの作品が多いが、「少女の沈黙」は200ページほど。「禁断の筋書」も120ページで、それぞれ雑誌掲載は2回にわたっている。「女神の微笑」も100ページほどなので、全体に長めの作品ばかりという印象を受ける。 私は、このシリーズ第三弾までしか読んでいないが、「少女の沈黙」でシリーズ全体の流れが少々変わったのではと感じている。この作品では福家が、一敗、地に塗れかける。さらに、「女神の微笑」ではライバルの登場と思える部分もある。 個人的には「禁断の筋書」までのような路線が好みだが、面白い連作であることは間違いない。
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0 people agree with this review 2021/03/03
イタリア史に関する著作ではナンバーワンの人気を誇る著者の若き日の作品。デビュー作ではないが、第二作で、書下ろしでもある本作で毎日出版文化賞を受賞しており、初期の代表作とも言えよう。 描かれるのは、15世紀末、イタリアの統一を目指して闘うチェーザレ・ボルジアの生涯。父・ロドリーゴ(後の法王アレッサンドロ六世)、妹・ルクレツィア、マキャベリ、レオナルド・ダ・ヴィンチといったルネサンス期の著名の人々だけではなく、カテリーナ・スフォルツァなど個性的な人物が次から次へと登場する。 著者自身は「若書き」と考えているようだが、チェーザレに惚れぬいていただけあって、その熱い思いが強く伝わってくる。作家は成熟すると巧みにはなるものの、その心の中の“熱さ”を果たして維持できるのか、作品に注ぎこめるのかは疑問だと言える。 『ローマ人の物語』までの著者の作品をほぼ読んでいるが、本作を越える作品はないというのが私の考えだ。だから、本作を含め手元に残しているのは初期三部作と『海の都の物語』正・族の計5冊。それで充分だ。 そして、古典など評価の定まった作品を除くと、20代前半までに読んだ作品で50代になっても評価を変える必要がないと思える作品はかなり少ないが、本作がその一つである。 チェーザレを道徳面から考えると、とても素晴らしいとは思えない。しかし、本書で著者が描き出した姿を見る限り、極めて魅力的な人物であったことは間違いない。
本書をもとに1974年に制作された同名の映画の評価が極めて高いため、本書を著者の代表作のような扱いをする場合もあるが、それには賛成できない。また、21世紀の視点で読みなおすと古びたところも多く、それが味になっているわけでもない。 鎌田操車場で男性遺体が見つかる。目撃証言から、ズーズー弁と「カメダ」という言葉が浮かび上がる。刑事の今西たちは東北に捜査に出かけるが、そこで若手文化人集団「ヌーボー・グループ」を見かける。その中の評論家・関川の私生活に問題が起きており… ミステリー小説としての面白味は、東北弁の問題と斬新的な殺人方法があげられる。巧みなミスリードもあるものの、刊行時はともかく、今時のミステリー慣れした人なら、どうだろうか。もう一つは、戸籍の問題で、戦争が影を落としている。この辺りのところは、著者らしいとも言えよう。とにかく、刑事たちの地を這うような地道な捜査が素晴らしく、これも清張作品の魅力と言える。 映画を先に見た人は、あのクライマックスを期待したら裏切られるので要注意。 『点と線』『ゼロの焦点』といった作品に比べると、イマイチだが、長さを含め読みごたえがあることは事実だ。
江戸の出版人としては有名な蔦屋重三郎の耕書堂を舞台にした小説。山東京伝や喜多川歌麿も登場するが、メインとなるのは、鉄蔵、瑣吉、幾五郎、十郎兵衛の4人。それぞれ、海のものとも山のものともつかないものの、重三郎はそれぞれにどこか見どころがあると考えており、耕書堂に出入りをさせていたが…。 雑誌掲載時のタイトルは『耕書モンパルナス』。メインの4人は、後の葛飾北斎、滝沢馬琴、十辺舎一九、東洲斎写楽なので江戸時代版の青春グラフィティといった趣だが、何か物足らなさが残ってしまう。単純に書くと、物語の芯というか核になる部分が弱く、どこに重心を置いているのか分からないというのが正直な感想だ。それぞれの葛藤も分からないではないが、深さはなく、この手の物語にある意外な人物の登場もない。写楽はデビューするが、ほかの3人に後の姿を想像するのは簡単ではない。鉄蔵の隣の女の首吊りの話をもう少し違う形で生かせたら、印象が替わっていたかもしれない。登場メンバーがメンバーだけに残念である。
0 people agree with this review 2021/02/26
分かりやすく読みやすい。日本のマンガの歴史が、整理されてすっきりと頭の中に入ってくる。また、1960年頃以降のマンガについて考える限り、極めて深いかかわりのあるアニメについてもかなり触れられているのが素晴らしい。アニメ化(場合によっては実写化)されたことで売り上げを伸ばし、より多くのファンを獲得したマンガ作品があることを考えると、今回のようなアプローチは今後のマンガ史にも求められるものなのかもしれない。 ただ、エロ系がほぼスルーされているのはやや不可解。ほかの人が触れているように、エロ系のマンガ史については専門的な書物もあるが、『鳥獣戯画』にまで遡ってのマンガ史なのであれば、もう少し触れて欲しい。 また、作家や作品、出版社からのアプローチを主とする本書では難しいかもしれないが、1990年代あたりのマンガ喫茶、ブックオフやヤフオクなどが読者側に与えた影響にも触れて欲しかった。これらは、金銭的な面でマンガと読者を近づけた大きな要因だと思う。 紙幅の関係もあるので、“完璧”はあり得ないかもしれないが、もし増補することがあれば、そういった部分も期待したい。
副題にもあるが、高齢の著者が警備員として働いた日々の記録である。ただし、著者はもともと出版業界に住人で、編集プロダクションを経営し、羽振りのいい時期もあったとのこと。ただ、紆余曲折のすえ、事業を清算し、日々の糧を得るために、70歳を越えてから警備員として働きだしたとのこと。 書名にあるように著者が「交通誘導員」として働いたことに大きなポイントがある。ビル警備などのように定点で同じ仕事を繰り返すのではなく、勤務地も勤務状況も変化することが多い。そのために、泣き笑いのエピソードには事欠かない。また、法的な部分で、その仕事にはかなり厳格な線引きがされていることに驚く。 夏冬の厳しさは想定していたものの、とにかく誘導される運転手たちからのクレームの酷さに唖然とする。また、困った同僚たちが多いのにも驚く。やっかいなのは常に“人間”ということなのかもしれない。 かなり嫌なこと、しんどいことなどもあるのだろうが、それをちょっとした笑いに変えられるのが著者の強みなのかもしれない。
伝説的な投手サチェル・ペイジの記録は、けた外れである。通算で2000勝以上、350完封以上、ノーヒットは55試合だ。ただし、彼の記録は、ニグロ・リーグ時代のもの。1920〜1940年代半ばまで、メジャーリーグは黒人選手を受け入れていなかった。そのため、黒人たちを中心に結成されたのがニグロ・リーグだ。ペイジは、そのニグロ・リーグを代表する大投手だ。 著者は、これまでもサチェル・ペイジやニグロ・リーグについて書いているが、本書は最新の調査をもとにしたペイジの評伝である。 少年時代は窃盗て教護院に送られたりもするが、やがてプロ野球の選手になって成功を収める。そこからは野球漬けの日々だ。シーズンオフになれば、中南米などでも試合を行っている。シーズンオフになればメジャーリーグのチームや選抜チームとの対戦もあった。それがなければ、今でもペイジたちの実力について過小評価が今でも続いていたかもしれない。苦労話も描かれているが、それを暗く感じさせないのはペイジの人格的魅力でもある。 現在の黒人選手たちの活躍ぶりを見れば、記録が公式ではないにしても、ペイジを含むニグロ・リーグの一流プレーヤーたちが傑出した選手だったことを理解するのは難しくない。
0 people agree with this review 2021/02/25
父母が大学を卒業している家の子は、頭がいいから大学に行ける、といった思い込みを持つ人がいる。遺伝を重視する考えだ。しかし、本当にそうなのだろうか。生まれつき、能力にそんなに差があるのだろうか。本書が扱うのは、能力とは違った“差”が教育、特に大学進学などに与えている影響について。しかも、経験論とか限られた人数への聞き取りではなく、多くの統計データを読み解くことで、その実態に迫ろうというもの。 両親の学歴、家庭にある本の数、旅行や博物館・美術館に出かける回数などが俎上に乗せられる。 単純に書けば、両親が大卒であれば、それが当たり前として子どもは育っていく。家に本があれば、手に取る機会が増え、読解力が上がる。外からの刺激に子ども時代に多く触れることで、好奇心が刺激される。それらがそれぞれの子どもの基礎となっていく。虐待の連鎖は、“負”としてそれが現れたものだろう。 本書は地域差についてはそれほど触れていないが、学生が街中を闊歩し、書店に溢れる姿を見て育った子どもと駅前の商店街がシャッター通りになってしまったところで育った子どもの“夢”や“憧れ”に差が出るのは当然で、それと同じことが家庭でも起きているということだ。 問題なのは、教育を受ければ能力を発揮することが可能な優秀な人材が、“教育格差”のために埋もれてしまうことなのだ。そういった意味でも、“格差”が減っていくことを望まずにはいられない。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロと並ぶルネサンスの三大巨匠のラファエロ。ほかの二人がいろいろな意味で強烈な個性で知られているのに対し、ラファエロは短命であったこともあって、やや地味なイメージもあって、その生涯や作品については知ることが少なかった。本書は、そのラファエロの生涯と作品に加え。後世への影響なども含め、コンパクトにまとめられている。 画家としてのイメージはそれなりにあったが、建築でも素晴らしい仕事を残していること、死後には希望通りにローマのパンテオンに埋葬されらことなどを考えると、もっと長生きをしていれば、さらに優れた作品をのこしていたことが推測される。また、後世での評価の揺れも興味深い。そういった面でも、ダ・ヴィンチやミケランジェロと異なっていたようだ。 新書という、ページ数や判型のなかで、極めて手際よくまとめられていて、素晴らしい。
無職。家事手伝いの久澄に奇妙なバイトの依頼がくる。依頼主は、祖母で、祖母の代わりに芝居を観に行き、その感想を伝えるというもの。1回に月5千円。二つ返事で引き受けた久済は、少しずつ芝居の魅力に目覚めていくが…。 いわゆる“日常の謎”系のミステリで、連作ものである。書名にもあるように、久済は、歌舞伎、オペラ、演劇とジャンルが違う劇場に足を運ぶのだが、そこで“怪紳士”と必ず出会う。この紳士は何者なのか、というのが全体を通した謎である。 著者は、歌舞伎役者を主人公にしたシリーズがあるほどの芝居好き。本作も登場する演目それぞれに趣向がある。また、劇場の特性も巧みに使われている。 著者の作品のほとんどに言えるのだが、微妙に神経を針でつつくような痛みを感じさせる。本作は、主人公の設定にもそういった部分が感じられるが、そこだけではないのもポイントの一つだ。ただ、それでいながら読後にある種のカタルシスがあるのも著者ならではと言えよう。
0 people agree with this review 2021/02/24
アメリカの車上生活者を追った『ノマド 漂流する高齢労働者たち』を読んでいたので、それなりに期待していたのだが、それほどでもなかった。単純にかけば、取材した車上生活者の緊迫感が全く違っている。取材が広範囲に及んでいること、それぞれの事情が多様であることは評価できるが、一方で対象に迫る深さが足りないような気がする。 近所の道の駅に朝8時頃に行くと、かなりの車が駐車している。お店などが開いていない段階でそれほどの車が集まっているということは、おそらく車中泊だと思う。もちろん、旅行の人もいるだろうが、厳しい事情の人がいてもおかしくない。 ところが、本書を読む限り、取材する側にされる側にも、そういった緊迫感がない。 残念で仕方がない。、
ギャグマンガであり、絵柄もあって、最初は、ちょっとと思う人もいるかもしれないが、歴史マンガとしては、傑作中の傑作と言っていい。 著者の目論見は、幕末を描くことだった。幕末に江戸幕府と対立したのがなぜ薩摩・長州・土佐だったのか。その遠因が関ケ原にあったというのが著者の見立てである。そこで、関ヶ原の戦いが、この第1巻では描かれる。 最初に本作を連載した雑誌は潮出版社から出ており、コミックスも外伝をふくめ30冊が潮出版社から刊行されていた。今回の、この第1巻収録されているのは、そのコミックスの第1巻と第2巻にあたる。 内容としては、関ヶ原の戦いと戦後処理である。西軍についたため敗者となった薩摩・長州・土佐がどのような扱いを受けたのかも描かれている。それを読むと、幕末の遠因としての関ケ原、という著者の見立てには充分な説得力がある。 個人的には、大谷吉継が最も印象的である。家康と三成の力関係をはっきりと理解していながら、あえて三成についた吉継はある種のヒーロー像を体現しており、小早川秀秋とは極めて対照的だと言える。著者がこの関ケ原について描いてから30年以上も経過した2010年に刊行した『風雲戦国伝』では、さらに吉継に関する情報を加えている。著者にとっても思い入れのある人物だと思われる。 歴史好きには手に取って欲しいマンガの代表格だ。
0 people agree with this review 2021/02/23
本書は、大きく分けて二つの問題を扱っています。まず、経営的な問題も含めた本屋(書店)の現状。もう一つは、多くの人にとって心地よくないと思われるヘイト本が、その店頭に溢れる現状。著者は取材を重ねることによって、この二つが全く無関係な事象ではなく、現在の出版産業が置かれた現状から出てきたものだと考えています。 いわゆるエロ本や性風俗関係の書籍・雑誌は年齢制限がかけられたり、コンビニを含め多くの人の目に触れるところから排除されていきますが、一方、人権的な観点から問題が指摘されているヘイト本にそういうことは起こりません。極めて不思議とも思える現象です。だからこそ、問われているのは出版に関わる人の人権意識なのです。それも含め、外から見ても分からない出版界の問題点(例えば、本屋大賞のこと)が指摘されています。 書店がつまらない→だからお客が減る→とにかく売れる本を置くしかない、という悪循環に陥った本屋には未来はあるのでしょうか。本屋さんもですが、顧客にもするべきことがあるはずです。
『屍人荘の殺人』シリーズの第二弾。剣崎比留子と葉村譲が人里離れた施設を訪れる。そこに住む老女は予言者として恐れられているが、比留子ら9人の来訪者に「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」と告げる。そして外界とを繋ぐ橋が焼け落ち、一人が死んでしまう。再び、クローズドサークルに閉じ込められた比留子と譲は混乱と恐怖のなかで、真相に迫ろうとするが…。 前作に比すと、驚きが少ない。一つは“明智”という存在がいないことでもあるが、クローズドサークルそのものの魅力が今一つだ。もう一つは、あまりにも比留子と譲の心情に重心がかかりすぎていること。二人の距離感が魅力の一つであることは事実だが、あまりそこに拘るとドロ沼にはまるような気がする。 バカバカしく見えても、驚きのある設定を期待したい。
アメリカの高校生が、原爆投下の是非を、ディベートで論じあう姿が、小説といった形式で描かれる。主人公のメイは日系アメリカ人だが、ディベートに参加する高校生は、中国系、ユダヤ系、アフリカ系など出自は様々。 アメリカに住む著者らしい設定だし、実際はどうなのかは分からないが、いかにもアメリカでありそうな雰囲気である。ディベートに参加する生徒の出自のバラツキなどは、小説だからかもしれないが、論議を重層化させる効果を持っている。ラストがあまりにも予測どおりというのが残念だとも言える。ジャンルは違うがアメリカのテレビドラマ『マイ・スイート・メモリーズ』で主人公(おそらく小学生)が核兵器について学校でディベートを行うシーンがあるのだが、結末はこちらの方がうまい。日本人作家、日本での刊行物の限界なのだろうか。 原爆投下の基本的な部分は抑えてあるので、もう少し詳しく知るための第一歩ととしては、及第点と言える。
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