私は本屋が好きでした あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏

永江朗

基本情報

ジャンル
ISBN/カタログNo
ISBN 13 : 9784811808390
ISBN 10 : 4811808398
フォーマット
出版社
発行年月
2019年11月
日本
追加情報
:
256p;19

内容詳細

反日、卑劣、心がない。平気でウソをつき、そして儒教に支配された人びと。かかわるべきではないけれど、ギャフンと言わせて、黙らせないといけない。なぜなら○○人は世界から尊敬される国・日本の支配をひそかに進めているのだから。ああ〇〇人に生まれなくてよかったなあ……。

だれもが楽しみと知恵を求めて足を運べるはずの本屋にいつしか、だれかを拒絶するメッセージを発するコーナーが堂々とつくられるようになった。そしてそれはいま、当たりまえの風景になった──。

「ヘイト本」隆盛の理由を求めて書き手、出版社、取次、書店へ取材。そこから見えてきた核心は出版産業のしくみにあった。「ああいう本は問題だよね」「あれがダメならこれもダメなのでは」「読者のもとめに応じただけ」と、他人事のような批評に興じるだけで、無為無策のまま放置された「ヘイト本」の15年は書店・出版業界のなにを象徴し、日本社会になにをもたらすのか。

書店・出版業界の大半が見て見ぬふりでつくりあげてきた憎悪の棚≠直視し、熱くもなければ、かっこよくもない、ごく普通≠ナ凡庸な人たちによる、書店と出版の仕事の実像を明らかにする。


[目次]
◎すこし長いまえがき─不愉快な旅だちのまえに 
本屋はただそこにあるだけで影響力がある/モラルハザードが起きやすい流通システム/「返品しない」のも判断/書店員も組織の一員/どんどんネトウヨが喜ぶ社会に/ヘイト本を「ヘイト本」と呼ぶのは適切か/インターネットが生んだ出版トレンド/雑誌・ムックから書籍・新書へ/ヘイト本とポルノの類似性

1◎ヘイト本が読者に届くまで
■町の本屋のリアル─書店経営者座談会
「こういう本を望んでいたんだよ」/女性が『WiLL』を買うのを見たことがない/反対する本は、どれもこれも売れそうにない/中高年男性の癒しとファンタジー/どの店でも売れるわけではなかった/新書はブームのきっかけになりやすい/中韓経済崩壊本は『ムー』と読者が重なる/買う・買わないはお客さんが判断すること/いちど出版しておいて、引っこめるのはおかしい/女性客が多い店で「成人向け」は置けない/営業に支障が出るのは怖い/店が小さくったって、間口は狭めちゃだめ

■チェーン書店─ 個人の意思だけでは決められない
すべてがオートマチック─ 某大手チェーン本部の場合/どう扱うかは各店にまかされる─あゆみBOOKSの場合/書店人としての意見を旗幟鮮明にする─ジュンク堂書店・福嶋聡の場合/クレームへの対応─「アリーナとしての書店」の困難@/「書店員の仕事」ができない─「アリーナとしての書店」の困難A/どんな本も積極的に排除はしない─某大手書店の場合

■出版取次─まったくの透明な装置
出版社と書店のあいだを取り次ぐ〞会社/「出版社がつくった初版部数を基本、信頼はする」/「そもそも、ヘイト本のブームなんてありましたっけ?」/担当書店の返品率をいかに下げるか/ヘイト本ブームとPOSは無関係?/たんに入荷したから並べているだけ

■出版社─「売れるから」と「売れなくても」
ちょっと新しい見方の本/売れたジャンルをイナゴのように食いつくす/歴史に名を残す出版社の大転回〞/パワハラとヘイト本/ひと炎上三万部/自己実現〞のための本づくり

■編集者─かなりの部分、仕事だからやっている
インターネットが重要な供給源/編集者は仕事だからやっている/青林堂でピンチヒッター=^読むのは意外と知識層=^『マンガ嫌韓流』刊行の立役者もあの人?/保守系の本をつくる人にはバランス感覚が必要

■ライター─願望をなぞり、陰謀をほのめかす
「こんなの読むのはバカだよね」/ヘイト本の読者はネット右翼ではない/ネット右翼誕生の伏流、『戦争論』/保守デフレ時代を生きのこる「経済右翼」/ネットと無知の融合が生んだ都市伝説/民主化以前の韓国をみんな知らない/自信がないから日本自賛本を読む/ヘイト本ブームが去っても

2◎ヘイト本の現場を読み解く
■川上から川下まで─ 出版界はアイヒマンか
ヘイト本はポルノとは違う/ホロコーストも、こんなふうに

■書店への幻想─書店員は本を選べない
セレクト書店はヘイト本を選ばない/「書店=アリーナ」論は有効か/本屋大賞の成功と「カリスマ書店員」と/ひろがる誤解、ふくらむ幻想/選ばないのか、選べないのか

■取次の岐路─いまのままでは維持できない
POSデータが生んだ画一化とランキング依存/出版業界の外から迫る危機

■出版社の欺瞞─だれも責任をとらない
不本意な仕事の結果にも責任がある/本当は出してはいけないものを知っている/編集者の名を本に明記するべき

■ネットと本とマスメディア─ 刷りこまれる嫌悪感
「ヘイト本を買うのは普通のこと」/マスメディアによる日常的な刷りこみ/自分の店にマイノリティが来ると思っていない/現代でも人間は簡単に扇動される/マスメディアへの不満のはけ口/わたしたちになにができるか

◎すこし長いあとがき─変わらなければ、滅ぶだけ 
この難題とどう向きあえるか/答えは出ているのに変われない現状/日本の出版産業の欠陥のあらわれ/人≠ェ働く本屋をとりもどすには/パターン配本と委託制をやめなければ変われない/ヘイト本が客を遠ざけてはいないか/魅力のない本屋は滅びるのだから

【著者紹介】
永江朗 : 1958年生まれ。ライター。書籍輸入販売会社のニューアート西武(アールヴィヴァン)を経て、フリーの編集者兼ライターに。90〜93年、「宝島」「別冊宝島」編集部に在籍。その後はライター専業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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本書は、大きく分けて二つの問題を扱ってい...

投稿日:2021/02/23 (火)

本書は、大きく分けて二つの問題を扱っています。まず、経営的な問題も含めた本屋(書店)の現状。もう一つは、多くの人にとって心地よくないと思われるヘイト本が、その店頭に溢れる現状。著者は取材を重ねることによって、この二つが全く無関係な事象ではなく、現在の出版産業が置かれた現状から出てきたものだと考えています。 いわゆるエロ本や性風俗関係の書籍・雑誌は年齢制限がかけられたり、コンビニを含め多くの人の目に触れるところから排除されていきますが、一方、人権的な観点から問題が指摘されているヘイト本にそういうことは起こりません。極めて不思議とも思える現象です。だからこそ、問われているのは出版に関わる人の人権意識なのです。それも含め、外から見ても分からない出版界の問題点(例えば、本屋大賞のこと)が指摘されています。 書店がつまらない→だからお客が減る→とにかく売れる本を置くしかない、という悪循環に陥った本屋には未来はあるのでしょうか。本屋さんもですが、顧客にもするべきことがあるはずです。

ねも さん | 兵庫県 | 不明

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読書メーターレビュー

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • 夜長月🌙@5/19文学フリマQ38 さん

    「好きでした」と過去形になっています。あなたはヘイト本、正確には『差別を助長し、少数者への攻撃を扇動する憎悪に満ちた本』をどう思いますか。表現の自由があり、法で禁じる事は得策ではありませんが作者や出版社、書店はどう思って販売しているのでしょう。インタビューもはさんでドキュメンタリー調に深掘りされ、業界の構造的な問題に行き当たります。けれど最近の独立系個人書店(セレクト書店)ではオーナーの目利きによりヘイト本が多くの場合、排除されているのには希望が持てます。

  • おさむ さん

    嫌韓本や嫌中本などのヘイト本は未だそこそこの出版点数があり、中高年男性を中心に買われている。筆者は、それを出版業界の構造的な問題と説く。一定の部数を見込めるから出版する出版社。書店への見計らい配本、質を問わず自転車操業で大量の本を作り続ける編集者、無批判に、無自覚にその本を販売する書店‥‥。関係者全員がアイヒマンだと。普通の人たちがただ従順に現状を肯定する事がユダヤ人虐殺という大犯罪につながった。それと同じ構図だという。たまたま私が行く本屋はその手の本を置いてないので、私は今でも本屋は好きです。

  • oldman獺祭魚翁 さん

    実は昨年末に読んでいたのですが、ちょっと書評に時間がかかりましたので、時間がかかりました。ヘイト本、かなり数を減らしましたが、まだ懲りずに本屋に並んでいます。そこで、書店員まで含めて「アイヒマンになるな」はいきすぎではないでしょうか?「今の書店員は、作業員」だという記述がありますが、作業員にならざるを得ない現状を、何とかすべきだと思うのです。配本と再版ルールが有る限り、小さな書店は生き残れないでしょうね。

  • いちろく さん

    紹介していただいた本。著者が提示するヘイト本に関しての説明はあったけれど、本に対するヘイトの感じ方は人それぞれであり十人十色の部分もあるので、出来る限り客観視しながら読むように意識した。と気をつけた程、出版社から書店までの本の流れに関して描かれた内容に、夢中になってページを捲っていた。本に関わる仕事に就いた事がない私には、初めて知る内容も多く驚きの連続だった。特に、書店ヒエラルキーに関しての説明や考察、本屋大賞に関しての問題点の指摘は、心の何処かで気になっていた疑問でもあり納得出来た部分もあった。

  • ま さん

    うーんこの出版業界。本書を読む限り歴とした主義主張のある人は意外に少なく、データ的に何となく売れそうな本を右から左に流してる印象。結果、書店は没個性的になり、ヘイト本が湧いては消える。このままだとネットと比べた書籍の良さ・信頼感が損なわれそうで読んでて暗澹たる気持ち。その辺のところを「出版界はアイヒマンだらけ」と表現していてなるほどと思った。とはいえこんだけヘイト本ヘイト本言うならヘイト本の定義は示してほしかったかも。あと表紙がちょっと残念。松田さん、「独裁者のデザイン」の装丁は抜群のセンスだったのだが。

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永江朗

フリーライター。1958年生まれ。北海道出身。1980年代前半に東京都目黒区大岡山(目黒線・大井町線の大岡山駅利用)に住んで以来、約40年東急沿線に住み続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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