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ニャンコ先生 さんのレビュー一覧 

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  • 4人の方が、このレビューに「共感」しています。
     2010/02/28

    私もこの演奏をFMで聴き、大いに感動した想い出がある。その後、83年か84年にも(歌劇場として来日したついでだったか)同団、同プログラムの演奏会があり、それを聴いた人が「ジュピターなんかさ、舞台から光がさすような神々しい演奏だったよ」と興奮して語っていたのを思い出す。今聴いても全く色褪せることのないすばらしいライヴだ。FM東京は、厚生年金という残響の少ないホールで、しかも78年という時点で、よくもまあこんなまろやかな響きをひろったものだ。クラシック放送の少ない局として、NHKとは違うこだわりをもって録音に臨んだすばらしいエンジニアたちがいたのだろう。まずはFM東京に大拍手。さて演奏だが、これは生のライヴを1回限り会場で聴くつもりで聴いてほしい。何度も聴いたり、シュターツカペレ・ドレスデンとのスタジオ録音と比較すると、音程やアンサンブルに細かいキズがたくさんあるのが気にかかってくるからだ。キズを気にせず、弦楽器群のつややかな音色、速いパッセージが乱れなくキマッたときの爽快感、ドイツ系オケならではの管のソロの味わいに浸って聴けば、聴きとおすうちに何度も感涙を禁じえないだろう。(しかしそれにしても思うことは、セルの70年来日ライヴがいかに奇跡的な完成度だったか、ということだ。あの40番は何度聴いても、NHKのデッドな録音にもかかわらず、キズがない。)

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     2010/02/28

    大ホール3000人の聴衆を熱狂させるべく豪壮華麗に演奏されたベートーヴェン。とにかくコンサートグランドを鳴らしまくる。過剰なベダリングで響きは濁りがち。「月光」3楽章など、左手の和声にマスキングされて、せっかく見事に強打できている右手のアルペッジョがちっとも興奮を誘わない。でもこれは録音で聴くから冷静にそう感じるだけで、たぶん会場で聴いたら大拍手するだろうな、とも思う。「告別」のような純音楽的構成よりはドラマ性が前面に出た曲は、聴いて胸のすく快演。ところが「熱情」となると、このアプローチでは感心するが感動はできない。なぜか「ハンマークラヴィーア」だけは「これもありだな」と納得。作曲者が楽器の進歩を知ってその可能性を極限まで追求し、「ピアノ交響曲」として書いたことを思い出させてくれる演奏だからか。他にもこの人の演奏で聴いたら気分が晴れ晴れとするソナタがありそうだ。なにせ2枚組でこの値段。とりあえずカタログとして持っておいて、全集は値が下がったら買うことにしよう。録音は、ようやくEMIもここまで来たかという、可もなく不可もない程度。5つ星はあくまで「カタログとして」の評価である。

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     2010/02/27

    この価格なら買っておいて損はない全集である。メリット1:軽めの硬いタッチと抑え気味のペダリングで全曲を弾き切っており、その結果、譜面のすべての音が透けて見えるように聴こえてくる。軽いタッチと鮮やかな指技が相俟って、全曲を通じ、全ての装飾音がもたつきも濁りもなく明瞭に演奏されている。当然、トリルの粒の揃った美しさは絶品である。メリット2:上記のテクニックを駆使して、ポリフォニックな部分では、他の演奏者が和声に埋没させてしまって聴き取りが困難な対旋律を、見事に独立した声部として聴かせる。フーガ楽章はまさに独壇場。さらに変奏楽章では、細かいパッセージの中から原主題音だけを魔法のごとく浮かび上がらせる。メリット3:よって、聴く者は、ほとんど全ての楽章で、曲の構造に関する新発見に出会い、飽きることがない。緩徐楽章のテンポが概して速めなのも、聴く者を飽きさせない要因の一つだ。メリット4:それでいて理知的、分析的な演奏かというと、全く違う。処々にちりばめられたエスプリたっぷりのアゴーギクが、初期作品では若きベートーヴェンの覇気、中期作品では表現の拡大を目指した実験精神、後期作品では自由な想像力の飛翔を鮮やかに印象づける。総じて聴こえてくるのは、後世の眼で「ピアニストの新訳聖書」に祭り上げられたソナタ全曲ではなく、後期ハイドン、モーツァルトを学ぶことから出発して、徐々にピアノ音楽の表現内容の拡大を成し遂げていった「等身大のベートーヴェン」の音楽である。デメリット:録音が悪いこと、これに尽きる。ピアノの音が痩せすぎた録音(おそらく60年代後半)と、どうにか原音の感じを伝えている録音(70年代に入ってから)が混在する。痩せて硬い音が最近のピリオド楽器を思わせて面白い、と感じる人もあろう。さらに穿った見方をして、グールド流のダンパー加工を行っているのでは、と想像をなさる向きもあろう。しかし、60年代後半のフランスEMIの他の録音(とりわけフランソワのラヴェルなど)を聴く限り、原音は豊かで陰影に満ちていたであろう演奏も薄く乾いた音にしか録音できていない。このベートーヴェン全集もしかり、である。

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     2010/01/04

    演奏の魂をゆさぶるすさまじさについては、もう語りつくされているので言を重ねない。あえて言うとすれば「マーラー9番未聴の人、マーラー未聴は、この盤か、ウィーンフィルとの71年ライヴのDVDから聴くべきだ」ということ。なぜなら、私がそれまでクーベリックやカラヤンで聴いてどうもピンと来なかったこの曲のすばらしさを初めて実感できたのが、バーンスタイン/ウィーンフィルのベルリンライヴのTV放送を観た時だったからである。あのインパクトがあったからこそ、クーベリックやカラヤン(ライヴの方)の演奏の良さも、後に聴きなおして理解できた。愛聴曲の1曲となるために、そういう「ず抜けた超名演インパクト」が必要な曲もあると思うのだ(例えばゴールトベルク変奏曲byグールド、春の祭典byブーレーズ旧録音。)さて、音質についてだが、旧2枚組CDを借りて聴いてから数年経つので比較はできない。しかし、Dinkelbrot氏がお書きになっているとおり、ややシャリシャリした深みのない音だ。誰かがeloquenceという廉価レーベルについて「なぜこのレーベルから再販になると高音を強調した厚みのない音になるのか」と書いていたのを思い出す。eloquence的な音に仕上がっていると感じた。

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     2009/11/29

    弦の協奏交響曲と管の協奏交響曲1枚に収められた盤は絶妙の選曲だと思うのだが、意外と種類が少ない。管のほうがモーツァルトの真作ではない(少なくとも別人の編曲または加筆がある)というのが定説になったためとも言えるが、実際の理由は、最近のCD製作が協奏曲の場合、人気ソリスト中心に行われるようになったせいではないか。弦の協奏交響曲ではVnやVlaの有名ソリストで売ろうという盤、管ではObやClの人気ソリストで売ろうという盤が製作されることになる。となれば当然、余白には同じソリストによるモーツァルトか他の作曲家の協奏作品がが収録されることになり、弦・管が1枚で揃う盤が製作されなくなる。残念なことである。とはいえ、弦・管が1枚で揃う盤で、現在でも演奏スタイル、録音ともに古さを感じさせない盤として、我々にはベームがベルリンフィルの首席奏者たちをソリに据えた永遠の名盤がある。一生これだけ聴いていればよいようなものだが、たまには小編成のオーケストラによる室内楽的な演奏も聴きたくなる。そこに1990年代になってオルフェウス室内管弦楽団の盤が出た。活きのいいストレートな演奏だ。しかし難を言えばソリもオケも音が荒く、優雅さに欠ける。愛聴盤とするには足りない。いつか、小編成ならではの各声部の細かいバランスへの配慮、しなやかなテンポ変化、ソリとオケとの親密な対話が聴ける・・・そんな盤は出ないものかと待っていたところに、マリナーがスペインの新興楽団を振った当盤の存在を知った。オケが無名なためかレーベルのせいか日本では全く話題になっていないが、マリナーの名を信じてさっそく購入。音色、録音はこれぞモーツァルトという透明でまろやかなもの。マリナーのテンポどり、声部バランスのとり方はほれぼれするほどの完成度。マリナー先生御健在でしたか、ありがとうございます、と感謝である。さて、オケ同様に無名のソリストたちだが、Vnは硬質で透明な音色、アタックが丁寧でヴィブラート控え目というモーツァルトにうってつけの奏者。Vlaはくすんでいながら密度の濃い、これぞVlaといった音色で雄弁に聴かせる。管のソリストを配置左から評すると、Obは以前から名の通った英国の名手だが、腕は衰えていない。ヴェテランらしく配慮の行き届いたフレージングを聴かせる。FgもVla同様、これぞFgという音色でのびやかに歌う。Hrの女性奏者の木管的で繊細な演奏はFgとduoになったときなど驚くほどの効果を上げる。最後にClだが、この人だけはいけない。音色的にも音量的にもでしゃばりすぎだ。休んでいて入ってくる際のアウフタクトをやたらと大音量で演奏するのは音楽性を疑う。実際の音量バランスがこんなだったとしても、録音エンジニアがもっとClをしぼってHrを持ちあげてくれれば、かなり理想的な盤になっただろうに、と惜しまれてならない。耳障りなClで★ひとつ減だが、2曲合わせた総評としては「ついに出た室内楽編成の第1級盤」と言える。

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     2009/11/08

    こんなすごいものを525円で入手できて感激のあまりレビューを書こうと思ったら、「限定盤完売」と表示されている。今さらレビューを書いても、聴けなかった方々には嫌味なだけのような気がするが、将来必ず再プレス、再発売があると信じて記しておく。シューマンの第4楽章とハイドン変奏曲のものすごさ。それらは(もちろん全ての名演奏はそうなのだが)言語をもって表し難い。HMVレビュー、他のレビュアーの文章にある「明晰なロジック」「構成感」「音楽を理性的に演奏すると、こうも楽しく美しい姿を見せるのか」等々の表現が伝えようとしているのも、おそらく私がこの演奏を聴いて感じた畏敬の念と同じものなのだろう。ただ、他のレビューと異なることを書かせていただくなら、私はシューマン第1〜第3楽章の演奏には感動できなかった。第1楽章、第2楽章はもっと気まぐれな音楽だと思うし、だいいち、チェリの演奏では第2楽章が「スケルツォ」に聞こえない。第3楽章ではシューマンの音楽の脆さ、危うさが露わにならない。まるで、名医チェリの治療で神経衰弱から解放されてしまったシューマンの、静穏な境地の表出のように演奏されている。だが、繰り返すが、第4楽章の演奏の説得力、(なぜか他のレビューでは触れられていないが)ハイドン変奏曲の寸分の隙もない構成感には圧倒される。第4楽章など、私がいままでバーンスタインやシノーポリを聴いて作ってきたイメージを完全にぶち壊しているのだが、それでも引き込まれ、うなづかされ、心底から感動させられた。シューマン演奏に関しては私と同じ近寄り難さを感じることになるとしても、どうかハイドン変奏曲を聴くためだけにでよいから、このディスクを手に取ってほしいものだ。

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     2009/10/04

    CD1に収められた作品18-1、18-2、ピアノ協奏曲は18世紀の作で、手法は後期ハイドンや中期のモーツァルトを思わせる。協奏曲が力作で、実演を聴く機会はまずないであろうから、一聴をおすすめしたい。CD2・3に収められた作品番号なしの交響曲第1番〜第4番と2曲の「序曲」(交響曲の断片とも考えられるとのこと)は19世紀に入ってからの作品。ハイドンや初期ベートーヴェンを思わせる部分が続くかと思うと、いつの間にかシューマンやメンデルスゾーンら初期ロマン派の陰影に満ちた響きの中に入って行く。クレメンティがウィーン古典派と初期ロマン派を架橋する作曲家の一人であったることが実感される瞬間である。こうした時代の移り変わりを聴きとる楽しみを味わえるだけでも、このセットは買っておいて損はない。実際、19西紀にロンドンに定住した彼の屋敷には、ショパン、メンデルスゾーン、ケルビーニ、ベッリーニ、パガニーニらが集っていたと書かれている。演奏は、D’Avalosのメリハリをつけたテンポ取りにフィルハーモニアの練達のアンサンブルが応え、安心して聴ける。クレメンティ研究の第一人者でもあるSpadaのソロも研究者然としたものではなく、テクニック、気合い共に十分の熱演である。(一方でSpadaが書いたブックレットは研究者として誠実たらんとしすぎている感がある。実証されていない事柄については憶測を避けるあまり、あいまいな記述が多くて読んでいてはがゆい。)録音は、他の評者も書いているとおりやや音が硬い。が、音場が狭いわけではなく気になるほどではない。

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     2009/09/25

    Sinfonia Varsoviaを振ったDisc1(23,28,35)、Disc2(26,29,39)、Disc3(30,34,31)の3枚と、Philharmoniaを振ったDisc4(36,38)、Disc5(25,40)、Disc6(32,33,41)の3枚、計6枚のボックスセットである。6枚を聴きとおして誰もが抱く感想は「6枚ともSinfonia Varsoviaで録音してほしかった」というものだろう。それほど、前半3枚と後半3枚の価値には差がある。Sinfonia Varsoviaとの9曲は、すべての音符が生気に満ちて鳴っている。「この録音で我々の実力と音楽観を世に問う」とでも言いたげな全力投球の清々しさに胸が高鳴る。自然と、繰り返し聴きたくなってしまう快演だ。それに対して、Philharmoniaとの3枚からは、無数のレコーディングをこなしてきた練達のオケが「まあ、こんな感じですか。」と指揮者の要求に応えた、ビジネスとしての演奏しか聴こえてこない。水準以上の演奏だし、マリナー/ASMFに比肩しうる出来なのだが、曲の新しい魅力を発見させるほどではない。となると、後期3大交響曲の39番がVarsoviaで録音されたことに感謝の念を禁じ得ない。総評として言えば、マルチバイで値段が下がってるときに、38、40、41番はオマケに入っているのだと割り切って買うならば十分推奨に値する。演奏への注文は以上だが、録音スタッフへの身勝手な注文をひとつ言わせていただく。Philharmoniaの音を、シノーポリが振ってアルゲリッチと入れたベートーヴェン協奏曲1、2番のDG盤並みの豊穣な響きに仕上げることはできなかっただろうか?そうすれば、演奏のヴォルテージがいまひとつなのをずいぶんと補えただろうに。

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     2009/09/24

    重厚な低音、充実した中音、伸びのよい高音。全体に耳当たりがよく、安心感と充足感をいだきつつ響きにひたり気がつくと全曲を聴きとおしている。管のソロの完成度には(ライヴのテイクだけを使っているわけではないだろうが)文句のつけようがない。弦の1パートや、木管、金管が集団として全面に出てくるときの、気迫十分でありながらアンサンブルに乱れがない、オケとしての名人芸にも脱帽する。適度にホールトーンをミキシングしたEMIの仕上げには概ね好感がもてる。(ただし、AntiJASRACさんのレビューにある「アバド時代の繊細なPPPがBPOになくなってしまったのかしら?」との疑問には賛同。)ラトルの解釈はざっくり言えば「中庸」。VPOとのベートーヴェン全集が、現代楽器による演奏の新時代をゆるぎないものとした演奏史上の価値を持つのとは比較すべきもない。EMIの廉価盤には、響きが心地よく曲の運びも安心して聴けるブラームス全集としてサヴァリッシュ/ロンドンフィルのセット(協奏曲を含む)が既にある。同社が、音の良さとオケのうまさでワンランク上のを出した、というくらいが私的な位置づけだ。他人に奨めるだけの自信はない。個人的に、愛聴盤が増えた喜びをかみしめているとだけ記しておく。

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     2009/09/20

    まさに驚きのリリースだ。CD1とCD2はVenetian Vespersと題されたセットをなし、1600-1640年に作曲され実際にヴェネツィアの教会で演奏されたと思われるさまざまな作曲家の作品を組み合わせて再現された、あるひと夜の教会晩課の再現である。独唱、重唱、小規模な合奏による静かで短めの曲を中心に、途中数回、雄大な響きの長めの曲を入れて全体を締める。CD3とCD4はVenetian Easter Massの標題をもつセット。ラッススのミサを中核に置きつつ、イースターのミサだけに、ガブリエリの金管を伴う曲を多用しCD1・2のセットよりも派手な作りになっている。CD5はそのガブリエリがサン・ロッコ教会のために書いた曲だけを集めた1枚だ。金管と合唱、オルガンと合唱の壮麗なガブリエリ・サウンドが堪能できる。ピリオド楽器の金管というと、以前は全体に音程が悪かったり、響きがこもった楽器と割れた音の楽器が溶け合わなかったりしたものだが、この盤の奏者たちはすばらしい合奏を聴かせる。言うまでもなく、独唱、合唱も上手い。

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     2009/09/20

    ドヴォルザークに関してネット上で散見される好評につられて購入してみた。結果は「当たり」である。ハレル/アシュケナージ盤と並べて「かくれ名盤」の1枚としたい。3楽章の前半まではハレル盤と肩を並べる良演だ。特に1楽章が良い。第2主題の歌わせ方など、このノラスが最高ではないか。3楽章の後半で残念なのは、あの何とも言えない「切ない感じ」が表現できていない点である(この部分の演奏に関してだけは、マ/マズア盤が絶品だ)。エルガーがカップリングされているのもうれしい。バルトークも曲の存在すら知らなかったが楽しめた。ところで、ロストロ/カラヤン/60年代BPOによる2度と人類になし得ないであろう永遠の名演を記録した盤と、ハレル、ノラスの「かくれ名盤」の共通点は何か?それは、オーケストラのソロパートと独奏チェロが対当の音量で聴こえるべき個所をそのようにミキシングしている点である。クラリネットやコンサートマスターが主旋律を奏し、独奏チェロが伴奏に回る個所は、実演で聴けば当然そのようなバランスで演奏される。ところがロストロポーヴィチのカラヤン以外との録音や、マイスキーの2度の録音、マ/マゼールの(演奏内容ではかなり充実した)盤では皆、惜しいことに常に独奏チェロだけが過大にクローズアップされたミキシングになっている。独奏者と指揮者の名前だけでCDを売ろうとするとこういう仕上がりになるのは市場原理で仕方がないのかもしれない。それだけに、このノラス盤、ハレル盤は貴重なのだ。

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     2009/09/20

    チャイコフスキーのセレナードはこのくらいの編成がちょうどよい気がする。大編成のカラヤン/BPOや小澤/サイトウキネンはたしかに名演だが、音圧に耳が疲れることがある。ウィーン室内合奏団の音はよく溶けあっていて、適度な量感としなやかさをもつ。指揮者の解釈は、斬新さはないが、鳴らすべき個所は鳴らし、歌うべき個所はしなやかに歌い、泣かせどころはしっとり聴かせる。録音も良い。カップリングされたオスロの合奏団によるグリーグの演奏も予想以上の出来だ。同じく指揮者無しの名手集団であるベルリン弦楽ゾリステンの録音に負けない、はつらつとした好演と言ってよい。ちなみに、この盤のチャイコフスキーの録音の原盤は、「フィレンツェの想い出」と組んだNAXOS盤である。あまり耳にしない「フィレンツェの想い出」を聴いてみたい人にはそちらを奨める。

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     2009/09/20

    東欧系指揮者の録音が決まり文句のごとく名盤に挙げられる曲集だが、総合的にみて、万人に「1枚買うならこれ」と推奨できるのはこのマズア盤かアルノンクール/ECOの盤ではないだろうか。楽しいドヴォルザークが聴きたい人、豊かなサウンドに包みこまれたい人にはマズア。熱いドヴォルザークが聴きたい人、引き締まった機能的なオケの音が好みの人にはアルノンクールだろう。どちらの盤もオケが上手い。指揮者が各曲を完全に把握している。録音に関しても、単にデジタルでレンジが広いとかミキシングが上手いとかだけではなく、演奏の特徴をポリシーをもってとらえているという点で両盤拮抗する。しかも両盤とも安価である。両盤に加えてセルかクーベリックの「定盤」を持てばこの曲集を味わいつくせるだろう。

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     2009/08/13

    この、肩の凝らない曲集は、全6曲がCD1枚に収まっているくらいがちょうどよい。デジタル録音、廉価盤ならさらによい。以上の虫のよい3条件を満たしていて、しかも名演奏との世評高い盤は、この盤しか見当たらない。試聴すればわかるとおり、艶のある音、速い走句で乱れないアンサンブル、さすがである。1楽章は速すぎず遅すぎず、2楽章はかなり濃厚な表情を付け、3楽章は快速で駆け抜ける。2、3楽章の表情とテンポに違和感を感じない人には、是非お勧めする。ひとつご注意申し上げれば、No.5の第3楽章を、sul ponticello(駒の近くを弓先で弾くカリカリした音)で演奏している。この音色だけは、Rachlevsky/Chamber Orchestra Kremlin盤の通常奏法で聴きなれた私の耳には、まだこそばゆい。とはいえ、そのうち慣れるだろう。

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     2009/08/09

    とにかく曲がきれい、弦の透明感ある響きが美しい、録音が優秀、しかも長時間収録の廉価盤。2002年プレスとなると、そろそろ在庫切れか?−ここはマルチバイの1枚に加えて手に入れておいて損はない! 同作曲家の「ペレアスとメリザンド」を聴いた人なら、劇付随音楽といえど彼の交響詩作家としての本領が十分に発揮されるだろうことは想像できるはず。台本の英訳がないので内容は不明ですが、1「伯爵夫人の肖像」の語り手の女性は、標題ぴったりの雰囲気満点。2「孤独なスキーのすべり跡」の語り手の男性も淡々と良い味を出してます。11〜13「農民組曲」その他は、すべて標題や副題から想像どおりの曲想。3、4は「とかげ」の意味ですが別に不気味でもない。15〜17のVn独奏、とても音がきれいで合奏とぴったり。この盤にただ1つ難を言うなら、6のラストで鳴るべきティンパニが省略されていること。あのティンパニがあってこその感動なのに・・・解説を読むかぎり、この曲には四重奏版と弦楽合奏+ティンパニ版の2つしかないので、この費用節減(?)にはがっかり。

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