川上さとみが語る3枚目の新作

2008年9月15日 (月)

無題ドキュメント
川上さとみ
川上さとみインタビュー




--- 前作『スウィートネス』がSJ誌ゴールド・ディスクを受賞し、高い評価を得ました。HMVオンラインでも反響が大きかったですが、それから2年の歳月を経ての新作です。改めてご自身が振り返る前作の成果と、その後臨んだ新作に込めたテーマ、アプローチについて教えてください。

川上さとみ  前作品『スウィートネス』は1作目『ティアラ』と同様に、“生きている証”を大きく残そうと思いました。指を通して肉体からの声が残せるということに幸せを感じます。自分自身で振り返っても愛おしい作品です。


今回の『イノセント・アイズ』は結果、元もと私そのものに存在する“強い魂”をよく伝えられる作品を心掛けました。オリジナルは子供の頃に書いた曲の一部から育った曲や、最近生まれた新しいものもあります。また愛おしい作品がひとつ増えました。

--- 全12曲中6曲がオリジナル、という事で既存曲と半々の構成です。まずは、オリジナルでの曲作りにおいて表現したかった点をおきかせください。

川上  私の場合、さあ、いざ曲を作ろうでは無く、その時々の精神状態を大きく含む環境の中で、メロディーがふと浮かんできて曲になっている様です。どう表現したいというより、生きている様、頭の中、がそのまま曲になって行く。そんな感じです。それだけに環境というものはとても大切なものになります。

--- オリジナル以外では、バド・パウエルやウェイン・ショーターのナンバーなどが収録されていますが、今回の選曲についておきかせください。

川上  随分と前から時々演奏していたものが殆どです。
ライブで演奏していて、そしてレコーディングの日が来るまでにとにかくいい感じで、気持ちと同時に上手く進行してくれた曲たちですね。勿論他にもいっぱいありますよ。そういう曲。タイミングでしょうか。全ては。

--- 1曲目「Legend」はオープニングに相応しい力強いナンバーです。意気込み、想いが伝わってきますが、Legend=伝説というタイトルに込められた、曲が持つ意味とは何でしょうか?

川上  そう、この曲もある時突然出てきたメロディーがそのまま曲になったものです。
この曲が生まれた時の心の中には、とても深く力強い何かがあったのは間違いありません。
早速、走り書きのメモの様な譜面でメンバーではじめて演奏した時には、私なりにかなりの手ごたえがありました。いつか伝説の様に自分達の音楽が伝えられたら・・。という願いも込められています。

--- メンバーですが、ベースは再度上村氏、そしてドラムは田鹿氏を起用しています。このトリオ・メンバーの、魅力、醍醐味とは何でしょうか?

川上  みんな先ずジャズの伝統を重んじているところが第一ではないでしょうか?
それでいて自分のカラーを持ち、楽しんでいく。信頼おける素晴らしいメンバーだと思っています。
付き合いも本当に長くなってきました。

--- 全編において、ビバップへの想いに溢れていますが、川上さんが考える「ビバップ」とはどのようなものでしょうか?

川上  文句なしに先ず格好いい。シンプル、スマート、クールでありそして誤魔化さない。そして歌う。 ビバップはジャズミュージシャンならば当然通るべきところ。好きにならない方がおかしい。 基本だと思っています。

--- ご自身のピアノ・プレイ、曲作り等の表現において、インスパイアされるものは、日常において、音楽、そして音楽以外でありますでしょうか?

川上  ピアノ・プレイ、作曲の両方に言えることはやはり、体験、精神状態、環境、食、自分なりの睡眠バランス、視界に入るもの、聞こえているもの、空気感、空気の味、香り、・・・接するもの全てが影響を与えるということでしょう。


もの事全てを上手く運ぶのは結構大変なことで、何かを犠牲にすることにより、成り立つものがあると思います。 一時期この世の動きが全くわからなくなった状態の時期がありました。
誰とも殆ど会話しない、出来ない。一日に一度も話さない。何日も・・。その繰り返しで日々が過ぎていきました。


今となっては、それはそれで貴重な体験をしたと思っています。振り返れば結構そういう時に生まれた曲は多く、心の叫びがあらゆる音となって生まれた様な気がします。そして音自体が会話の相手だったりしたのだと思います。変ですかねぇ? けれども実際、今まで音にはかなり救われてきました。


結局、一般的に良いとされる環境だけが必ずしも音楽にいい影響を与えるとは限らないということだと思います。

--- Jazzは多様化が進み、ジャンルの垣根もなくなってきていますが、今後川上さんが目指す「Jazz」とはどのような形でしょうか?

川上  自分というものがしっかりと自分自身に常にあればいいと思っています。
人生を終える時に、心から「ああ・・・・楽しかった!!」って心から思いたいですね。

川上さとみ
巨匠ハンク・ジョーンズが絶賛するピアニスト。その実力・音色の美しさは世界水準 でもトップクラスに伍していると高評価を与えられている。2006年リリースのアルバ ム「スウィートネス」がスイングジャーナル誌選定ゴールドディスクを獲得、2005年 リリースのアルバム「ティアラ」はロングセラー。共にトップセールスを記録。名実 共に日本ジャズ界のトップ・ランナーとして活躍中。3歳よりピアノを弾き始め、6歳 より現ベルリンフィルコンサートマスター安永徹氏の父安永武一郎氏(指揮者)に師 事、クラシックの英才教育を受ける。13歳で指導資格にあたるグレードを取得。14歳 で指導の経験、16歳でステージに立ち、18歳でCM音楽製作等、学校に籍を置きながら プロ活動を開始。その後ニューヨークで巨匠リッチー・バイラークに師事。1996年パ リのライブハウスに出演。1997年NHK連続テレビ小説「あぐりジャズシーン音楽を 全面担当。2000年 NHK-FM&ハイビジョン放送「セッション505」、2005年 NHK-FM「セッ ション505」、2007年 NHK-FM「セッション2007」出演。その他ルー・ソロフ、ルイス・ ナッシュ、ピーター・ワシントン等、一流ジャズメンと共演。

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